2024年9月14日 鬼とか天狗とか。
「日々の雑記」が1日空いてしまった。最近、締め切りの仕事をたくさん抱えていて、正直、日常がワチャワチャしている。ウェブサイト「ファンタジィ事典」も連投できず。まあ、そういう日もある。
本日は前鬼と後鬼を更新。昨日の分と今日の分……というわけでもないが、一応、2項目を更新だ。鬼とか天狗って、王道と言えば王道だけど、実は難しい。こういう鬼とか天狗の類いは、飛鳥時代、奈良時代、平安時代に跋扈しているわけだけど、資料としては断片的な部分もありつつ、現在まで何となく地続きで繋がっている感じもあって、その怪しさは魅力だけど、よく分からないのも事実だ。
実は、ボクの「ファンタジィ事典」のアクセス解析を見ると、妙に天狗に人気が集まっている。八大天狗を全部、それなりの分量を載せているからだと思う。どれも概ね平均エンゲージメント時間が2分近くになっている。読まれているということだ。鬼関連もそういう傾向にある。Google検索でも上位に来るものが多い。だから、人気コンテンツと言えば、人気コンテンツ。そういう意味では、前鬼と後鬼もハネるといいのだけれど、こればっかりは何がバズるのかよく分からない。だから、あくまでもランダムに『幻想動物事典』を開いて、それを足掛かりに更新するスタイルである。
鬼とか天狗のイラストを描くというのも、やってみてもよいよなあ、と思っている。こっちは、別にランダムの世界線ではないので、自分で描きたいものを描く。コントロールできる。やってみようかなあ。我がウェブサイトで大人気の愛宕山太郎坊かなあ。どうだろう。ふふふのふ。
2024年9月12日 常に原典に当たることの重要性!?
『エノク書』を読んで、アザゼルとシェムハザの項目を更新したので、ついでに関連ワードとしてネフィリムとグリゴリを更新することにした。
そんな作業の過程で、過去の自分の記述の誤りに気付く。ネフィリムの身長が「3,000キュビット」と書いてある。正しくは「300キュビット」だ。この誤りの出典は何かなあと思ったら、どうも『幻想動物事典』だったようだ。確かに『幻想動物事典』のネフィリムの項にはそう書いてある。でも、まあ、原典を確認しなかったボクが悪い。本を鵜吞みにしてはいけない。
ちなみに1キュビットというのは肘の長さを基準にした単位で、時代によって若干、異なる。一般的には46センチメートルくらいとされている。それで行くと、300キュビットは約140メートルになる。もしも3,000キュビットだったら、1,400メートルの大男ということになる。それではさすがに大きすぎるだろう。人間の女性と天使の間に生まれて、成長したら1,400メートルになるなんて、とても想像できない。140メートルなら、まあ、まだ許容範囲か。
ちゃんと一次資料に当たることは、とても大事である。ついつい、ね。サボっちゃうというか。本に書いてあるからいいか、と裏取りしないで突き進むこともある。資料がなくて原典に当たれないことだってある。でも、今はオンライン上に比較的、いろんな資料がアップされているので、昔に比べれば、事実確認がしやすい。それってとても幸せなことだし、手を抜いてはいけない。
というわけで、しっかりと原典に当たって裏取りを進めつつ、ネフィリムとグリゴリを更新した日である。
2024年9月10日 古代エチオピア文字でも印字できる世界線
