2024年10月13日 シェムハザを描いてみた。
堕天使の「シェムハザ」を描いてみた。
『エノク書』(前2~前1世紀)によれば、彼は地上の見張りを任される天使の一団「ウォッチャーズ(グリゴリ)」の指導者であり、200人の天使を率いて地上にやってきて、それぞれが人間の女性を妻に娶って、さまざまな知識を人間に授けたとされる。これによって地上は荒廃し、大天使ミカエルによって討伐された。また、この出来事が原因で、神は大洪水を引き起こして地上を洗い流してしまったとされる。
シェムハザに関する姿・形について言及する書物はなく、また、それっぽい図もないので、今回ばかりは、かなり勝手なイメージでイラストに描き起こしている。服装だけは当時のキリスト教の絵画に描かれる天使の服装を元にしているが、それ以外は完全にオリジナルだ。天使たちがそれぞれ女性を娶って子をなそうと囁き合う中、シェムハザは「俺だけが罰せられることはないだろうな。みんなで一緒にやるんだぞ! 裏切るなよ」的なことを言っているので、かなり神経質なやつだと思っている。だから、そういう顔にしてみた(笑)。
2024年10月5日 「愛宕山太郎坊」を描いてみた。
愛宕山太郎坊を描いてみた。京都の愛宕山に棲む。日本全国の天狗たちの総大将だ。天狗と言えば、鼻高天狗をイメージする人も多くて、総大将も当然、鼻高天狗だと勝手に認識している人も多いかもしれない。でも、由緒正しき古来からの天狗と言うのは、実は烏天狗の方である。鼻高天狗を最初に描いたのは、室町時代の狩野元信だと言われている。鞍馬山僧正坊を描いたときに、現在のイメージのような鼻の高い天狗を描いたのが始まりだと言われている。だから、漠然と、次は鞍馬山僧正坊を描こうかなあ、などと考えている。
今回、結構、描き直しをした。小道具も多くて、結構、立体感のあるいい感じの絵になったと思う。自信作ではある。まあ、よくよく眺めるとあっちこっちデッサンの乱れはあるんだけど、これだけバチっと描くと、意外と誤魔化されてしまうかもしれない。
2024年10月1日 グラス・キャットを描いてみた。
オズ・シリーズに登場する「グラス・キャット」を描いてみた。
グラス・キャットはライマン・フランク・ボームの『オズのパッチワーク娘』(1913年)で初登場したキャラクター。魔法の粉で命を得たガラス製の猫だ。疲れ知らずで、オズの国中を走り回って情報を収集している。ピンク色の粒々の脳みそが自慢で、よくこの脳みそがくるくると動いているところを見せつけて、自慢してくる。高慢ちきなやつである。
ツンとしたおしゃまな感じは表現できたが、正直、ガラスの素材感はうまく描けなかった。どうやればガラスっぽくなるんだろうなあ。難しいなあ。
2024年9月29日 日本酒を片手に
今日は今日とて、大百足と七歩蛇を更新。日本の妖怪が続いている。うーん。苦しい(笑)。七歩蛇は『伽婢子』(1666年)に載っているので、ちょうど『東洋文庫 480 伽婢子 2』(著:浅井了意,校訂:江本裕,平凡社,1988年)で補完できた。大百足の方は、「俵藤太の百足退治」みたいな昔話の断片しかないので、ここはもう少しフォローが必要かもしれないなあ。そもそも御伽草子系のものって、書籍化されているのかなあ。
いずれにしても、河津酒造の日本酒「七歩蛇」を飲みながら、七歩蛇の項目をまとめるという優雅なボクであることよ。
2024年9月29日 一次資料を求めて外界に繰り出す!?
