2023年9月26日 最後に常に不安と絶望を残して幕を引くのがリングの魅力!?
映画『リング2』と『リング0』を観た。『リング2』は映画『リング』『らせん』と続いた物語のパラレルワールドのようだ。そして『リング0』は貞子の誕生譚。
『リング2』でもビデオの呪いは健在だ。ビデオの呪いから逃れるためには、誰かにビデオを見せなければならない。深田恭子演じる女子高生の香苗は呪いのビデオを取材するライターの岡崎にビデオを渡して、必ずビデオを見るようにお願いする。しかし、彼は結局、ビデオを見ない。その結果、1週間後に香苗は貞子の呪いで死んでしまう。こういう展開は、現実だったらありがちだなーと思う。「絶対に見てね!」と託されたのに、裏切られる。結果、彼女も新たな呪いの渦になって岡崎に襲い掛かる。つまり、こうやって、人間の負の感情で、貞子は増殖していく。こういう人間の浅ましさが『リング』シリーズの一貫したテーマなのかもしれない。
呪いのビデオを見た友人が死んだときに、その場に居合わせた女性は、貞子を目撃して気が狂ってしまった。病室のテレビを見た瞬間、彼女の念力みたいなもので、テレビに呪いのビデオと同じ映像が映し出される。院内はパニックになる。このシーンはとても怖かった。「見ちゃダメだ」と言われながらも好奇心でビデオを見てしまう「見るな」の怪から、強制的にビデオを見せる怪になってしまう。こうやって、いろんなところに貞子の呪いが波及していくのは、難解ながらも、とても面白かった。
最後、貞子が井戸をよじ登って追いかけてくるシーンは、思わず笑ってしまったが、それでも、『リング』シリーズは独特の雰囲気があって、Jホラーの代表格という感じだ。
『リング0』の方は、貞子を仲間由紀恵が演じていた。この貞子は純粋でとてもかわいい。この話では、いい貞子と悪い貞子がいて、いい貞子は人の怪我を治癒できる。しかし、悪い貞子が次々と人を殺していくために、特殊能力を持ついい貞子も迫害される。そして、結局、パニックになった人々によって、貞子は追い詰められてぼこぼこに殴り殺されてしまう。そのシーンが、とても凄惨で恐ろしい。仲間由紀恵は、寄ってたかって棒で殴られて殺されてしまう。
けれども、もっと恐ろしいのは、彼女は、人々に殴り殺されたにも関わらず、復活する。自らも治癒・再生してしまって、彼女は死なないのだ。いい貞子の、人を治癒して、再生し得る偉大な能力と、その可能性は、しかし、人々の恐怖と混乱によって迫害され、潰されて、押し潰していく。そこがとてもホラーだと感じた。結局、人間の恐怖が貞子という怪物を生み出すのだ。最後の最後に、貞子は井戸に突き落とされて殺される。それでも、自らの能力で再生してしまって、井戸の底で、彼女は死ねないまま、ずぅっと閉じ込められ、生き続けることになる。この映画は、鉈で殴られ、井戸に突き落とされた彼女が、無傷で井戸の水の中で起き上がり、そして絶叫するところで幕を閉じる。こういう後味の悪さもまた、『リング』シリーズの魅力なのかもしれない。
2023年9月18日 2体の「非人間」のミイラ!?
9月12日にメキシコ議会の公聴会に2体の「非人類の遺体」がハイメ・マウサン(Jaime Maussan)氏によって持ち込まれて、話題になっている。宇宙人のミイラだと報じられているが、マウサン氏本人は「非人間」とは主張しているが、「地球外生命体(イーバ)」との明言は避けている。意外と小さい2体のミイラだ。胡散臭いと言えば胡散臭い。作り物っぽい。でも、こうやって、ネッシーの大捜索があったり、グレイの写真がXで公開されたり、「非人間」のミイラが議会に持ち込まれたり、平和な時代だし、楽しいなあ、と思う。
持ち込まれた2体のミイラを科学的に真っ当に分析したら、フェイクだった場合、すぐに真実が判明してしまうはずだ。こうやって持ち込んでいるので、マウサン氏には、何か秘策があるのかなあ。うーん。
2023年9月16日 テレビから幽霊が這い出して来るという新概念!?
