2024年9月19日 プゴットを描いてみた

世の中、何が起こるか分からない。本日はフィリピン妖怪の第37弾で「プゴット」を描いてみたわけだけど、Xで珍しくバズっている。吃驚仰天。

プゴットのイラスト

まあ、そもそものバズるの定義がよく分からないし、バズるほどのアクセスでもないんだけど、でも、少なくとも、今までは平均でインプレッションが大体、150~200回くらいで、うまく絵が描けたなあと思っていると500回に届くくらいのときがあった。ところが、今回はあっという間に2000回を超えた。しかも、フォロワーでもないし、今まで絡んだことのない人たちがリポストしたり、いいねを押したりしている。要するに、妖怪界隈ではない人たちの目に触れたということになる。こんな恐ろしい姿なのに「下着泥棒」というところがハネた理由なのかもしれない。うーん。

正直、絵としてはうまく描けなかった。何度か描き直してはみたんだけど、どう直しても、結局、立体感がちょっとだけ足らなくって、色味も淡くって、イマイチだなあ、と思っていた。何ならゼロから描き直すことにして、投稿そのものをやめて、別の絵に差し替えようかと思っていたくらいだ。それなのに、投稿してみたら、案外、バズったものだから、驚いている。何がウケるのかは分からないものだなあ。

2024年8月22日 フィリピン妖怪第36弾「マラカット」

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第36弾で「マラカット」を描いてみた。

マラカットのイラスト

マラカットはアスワンの一種で、昼間は人間として村の中で暮らしているが、夜になると毛むくじゃらの獣に変身する。いわばオオカミ人間みたいな存在だが、攻撃方法が独特で、長い毛で相手の首を絞め、鼻や口を塞いで窒息死させる。フィリピンのアスワンにはこういう類いのものが多い。マンララヨとかクボットグモンなんかは、みんな、毛で獲物を攻撃する。

古来より、フィリピン人というのは、何らか「毛」に対して怖さを感じていたのだろうか。その感性は不思議な感じがする。日本でも、水辺だと髪の毛が足に絡まる感覚があって、ひやっとすることがある。だから、濡れ女なんかは髪の毛で相手を殺してしまうのかなあ、と想像する。都市伝説でも、プールで女の人の髪の毛に足をさらわれて溺れさせられるというのはちらほら見かける。

そんなわけで、オオカミ人間っぽくありつつ、髪の毛が長いという不思議なイラストを描いてみた。

2024年8月14日 クボットを描いてみた。

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第35弾で「クボット」を描いてみた。もう気づけばフィリピン妖怪も第35弾になるんだなあ。我ながら、頑張っているなあ。

クボットのイラスト

さて、クボットはフィリピンの吸血妖怪アスワンの一種で、長い髪の毛で獲物の首を絞め、鼻や口などの開口部に髪の毛を突っ込んで窒素させる。そして毛先から生命力を吸い取る。まさにフィリピンの髪の毛妖怪軍団の第3弾だ。

第1弾がマンララヨ、第2弾がグモン、そして第3弾がクボット。クボットの特徴は、髪の毛を広げて空を飛ぶこともできる点だ。だから、髪の毛をバサーッと広げて、空を飛んでいるシーンを描いてみた。後はマラカットを描けば、フィリピンの髪の毛妖怪軍団コンプリートだ。頑張るぞー。

それにしても、筆がノっている。タブレットお絵描きの場合には、ペンタブがノっているというのか!?

2024年8月2日 ペンタブだけど、筆がノったぜ!!