久々に休暇を取得して羽を伸ばす。と言っても、やることはいつもの日常だ。昨日に引き続き、『エノク書』を黙々と読む。昨日はアザゼルさんだったけど、本日はシェミハザさん。アザゼルは旧約聖書『レビ記』にも登場するので、そちらに主眼を置いて整理したが、シェミハザは『エノク書』がメインの悪魔なので、大真面目に『エノク書』を読む。
便利な世の中なので、古代エチオピア語のヴァージョンもウェブサイトに載っているし、英語でいくつかの写本を比較したものもある。グリゴリの指導者の名前も写本によってまちまちだ。そういうのも、ちゃんと追いかけられるのがいい時代。古代エチオピア語なんて、知らない文字なので、ボクにとってはもはや暗号の世界だ。でも、ちゃんとブラウザでも古代エチオピア文字が印字されちゃうんだよなあ。すごいよなあ。
以下、試しに古代エチオピア語の『エノク書』第6章を引用。シェミハザが仲間の天使たちを集めて、人間の娘を妻に娶ろうと相談しているシーンだ。
ወኮነ ፡ እምዘ ፡ በዝኁ ፡ ውሉደ ፡ ሰብእ ፡ በእማንቱ ፡ መዋእል ፡ ተወልደ ፡ ሎሙ ፡ አዋልድ ፡ ሠናያት ፡ ወላህያት ። ወርእዩ ፡ ኪያሆን ፡ መላእክት ፡ ውሉደ ፡ ሰማያት ፡ ወፈተውዎን ፡ ወይቤሉ ፡ በበይናቲሆሙ ፡ ንዑ ፡ ንኅረይ ፡ ለነ ፡ አንስተ ፡ እምውሉደ ፡ ሰብእ ፡ ወንለድ ፡ ለነ ፡ ውሉደ ። ወይቤሎሙ ፡ ስምያዛ ፡ ዘውእቱ ፡ መልአኮሙ ፡ እፈርህ ፡ ዮጊ ፡ ኢትፈቅዱ ፡ ይትገበር ፡ ዝንቱ ፡ ግብር ፡ ወእከውን ፡ አነ ፡ ባሕቲትየ ፡ ፈዳዪሃ ፡ ለዛቲ ፡ ኅጢአት ፡ ዐባይ ። ወአውሥኡ ፡ ሎቱ ፡ ኵሎሙ ፡ ወይቤሉ ፡ መሐላ ፡ ንምሐል ፡ ኵልነ ፡ ወንትዋገዝ ፡ በበይናቲነ ፡ ከመ ፡ ኢንሚጣ ፡ ለዛቲ ፡ ምክር ፡ ወንግበራ ፡ ለዛቲ ፡ ምክር ፡ ግብረ ። አሜሃ ፡ መሐሉ ፡ ኵሎሙ ፡ ኅቡረ ፡ ወአውገዙ ፡ ኵሎሙ ፡ በበይናቲሆሙ ፡ ቦቱ ፡ ወኮኑ ፡ ኵሎሙ ፡ ፪፻ ። ወወረዱ ፡ ውስተ ፡ አርዲስ ፡ ዝውእቱ ፡ ድማሑ ፡ ለደብረ ፡ አርሞን ፡ ወጸውዕዎ ፡ ለደብረ ፡ አርሞን ፡ እስመ ፡ መሐሉ ፡ ቦቱ ፡ ወአውገዙ ፡ በበይናቲሆሙ ። ወዝንቱ ፡ አስማቲሆሙ ፡ ለመላእክቲሆሙ ፡ ስምያዛ ፡ ዘውእቱ ፡ መልአኮሙ ፡ ኡራኪበራሜኤል ፡ አኪበኤል ፡ ጣሚኤል ፡ ራሙኤል ፡ ዳንኤል ፡ ኤዜቄኤል ፡ ሰራቁያል ፡ አሳኤል ፡ አርምርስ ፡ በጥረአል ፡ አናንኢ ፡ ዘቄቤ ፡ ሰምሳዌኤል ፡ ሰርተኤል ፡ ጡርኤል ፡ ዮምያኤል ፡ አራዝያል ። እሉ ፡ እሙንቱ ፡ ሀበይቶሙ ፡ ለ፪፻መላእክት ፡ ወባዕዳን ፡ ኵሉ ፡ ምስሌሆሙ ።
図書館で『聖書外典偽典』の第4巻を予約したので、ちゃんとした日本語訳で今度、読んでみようと思う。多分、解説も付されているんじゃないかなあ。どうだろう。補足や追記が必要になったら、そのタイミングで、また、アザゼルとシェミハザを更新しようと思う。
2024年9月9日 人間が堕落したのは全部アザゼルが悪い!!