9月4日にテレビから這い出る貞子って、今じゃ「妖怪」か!?という記事を書いた。ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』やメアリー・シェリーの小説『フランケンシュタインの怪物』をボクはよく例に出すが、ドラキュラにしてもフランケンシュタインの怪物にしても、著作者の手を離れて、独立したモンスターとして、ハロウィーンで暴れ回っている。おそらく、エンタメを楽しんでいる人たちの中では、ブラム・ストーカーやメアリー・シェリーとの関係性は切れている。そういう意味じゃ、ジョゼフ・ペイン・ブレナンの『沼の怪』で登場したスライムも同様で、今やいろんなゲームに雑魚キャラで登場して、ブレナンがオリジナルだとは知られていない。そういう意味で、「山村貞子」というJホラーの怪物も、もはやそういう類いの仲間じゃないか。
そんなわけで、DVDを購入して、映画『リング』と『らせん』を観てみた。実は、ボクはホラー映画が苦手なので、敬遠していた。でも、貞子がファンタジィ事典の対象になるかもしれないなら、これは観るしかない。
結論から言うと、『リング』はそんなに怖くはなかった。むしろ、テレビから貞子が這い出してきたシーンには、ギャグっぽささえあった。お陰で、最後まで観ることができた。もしかしたら、それはいろんな人にこすられ続けてきたからかもしれない。何も知らずに初めて貞子を観ていたら、戦慄するのかもしれない。でも、インパクトはあった。テレビの映像に呪いを込める。映像を視た人は1週間後に死ぬ。テレビから幽霊が這い出して来る。これは……すごい発想だな、と思った。最後、松嶋菜々子が演じる浅川玲子が、息子の呪いを解くために父親を犠牲にしようとして終わるところが、最もホラーである。続編の『らせん』はホラーというよりはファンタジーという感じ。何とも不思議な感覚で終わって、それはそれで面白かった。
テレビから這い出す貞子というのは、原作にはない監督の中田秀夫のオリジナルの設定なのだという。そして、この中田氏の改変された「貞子」は、その後、『リング2』、『貞子』、『貞子2』、『貞子3』……と独自に展開していくらしい。そうであれば、ファンタジィ事典のためには、そちらもフォローしなければならない。……でも、『リング0』は怖いというレビューも見るので、ちょっとドキドキするなあ。……全部、見終わったら、ファンタジィ事典に「貞子」の項目を書いてもよいかもしれない。ドキドキ。
2023年8月31日 オカルト復興!?
ユリ・ゲラー氏がXにグレイの写真を投稿している。先日はネッシーを話題にしたが、今回はグレイ。しかも投稿者があの超能力者のユリ・ゲラー氏。1980年代のオカルトが復興している2023年8月である(笑)。結局、ネッシー大捜索は大きな成果もなさそうだし。まあ、そりゃあ、そうだよね。あっはっは。
My dear friends! I received this image from my friend Whitley Strieber ( Communion, The Hunger, Wolfen! And Alien Abduction ) Whitley said
That this image is probably real. It is also of one of the beings that he sees, and have seen and been with.
He thinks it is real because… pic.twitter.com/iWSfIpI1Bm— Uri Geller (@theurigeller) August 23, 2023
2023年8月27日 ネッシーの大捜索!?
ネス湖センターによれば、8月の26日(土)と27日(日)にThe Quest Weekendと称して、ネッシーの大捜索をすると発表し、世界各地のハンターにネス湖に集まるように声掛けした。昨日と今日で、どんな成果が得られるのか、期待したいところ。
それにしても、このご時世になっても、ネッシーで一大イベントが開催できるというのは、実に素晴らしいことだ。インターネットが発達して、簡単にインターネット上で検索すれば答え合わせが出来てしまう時代になった。だから、いわゆるオカルトは廃れるのだと勝手に思い込んでいた。でも、ちゃんとこうして脈々と、未確認生物のイベントに人が集まって熱狂できるのだ。とても良いことだ。
大体、最近、本屋さんに行くと、朝里樹さんの都市伝説関連の本が平積みにされていたりして、それもまた、微笑ましく思っている。問題は、その購買層というのか、エンタメを享受しているのが、若者世代にまで響いているのかどうか。1980年代のオカルトの残り香に当てられたボクらにだけ響いているのでは意味がないのである。
ちなみに、ネス湖センターのウェブサイト(https://lochness.com/)、意外と凝っている。ネス湖の水面がゆらゆらと動いているんだけど、下にスクロールすると、急に湖の深くに潜り込んだように、背景が暗くなったかと思うと、ネッシーのシルエットがスゥーッと出てくる。面白い。
2023年8月25日 ハンユスクスこそが龍の正体!?
