2024年7月25日 パティン・ナ・パクパカンを描いてみた。

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第33弾で「パティン・ナ・パクパカン」を描いてみた。ビコル地方の『イバロン叙事詩』の中で、英雄ハンディオンと仲間たちに襲い掛かった空飛ぶサメの一団。上空を旋回して次々と急襲してくる。

パティン・ナ・パクパカンのイラスト

サメと言えば、灰色のイメージがあるが、ボクはいつもサメを描くときには灰緑色で塗るのがしっくり来る。だから、別に神話・伝承でパティン・ナ・パクパカンが「緑色」と記述されているわけではないのでご用心(笑)。

本当は上空を旋回しているシーンを描いた方が伝承に即している。でも、それだと飛んでいるのか泳いでいるのかが分かりにくくなってしまったので、飛び出している瞬間の絵にしてみた。技術力があれば、上空を旋回して獲物を狙っているような絵も描けるのかもしれない。そもそも、背景を入れたら楽勝なんだよね。背景を入れないで真っ白の正方形の中に妖怪を描くというテンプレートに決めてしまったので、それで結構、苦しめられているところはある。妖怪画と言えばメガテンの金子一馬氏のイメージがあって、どうしてもそのイメージから脱却できない。

2024年7月22日 髪の毛で人間を襲うフィリピンの妖怪たち!?

土日にフィリピン伝承の調査をしていた。意外と時間がかかって、土日にはファンタジィ事典の更新までは辿り着けなかった。……というのも、髪の毛で人間を襲うという吸血鬼マンララヨについて調べていたときに、アスワン・プロジェクトの記事の中で、マンララヨが日本の妖怪に似ている指摘されていた。おそらく、磯女を念頭に置いた記述だと思われる。磯女も髪の毛で人間を血を吸う。そして、カガヤン・デ・オロの人々は、日本軍を怖がらせるためにマンララヨの伝承を広めたと説明されていた。

でも、調べてみると、意外とフィリピン全土に髪の毛で人間を襲う妖怪がたくさん、登場する。たとえば、グモンなんかは毛の塊そのものの妖怪で、毛の塊の中には女性の妖怪がいるとされているが、毛がメインのヴィジュアルになっている。オオカミ人間みたいな妖怪もいる。マラカットと言って、夜になると毛むくじゃらの獣になって、涎を垂らしながら襲ってくる。これも、長い毛で攻撃してくるわけである。

「アスワン・クロニクル2」というフィリピン映画にはクボットが登場するが、これなんかは、まさにマラカットとかグモンとかマンララヨとかのイメージが全部、ごちゃ混ぜになった感じである。毛の塊から手足がはみ出したような妖怪が地面にいて、獲物を見つけると涎を垂らした獣のように四足歩行になる。そして、髪の毛で獲物を包み込んで窒息死させてしまう。髪の毛を大きく広げて、空中を移動する。もう、フィリピンの髪の毛妖怪を全部、混ぜたような能力とヴィジュアルである。ボクのアスワンのイメージが凝縮されている。

2024年7月20日 プチブロック「幻獣シリーズ」第8弾は「イフリート」?!

ダイソーのプチブロックの「幻獣シリーズ」第8弾はイフリートだ。これもリヴァイアサンのときと同様、あんまり図像化されていないものなので、変なチョイスだな、と思う。

イフリートは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とか『ファイナルファンタジー』とか、ロールプレイングゲームの世界ではある程度、図像化されていて、デザインもあるので、形にはしやすい。でも、本来のアラビア伝承や、よく出典として引き合いに出される『千一夜物語』では、必ずしもその定義や役割は明確ではない。ジンの一種で、ジンのことを指して用いられる。『千一夜物語』の中では、ときにはジンと呼んだり、ときにはイフリートと呼んだりしていて、恐ろしいジンをイメージするときにはイフリートの語が用いられているような印象だ。

このデザインは角が生えているので、その点では伝承のイフリートのイメージには近いかもしれない。ただ、肌の色がオレンジ色になっていたり、赤い透明ブロックが用いられているのは、おそらく火の魔人とされた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の影響が反映されている。アラビアのイフリートの場合、肌の色は茶色だったり、緑色だったり、黒だったりする。オレンジというのは、あんまりない。