昨日は中国語の古典文献をいろいろと飛び回って読んでいたが、本日のターゲットは聖書だ。しかも旧約聖書偽典の『エノク書』。ああだこうだと頭を悩ませている。
『幻想動物事典』(著:草野巧,新紀元社,1997年)をランダムに開いたら、「アザゼル」だったもんで、『エノク書』なんかを読んでいる。『エノク書』が大迫力の作品であることは、大学生のときに一度、読んだことがあるからよく分かっている。天使たちが人間の女性に恋をして、妻にしようと画策し、罰せられる物語だ。
天使たちの思惑とは裏腹に、どんどん地上がメチャクチャになっていく様がよく描けている。人間と天使の間に生まれる子供たちは成長して巨人になり、世界は食糧難に陥るし、人間たちは人間たちで教えた技術や知識を駆使して、堕落していく。それを見て、遂に神さまが激怒して、四大天使が征伐にやって来る。最後は神さまによる大洪水だ。そして、天使たちは荒野の穴に放り込まれて拘束される。
この辺を掘り下げていくと、きっと、同人誌的には面白いんだろうなあ、と思う。いろんな堕天使と天使が入り混じるので、各人の間でいろんな物語を発想しやすそうだ。ウェブサイト「ファンタジィ事典」でも、そういう創作の一助となるような解説をすればよいんだろうけれど、ボクの移り気な感じがよくなくて、すぐに別の妖怪に手を出してしまうんだよなあ。わはははー。
2024年9月8日 中国の文献を原典で!?
ここのところ、単純に『幻想動物事典』(著:草野巧,新紀元社,1997年)をランダムに開いて、たまたまそこに書いてある妖怪をピックアップしてウェブサイト「ファンタジィ事典」を更新するという作業を定期的にやっている。本日は中国の妖怪「枳首蛇(ジーショウショー)」だったので「中国はあんまり得意じゃないなあ」とかブツブツ呟きながら、更新作業に着手した。
中国の妖怪って、あんまりボクのフィールドではないので、まずは中国語のWikipediaを足掛かりに、そこに載っている原典を手あたり次第に当たって行くスタイルで調査をしてみた。いい時代で、概ね、Wikisourceに中国語の原典が載っている。該当箇所を探して、その部分を蒐集して、翻訳していく。比較的、中国語は漢字なので、意味は取りやすい。そうやって調べていくと、今度はいろんな中国語のウェブサイトが見つかるので、そこから派生して、またそこに記載のある新たな原典を探す。この繰り返しだ。
中国の作品って「こんなに強い英雄がいたんですよ」というエピソードではなくって、「こんなに素晴らしい人格者がいたんですよ」というエピソードが多いので、常々、面白いなあ、と思っている。今回の場合、孫叔敖という人物で、両方に頭のある蛇に遭遇して「ああ、自分はじきに死ぬのだ」と憂いながらも、自分以外の人が万が一、この蛇を目撃して死んでしまうのはよろしくないと、蛇を殺して、地面に埋める。
こうやって、自分の死を前にしながらも他人を思い遣れる孫叔敖は人徳がある。そういう仕上がりの物語になっている。中国らしさ全開でいいなあ、と思う。
そんなわけで、容易に原典に当たられる時代になって、素敵なことだなあと思うよね。
2024年9月7日 フラットヘッドを描いてみた。
オズ・シリーズの「フラットヘッド」を描いてみた。
フラットヘッドはボームのオズ・シリーズの14作目(つまりボームとしては最終巻)の『オズのグリンダ』に登場する不思議な一族だ。頭が平らで、脳みそを入れておく場所がなかったため、愚かだったという。オズの国をつくった妖精たちは、彼らを見て哀れに思い、缶に脳みそを詰めて彼らに与えた。こうして、彼らは人並みに考えられるようになった。
この缶入りの脳みそは他人から奪うことも可能なようで、1人のフラットヘッドが他の2人から缶を奪って賢くなったという。この男は策を講じて、常に自分が国のリーダーに選ばれるような制度をつくったのである。
……脳みそが缶に詰められていて持ち運びできるというのは、一体、どういうことなのだろうか。しかもそれを奪うことで賢くなれるというのはどういうことなのだろうか。所有権を得た人が、その脳みそのスペックを使えるということなのだろうか。いろんなことを考えてしまう。ボームって不思議な人だよなあ。
それにしても、ちょっと気持ちの悪い絵になってしまったなあ。まあ、ボクの思うフラットヘッド族の王のスー・ディクってこんな感じなので、いいか。
2024年9月6日 人類史で一番可愛い!?