YouTube「コテンラジオ」でここのところ、「龍の歴史」という特集をやっている。
中国の「龍」の中で、龍の起源はワニ説に絞って、その中でも、モデルとなったワニが実在したというのを、動物学と漢字の歴史から紐解いていこうとする。たとえば、ワニを表す漢字に「鼉(ダ)」というのがあって、これは現在でも中国ではヨウスコウワニ、すなわちアリゲーターを意味している。クロコダイルには「鰐」の字が当てられる。でも、「鰐」という字は比較的、新しいらしい。つまり、インドなどに行って、クロコダイルを見た古代の中国人が「鰐」という字を当てたわけだ。
最近、マチカネワニの一種であるハンユスクスが殷・周の時代の中国には生きていたことが分かってきた。青銅器で傷つけられた痕が発見されたのだ。ヨウスコウワニには「鼉」の字が当てられていたわけだけれど、同時代に生きていたハンユスクス(しかも人間と戦った痕跡まである)は、当時、何と命名されていたのか。それが「竜」だったのではないか。そして、中国が寒冷化してハンユスクスの一種が南下し、中国には大型ワニがいなくなってしまった。「竜」の名前が実体と離れ、伝説化したのではないか。そして、歴代の中国王朝によって神格化されていった。その後の時代に、インドでクロコダイルを見つけて、新たに「鰐」の字が当てられた。ヤンヤン氏が動画の中で青木良輔氏の学説と、その後の調査研究結果を丁寧に紹介してくれているので、非常に聴き応えのある納得の動画になっている。
日本にいると、ワニはワニであって、アリゲーターもクロコダイルも区別がつかないんだけど、ヨウスコウワニというのは、比較的、穏やかで、人を襲うような凶暴さはないらしい。一方のマチカネワニは7メートル、中国古代に棲息していたハンユスクスは6メートル半ほどととても巨大で、とても恐ろしいワニだったらしい。だからこそ、殷・周の時代にハンユスクスが生きていたのなら、何らかの名前が与えられたはずだ。それこそが「竜」だったのではないかという説は、非常に説得力を持つ。
* * *
ちなみに、マチカネワニは大阪府豊中市で化石が発見され、化石発見地の待兼山丘陵からマチカネワニと命名されている。マチカネワニの学名は「トヨタマヒメイア・マチカネンシス」で、実は記紀神話のトヨタマヒメの名もついている。トヨタマヒメといえば、ウミヒコ・ヤマヒコの神話の中で、ヤマヒコの子を出産するときに「出産中は決して覗くな」と言って出産に臨んだにも関わらず、ヤマヒコはこっそりと覗いてしまう。すると、トヨタマヒメがヤヒロワニの姿になって海辺を這っているのを見て、ヤマヒコは驚く。「あれだけ覗くなと言ったのに!」と言って、トヨタマヒメは海に去ってしまう。
というわけで、日本にも約30万年前にはワニが棲んでいた。でも、文明後には生き残っていないので、日本の神話に登場するワニ(古事記では「和邇」と書く)は、アジアのイメージを輸入したものだろう。実際に大和朝廷で活躍した和珥氏は中国南部やベトナムなどから渡来した氏族で、ワニを信仰していた可能性も指摘されている。
というわけで、後半は日本の「和邇」伝承に関するボクの最近の興味を書いたけど、是非、コテンラジオを視聴してみて欲しい。結構、面白い学説を紹介してくれている。
2023年8月17日 クトゥルフ神話のデザインって凄いよね?