ブロックとしては、二足歩行でちゃんと立てるし、手を広げて威嚇したようなポーズがつくれるのがいい。

……というわけで、今回、第5弾から第8弾までのプチブロック「幻獣シリーズ」をつくってみた。今後も定期的に発売されていくといいなあ。乞うご期待。

2024年7月18日 オズ・シリーズにも挑戦だ。

ライマン・フランク・ボームは1900年に『オズの魔法使い』を発行した後、続編をたくさん書いていて、全部で14作品書いている。オズと言えば、ドロシー、トト、カカシとブリキの樵と臆病ライオンのイメージがあると思うんだけど、そんなもんじゃない。魅力的な登場人物はたくさんいるので、もっともっとオズ・シリーズを知って欲しいと常日頃から思っている。その意味で、オズ・シリーズの広報を担ってみようと思って、今回、オズ・シリーズの「ティック・トック」を描いてみた。

ティック・トックのイラスト

ティック・トックはボームの『オズのオズマ姫』(1907年)に登場した機械人間。日本語訳の本などでは「チクタク」の名前で登場している。思考、会話、行動の3つの機構があって、それぞれがゼンマイ仕掛けで動く。ドロシーに助けられて、以降、彼女に仕えている。何を隠そう、ティック・トックは文学史上初の「ロボット」なのである。

2024年7月13日 プチブロック幻獣シリーズ第7弾!!

ダイソーのプチブロックの「幻獣シリーズ」第7弾はリヴァイアサンである(笑)。リヴァイアサンって、あんまり図像化されていないが、初期の頃は巨大な魚という感じのデザインで図像化されている。時代を経ると、大半が大蛇っぽいイメージで描かれる。近年はクジラっぽいフォルムが好まれているように感じる。今回のプチブロックは、少しだけ寸胴な感じで、今っぽいデザインだと感じる。少なくとも、中世までのイメージではないだろう。

ギュスターヴ・ドレの絵だと大蛇に翼っぽい感じのヒレが生えている。今回のデザインはそれに近いと言えば近いが、でも、体長は短いので、クジラっぽさもある。首長竜っぽさもある。そのせいか、何となく「ポケモン」みたいな雰囲気も感じていて、やっぱり今っぽいよなと思っている。

そんなわけで、第7弾の「リヴァイアサン」を作ってみた!!

2024年7月10日 ベトナムの妖怪!?

ベトナムの妖怪について調べていたら『MA QUỶ DÂN GIAN KÝ』という本が出版されていることを知る。これ、ベトナムの本なので、当然、ベトナム語だし、ベトナム国内で流通しているものなので、日本では手に入らないんだと思う。でも、とても興味がある。人づてにうまく手に入らないかなあ。奥さんがベトナム人の知人がいるので、その人つてに調達してみようかなあ。うーん。

で、調べていたら、作者がfacebookをやっていた(参照)。そこにたくさんのベトナムの妖怪が詳細に載っていたので、それを足掛かりにインターネットの海を探索開始だ。……というわけで、早速、3項目を更新してみた。しつけお化けのオンケー、首だけお化けのマーライ、空き缶お化けのマーロンである。

徐々にベトナムの妖怪も埋めていければよいなと思っている。

2024年7月9日 プチブロック幻獣シリーズの6つ目

ダイソーのプチブロック「幻獣シリーズ」の6つ目は神獣青龍だ。5つ目が瑞獣麒麟なので、中国の幻獣シリーズだ。

麒麟と言えば「四霊」のグループで、麒麟、鳳凰霊亀応竜でユニットを組んでいる。一方、青龍と言えば「四象」のグループで、青龍、白虎朱雀玄武でユニットを組んでいる。だから、同じ中国の妖怪だけど、ちょこっとだけチームが異なる。このズレが「幻獣シリーズ」のセレクションの妙だな、と思う。なかなかに一筋縄ではいかない。

