前鬼(ぜんき)

分 類日本伝承
名 称 前鬼(ぜんき)【日本語】
容 姿赤鬼。鉄斧を持つ。
特 徴後鬼(ごき)という妻を持つ。役小角に調伏され、弟子入りした。
出 典

役小角につき従う夫婦の鬼!?

前鬼(ぜんき)は日本伝承に登場する男性の後鬼(ごき)という女性の鬼を妻に、5匹の鬼の子供がいた。前鬼は赤鬼で、後鬼は青鬼だとされる。前鬼は鉄斧を持った姿で描かれることが多い。善童鬼とも呼ばれていて、現在の奈良県吉野郡下北山村の出身だとされる。

夫婦で生駒山(奈良県と大阪府の堺)に棲みついていて、人里に降りて来ては子供をさらうなどの悪さをしていた。これを知った修験道の開祖の役小角(えんのおづぬ)は、5匹の鬼の子供のうち、末子をさらうと鉄釜の中に隠した。鬼の夫婦は鳴きながら、必死になって子供を探し回った。そこで、役小角は夫婦を捕まえると「子供を奪われた親の気持ちが分かったか」と戒めた。2匹の鬼は改心し、以降、役小角に従うようになったという。役小角とともに山を歩き回り、その身の回りの世話をし、警護を務めた。役小角は前鬼に義覚(あるいは義学)、後鬼に義玄(あるいは義賢)という名前を与えたとされる。

役小角によって2匹の鬼が捕らえられた場所は「鬼取山」と言って、現在の生駒市鬼取町にある。夫婦は大峰山の麓(現在の下北山村前鬼)に移り住んだとされ、大峰山は修験道の霊峰となった。この地には夫婦の墓がある。また、5匹の鬼の子供たちはそれぞれ、「行者坊」「森本坊」「中之坊」「小仲坊」「不動坊」という屋号で修験道の修行者のための宿坊を開いたとされる。実際に、五鬼継(ごきつぐ)、五鬼熊(ごきくま)、五鬼上(ごきじょう)、五鬼助(ごきじょ)、五鬼童(ごきどう)という家が代々、宿坊を開いていたが、明治以降、次々と廃業となり、現在では五鬼助家のみが「小仲坊」を引き継いでいる。

ちなみに、前鬼はその後、大峰山前鬼坊という天狗になったとされる。『天狗経』に書かれている四十八天狗に名前が挙げられており、八天狗にも名前を連ねている。

《参考文献》

Last update: 2024/09/14

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