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクトの第34弾で、「グモン」を描いてみた。毛の塊が地面を這っていて、毛を伸ばして獲物の人間を絞めたり、口や鼻などに毛を突っ込んで窒息させて殺してしまう恐ろしい妖怪だ。

7月22日の髪の毛で人間を襲うフィリピンの妖怪たち!?の記事でも書いたが、フィリピンは髪の毛の妖怪がたくさんいる。マンララヨは描いたが、順次、フィリピンの髪の毛妖怪を描いてみたいなと思って、まずはグモンを描いてみた。

グモンのイラスト

筆がノッたという表現がCGにも通用するのか分からないけれど、まさにそんな感覚だ。髪の毛を描くのが苦手だったし、這っている女の人の絵も構図としては難しいと思っていたんだけど、するすると描けた。イメージどおりに描けた。もしかしたら、1月から毎週、毎週、2枚以上の絵を描いてきた成果が実ったのかもしれない。結構、気持ち悪くて、まさに妖怪という感じの絵だ。わはははー。

2024年7月25日 パティン・ナ・パクパカンを描いてみた。

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第33弾で「パティン・ナ・パクパカン」を描いてみた。ビコル地方の『イバロン叙事詩』の中で、英雄ハンディオンと仲間たちに襲い掛かった空飛ぶサメの一団。上空を旋回して次々と急襲してくる。

パティン・ナ・パクパカンのイラスト

サメと言えば、灰色のイメージがあるが、ボクはいつもサメを描くときには灰緑色で塗るのがしっくり来る。だから、別に神話・伝承でパティン・ナ・パクパカンが「緑色」と記述されているわけではないのでご用心(笑)。

本当は上空を旋回しているシーンを描いた方が伝承に即している。でも、それだと飛んでいるのか泳いでいるのかが分かりにくくなってしまったので、飛び出している瞬間の絵にしてみた。技術力があれば、上空を旋回して獲物を狙っているような絵も描けるのかもしれない。そもそも、背景を入れたら楽勝なんだよね。背景を入れないで真っ白の正方形の中に妖怪を描くというテンプレートに決めてしまったので、それで結構、苦しめられているところはある。妖怪画と言えばメガテンの金子一馬氏のイメージがあって、どうしてもそのイメージから脱却できない。

2024年7月22日 髪の毛で人間を襲うフィリピンの妖怪たち!?

土日にフィリピン伝承の調査をしていた。意外と時間がかかって、土日にはファンタジィ事典の更新までは辿り着けなかった。……というのも、髪の毛で人間を襲うという吸血鬼マンララヨについて調べていたときに、アスワン・プロジェクトの記事の中で、マンララヨが日本の妖怪に似ている指摘されていた。おそらく、磯女を念頭に置いた記述だと思われる。磯女も髪の毛で人間を血を吸う。そして、カガヤン・デ・オロの人々は、日本軍を怖がらせるためにマンララヨの伝承を広めたと説明されていた。

でも、調べてみると、意外とフィリピン全土に髪の毛で人間を襲う妖怪がたくさん、登場する。たとえば、グモンなんかは毛の塊そのものの妖怪で、毛の塊の中には女性の妖怪がいるとされているが、毛がメインのヴィジュアルになっている。オオカミ人間みたいな妖怪もいる。マラカットと言って、夜になると毛むくじゃらの獣になって、涎を垂らしながら襲ってくる。これも、長い毛で攻撃してくるわけである。

「アスワン・クロニクル2」というフィリピン映画にはクボットが登場するが、これなんかは、まさにマラカットとかグモンとかマンララヨとかのイメージが全部、ごちゃ混ぜになった感じである。毛の塊から手足がはみ出したような妖怪が地面にいて、獲物を見つけると涎を垂らした獣のように四足歩行になる。そして、髪の毛で獲物を包み込んで窒息死させてしまう。髪の毛を大きく広げて、空中を移動する。もう、フィリピンの髪の毛妖怪を全部、混ぜたような能力とヴィジュアルである。ボクのアスワンのイメージが凝縮されている。

2024年7月7日 ティユ・アンを描いてみた

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こす企画第32弾でティユ・アンを描いてみた。実はずぅっと描きたいと思っていたフィリピンの妖怪のひとつだ。

ティユ・アンのイラスト

ティユ・アンは《小犬を連れた女》という意味。フィリピンでもそんなにメジャーな妖怪ではないのかもしれない。でも、ちょっと面白い妖怪だ。

彼女が飼っているのは永遠に年を取らない小犬だ。母から娘へと代々引き継がれている。日本で言えば、狐憑きとか犬神憑きみたいな感じで、その家にとり憑いているわけだ。そして、小犬が彼女の足をペロペロと舐め始めたら、それは狩りの合図だ。彼女は吸血鬼となって、屋根の上に跳躍し、寝ている妊婦の子宮に長い舌を差し入れて、胎児の血を吸う。

結局のところ、このかわいい小犬こそがこの妖怪の本体だというところがとても変わっていて、それが面白いなと思って、イラストに描き起こしたいと思っていた。世界的に見ても、こういう妖怪って珍しいのでは? 