青龍という名称だけに、ブルーで想像される人も多いかもしれないが、本来はグリーンだ。プチブロックも緑色のブロックを使っているので、非常に忠実だ。その辺もよく練られている。

可動部がたくさんあって、透明の台座の上に、いろんなポーズで飾れるのがよいよね。前脚の接合が不安定で、すぐに取れてしまいそうな構造なのが玉に瑕である。まあ、プチブロックは全体的に1つの凸で固定すると不安定になりがちではあるけれど……。

2024年7月7日 ティユ・アンを描いてみた

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第32弾でティユ・アンを描いてみた。実はずぅっと描きたいと思っていたフィリピンの妖怪のひとつだ。

ティユ・アンのイラスト

ティユ・アンは《小犬を連れた女》という意味。フィリピンでもそんなにメジャーな妖怪ではないのかもしれない。でも、ちょっと面白い妖怪だ。

彼女が飼っているのは永遠に年を取らない小犬だ。母から娘へと代々引き継がれている。日本で言えば、狐憑きとか犬神憑きみたいな感じで、その家にとり憑いているわけだ。そして、小犬が彼女の足をペロペロと舐め始めたら、それは狩りの合図だ。彼女は吸血鬼となって、屋根の上に跳躍し、寝ている妊婦の子宮に長い舌を差し入れて、胎児の血を吸う。

結局のところ、このかわいい小犬こそがこの妖怪の本体だというところがとても変わっていて、それが面白いなと思って、イラストに描き起こしたいと思っていた。世界的に見ても、こういう妖怪って珍しいのでは? 

だから、女性の方は意外と普通の女性にして、犬も普通に描いて、両者を繋げるように、紫色のオーラでつなげてみた。彼女が操られているようなイメージだ。どうだろうか。

2024年7月6日 プチブロック幻獣シリーズの第2弾が発売された!?

プチブロック「幻獣シリーズ」の第2弾が出た。実際には2024年3月頃の発売だと思う。ダイソーで気がついて、5月頃には購入していたんだけど、結局、組み立てる時間がなくって今頃になって組み立てて悦に浸っている。第1弾についてはドラゴンユニコーンフェニックスフェンリルを参照して欲しいんだけど、第2弾の今回も全部で4種類。1つ目は「瑞獣麒麟」だ。早速、組み立ててみた。

プチブロックって意外と難しいんだよね。説明書も、この凸とこの凸を繋ぎますみたいなのが線で図示されているだけで、線の引かれているところを数えながら、考えながら組み立てる。今回もどうなることかと思ったけど、うまくできた。

駆動部が多いので、いろんなポーズがとれるのは前回と同様。麒麟(チーリン)って、本当は一角獣なので、角は1本がよかったなあ。ちなみに、最近、思い至ったんだけど、「麒麟」の角って「麟角」と言って「麟(リン)」の方にしか生えないんだけど、よくよく考えると「麟(リン)」って雌なんだよね。「麒(チー)」が雄。シカとかって、雄に立派な角が生えるのに、「麒麟」の場合は、角が生えるのは雌なんだなあ。自然の観察から行くと、逆な気がするんだけどなあ。

2024年7月3日 エンキを描いてみた。

アンエンリルに続いて、エンキを描いてみた。これもアン、エンリルと同様に、昔、描いたラフ画があって、それにペン入れをして彩色したものだ。

エンキのイラスト

エンキはエリドゥ市の守護神で、地下から湧き出る淡水の神さま。両肩からはチグリス・ユーフラテス河が流れ出ていて、まさにその説明のとおりの図像が残されている。それをそのまんまイラストに描き起こしてみた格好だ。その図像では、コイが河を遡上している。デザイン的には赤い色があった方が映えるんだけど、実際にメソポタミア地方の河川を泳ぐコイは銀色っぽい、黄色っぽい色なので、赤ではなくって現地のコイの色にしてみた。