ウェブサイト「ファンタジィ事典」でクトゥルフ神話の項目を粛々と更新している。文章でいろいろと怪物の容姿を描写してみるものの、いまいちイメージが湧かない。たとえば、「古のもの」だと、樽のような胴体、球根状の首、ヒトデ状の頭部、その先端に目玉、首からは長い触手、その先端には口、胴体からはウミユリ状の触手と畳める翼、球根状の脚もヒトデ状……などと描写されてもイマイチよく分からない。
だから、描いてみた。どうだろうか。
2023年7月30日 スライムとかア・バオ・ア・クーとかショゴスとか
我が家にはたくさんの神話・伝承関連の本があって、気の向くままに調べていくと、あっちの本を参照し、こっちの本を参照し……と、次第に自分でも何をやっているのか分からなくなる。そして、手に負えなくなってくるので、最近、少しだけ起動修正して、1冊の本にフォーカスして、その本を潰していく戦法に変えた。
ここ数日は、『図説 幻獣辞典』(著:幻獣ドットコム,イラスト:Tomoe,幻冬舎コミックス,2008年)にフォーカスしている。有名どころがコンパクトにまとまって載っているものから取り掛かった方が、マイナなものを載せるよりも、読み手の知りたいものを載せられるのでよいかな、という判断だ。
それで、この本の後ろの方から潰していこうと思ってやり始めてみたら、スライムとかブロッブとかギズモ、ショゴス、ア・バオ・ア・クーみたいなファンタジー世界の変わり種というか、ヘンテコ系のものばかりが載っていて、ちょっと面白いな、と思いながらやっつけている。
2023年7月26日 南米の妖怪は都市伝説でも活躍!?
ウェブサイト「ファンタジィ事典」では、ちょっと前に『南米妖怪図鑑』(文:ホセ・サナルディ,画:セーサル・サナルディ,ロクリン社,2019年)をベースに、南米の妖怪をまとめていた。朝里樹氏の本だと、コルポ・セーコやシルボーンみたいな、いわゆる南米の妖怪たちが、都市伝説のカテゴリーとして紹介されていて、面白いな、と思っている。正直、あんまり、南米の妖怪を取り上げている日本の書籍は少なくて、ボクも『南米妖怪図鑑』を手掛かりに、スペイン語やポルトガル語のウェブサイトを当たって確認作業を行っていたわけだけど、こうやって、朝里氏が都市伝説の文脈で南米の妖怪を取り上げてくれるのは楽しい。
2023年7月20日 プチブロック幻獣シリーズの4つ目!!
プチブロック幻獣シリーズの4つ目はフェンリルだ。北欧神話に登場し、ラグナロクのときにまさかの最高神オージンを倒してしまうという衝撃の怪物である。
近年のイラストレータはみんな、フェンリルを白いオオカミで描く。稀に青いオーラで装飾する。その意味では、フェンリルは白と青いうイメージは現代ファンタジィの中では何となく定着しているのかもしれない。このプチブロックでも白と青を基調にデザインされている。首と四肢、そして尻尾が動く。爪も生えていて、格好いい。
今のところ、ダイソーのプチブロックでは、幻獣シリーズは4つで終わりらしい。今後も何か発売されるといいのになあ。
2023年7月16日 トッケビは日本人によって変質させられた!?
ウェブサイト「ファンタジィ事典」には韓国伝承の項目を設けているが、韓国の妖怪と言えば、最も有名なのはトッケビとクミホだ。
トッケビについて触れると、どうしても、韓国人の歴史観、日本統治時代に対する複雑な感情にあてられてしまうので、何となく避けてきた。曰く、日本統治時代、日本人がトッケビを日本の鬼と同様、2本の角を生やし、トラのパンツを履き、金棒を持った姿で描いたために、トッケビの本来の姿が失われて、変容してしまったという。そのため、韓国本来のトッケビの姿を取り戻すべく、「トッケビ復元プロジェクト」なるものも動いている。
でも、妖怪というのは想像上の存在なので、常に変容するものだ。中国文化の影響もあるし、インド文化の影響もある。いろんな文化が混ざりながら、妖怪というのは形作られていく。日本文化の影響だけを排除しようとする思想には無理がある。
そもそも、クミホにしたって、中国の九尾狐であり、中国の妖怪を韓国の中でアレンジしたものだし、プルガサリも、中国の貘を韓国で独自に発展させたものである。
でも、トッケビを書かないと、何となく韓国伝承について触れたという気持ちになれないので、今回、思い切って、トッケビについてまとめてみた。
2023年7月14日 都市伝説を通じて、今、考えていること2
7月10日の記事の続き。