ウェブニュースで「人類史で一番可愛い」というタイトルの記事があった。どうやら、山本美月さんがショートカットにしたらしい。記事元は西日本スポーツ。おそらくSNS上に「人類史で一番可愛いだろ」というコメントがあって、それを取り上げたのだろう。すごいタイトルだなあと思って、面白かったのでクリックして、どうでもいいニュースではあるものの、こうして取り上げてみている。
多分、こういうものの走りは「はしかん」だと思う。「1000年に1人の美女」としてピックアップされた。その後、「2000年に1人の美女」とか「4000年に1人の美女」とか……直近だと「2万人に1人の美女」とかが登場して、ドラゴンボールのようなインフレが発生していたわけだけど、ここに来て、ついに「人類史で一番」というパワーワードまで飛び出した。感慨深いなあ。もはやこれ以上を主張するなら、「哺乳類史」とか「生物史」、あるいは「地球史」みたいな人類を超えたところで議論するしかなくなってしまう。
こういう何千年とか何万年とかってなると、どうしてもケルト神話を思い出すボクである。『来寇の書』というのがあって、最初にアイルランドに入植したフィンタンが、その後、次々と転生を繰り返しながら、いろんな種族がアイルランドに入植しては滅びるのを語る物語である。こういうフィンタンみたいな人が、何世代にも渡っていろんな人々を見て、「ああ、何千人に1人の美女だなあ」と思うのかどうか。ついつい、そんなことを考えてしまう。てか、人間、たった80年程度しか生きないのに、何千年とか何万年の美女だとか、軽々しく評価するなよ、と思うよね。はっはっは。
2024年9月4日 いろんな異世界に行って戻ってきた男の記録!?
『異境備忘録』という怪しい書物がある。宮地水位なる人物が、天狗界や神仙界、幽明界など、さまざまな世界を行き来した記録である。そこには、悪魔界というのも出てくる。残念ながら(?)、宮地水位は悪魔界には行かなかったようだが、水位は実際に魔王一行が空を行列しているのを目撃したという。そのときに一緒にいた川丹先生(2000年以上生きた仙人!)に魔王たちのことを教えてもらったのだという。
悪魔界について書かれているのは『異境備忘録』の8章で、その書き出しがとても魅力的だ。
悪魔界へは一度の入りたる事なし。されども此界の魔王どもは見たる事あり。
要するに「悪魔界には一度も入ったことはないけど、この魔界で魔王たちを見たことはあるよ」というトンデモない書き出しである。しかも、少し後にはこんなことも書いてある。
余明治十三年七月十九日の夜に魔神行列して空を通行しけるを川丹先生と共に見て、右の名をも聞きてやがて書付けたり。
要するに「俺は明治13年7月19日の夜、魔神が列になって空を飛んでいったのを川丹先生と一緒に見て、名前も聞いたのですぐに記録したよ」というわけだ。
それによれば、悪魔界には12人の魔王がいて、その筆頭は造物大女王で、続いて無底海大陰女王、積陰月霊大王がいるらしい。それに続く形で、神野長運、野間閇息童、神野悪五郎月影、山本五郎左衛門百谷、焔野典左衛門、羽山道龍、北海悪左衛門、三本団左衛門、川部敵冥がいるという。
しかも、実は魔界は大昔に2つに分かれたらしく、造物大女王が治める魔界とは別の魔界は西端逆運魔王が治めているらしい。そして、他にも独立した魔界があって、前三鬼神、飯綱智羅天、後天殺鬼などといった魔王がいるらしい。
……と、まあ、トンデモな内容なわけだけれど、生々しくてとても面白い。
とは言え、この魔王たちが古い伝承に根差しているのかと言えば、おそらくそんなことはなくって、実際は宮地水位の創作ということになるのだろう。山本五郎左衛門と神野悪五郎が魔王として名前を連ねているところも、『稲生物怪録』を念頭においているのだろう。
ずぅっとひょーせんさんが「造物大女王」のイラストを描いていて、いつかはちゃんと解説したいなあと思っていたんだけど、昨今、何故だかXで山本五郎左衛門がフィーチャーされているので、重い腰を上げてまとめてみようかなあ、と思っている。でも、結局、出典元は『異境備忘録』しかないので、それ以上の情報はないわけで、『異境備忘録』に書いてあることをつらつらと書くしかないのであることよ。