2024年7月1日 アルゴー号が遭遇した出来事を順次、まとめているボクであることよ。

最近、ギリシア・ローマ神話の「アルゴー号の冒険」にハマっている。アポッロドーロスの『アルゴナウティカ』が面白いからだ。だから、クリューソマッロス・クリオス(金羊毛のヒツジ)とか、スパルトスとかをアップしていた。昨日も、この流れの中でシュムプレーガデスプランクトスを更新した。どちらも妖怪というよりは単純に海の上を動く岩なんだけど、まあ、それもひとつの怪現象という位置づけで、十把一絡げに「妖怪」ということにして記事を書いた。意外と、いずれもギリシア・ローマ神話の中では、そんなに有名ではないかもしれない。それでも、こうやってちょっとずつ積み重ねて更新している。

結構、『アルゴナウティカ』が迫力があって面白いのだ。たとえば、シュムプレーガデスを通過するシーンなんかは、両側の岩が迫ってくるわけだけど、岩に挟まれて、海面が上昇する様子とか、妙にリアルで迫力がある。プランクトスの間を通過するときも、サポートにテティスとネーレーイスたちがついているんだけど、描写としてはイルカが船に周りを泳ぐように(実際にそういう説明になっているんだけど)、ネーレーイスたちが船の両側を泳いで、船と岩の間を泳ぎながら、船を誘導するシーンも、映像がイメージができて、迫力がある。紀元前3世紀の文章なのに、すごいなあって思って、感心してしまう。

是非、『アルゴナウティカ アルゴ船物語』(著:アポロニオス,訳:岡道男,講談社文芸文庫,1997年)を読んでみて欲しい。絶対、面白いから!!

2024年6月28日 イラストを印刷してみたよ

12月にフィリピンの妖怪を描き起こそうと決意して、ソフトウェアをCLIP STUDIO PAINTに定め、タブレットとタッチペンでイラストを描き、彩色するスタイルに決めて、ずぅっと半年間、続けてきた。そのスタイルに決めてから最初に描いたイラストがマナナンガルで、以降、順次、妖怪のイラストを描き続けてきて、先日のアン/アヌのイラストが50枚目になる。

イラストを印刷してみた

そんなわけなので、ちょっとこれまでの50枚のイラストを家に飾ってみようかと思って、取り敢えず、半分くらいを印刷して、正方形に切り出してみた。うまく描けた絵もあれば、そうでない絵もある。でも、こうやって半年間続けてきたことには重みがあるなあと思って、感慨深さを覚えている。

これを自分の部屋の壁にでも貼ってみようかしら。それだけでやる気が出てくるよね。ふふふ。

2024年6月26日 シュメル神話の大地の女神を描いてみた。

アンに引き続いてを描いてみた。とは言え、前回も書いたように、キについては図像が残されていないので、ボクが勝手に想像で穴埋めして描いてみた。大地の女神はニンフルサグ女神がよく知られていて、そちらの図像はたくさんあるので、それをベースに少しだけ老いた感じで描いてみた。やっぱり、アンとキは老いたイメージのボクである。そして、メソポタミアと言えば、ラピスラズリというイメージもあるので、ラピスラズリのネックレスをつけてみた。

キのイラスト

そんなわけで、キについては描き卸しである。次はエンリルのラフ画を彩色して、仕上げてみようと思っている。

2024年6月23日 いよいよ念願のシュメル・アッカド神話の神々を描き起こすときが来たよ!

昔、シュメル・アッカド神話の神々の姿を忠実に描き起こそうと思い立って、ラフ画だけは描いたものの、そのまんま頓挫していた。最近、絵を描く習慣ができたので、その勢いのまんまで仕上げてみた。手始めにシュメル神話の最高神アンを描いてみた。

アン/アヌのイラスト

アンの象徴は「角冠」である。雄牛の角をかたどったもので、アン以外の神々も「角冠」をかぶっていることが多いが、アンは4つの角の冠にしてみた。他の神々は3つにしようと決めている。やっぱりアンが最高神なので、角の数はアンが一番、多くしたい。

次は大地の女神を描いてみようと画策している。こちらは図像が残されているわけではないので、想像で穴埋めするしかない。頑張ろう。

2024年6月19日 妖怪って日本以外にもいるんですか?