ランダム更新が、ちょうど十二様とか大人(おおひと)とか、ちょっと資料の少ない正体不明の妖怪が当たってしまったので、苦戦していた。でも、まあ、そういう妖怪から逃げないで真正面から取り組むのも、ときには必要だと思うので、まあ、よいか。
最近、日本の妖怪を更新する機会が増えた。『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)をベースにランダムに更新しているから、結果として、そうなっている。でも、今まで、日本の妖怪は勝手に敬遠していたので、資料の持ち合わせが圧倒的に少なくて、新たにいろいろと仕入れなきゃいけなくなっている。浅井了意の『伽婢子』(1666年)、『狂歌百物語』(1853年)なんかをせっせと仕入れて、読んでいる。だから、出費が大変だ。わっはっは。
意外なことに、Wikipediaを確認していると、日本の妖怪で、必ずしも一次資料に当たっていない雰囲気の項目があったりする。出典が村上健司だったり、草野巧だったりする。どちらの著者も一次資料の出典をちゃんと書いてくれている傾向にあるのだから、直接、それを当たって書けばいいのに、と思ったりするが、結局、一次資料に当たるのは面倒だからか、村上健司が言っているとか、草野巧がそう書いているという文章になっている。だったら、ちょっと一次資料に当たってみるか。そんな風に考えて、最近、極力、一次資料を求めて、外界に繰り出している感じ。
2024年9月27日 チャオドイノンメを描いてみた。
ようやく念願のベトナムの妖怪にも着手している。第1弾が首だけお化けの「マーライ」で、第2弾として「チャオドイノンメ」を描いてみた。ベトナムでは長生きしたイヌはやがて霊力を得て、妖怪になるようだ。さらに長生きして霊力を得るためには血が必要で、周辺の家畜を襲う。ときには人間も襲う。屋根の上にチャオドイノンメが現れたら、その家の人間の魂が吸われている。やがて家人は死に至る。
面白いのは、チャオドイノンメが小動物の妖怪たちの親玉ということだ。ネコやフクロウ、アヒル、ニワトリなどの妖怪たちを率いて、屋根の上で作戦会議をしているらしい。
2024年9月19日 プゴットを描いてみた
世の中、何が起こるか分からない。本日はフィリピン妖怪の第37弾で「プゴット」を描いてみたわけだけど、Xで珍しくバズっている。吃驚仰天。
まあ、そもそものバズるの定義がよく分からないし、バズるほどのアクセスでもないんだけど、でも、少なくとも、今までは平均でインプレッションが大体、150~200回くらいで、うまく絵が描けたなあと思っていると500回に届くくらいのときがあった。ところが、今回はあっという間に2000回を超えた。しかも、フォロワーでもないし、今まで絡んだことのない人たちがリポストしたり、いいねを押したりしている。要するに、妖怪界隈ではない人たちの目に触れたということになる。こんな恐ろしい姿なのに「下着泥棒」というところがハネた理由なのかもしれない。うーん。
正直、絵としてはうまく描けなかった。何度か描き直してはみたんだけど、どう直しても、結局、立体感がちょっとだけ足らなくって、色味も淡くって、イマイチだなあ、と思っていた。何ならゼロから描き直すことにして、投稿そのものをやめて、別の絵に差し替えようかと思っていたくらいだ。それなのに、投稿してみたら、案外、バズったものだから、驚いている。何がウケるのかは分からないものだなあ。
2024年9月17日 日本の妖怪には少しだけ苦手意識がある
ウェブサイト「ファンタジィ事典」、粛々と更新作業を進めている。15日には「大入道」と「遣ろか水」、16日には「ブラーク」を更新して、本日は「人面瘡」と「二口女」を更新した。『幻想動物事典』をランダムに開き、そこに載っている妖怪を問答無用に更新するスタイルに切り替えて運用しているが、どの妖怪を取り扱うかの取捨選択のプロセスで悩まなくなって、いい感じ、いいペースで更新ができている。