普段、あんまり意識はしないけれど、でも、本来、妖怪や怪物には必ず作者がいる。古代ギリシアのケルベロスやペーガソス、キュクロープスだって、神話上の怪物たちだけど、必ず最初に言及した人物がいるはずだし、広まっていく中で、影響力のある著述家が書いた記述が「正」になるパターンだってたくさんあったはずだ。分かりやすい例を挙げれば、今やハロウィンの代名詞みたいになっているドラキュラやフランケン。これらにはブラム・ストーカーとメアリー・シェリーという明確な作者がいる。それなのに、ドラキュラもフランケンも、何となく、昔からいる由緒正しい妖怪のように市民権を得て、エンタメの世界で暴れ回っている。不思議なことに、ハロウィンの世界では、オオカミ男と魔女は古い伝承に根差しているけれど、ミイラ男やスケルトン、ゾンビは比較的、新しいホラー映画やゲームの文脈から登場している。シーツおばけも、その歴史は比較的新しくて、子供向けアニメの中で生まれたとされている。そして、ドラキュラやフランケンは小説の世界から持ち込まれているわけで、そういうごった煮がハロウィンの文脈の中では、当たり前のように定着している。
都市伝説もそういう側面があって、人面犬とか小さいおじさんなんかは、いろんな芸能人たちが、我こそが創作主だと主張している(笑)。ゴム男も、テレビで的場浩司が話題にしたのが最初で、その後、連鎖的に目撃情報が寄せられた。ニンゲンとかクネクネの場合、明らかに最初のインターネットの掲示板の書き込みが特定されている。このように、匿名でありつつ、作者が特定されてしまった場合、それは都市伝説なのか創作なのかの線引きが、とても不明確になる。でも、仮に誰かの創作であっても、一般に膾炙するときに、その創作性というか、作者の顔が見えなくなって伝わったら、きっと、それは都市伝説になるのだろう。ドラキュラやフランケンが昔からの妖怪の振りをしてハロウィンのお祭りに紛れ込んでいるような感じだ。山口氏の取り扱う都市伝説の内容は、実はそういうネットロアと呼ばれるものの割合が多いので、都市伝説の創作の境界が曖昧なまんま、ごった煮になって広まっている印象がある。個人の創作が、山口氏のような影響力のある著名人がネットの記事や書籍で取り上げることで拡散されて、都市伝説と化した場合、これは都市伝説なのだろうか。その辺が今っぽくて不思議な現象である。つまり、ボクからすると、何でもない個人のTwitterの書き込みを有名人がリツイートしてバズるみたいなイメージに近い。
正直に話すと、実はニンゲンとかクネクネがばっとネット上で拡散されたとき、ボクは「それって結局、個人の勝手な書き込みじゃん」と思って、あんまり興味を持てなかった。でも、それから1年、2年経って、だんだんと様相が変わってきて、一般に膾炙される都市伝説に昇華したときに、「あ、クネクネもニンゲンも都市伝説になったなあ」と感じた。当初の書き込みからは独り立ちして、勝手に発展していったからだ。そういう意味では、インターネット時代にわーっと生まれて広がった都市伝説の芽みたいなものを、山口氏がどんどん収集していて、それを朝里氏が、改めて今の視点で振り返って整理してくれているような印象がある。
多分、今後も、こうやってオンライン上でいろんな都市伝説や現代妖怪が量産されていって、定着するものと消えていくものとがあるのだろうな、と思う。
2023年7月10日 都市伝説を通じて、今、考えていること1
ここのところ、都市伝説について調査している。我が家には以下の本があって、それを下地にウェブサイト「ファンタジィ事典」に落とし込んでいる。
- 『真夜中の都市伝説 3本足のリカちゃん人形』(著:松山ひろし,イラスト:児嶋都,イースト・プレス,2003年)
- 『真夜中の都市伝説 壁女』(著:松山ひろし,イラスト:児嶋都,イースト・プレス,2004年)
- 『THE 都市伝説』(著:宇佐和通,新紀元社,2004年)
- 『THE 都市伝説 NEXT』(著:宇佐和通,新紀元社,2005年)
- 『THE 都市伝説 RELOADED』(著:宇佐和通,新紀元社,2007年)
- 『本当にいる日本の「現代妖怪」図鑑』(著:山口敏太郎,笠倉出版社,2007年)
- 『最強の都市伝説』(著:並木伸一郎,経済界,2007年)
- 『都市伝説の正体 こんな話を聞いたことはありませんか?』(著:宇佐和通,祥伝社新書,2009年)
- 『日本の妖怪&都市伝説事典』(著:ながたみかこ,大泉書店,2011年)
- 『ぼくらの昭和オカルト大百科 70年代オカルトブーム再考』(著:初見健一,大空ポケット文庫,2012年)
- 『大迫力! 日本の都市伝説大百科』(監:朝里樹,西東社,2019年)
- 『大迫力! 世界の都市伝説大百科』(監:朝里樹,西東社,2020年)