だから、女性の方は意外と普通の女性にして、犬も普通に描いて、両者を繋げるように、紫色のオーラでつなげてみた。彼女が操られているようなイメージだ。どうだろうか。

2024年6月16日 ランポンのひげは緑色なのか!?

1か月振りくらいにフィリピンの妖怪のイラストを描いてみた。フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクトの第31弾の「ランポン」だ。ランポンは森の獣を守護する小人だ。森に狩猟者が現れると1つ目の真っ白いシカに変身して狩猟者の気を惹き、森の獣たちを逃がす。

意外と英語の解釈が難しくて、「one-eyed」とか「single eye」という表現が曲者だ。《片目の》とも訳せるし《単眼の》とも訳せる。フィリピンのイラストレータは片目が傷ついたシカのヴァージョンで描いている人もいれば、頭の真ん中に1つしかない単眼のシカを描いている人もいる。どちらが正解なのかは正直、よく分からない。でも、複数の辞書を参照して、どうも「one-eyed」とか「single eye」の用例にキュクロープスがたくさん出てくるので、ボクは「1つ目のシカ」を採用して描いてみた。

小人の方は比較的、多くのイラストレータの絵が一致していたので、裸ん坊に長いひげの姿を採用した。文章にはとんがり2つの黒い帽子という記述があるが、多くの人はシカの角を生やした禿の小人で描いている。でも、文章に忠実にするために、とんがり2つの黒い帽子で描いてみた。でも、シカの角が生えているっぽい雰囲気は少しだけ残してみた。ひげについては、白髭という記述もあるんだけど、多くのイラストレータが緑色で描いているので、悩んだ末、緑を採用してみた。

そんなわけで、1枚、絵を描くだけでも、いろいろな資料を当たって、検討し、決断をしながら絵に起こしている。それが正解かどうかは分からない。でも、極力、納得できるまで熟考するようにはしている。

2024年4月12日 その国の妖怪らしさってあるよね。

先日、ファンタジィ事典サムヒギン・ア・ドゥールの項目を更新して(ただイラストを掲載しただけ!)、改めてイギリスの妖怪(妖精という方がイメージに近いのかもしれないけれど)に興味が出てきた。それで、キャサリン・ブリッグズ氏の『妖精 Who’s Who』を叩き台に、イギリスの妖怪について整理をしている。

何故、今さらながらイギリスの妖怪に興味を持ったのかというと、1月からずぅっとフィリピンの妖怪を更新してきて3か月とちょっと。データベースとしてはかなり蓄積されてきたんだけど、今、フィリピンの妖怪の雰囲気が分かってきた感覚がある。言語化しにくいんだけど、総体として、フィリピンの妖怪らしさというのか、フィリピンの妖怪ってこんなイメージみたいなものが掴みかけてきた。そして、タイの妖怪に徐々に移行しながら、タイの妖怪はタイの妖怪で、独特の雰囲気があって、そこにまた埋没していく感覚がある。

そうなると、俄然、他の国の妖怪にも興味が出てくる。アジアだけでなく、ヨーロッパだって同じ感覚でやれるのではないか。学生時代に、よくイギリスの妖怪は調べていた。でも、フィリピンの妖怪を調査してきた今だったら、また別の感じ方、捉え方があるのかもしれない。そう思った次第。それで、ちょっと試しにイギリスの妖怪について頭の中で整理を始めた。緩やかに放出していければよいかな、と思っている。

2024年4月6日 フィリピンからタイに徐々に移行!?