よく「ご趣味は何ですか」的な質問を受けることがある。「お仕事以外では普段、何をされているんですか」的な質問でもいい。より深い人間関係を築こうとすれば、当然、仕事以外の話題に広げていくプロセスは重要になる。そういう場合に、ボクは大抵、「家に帰ったら、ずぅっと世界の妖怪を調べています」と答える。一瞬、キョトンとされる。苦笑いする人も多い。奇異の目で見る人もいる。でも、一番、多い反応は「妖怪って日本以外にもいるんですか?」という質問だ。話題を次に繋げるためには、まあ、真っ当な質問である。

ウェブサイト「ファンタジィ事典」は「世界各地の神話や伝承の事典。古代の神話から都市伝説やUMA(未確認動物)まで」というモットーを掲げている。おそらく、ボクの考える「世界の妖怪」の定義は、ほぼほぼこのモットーの中に納まってしまう。プロフィールのところに少しだけ書いているので引用してみる。

興味の対象は「架空の存在でありながら、その存在が実在と信じられたもの」。実在しないがために、人々の想像力に強く依存し、時代や場所とともに姿・形が変遷していくところが魅力。神話・伝承に登場する神さまや怪物、未確認生物、都市伝説の妖怪、宇宙人などを一括りにして勝手に「世界の妖怪」と定義している。

このプロフィールの記述は、「古代の神話から都市伝説やUMA(未確認動物)まで」という表現からもう少し解像度を上げていて、「神話・伝承に登場する神さまや怪物、未確認生物、都市伝説の妖怪、宇宙人など」と具体的に記述している。つまり、少しだけ乱暴な話だけれど、ボクにとっては神さまも宇宙人も「妖怪」なのである。

よくイギリス伝承の本を読むと「fairy(フェアリー)」という言葉が出てくる。訳すならば《妖精》である。イギリスの妖精の図鑑や辞典なんかを見ると、ブラウニーみたいな小人や、ピクシーみたいに昆虫の羽を生やしたザ・妖精みたいなものもいるが、ゴブリンみたいな小鬼みたいなものもいれば、ケルピーみたいな動物的なものもいれば、ブラック・ドッグみたいな魔獣もいる。ときにはワームみたいな竜の仲間みたいな類いも含まれたりする。要するに、fairyは《妖精》ではあるけれど、単に《妖精》と訳せない概念も含まれている。それをどう訳そうかと思えば、結局、ボクは「妖怪」なんじゃないかと思う。イギリスの妖怪。そう訳出すれば、全部を包括して相手にできる。

今、「フィリピンの妖怪」を積極的に調べているけれど、十把一絡げにして、これらのことをアスワンと呼んだりする。アスワンにも、いろいろな側面があって、吸血鬼や人狼、グール、魔女などを包括するような概念だけど、ピッタリくるのは「妖怪」だ。日本の妖怪よりも血や胎児、死体を好む特徴はあるけれども、でも、「妖怪」と訳せばしっくり来る。だから、ボクはこういうのをひとまとめに「フィリピンの妖怪」と呼んでいる。

だから、まあ、ウェブサイト「ファンタジィ事典」は世界の妖怪を調査してまとめているということになる。そして、それがボクの趣味である。

2024年6月16日 ランポンのひげは緑色なのか!?

1か月振りくらいにフィリピンの妖怪のイラストを描いてみた。フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクトの第31弾の「ランポン」だ。ランポンは森の獣を守護する小人だ。森に狩猟者が現れると1つ目の真っ白いシカに変身して狩猟者の気を惹き、森の獣たちを逃がす。

意外と英語の解釈が難しくて、「one-eyed」とか「single eye」という表現が曲者だ。《片目の》とも訳せるし《単眼の》とも訳せる。フィリピンのイラストレータは片目が傷ついたシカのヴァージョンで描いている人もいれば、頭の真ん中に1つしかない単眼のシカを描いている人もいる。どちらが正解なのかは正直、よく分からない。でも、複数の辞書を参照して、どうも「one-eyed」とか「single eye」の用例にキュクロープスがたくさん出てくるので、ボクは「1つ目のシカ」を採用して描いてみた。