2024年9月3日 マーライを描いてみた。
ベトナムの妖怪第1弾として「マーライ」を描いてみた。今後は徐々にベトナムの妖怪もイラスト化して認知度を上げていきたいと思っている。
さて、マーライは昼間は人間として暮らしていて、夜になると臓器とともに頭が抜け出し、空を飛ぶ。こういう首と臓器だけの妖怪と言えば、東南アジア各地にいて、たとえば、タイのガスーやインドネシアのペナンガラン、フィリピンのウンガウンガなどが知られている。どれも昼間は人間として暮らして、夜になると首と臓器が抜け出す。
他の首&臓器妖怪とマーライが大きく異なるのは、マーライの場合、直接、人間を襲わないとされている点だ。マーライは主に排泄物を狙うらしい。マーライに排泄物を食べられた人は腸の病気になり、やがて重篤化して死んでしまう。つまり、人間の排泄物を介して、マーライは人間に作用するわけである。
いずれはタイのガスーも描いてみたいなと思っている。結局、首と臓器という意味では同じデザインなんだけど、ガスーの場合、人間とガスーの悲恋みたいなものが展開されるので、妖艶な美女で描けば、少しは差異化できるのではないか。ふふふ。
2024年8月30日 磯女を描いてみた。
九州地方の妖怪「磯女」を描いてみた。
今回、こうして磯女を描いてみようと思い立ったのは、ずぅっとフィリピンの妖怪のマンララヨやクボット、グモン、マラカットなどの「髪の毛軍団」を描いてきたからだ。どうしてだか分からないが、フィリピンには、髪の毛で獲物を攻撃する類いの妖怪の一団がいて、とても恐れられている。
フィリピンの妖怪を解説するウェブサイト「アスワン・プロジェクト」では、マンララヨの項目の中に「日本にも似た妖怪がいる」という言及がある。おそらく、それは磯女のことだと思われる。磯女は海に棲んでいて、髪の毛で血を吸って獲物を殺してしまう。
イラストは鳥山石燕の「濡女」を参考にしている。なかなか絵はうまくならないが、毎回、何かに挑戦している。今回は濡れた髪の毛。これがなかなかうまく描けなくて、何度も何度も描き直した。ようやくそれっぽく描けたので、これで完成とした。む、難しい。
2024年8月26日 オズ・シリーズのジャック・パンプキンヘッドを描いてみた。
オズ・シリーズの「ジャック・パンプキンヘッド」を描いてみた。ジャック・パンプキンヘッドは『オズのふしぎな国』(1904年)に初登場で、少年チップが木材とカボチャでつくった人形だったが、魔法の粉で命を吹き込まれた。
面白いのは、頭のカボチャはすぐに腐ってしまうので、取り換える必要があるという点。彼は自ら畑でカボチャを育てていて、定期的に腐りかけの頭を交換する。頭の出来栄えによって賢さが左右される。
頭を取り換えてもアイデンティティが変わらないのなら、お前の主体は一体どこにあるのだ、と小一時間ほど問い質したくなる。こういう不思議さがライマン・フランク・ボームの魅力のひとつだ。
2024年8月22日 フィリピン妖怪第36弾「マラカット」
フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第36弾で「マラカット」を描いてみた。
マラカットはアスワンの一種で、昼間は人間として村の中で暮らしているが、夜になると毛むくじゃらの獣に変身する。いわばオオカミ人間みたいな存在だが、攻撃方法が独特で、長い毛で相手の首を絞め、鼻や口を塞いで窒息死させる。フィリピンのアスワンにはこういう類いのものが多い。マンララヨとかクボット、グモンなんかは、みんな、毛で獲物を攻撃する。
古来より、フィリピン人というのは、何らか「毛」に対して怖さを感じていたのだろうか。その感性は不思議な感じがする。日本でも、水辺だと髪の毛が足に絡まる感覚があって、ひやっとすることがある。だから、濡れ女なんかは髪の毛で相手を殺してしまうのかなあ、と想像する。都市伝説でも、プールで女の人の髪の毛に足をさらわれて溺れさせられるというのはちらほら見かける。