ウェブサイト「ファンタジィ事典」にケルト神話がないというのに気づいて、大慌てで準備して、ようやく、ケルト神話の項目を掲載し始めたボクである。それから、タイの妖怪も精力的に追加してみている。フィリピンの妖怪に続いて、タイの妖怪の絵も描いてみたいと思っているから、まずは項目を準備して、頭の中を整理しておこうと思っている。

フィリピンの妖怪も、もちろん、まだまだたくさんいるので、引き続き、調査して掲載していきたいんだけど、でも、元々、マニアックなところで、さらにマニアックなところに踏み込んでいきすぎると、あんまりよくない。フィリピンにおいてメジャーなところをある程度押さえたら、そこで一度、線引きをして、そこから先は緩やかにして、別に国の要所を抑えた方が、きっと事典として広がりがある。次はタイの妖怪をターゲットにしてみようかな、と思っている。

タイの妖怪は、でも、タイ語なので、フィリピンの英語とは違って、なかなか難しさはある。今は便利な時代で、タイ語であろうがミャンマー語であろうが機械が翻訳してくれるんだけど、英語のサイトと違って、タイ語のウェブサイトだと、絞り込みが難しい。英語だったら、妖怪の名称に加えて、「現地の姿」とか「神話」とか「イラスト」とか、それこそ、いろんなキーワードをつけて情報の精度を上げていけるけど、タイ語だとそういうところに難しさがある。それこそ、googleで上がってきたら、上から順にみていくしかない。それでも、まあ、機械が訳してくれるので、いい時代にはなったと思う。

2024年3月26日 フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト

2024年1月から継続して「フィリピンの妖怪」のイラストを描いてきて、現時点で26項目になった。勝手なイメージとして、50項目行くのは大変だな、と思っている。でも、その半分の25項目を越えたら、一端というのか、それなりという感じがしていて、せっかくなので、これまでのイラストをひとまとめにした特設のページを作成してみた。

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト

日本における東南アジアの妖怪の知名度は必ずしも高くはない。ゲームや小説でも、あんまりモチーフとして使われない。でも、こうやってイラストをきっかけに「フィリピンの妖怪」に興味を持つというアプローチもいいのではないか。そう思っている。

2024年3月24日 久々の更新だ!

3月の怒涛の忙しさにようやく一息つき、本業(?)のウェブサイト「ファンタジィ事典」を久々に更新した。1か月振りの更新だ。

さてさて、ここからはどんどん事典を更新して、それから、絵も描いていこうと思う。フィリピンの妖怪シリーズは、もう少しだけは続けられるだろうか……。そろそろネタ切れ感もあるので、緩やかにタイの妖怪にシフトしていきたい。

2024年3月5日 フィリピンの妖怪を可視化【17】アマランヒグ

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第17弾。アマランヒグのイラストを投稿してみる。

アマランヒグはフィリピン伝承のヴィサヤ地方に伝わるアンデッド系モンスターである。一度、死んだ後に生き返った存在で、基本的には死体なので、腐った肉のような悪臭が漂っている。森の中に棲息し、夜になると人里にやってきて眠っている人間を襲い、鼻から血を啜る。襲われた被害者もアマランヒグになってしまうと信じられている。

アマランヒグは全身が硬直していて、関節が固いため、万が一、襲われた場合には、曲がりくねった木の間を逃げたり、木に登ったり、ジグザグに走れば、追跡から逃れることができる。また、水が苦手なため、川や湖に飛び込むか、川を渡って越えてしまえば、もう追い掛けてはこない。

フィリピンではアスワンと呼ばれる吸血鬼の仲間たちが知られている。地域によっては、この吸血鬼の能力は他人に譲渡できると信じられている。そのため、彼らは天寿を全うする前に、子孫に自分の能力を移譲しようとする。しかし、誰もその能力を引き継がなかった場合には、彼らは死後も吸血鬼として生き続けることになる。それがアマランヒグなのだと説明される。そういう意味では、哀れな存在と言える。

  