ここには載せていないけれど、2009年以降も、宇佐氏は定期的に本を出し続けていたし、並木氏も未確認生物やUFOの本と合わせて、都市伝説の本を出版し続けていた。山口氏も精力的にネット上でいろいろな情報を収集していて、定期的にいろいろと発信していた。でも、ここ最近は都市伝説と言えば朝里氏という感じ。朝里氏は都市伝説だけでなくて世界の妖怪や怪談、怪異など、幅広く手掛けているんだけど、結構、出版業界の勢力図が様変わりした印象がある。最近は犬も歩けば朝里氏というくらいたくさんの本を出版している。
実は、都市伝説に関して言うならば、ボクは松山氏、宇佐氏の頃のものが、一番、体感としてしっくり来る。並木氏は少し陰謀論寄りな雰囲気があって、「実はこの話の裏には……」みたいなオカルトライターっぽい語り方をするし、山口氏は雑多な感じで、何でもありという印象。そして、今、朝里氏の時代が来たという感覚。おそらく、山口氏の辺りが都市伝説としては転換点で、インターネットができて、SNSが発達して、都市伝説の広がり方が大きく変わったのだと思う。人の口から口へと広まっていく都市伝説は、やっぱり大きなうねりになるまでに時間が掛かって、その間にいろんなヴァージョンが生まれて、その中で面白いものが定着して収斂していく印象がある。伝播していくうちに、いろんな人の視点で揉まれて精度が上がっていく。でも、インターネット以降、オンライン上に拡散されると、その拡散速度はものすごく速くなって、発信者も多くなるので、何となく量産されて、あっという間に消費されていく。ぽっと出たものが、そのままコピペで広がっていくようなチープさもある。まさにクリーピーパスタだ。そういう雑多なものを、山口氏は精力的に拾い集めていた感じがする。そして、今、朝里氏の時代になって、そうやって拡散されたものの中で定着したものを拾い集めている印象がある。
2023年7月6日 プチブロック幻獣シリーズの3つ目は……
プチブロック幻獣シリーズの3つ目はフェニックスである。
フェニックスは古代ギリシアで信じられた「不死鳥」で、500年生きると火の中に飛び込んで死に、その後、復活する。
プチブロックでは、尻尾、翼、首などの部分に駆動部があって、いろいろなポーズが取れる。羽根の部分には金色のブロック、オレンジ・黄色などの透明ブロックが使われていて、非常にカラフルで格好いい。透明のブロックで台座が作られているので、駆動部を使って、いろんな空を飛んでいるポーズをさせることができるのが素敵だ。
中央に何か所か青い透明ブロックが使われているが、小学4年生の息子のツクル氏は「青いということはこの真ん中の部分は一番熱いということだよ」などとしたり顔で説明してくる。
2023年7月4日 都市伝説は「偏見」や「差別」の温床だ
ウェブサイト「ファンタジィ事典」は「世界各地の神話や伝承の事典。古代の神話から都市伝説やUMA(未確認動物)まで」をモットーに「ファンタジィ」に関する言葉を事典形式で整理していくウェブサイトだ。そのように「ファンタジィ事典」のトップページに標榜している。けれども、実のところ、あんまり「都市伝説」にはタッチしてこなかった。これは偏に「偏見」とか「差別」みたいなところに触れていくので、少しだけ怖さがあったからだ。
たとえば、牛女という妖怪は、屠場の娘という設定になっていて、明らかに「屠殺」に対する差別意識に根差している。つまり、牛を殺している家だから、牛の頭がついた女の子が生まれてもおかしくはない、という気持ちが含まれている。エイズ・メアリーなんて、そのままズバリ、エイズという病気を相手にしているので、非常にセンシティブだ。「性行為を介して意図的にエイズをばら撒く女性」というイメージなので、エイズ=性的放蕩という前時代的なイメージがあって、ものすごく取り扱いが難しいし、そういうのを「ファンタジィ」だと取り扱ってしまうのは、やっぱり、どこか後ろめたさがある。でも、結局のところ、エイズ・メアリーは妖怪なのだ。本当は存在しないのに、何だかリアリティがあって、怖くなって信じてしまう。そこに「ファンタジィ」の「ファンタジィ」たる所以がある。難しいのは、このエイズ・メアリーとかエイズ・ハリーとかは80年代後半に生まれた都市伝説だが、後になって、実在の事件が発覚してしまう。少なくとも、90年代後半に、Darnell McGeeやNushawn Williamsなどの複数の男性が、意図的にエイズを蔓延させた罪で逮捕されているし、1998年にはPamela Wiserという女性も同様の罪で逮捕されている。つまり、嘘から出た実ということになる。