『幻想動物事典』は意外と日本の妖怪が多いのが難点だ。ボクは西洋の妖怪から入った口なので、あんまり日本の妖怪は専門ではない。だから、日本の妖怪を更新するときには内心ではドキドキしてしまう。それこそ、日本の妖怪だったらほかに得意な人がいっぱいいるし、当然、ボクたちは日本人なので、日本の妖怪を対象に調査・研究、あるいは創作している人はたくさんいる。ある種のレッドオーシャンだ。激戦区に切り込んでいく怖さはある。だから、あんまり独自の路線にはせずに、たんたんと事実のみを書くように心掛けている。
ただ、日本の妖怪も、ちゃんと勉強するとそれなりの面白さはある。たとえば、昔話の「食わず女房」と「二口女」は、どうも出自が異なるようだとか、二口女は実は人面瘡の系列ではないかとか、深堀するとそういう議論があって、資料を読んでいて、ちょっとニヤニヤしてしまう。あるいは「大入道」は山の怪なので、ブロッケン現象と結び付けて議論されているところもあって、そういうのも、ああ、なるほどな、と思う。『狂歌百物語』の大入道の画なんて、真っ黒い影で、確かにブロッケン現象だと言われれば、そうかもしれないと思わせられる。
ボクはそこまで踏み込んで議論できるほど、情報を持っていないので、ちょっと触れる程度で逃げてしまうんだけど、まあ、そのうち、時間ができたら、日本の妖怪を深堀ってみても面白いかもしれないなあ。
2024年9月15日 ヤマノケを描いてみた
9月11日の記事「トイレの花子さんを描いてみた」でも宣言したとおり、今後、洒落怖系の妖怪の絵を描いていくぞ、という決意を固めたわけだが、早速、ヤマノケを描いてみた。
ヤマノケは、2ちゃんねるのオカルト板「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?(洒落怖)」に2007年2月に投稿された怪談だ。車中泊とは言え、山の中でこんな怪物に遭遇したら、そりゃあ、怖いよね。しかも女性にとり憑いて、憑かれた女性は気が触れてしまうわけだから、メチャクチャ、怖い。
1本足という特徴なんかは、山の怪に共通するところなので、そういうイメージが踏襲されているんだと思う。胸に顔がついているのは、中国の刑天とかインドのカバンダ、エティオピアのアケパロスがいる。そういうイメージもあるのかもしれない。日本だと胴面(ドウノツラ)という妖怪画も知られる。でも、1本足で白っぽいというのも相俟って、ブキミな感じの妖怪だなと思う。
2024年9月14日 鬼とか天狗とか。
「日々の雑記」が1日空いてしまった。最近、締め切りの仕事をたくさん抱えていて、正直、日常がワチャワチャしている。ウェブサイト「ファンタジィ事典」も連投できず。まあ、そういう日もある。
本日は前鬼と後鬼を更新。昨日の分と今日の分……というわけでもないが、一応、2項目を更新だ。鬼とか天狗って、王道と言えば王道だけど、実は難しい。こういう鬼とか天狗の類いは、飛鳥時代、奈良時代、平安時代に跋扈しているわけだけど、資料としては断片的な部分もありつつ、現在まで何となく地続きで繋がっている感じもあって、その怪しさは魅力だけど、よく分からないのも事実だ。
実は、ボクの「ファンタジィ事典」のアクセス解析を見ると、妙に天狗に人気が集まっている。八大天狗を全部、それなりの分量を載せているからだと思う。どれも概ね平均エンゲージメント時間が2分近くになっている。読まれているということだ。鬼関連もそういう傾向にある。Google検索でも上位に来るものが多い。だから、人気コンテンツと言えば、人気コンテンツ。そういう意味では、前鬼と後鬼もハネるといいのだけれど、こればっかりは何がバズるのかよく分からない。だから、あくまでもランダムに『幻想動物事典』を開いて、それを足掛かりに更新するスタイルである。
鬼とか天狗のイラストを描くというのも、やってみてもよいよなあ、と思っている。こっちは、別にランダムの世界線ではないので、自分で描きたいものを描く。コントロールできる。やってみようかなあ。我がウェブサイトで大人気の愛宕山太郎坊かなあ。どうだろう。ふふふのふ。
2024年9月12日 常に原典に当たることの重要性!?