小人の方は比較的、多くのイラストレータの絵が一致していたので、裸ん坊に長いひげの姿を採用した。文章にはとんがり2つの黒い帽子という記述があるが、多くの人はシカの角を生やした禿の小人で描いている。でも、文章に忠実にするために、とんがり2つの黒い帽子で描いてみた。でも、シカの角が生えているっぽい雰囲気は少しだけ残してみた。ひげについては、白髭という記述もあるんだけど、多くのイラストレータが緑色で描いているので、悩んだ末、緑を採用してみた。

そんなわけで、1枚、絵を描くだけでも、いろいろな資料を当たって、検討し、決断をしながら絵に起こしている。それが正解かどうかは分からない。でも、極力、納得できるまで熟考するようにはしている。

2024年6月13日 古代ギリシア・ローマのイラストは少しだけ気楽。

ここのところ、ヒッポカムポスとかクリューソマッロス・クリオスみたいなギリシア神話関係のイラストを投下している。というのも、ギリシア神話の妖怪って楽ちんでよい。何がよいかと言うと、原典資料に当たる文献が大量にあるというのもいいんだけど、図像(壷絵とか)も大量に残されていて、そこに古代ギリシア人たちの想像力がたくさん込められている。それを何とかそれっぽく抽出できたら、新しさがある。

そんなわけで、古代のイラストと今風のイラストの折衷案を狙っている。ボクはあんまり今風にはしたくなくって、たとえばクリューソマッロス・クリオスなんかは、ファイナルファンタジーのゲームの中ではクリュソマロスとして登場していて、とてもキュートな丸いフォルムの金色のヒツジで描かれている。とても今風な感じで、それはそれでとても魅力的なんだけど、古代ギリシアの人たちはもう少し雄々しいヒツジで想像していた。その辺の真ん中を狙っている。ヒッポカムポスも同じで、もっと今風に描くなら、尾びれなんかを青系の色で描くと思う。でも、ギリシアの色っぽさを出したくて、3世紀頃のローマ時代のモザイク画の色を採用した。

あんまりにも疲れてしまうと、こういう資料の多いものに手を出して、内心、少しだけ休息しているボクである。

2024年6月7日 666には間に合わず(>人<)

ソロモン72柱の「ベレト」を描いてみた。詳細はウェブサイト「ファンタジィ事典」のベレトを参照にしてもらえればいいのだけれど、今回、ラテン語の『悪魔の偽王国』のボリュームが多くて、翻訳に苦労した。英語の『ゴエティア』も結構、分かりにくさはあって、フランス語の『地獄の辞典』も『悪魔の偽王国』を参照しているはずなのに、かなり端折った感じになっていて、時間を要してしまった。

本当は、ね。令和6年6月6日が「666」になるので、その「獣の数字」に合わせてソロモン72柱の悪霊をひとつ更新したくて準備をしていた。でも、何やかんやで結局、1日遅れになってしまった。クッソゥ。

ベレトの場合、他の悪霊たちとは違って、ルイ・ル・ブルトンの元絵がないので、自由に描くことができるが、それはそれで難しさはある。特にベレトについては『悪魔の偽王国』や『ゴエティア』の中に外見や風貌に関する記述がなくって、蒼ざめたウマに乗っていることくらいか記述がない。

ベレトのイラスト

ちなみに「蒼ざめたウマ」と言えば、キリスト教の世界では『ヨハネの黙示録』の四騎士を連想するはずだ。支配(白いウマ)、戦争(赤いウマ)、飢饉(黒いウマ)、そして死(蒼ざめたウマ)をそれぞれ象徴している。「蒼ざめた」というのはギリシア語では「緑」ということなので、今回、ウマの色は緑色と灰色の混ざったような色にしてみた。また、蒼ざめたウマを駆っている人物は死の象徴ということで、しばしば死神みたいに描かれる。死神は黒いローブをまとった骸骨っぽいイメージなので、今回、赤黒いローブに身を包んだ骨張った悪霊にしてみた。前を先導するネコとネズミは『地獄の辞典』の絵をそのまま援用している。

そんなわけで、ボクなりのベレトになっている。さあ、次はプルソンだなあ。プルソンはプルソンで、文章そのものは短いんだけど、訳しにくいと言えば訳しにくいんだよなあ。「aerial」がどういう意味なのか、解釈は人それぞれで、訳しにくい。でも、まあ、頑張ろう。

2024年5月26日 復活の狼煙をあげられるか!?