ボクなんかは、マラウイに行ったときに、まさに「吸血鬼」の幻想と遭遇した。マラウイの田舎で、吸血鬼だと疑われる人が次々と村人たちに火をつけられて殺された。JICAは「吸血鬼」と呼んで、我々に避難を呼びかけていたが、実は現地ではBlood Sucker(ブラッド・サッカー)と呼んでいて、曰く、「最近、外国人と仲良くなって急に羽振りがよくなったあいつは、俺たちから血液を採取して、外国人に高額で売って儲けたんじゃないか」ということなのだ。まさに腎臓ドロボーの都市伝説に近くって、決して、ドラキュラ的なものを想像してはいけない。ああいうのも、本気でマラウイ人の田舎の人たちは信じて、暴徒と化したわけだから、笑いごとではない。
ミャンマー伝承をまとめていると、ハンセン病やくる病などへの恐れを表現した精霊たちがいて、こういうのをちゃんとまとめていくと、ああ、どちらにしても「偏見」や「差別」からは逃げられないな、と感じているところだ。だから、もう諦めて、そしてある程度は覚悟して、ここのところ、まとめて都市伝説を投稿している。
2023年7月2日 フィリピンは多民族国家であり、土着の精霊信仰がある。
ウェブサイト「ファンタジィ事典」ではここのところフィリピン伝承を整理しているところなので、頭の整理も兼ねて、少しだけフィリピンについてまとめておこうと思う。
フィリピンと言えば、英語ネイティブで熱心なカトリック教徒の国というイメージがある。厳格なカトリックなので、法律上、離婚制度がないというのも有名な話だ。でも、実際にはフィリピンは7,000もの島々からなる多民族国家で、180以上の民族が暮らしていて、それぞれに言語もたくさんある。
フィリピンは、オランダやアメリカに植民地支配され、一時は日本にも統治された歴史を持つが、そんな歴史の中で、独立運動の中心になったのがタガログ族だった。ルソン島を中心に暮らしていて、現在、公用語になっているフィリピン語は、タガログ語を標準化したものである。セブを中心としたヴィサヤ諸島にはヴィサヤ族が暮らしていて、セブアノ語を話す。ミンダナオ島の西部やスールー諸島では、ムスリムが暮らしている。歴史的には、インドネシアやマレーシアからイスラームが流入し、15世紀や16世紀にはフィリピンにスールー王国やマギンダナオ王国などのイスラーム国家が成立している。スールー諸島やマギンダナオに点在するこれらのイスラームの民族はモロ族と呼ばれている。その他、ルソン島の山岳部などに多数の少数民族がいて、現在でも独自の文化を残している。
実際、ボクは2014年に仕事でフィリピンに行った。そのときには、サンボアンガはイスラーム過激派の拠点になっていて、ミンダナオ島は護衛警官と一緒じゃなきゃ町中を歩けなかった。また、ルソン島の山岳民族が信じる先祖霊「アニト」とされる木製の人形がたくさん売っていた(後から調べたところ、必ずしもアニトはルソン島の少数民族だけに伝わるものではなくて、フィリピン全土で信仰されていた土着の精霊信仰のようだけれど)。
それぞれの民族には、それぞれの神話があったようで、たとえば、タガログ族では、バタラと呼ばれる創造神が最高神だとされる。ヴィサヤ族ではカプタンと呼ばれる天空神が最高神だ。その他、たとえばイフガオ族であればカブニアン神、ティンギアン族であればバガトゥラヤン神、ガダン族であればナノライ神、ヒリガイノン族であればラオン神が最高神であるらしい。当然、それぞれの民族は互いに影響を与えながらも、それぞれ独自の神さまと神話を持っていたらしい。その辺の詳細は、追々調査していかなきゃいけないなあ。
2023年6月30日 プチブロック幻獣シリーズの2つ目
ダイソーのプチブロックの幻獣シリーズの2つ目はユニコーンだ。
元々の一角獣の起源は古代ギリシアやローマで、たくさんの著述家が「モノケロース」とか「ウーニコルニス」などと言及しているが、これらは「インドサイ」のイメージを踏襲している。プチブロックのデザインは、中世のキリスト教時代のものだ。白馬としてのユニコーンがデザインされている。
このプチブロックのユニコーンもよく出来ていて、頭、首、四肢、尻尾の部分に駆動部があって、ある程度、自由に動く。四肢の関節部分も1か所、曲げられるようになっているので、色々なポーズをとらせることができる。たてがみや尻尾が青い透明ブロックになっているのも格好いい。
ちなみに、中世ヨーロッパの『フィシオロゴス』では、別に毛が青いわけではない。白馬の場合には、真っ白い毛並みであるし、実は古いものでは、茶色っぽいウマだったりする場合もある。
2023年6月26日 プチブロックに幻獣シリーズが!!