『エノク書』を読んで、アザゼルとシェムハザの項目を更新したので、ついでに関連ワードとしてネフィリムとグリゴリを更新することにした。
そんな作業の過程で、過去の自分の記述の誤りに気付く。ネフィリムの身長が「3,000キュビット」と書いてある。正しくは「300キュビット」だ。この誤りの出典は何かなあと思ったら、どうも『幻想動物事典』だったようだ。確かに『幻想動物事典』のネフィリムの項にはそう書いてある。でも、まあ、原典を確認しなかったボクが悪い。本を鵜吞みにしてはいけない。
ちなみに1キュビットというのは肘の長さを基準にした単位で、時代によって若干、異なる。一般的には46センチメートルくらいとされている。それで行くと、300キュビットは約140メートルになる。もしも3,000キュビットだったら、1,400メートルの大男ということになる。それではさすがに大きすぎるだろう。人間の女性と天使の間に生まれて、成長したら1,400メートルになるなんて、とても想像できない。140メートルなら、まあ、まだ許容範囲か。
ちゃんと一次資料に当たることは、とても大事である。ついつい、ね。サボっちゃうというか。本に書いてあるからいいか、と裏取りしないで突き進むこともある。資料がなくて原典に当たれないことだってある。でも、今はオンライン上に比較的、いろんな資料がアップされているので、昔に比べれば、事実確認がしやすい。それってとても幸せなことだし、手を抜いてはいけない。
というわけで、しっかりと原典に当たって裏取りを進めつつ、ネフィリムとグリゴリを更新した日である。
2024年9月10日 古代エチオピア文字でも印字できる世界線
久々に休暇を取得して羽を伸ばす。と言っても、やることはいつもの日常だ。昨日に引き続き、『エノク書』を黙々と読む。昨日はアザゼルさんだったけど、本日はシェミハザさん。アザゼルは旧約聖書『レビ記』にも登場するので、そちらに主眼を置いて整理したが、シェミハザは『エノク書』がメインの悪魔なので、大真面目に『エノク書』を読む。
便利な世の中なので、古代エチオピア語のヴァージョンもウェブサイトに載っているし、英語でいくつかの写本を比較したものもある。グリゴリの指導者の名前も写本によってまちまちだ。そういうのも、ちゃんと追いかけられるのがいい時代。古代エチオピア語なんて、知らない文字なので、ボクにとってはもはや暗号の世界だ。でも、ちゃんとブラウザでも古代エチオピア文字が印字されちゃうんだよなあ。すごいよなあ。
以下、試しに古代エチオピア語の『エノク書』第6章を引用。シェミハザが仲間の天使たちを集めて、人間の娘を妻に娶ろうと相談しているシーンだ。
ወኮነ ፡ እምዘ ፡ በዝኁ ፡ ውሉደ ፡ ሰብእ ፡ በእማንቱ ፡ መዋእል ፡ ተወልደ ፡ ሎሙ ፡ አዋልድ ፡ ሠናያት ፡ ወላህያት ። ወርእዩ ፡ ኪያሆን ፡ መላእክት ፡ ውሉደ ፡ ሰማያት ፡ ወፈተውዎን ፡ ወይቤሉ ፡ በበይናቲሆሙ ፡ ንዑ ፡ ንኅረይ ፡ ለነ ፡ አንስተ ፡ እምውሉደ ፡ ሰብእ ፡ ወንለድ ፡ ለነ ፡ ውሉደ ። ወይቤሎሙ ፡ ስምያዛ ፡ ዘውእቱ ፡ መልአኮሙ ፡ እፈርህ ፡ ዮጊ ፡ ኢትፈቅዱ ፡ ይትገበር ፡ ዝንቱ ፡ ግብር ፡ ወእከውን ፡ አነ ፡ ባሕቲትየ ፡ ፈዳዪሃ ፡ ለዛቲ ፡ ኅጢአት ፡ ዐባይ ። ወአውሥኡ ፡ ሎቱ ፡ ኵሎሙ ፡ ወይቤሉ ፡ መሐላ ፡ ንምሐል ፡ ኵልነ ፡ ወንትዋገዝ ፡ በበይናቲነ ፡ ከመ ፡ ኢንሚጣ ፡ ለዛቲ ፡ ምክር ፡ ወንግበራ ፡ ለዛቲ ፡ ምክር ፡ ግብረ ። አሜሃ ፡ መሐሉ ፡ ኵሎሙ ፡ ኅቡረ ፡ ወአውገዙ ፡ ኵሎሙ ፡ በበይናቲሆሙ ፡ ቦቱ ፡ ወኮኑ ፡ ኵሎሙ ፡ ፪፻ ። ወወረዱ ፡ ውስተ ፡ አርዲስ ፡ ዝውእቱ ፡ ድማሑ ፡ ለደብረ ፡ አርሞን ፡ ወጸውዕዎ ፡ ለደብረ ፡ አርሞን ፡ እስመ ፡ መሐሉ ፡ ቦቱ ፡ ወአውገዙ ፡ በበይናቲሆሙ ። ወዝንቱ ፡ አስማቲሆሙ ፡ ለመላእክቲሆሙ ፡ ስምያዛ ፡ ዘውእቱ ፡ መልአኮሙ ፡ ኡራኪበራሜኤል ፡ አኪበኤል ፡ ጣሚኤል ፡ ራሙኤል ፡ ዳንኤል ፡ ኤዜቄኤል ፡ ሰራቁያል ፡ አሳኤል ፡ አርምርስ ፡ በጥረአል ፡ አናንኢ ፡ ዘቄቤ ፡ ሰምሳዌኤል ፡ ሰርተኤል ፡ ጡርኤል ፡ ዮምያኤል ፡ አራዝያል ። እሉ ፡ እሙንቱ ፡ ሀበይቶሙ ፡ ለ፪፻መላእክት ፡ ወባዕዳን ፡ ኵሉ ፡ ምስሌሆሙ ።
図書館で『聖書外典偽典』の第4巻を予約したので、ちゃんとした日本語訳で今度、読んでみようと思う。多分、解説も付されているんじゃないかなあ。どうだろう。補足や追記が必要になったら、そのタイミングで、また、アザゼルとシェミハザを更新しようと思う。
2024年9月9日 人間が堕落したのは全部アザゼルが悪い!!