最近、文字通り、体調を崩していた。ゴールデンウィークが開けたところで38度の発熱。そこから1週間、熱がずぅっと下がらないまんまで、ようやく熱が下がったと思ったら、今度は咳が止まらなくなって早2週間。その間、満足に眠れないし、咳のせいで全身に変な力が入って、筋肉痛になっていた。咳が出なくなってきたので、ようやく本日、全身マッサージに行ったら、あまりのひどさに揉み返しがおきて、午前中はずぅっと死んでいた。

そんなわけで(どんなわけ?)、本来業務のお仕事もままならなかったんだけど、ウェブサイト更新や創作活動も大幅に滞っていた。フィリピンの妖怪とかタイの妖怪という雰囲気じゃなくって、それで少し視点を変えて、現代ファンタジー系に手を出してみた。ゴブリンスライムだ。こういうのは気が楽だ。たくさんの人がすでに描いてくれているので、ボクなりの解釈で振り切って描いても問題ない。

ゴブリンは頭がでかくてグロテスクというイメージがあるので、ちょっとだけ頭を大きく描いて、歪(いびつ)な感じにしてみた。決してデッサンが狂っているわけではない。

ゴブリンのイラスト

スライムは鳥山明のかわいらしいスライムのイメージを払拭したくて、結構、大きなサイズで描いてみた。消化中の人間の骨を中に描いてみたわけだけど、ここから逆算すると、結構、大きなモンスターということになる。

スライムのイラスト

そんなわけで、熱に浮かされ、咳き込みながら、何とかできることをやってきた感じだ。苦しい3週間だったなあ。ここから復活の狼煙を上げられるといいのだけれど、さてはて。

2024年5月20日 ナイジェリアのムーブメント!?

DJ銀太の脱退に続いて、DJまるも脱退。Repezen Foxxは一体どうなってしまうのだろう。DJ社長の6月復活は嬉しいけれど、先行きが心配だ。などと、意外とミーハーなボクである。

* * *

閑話休題で、最近、ボクの周辺のXで、ナイジェリアに関連するポストが多い。ナイジェリアの料理や文化、仮面、衣装など、フォロワーの話題の中で、そういうリポストがたくさん流れてくる。何だろう。何かナイジェリアにまつわるイベントでもあったのかしら。

ボクは2014~2016年にお仕事で5回、ナイジェリアに渡航したことがある。累計で180日もナイジェリアに暮らしていたので、何となくナイジェリアに馴染みがあって、親近感がある。ナイジェリアと言えば、レストランでうっかり「シェフのおまかせサラダ」を頼んだら、ジャイアントスネイルが入っていて、知らずに食べてしまったこととか、町中で写真を撮っていたら、いきなり軍人がやってきて「逮捕する」と言われて、どうやら軍事施設の周辺だったとか、いろんな思い出がある。当時はボコハラムが暴れ回っていたし、エボラ出血熱も流行っていたしで、いろいろと難儀な時代だった。

ナイジェリアにはハウサ族、イボ族、ヨルバ族などのたくさんの民族がいて、特にヨルバ族の神話はアフリカ諸国の神話の中でも比較的よく研究されていて、知られている。それは、ヨルバランドの人々が、奴隷貿易でアメリカに連れていかれて、そこでブードゥー教などに変化していった歴史があるからだ。オロドゥマレという最高神に遣わされて、たくさんのオリシャ(神々)が地上にやってきて、世界創造をしたり、人類創造をする。有名なところだと、創造神オバタラとか、雷神シャンゴー、海神オロクン、軍神オドゥン、川の女神イェモジャ、そしてトリックスターのエシュなどがいる。そういうのを紹介したら、ちょっとニーズがあるのだろうか。