そんなわけで、オオカミ人間っぽくありつつ、髪の毛が長いという不思議なイラストを描いてみた。
2024年8月18日 庭に出て「ローズ」を描いてみる。
オズ・シリーズの「ローズ」を描いてみた。8作目の『オズのチクタク』(1914年)に登場したバラの一族で、バラ王国の王室庭園の温室で育てられている。植木鉢ごと移動する。ローズたちを支配するために、女王が誕生したが、彼女たちは女王に支配されることを拒み、王を求めて女王を追放してしまった。シャギー・マン(モジャボロ、ボサ男)は誰からも好かれる「愛の磁石」を彼女たちに使ってみたが、ローズたちはその美しい姿とは裏腹に心を持っていなかったため、効かなかった。
いつも絵を描くときには、インターネットで写真を探して、それを参考にしながら絵を描く。でも、妻のちぃ子がバラを育てているので、今回は庭先に出て、バラを観察しながら描いてみた。だから、比較的、リアルに描けた。本物を前に描くというのも大事なことだ。心がないという描写から、陰鬱な顔にしてみた次第。
2024年8月14日 クボットを描いてみた。
フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第35弾で「クボット」を描いてみた。もう気づけばフィリピン妖怪も第35弾になるんだなあ。我ながら、頑張っているなあ。
さて、クボットはフィリピンの吸血妖怪アスワンの一種で、長い髪の毛で獲物の首を絞め、鼻や口などの開口部に髪の毛を突っ込んで窒素させる。そして毛先から生命力を吸い取る。まさにフィリピンの髪の毛妖怪軍団の第3弾だ。
第1弾がマンララヨ、第2弾がグモン、そして第3弾がクボット。クボットの特徴は、髪の毛を広げて空を飛ぶこともできる点だ。だから、髪の毛をバサーッと広げて、空を飛んでいるシーンを描いてみた。後はマラカットを描けば、フィリピンの髪の毛妖怪軍団コンプリートだ。頑張るぞー。
それにしても、筆がノっている。タブレットお絵描きの場合には、ペンタブがノっているというのか!?
2024年8月10日 風船人間。
飽きもせず、そして懲りもせずにオズ・シリーズを描いている。今回は「ルーン」である。オズ・シリーズに登場する風船人間である。バ・ルーンという王さまが統治しているので、ルーンというのは、英語のバルーンに由来することが分かる。
面白いことに、ルーンたちはすぐにパンクする。尖ったものにぶつかるとあっという間にパンクして、ぺっちゃんこになってしまう。そうなると、仲間たちがまるで自転車のタイヤのパンクを直すみたいに、傷口を修理して、空気を入れて、もう一度、膨らませる。そうやって、また元の姿に戻る。そんなわけの分からない種族がいるのか。そう思わせてしまうところが、ライマン・フランク・ボームの凄みである。
イラストは、あんまりうまく描けなかった。もっと弾んだ感じに描いた方が、ルーン族っぽくてよかったかもしれないし、空気が膨らんで中から押している感じも、もっと研究したらちゃんと再現できたかもしれない。でも、途中で「まあ、いいか」と思ってしまった。圧倒的に鍛錬が足りない。でも、何だかこんなバルーン人形がどこかの店先でふわふわと浮かんでいたような気もして、だったらまあ、風船っぽさもあるのだろう、と納得して、これもまた良しと受け容れることにした。受け容れて、こうしてアップして、公開している。
オズ・シリーズを描くなら、まずはカカシとブリキのきこりと臆病ライオンを描け、という声も聞こえてくるような気がする。でも、みんなが知っているものを描いても、あんまり意味がない。それぞれの頭の中に、それぞれの思うカカシがいて、きこりがいて、ライオンがいる。それはそれでもういいじゃん、と思う。こういうルーンみたいなやつは知らない人が多くって、「あ、そんな奴がいるんすか?」と思って興味を持ってもらえればよい。そう思って下手なりに頑張って描いている。
2024年8月2日 ペンタブだけど、筆がノったぜ!!
フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクトの第34弾で、「グモン」を描いてみた。毛の塊が地面を這っていて、毛を伸ばして獲物の人間を絞めたり、口や鼻などに毛を突っ込んで窒息させて殺してしまう恐ろしい妖怪だ。
7月22日の髪の毛で人間を襲うフィリピンの妖怪たち!?の記事でも書いたが、フィリピンは髪の毛の妖怪がたくさんいる。マンララヨは描いたが、順次、フィリピンの髪の毛妖怪を描いてみたいなと思って、まずはグモンを描いてみた。
筆がノッたという表現がCGにも通用するのか分からないけれど、まさにそんな感覚だ。髪の毛を描くのが苦手だったし、這っている女の人の絵も構図としては難しいと思っていたんだけど、するすると描けた。イメージどおりに描けた。もしかしたら、1月から毎週、毎週、2枚以上の絵を描いてきた成果が実ったのかもしれない。結構、気持ち悪くて、まさに妖怪という感じの絵だ。わはははー。
2024年7月28日 ベトナムの妖怪を緩やかに更新中。
MA QUỶ DÂN GIAN KÝはベトナム語のウェブサイトだが、今は機械翻訳が優秀なので、熱意さえあれば何とか解読はできる。というわけで、ベトナムの妖怪を2体更新してみた。マーヴーザーイとチャオドイノンメだ。
マーヴーザーイは長い乳房を持つ女性の妖怪で、赤ん坊に乳をやらなければならないという執念にとりつかれていて、結果、赤ん坊を窒息させてしまう。一方で、若い男性を誑かす存在でもある。長い乳房を持つ点では、インドネシアのウェウェゴンベルに似ている。ウェウェゴンベルは赤ん坊に対しては優しいが、赤ん坊をさらってしまう悪癖がある。マーヴーザーイはヤシの木やココナッツの木などの高い木の上に棲んでいるが、ウェウェゴンベルもパームヤシの木の上に棲んでいる。一方、アルゼンチンやボリビアのサッパン・スックーンも長い乳房を持つ妖怪で、どこに棲んでいるのかは誰も知らないが、どこからかやってきて、仕事中の母親に代わって赤ん坊の世話をしてくれる。けれども、仕事をサボる男性を連れ去るという悪さもする。何となくこの三者は似ている感覚がある。
チリやアルゼンチンの首だけで空を飛ぶチョンチョンが、タイのグラスーやフィリピンのマナナンガル、ベトナムのマーライに似ているので、暮らしとか文化の中に、何らか同じような要素があるのかもしれないよなあ。
チャオドイノンメは破れた編み笠をかぶったイヌの妖怪で、まさに「長く生きた獣は霊力を得て妖怪と化す」という中国や日本の妖狐や猫股などのイメージに近い。面白いのは、ベトナムではネコやアヒルやニワトリなどの獣も妖怪と化す中で、チャオドイノンメが彼らのリーダー格であるという点。そして、月夜に屋根の上に登って人間の魂を吸う点だ。非常に幻想的。
2024年7月25日 パティン・ナ・パクパカンを描いてみた。
フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第33弾で「パティン・ナ・パクパカン」を描いてみた。ビコル地方の『イバロン叙事詩』の中で、英雄ハンディオンと仲間たちに襲い掛かった空飛ぶサメの一団。上空を旋回して次々と急襲してくる。
サメと言えば、灰色のイメージがあるが、ボクはいつもサメを描くときには灰緑色で塗るのがしっくり来る。だから、別に神話・伝承でパティン・ナ・パクパカンが「緑色」と記述されているわけではないのでご用心(笑)。
本当は上空を旋回しているシーンを描いた方が伝承に即している。でも、それだと飛んでいるのか泳いでいるのかが分かりにくくなってしまったので、飛び出している瞬間の絵にしてみた。技術力があれば、上空を旋回して獲物を狙っているような絵も描けるのかもしれない。そもそも、背景を入れたら楽勝なんだよね。背景を入れないで真っ白の正方形の中に妖怪を描くというテンプレートに決めてしまったので、それで結構、苦しめられているところはある。妖怪画と言えばメガテンの金子一馬氏のイメージがあって、どうしてもそのイメージから脱却できない。
2024年7月22日 髪の毛で人間を襲うフィリピンの妖怪たち!?