昨日は中国語の古典文献をいろいろと飛び回って読んでいたが、本日のターゲットは聖書だ。しかも旧約聖書偽典の『エノク書』。ああだこうだと頭を悩ませている。
『幻想動物事典』(著:草野巧,新紀元社,1997年)をランダムに開いたら、「アザゼル」だったもんで、『エノク書』なんかを読んでいる。『エノク書』が大迫力の作品であることは、大学生のときに一度、読んだことがあるからよく分かっている。天使たちが人間の女性に恋をして、妻にしようと画策し、罰せられる物語だ。
天使たちの思惑とは裏腹に、どんどん地上がメチャクチャになっていく様がよく描けている。人間と天使の間に生まれる子供たちは成長して巨人になり、世界は食糧難に陥るし、人間たちは人間たちで教えた技術や知識を駆使して、堕落していく。それを見て、遂に神さまが激怒して、四大天使が征伐にやって来る。最後は神さまによる大洪水だ。そして、天使たちは荒野の穴に放り込まれて拘束される。
この辺を掘り下げていくと、きっと、同人誌的には面白いんだろうなあ、と思う。いろんな堕天使と天使が入り混じるので、各人の間でいろんな物語を発想しやすそうだ。ウェブサイト「ファンタジィ事典」でも、そういう創作の一助となるような解説をすればよいんだろうけれど、ボクの移り気な感じがよくなくて、すぐに別の妖怪に手を出してしまうんだよなあ。わはははー。
2024年9月8日 中国の文献を原典で!?
ここのところ、単純に『幻想動物事典』(著:草野巧,新紀元社,1997年)をランダムに開いて、たまたまそこに書いてある妖怪をピックアップしてウェブサイト「ファンタジィ事典」を更新するという作業を定期的にやっている。本日は中国の妖怪「枳首蛇(ジーショウショー)」だったので「中国はあんまり得意じゃないなあ」とかブツブツ呟きながら、更新作業に着手した。
中国の妖怪って、あんまりボクのフィールドではないので、まずは中国語のWikipediaを足掛かりに、そこに載っている原典を手あたり次第に当たって行くスタイルで調査をしてみた。いい時代で、概ね、Wikisourceに中国語の原典が載っている。該当箇所を探して、その部分を蒐集して、翻訳していく。比較的、中国語は漢字なので、意味は取りやすい。そうやって調べていくと、今度はいろんな中国語のウェブサイトが見つかるので、そこから派生して、またそこに記載のある新たな原典を探す。この繰り返しだ。
中国の作品って「こんなに強い英雄がいたんですよ」というエピソードではなくって、「こんなに素晴らしい人格者がいたんですよ」というエピソードが多いので、常々、面白いなあ、と思っている。今回の場合、孫叔敖という人物で、両方に頭のある蛇に遭遇して「ああ、自分はじきに死ぬのだ」と憂いながらも、自分以外の人が万が一、この蛇を目撃して死んでしまうのはよろしくないと、蛇を殺して、地面に埋める。
こうやって、自分の死を前にしながらも他人を思い遣れる孫叔敖は人徳がある。そういう仕上がりの物語になっている。中国らしさ全開でいいなあ、と思う。
そんなわけで、容易に原典に当たられる時代になって、素敵なことだなあと思うよね。
2024年9月7日 フラットヘッドを描いてみた。
オズ・シリーズの「フラットヘッド」を描いてみた。
フラットヘッドはボームのオズ・シリーズの14作目(つまりボームとしては最終巻)の『オズのグリンダ』に登場する不思議な一族だ。頭が平らで、脳みそを入れておく場所がなかったため、愚かだったという。オズの国をつくった妖精たちは、彼らを見て哀れに思い、缶に脳みそを詰めて彼らに与えた。こうして、彼らは人並みに考えられるようになった。
この缶入りの脳みそは他人から奪うことも可能なようで、1人のフラットヘッドが他の2人から缶を奪って賢くなったという。この男は策を講じて、常に自分が国のリーダーに選ばれるような制度をつくったのである。
……脳みそが缶に詰められていて持ち運びできるというのは、一体、どういうことなのだろうか。しかもそれを奪うことで賢くなれるというのはどういうことなのだろうか。所有権を得た人が、その脳みそのスペックを使えるということなのだろうか。いろんなことを考えてしまう。ボームって不思議な人だよなあ。
それにしても、ちょっと気持ちの悪い絵になってしまったなあ。まあ、ボクの思うフラットヘッド族の王のスー・ディクってこんな感じなので、いいか。
2024年9月6日 人類史で一番可愛い!?