プチブロックに幻獣シリーズが出ていたらしい。調べてみると、去年の5月頃からダイソーで売られていたみたい。息子のツクル氏が見つけて欲しがったので、彼の分と自分の分とを買ってきた。現時点で4種類出ているみたいだけれど、1つ目は「ドラゴン」だ。早速、組み立ててみた。
赤い色のドラゴンで、タイプとしてはワイヴァーンの仲間っぽいデザインだ。脚が2つに翼が2枚。頭部からは2つの角が生えている。また、鼻のところからも1本、角が生えている。
首と翼、脚、尻尾の部分に駆動部があって比較的、自由に動く。尻尾も3か所で左右に曲げることができるし、脚の爪も広げることができる。目は青い透明パーツで、翼のところにはオレンジの透明パーツも使われている。よく出来ているなーと思った。
2023年6月24日 クリューサーオールが大人気!!
最近、「日々の雑記」を隔日で投稿しているが、それだけではなく、「ファンタジィ事典」も頻繁に更新しているつもりだ。学生の頃の情熱を取り戻している。そんなわけで、今までは更新だけ更新して更新しっ放しにしていたボクだけど、ちゃんとサイトを分析すべく、Googleアナリティクスを見たり、Google Search Consoleをチェックしたりしている。
今週になって、急にクリューサーオールの検索数とクリック数が増加した。クリューサーオールはギリシア・ローマ神話で、ペルセウスがメドゥーサの首を斬ったときに。その首からペーガソスとともに飛び出してきた怪物で、黄金の剣を持って生まれたと記述されている。そして、怪物ゲーリュオーンの父親となった。古代ギリシアの文献では、それだけしか記述がない非常にマイナなよく分からない怪物だ。それなのに、ここ数日で20~30件、閲覧されている。何故だろう。何かクリューサーオールが登場するゲームやアニメがあったのだろうか……。誰か、テル・ミー。
2023年6月20日 強いピーチ姫って本当に必要!?
映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」について大絶賛のコメントをしたが、1点、ポリコレだと感じたのは、ピーチ姫の取り扱いである。そんな想いもあって、事前に、全体を通した映画の感想(ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー)と、ディズニーのポリコレの記事(そもそもアリエルはデンマーク人が演じるべきでは!?)を先に投稿しておいた。
マリオとピーチ姫の関係は、しばしば、ペルセウス=アンドロメダ型と称される。要するに、囚われのお姫さまを英雄が助け出すという典型的な構図で、ギリシア神話の英雄ペルセウス、アンドロメダ姫、そして怪物ケートスの図式が、そのまんま、マリオ、ピーチ、クッパに対応しているわけだ。クッパは退治され、ピーチ姫は救出され、マリオは英雄として讃えられる。この構図が非常に古臭いわけだけど、でも、そういう構図の物語になっている。
でも、今回の映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」では、ピーチ姫は、マリオと戦う強い女性に修正されている。キノコ王国の危機に自ら立ち上がり、王国を救うべく冒険に繰り出す。こういうのは、ある種のポリコレの押し付けだと思う。女性が助けを待つだけの弱い存在である必要はないが、そういうか弱い女性がいたっていいのだ。それを敢えてキャラクタを変更して、強いピーチ姫像を描こうとしたのは、やっぱりその背後にポリコレ意識が見え隠れする。それが透けて見えてしまった時点で、物語の世界に入り込めないので、失敗だと思う。
そして、その癖、たくさんの人質を前に、ピーチ姫は結局、クッパに屈服して、結婚を承諾し、最後にマリオに救出される。最終的には、ペルセウス=アンドロメダ型の構図の中に落とし込まれてしまって、何のこっちゃ、と思ってしまう。そこだけが、唯一、この映画に対して不満を持ったところである。