土日にフィリピン伝承の調査をしていた。意外と時間がかかって、土日にはファンタジィ事典の更新までは辿り着けなかった。……というのも、髪の毛で人間を襲うという吸血鬼マンララヨについて調べていたときに、アスワン・プロジェクトの記事の中で、マンララヨが日本の妖怪に似ている指摘されていた。おそらく、磯女を念頭に置いた記述だと思われる。磯女も髪の毛で人間を血を吸う。そして、カガヤン・デ・オロの人々は、日本軍を怖がらせるためにマンララヨの伝承を広めたと説明されていた。
でも、調べてみると、意外とフィリピン全土に髪の毛で人間を襲う妖怪がたくさん、登場する。たとえば、グモンなんかは毛の塊そのものの妖怪で、毛の塊の中には女性の妖怪がいるとされているが、毛がメインのヴィジュアルになっている。オオカミ人間みたいな妖怪もいる。マラカットと言って、夜になると毛むくじゃらの獣になって、涎を垂らしながら襲ってくる。これも、長い毛で攻撃してくるわけである。
「アスワン・クロニクル2」というフィリピン映画にはクボットが登場するが、これなんかは、まさにマラカットとかグモンとかマンララヨとかのイメージが全部、ごちゃ混ぜになった感じである。毛の塊から手足がはみ出したような妖怪が地面にいて、獲物を見つけると涎を垂らした獣のように四足歩行になる。そして、髪の毛で獲物を包み込んで窒息死させてしまう。髪の毛を大きく広げて、空中を移動する。もう、フィリピンの髪の毛妖怪を全部、混ぜたような能力とヴィジュアルである。ボクのアスワンのイメージが凝縮されている。
2024年7月20日 プチブロック「幻獣シリーズ」第8弾は「イフリート」?!
ダイソーのプチブロックの「幻獣シリーズ」第8弾はイフリートだ。これもリヴァイアサンのときと同様、あんまり図像化されていないものなので、変なチョイスだな、と思う。
イフリートは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とか『ファイナルファンタジー』とか、ロールプレイングゲームの世界ではある程度、図像化されていて、デザインもあるので、形にはしやすい。でも、本来のアラビア伝承や、よく出典として引き合いに出される『千一夜物語』では、必ずしもその定義や役割は明確ではない。ジンの一種で、ジンのことを指して用いられる。『千一夜物語』の中では、ときにはジンと呼んだり、ときにはイフリートと呼んだりしていて、恐ろしいジンをイメージするときにはイフリートの語が用いられているような印象だ。
このデザインは角が生えているので、その点では伝承のイフリートのイメージには近いかもしれない。ただ、肌の色がオレンジ色になっていたり、赤い透明ブロックが用いられているのは、おそらく火の魔人とされた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の影響が反映されている。アラビアのイフリートの場合、肌の色は茶色だったり、緑色だったり、黒だったりする。オレンジというのは、あんまりない。
ブロックとしては、二足歩行でちゃんと立てるし、手を広げて威嚇したようなポーズがつくれるのがいい。
……というわけで、今回、第5弾から第8弾までのプチブロック「幻獣シリーズ」をつくってみた。今後も定期的に発売されていくといいなあ。乞うご期待。