ウェブニュースで「人類史で一番可愛い」というタイトルの記事があった。どうやら、山本美月さんがショートカットにしたらしい。記事元は西日本スポーツ。おそらくSNS上に「人類史で一番可愛いだろ」というコメントがあって、それを取り上げたのだろう。すごいタイトルだなあと思って、面白かったのでクリックして、どうでもいいニュースではあるものの、こうして取り上げてみている。
多分、こういうものの走りは「はしかん」だと思う。「1000年に1人の美女」としてピックアップされた。その後、「2000年に1人の美女」とか「4000年に1人の美女」とか……直近だと「2万人に1人の美女」とかが登場して、ドラゴンボールのようなインフレが発生していたわけだけど、ここに来て、ついに「人類史で一番」というパワーワードまで飛び出した。感慨深いなあ。もはやこれ以上を主張するなら、「哺乳類史」とか「生物史」、あるいは「地球史」みたいな人類を超えたところで議論するしかなくなってしまう。
こういう何千年とか何万年とかってなると、どうしてもケルト神話を思い出すボクである。『来寇の書』というのがあって、最初にアイルランドに入植したフィンタンが、その後、次々と転生を繰り返しながら、いろんな種族がアイルランドに入植しては滅びるのを語る物語である。こういうフィンタンみたいな人が、何世代にも渡っていろんな人々を見て、「ああ、何千人に1人の美女だなあ」と思うのかどうか。ついつい、そんなことを考えてしまう。てか、人間、たった80年程度しか生きないのに、何千年とか何万年の美女だとか、軽々しく評価するなよ、と思うよね。はっはっは。
2024年9月4日 いろんな異世界に行って戻ってきた男の記録!?
『異境備忘録』という怪しい書物がある。宮地水位なる人物が、天狗界や神仙界、幽明界など、さまざまな世界を行き来した記録である。そこには、悪魔界というのも出てくる。残念ながら(?)、宮地水位は悪魔界には行かなかったようだが、水位は実際に魔王一行が空を行列しているのを目撃したという。そのときに一緒にいた川丹先生(2000年以上生きた仙人!)に魔王たちのことを教えてもらったのだという。
悪魔界について書かれているのは『異境備忘録』の8章で、その書き出しがとても魅力的だ。
悪魔界へは一度の入りたる事なし。されども此界の魔王どもは見たる事あり。
要するに「悪魔界には一度も入ったことはないけど、この魔界で魔王たちを見たことはあるよ」というトンデモない書き出しである。しかも、少し後にはこんなことも書いてある。
余明治十三年七月十九日の夜に魔神行列して空を通行しけるを川丹先生と共に見て、右の名をも聞きてやがて書付けたり。
要するに「俺は明治13年7月19日の夜、魔神が列になって空を飛んでいったのを川丹先生と一緒に見て、名前も聞いたのですぐに記録したよ」というわけだ。
それによれば、悪魔界には12人の魔王がいて、その筆頭は造物大女王で、続いて無底海大陰女王、積陰月霊大王がいるらしい。それに続く形で、神野長運、野間閇息童、神野悪五郎月影、山本五郎左衛門百谷、焔野典左衛門、羽山道龍、北海悪左衛門、三本団左衛門、川部敵冥がいるという。
しかも、実は魔界は大昔に2つに分かれたらしく、造物大女王が治める魔界とは別の魔界は西端逆運魔王が治めているらしい。そして、他にも独立した魔界があって、前三鬼神、飯綱智羅天、後天殺鬼などといった魔王がいるらしい。
……と、まあ、トンデモな内容なわけだけれど、生々しくてとても面白い。
とは言え、この魔王たちが古い伝承に根差しているのかと言えば、おそらくそんなことはなくって、実際は宮地水位の創作ということになるのだろう。山本五郎左衛門と神野悪五郎が魔王として名前を連ねているところも、『稲生物怪録』を念頭においているのだろう。
ずぅっとひょーせんさんが「造物大女王」のイラストを描いていて、いつかはちゃんと解説したいなあと思っていたんだけど、昨今、何故だかXで山本五郎左衛門がフィーチャーされているので、重い腰を上げてまとめてみようかなあ、と思っている。でも、結局、出典元は『異境備忘録』しかないので、それ以上の情報はないわけで、『異境備忘録』に書いてあることをつらつらと書くしかないのであることよ。
2024年9月3日 マーライを描いてみた。
ベトナムの妖怪第1弾として「マーライ」を描いてみた。今後は徐々にベトナムの妖怪もイラスト化して認知度を上げていきたいと思っている。
さて、マーライは昼間は人間として暮らしていて、夜になると臓器とともに頭が抜け出し、空を飛ぶ。こういう首と臓器だけの妖怪と言えば、東南アジア各地にいて、たとえば、タイのガスーやインドネシアのペナンガラン、フィリピンのウンガウンガなどが知られている。どれも昼間は人間として暮らして、夜になると首と臓器が抜け出す。
他の首&臓器妖怪とマーライが大きく異なるのは、マーライの場合、直接、人間を襲わないとされている点だ。マーライは主に排泄物を狙うらしい。マーライに排泄物を食べられた人は腸の病気になり、やがて重篤化して死んでしまう。つまり、人間の排泄物を介して、マーライは人間に作用するわけである。
いずれはタイのガスーも描いてみたいなと思っている。結局、首と臓器という意味では同じデザインなんだけど、ガスーの場合、人間とガスーの悲恋みたいなものが展開されるので、妖艶な美女で描けば、少しは差異化できるのではないか。ふふふ。
2024年8月30日 磯女を描いてみた。
九州地方の妖怪「磯女」を描いてみた。
今回、こうして磯女を描いてみようと思い立ったのは、ずぅっとフィリピンの妖怪のマンララヨやクボット、グモン、マラカットなどの「髪の毛軍団」を描いてきたからだ。どうしてだか分からないが、フィリピンには、髪の毛で獲物を攻撃する類いの妖怪の一団がいて、とても恐れられている。
フィリピンの妖怪を解説するウェブサイト「アスワン・プロジェクト」では、マンララヨの項目の中に「日本にも似た妖怪がいる」という言及がある。おそらく、それは磯女のことだと思われる。磯女は海に棲んでいて、髪の毛で血を吸って獲物を殺してしまう。
イラストは鳥山石燕の「濡女」を参考にしている。なかなか絵はうまくならないが、毎回、何かに挑戦している。今回は濡れた髪の毛。これがなかなかうまく描けなくて、何度も何度も描き直した。ようやくそれっぽく描けたので、これで完成とした。む、難しい。
2024年8月26日 オズ・シリーズのジャック・パンプキンヘッドを描いてみた。
オズ・シリーズの「ジャック・パンプキンヘッド」を描いてみた。ジャック・パンプキンヘッドは『オズのふしぎな国』(1904年)に初登場で、少年チップが木材とカボチャでつくった人形だったが、魔法の粉で命を吹き込まれた。
面白いのは、頭のカボチャはすぐに腐ってしまうので、取り換える必要があるという点。彼は自ら畑でカボチャを育てていて、定期的に腐りかけの頭を交換する。頭の出来栄えによって賢さが左右される。
頭を取り換えてもアイデンティティが変わらないのなら、お前の主体は一体どこにあるのだ、と小一時間ほど問い質したくなる。こういう不思議さがライマン・フランク・ボームの魅力のひとつだ。