2024年3月1日 フィリピンの妖怪を可視化【16】カタウ

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第16弾。カタウのイラストを投稿してみる。

カタウはフィリピン伝承に登場する海の一族。海に囲まれた島国であるフィリピンには、バンタイ・トゥビグ(bantay tubig)と呼ばれる人魚や半魚人などの海の一族がたくさん知られている。人魚のマギンダラ、半魚人のショコイなど、いろいろな種族が知られているが、ヴィサヤ諸島では、カタウはこれらのバンタイ・トゥビグたちを支配する種族であると信じられている。カタウは、その姿こそ人間に似ているが、エラ呼吸で、腕や足にはヒレが生えている。カタウは海の干満や波など、水を制御して操る能力を持つ。ときには水を氷らせることもできるという。そして、しばしば漁師に姿を変え、近づいてきた人間を溺れさせてしまう。

カタウはしばしば、こちらが話したことをオウム返しに繰り返す習性がある。また、東ネグロスではカタウは子供くらいの大きさだとされていて、しばしば、排水溝を泳ぐ姿を目撃されている。カタウの毛は豊漁を約束してくれるので、大切なお守りになるとされる。

  

2024年2月26日 フィリピンの妖怪を可視化【15】カランゲット

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第15弾。カランゲットのイラストを投稿してみる。

カランゲットはフィリピンの土の精霊である。頭が大きな老人で、醜い姿をしている。しかし、そんな彼らこそが実は土地の真の所有者なのである。そのため、新しく土地を開墾して作物を育てる場合や、その土地に家を建てる場合などには、常にカランゲットに供物を奉げる必要がある。

カランゲットへの供物は食べものでよい。でも、彼らはショウガや胡椒、酢などの味が強いものは苦手なので、塩や香辛料などは加えない。供物を捧げることを怠ると、その人間は謎の病気になって、気が触れたり、最悪の場合は死に至ることもある。

ちなみに、力のある魔術師に呼び出されて、地面から出現することもあるらしい。

  

2024年2月22日 フィリピンの妖怪を可視化【14】ダラケトノン

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第14弾。ダラケトノンのイラストを投稿してみる。

ダラケトノンはダラケトの木に暮らす精霊である。ダラケトの木は絞め殺しの木で、他の木に寄生して巻き付き、やがて宿主を殺してしまう。そうすると、中に空洞ができる。この空洞は異世界に繋がっていて、ダラケトノンたちはその異世界からやってきて、現代社会に溶け込んで暮らしている。しばしば、今風の格好をして、ときには乗用車に乗っていることもあるという。しかし、ダラケトノンの耳は尖っていて、肌は灰色、髪の毛と目は白いという。

そして、人間を誘拐して異世界に連れて行ってしまう。異世界で黒米を出されて、うっかり口にしてしまうと、その人間はもう現世には戻れない。ダラケトノンの下僕として異世界で暮らし続けることになる。ときどき、人間が行方不明になると、それはダラケトノンの仕業なのかもしれない。

  

2024年2月18日 フィリピンの妖怪を可視化【13】マギンダラ/シレーナ

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第13弾。マギンダラのイラストを投稿してみる。

マギンダラあるいはシレーナはフィリピンの人魚である。ヨーロッパのマーメイドに比べると残酷で、人間を海に引き込んで殺してしまう。そのため、一般的には忌み嫌われている。美しい歌声で漁師を惑わして、船を暗礁に乗り上げさせたり、誘惑して海に引き込んで溺れさせたりする。ときにはその美しさに魅了されて海の底に逃げるマギンダラを追いかけ続け、そのまま溺死することもある。

フィリピンは島国なので、海はさまざまな資源の宝庫でありながらも、一方で水難事故も多かったと思われる。日本の河童などと同じように、マギンダラは海の恐ろしさを象徴しているとも言える。ちなみに、古代ギリシアも海の怪物はたくさんいて、セイレーンたちは歌で船乗りたちを誘惑して船を座礁させる。セイレーンは海鳥の妖怪だが、マギンダラの別名のシレーナは、このセイレーンに由来している可能性もある。

  

2024年2月14日 フィリピンの妖怪を可視化【12】カペローサ/ホワイト・レディ

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第12弾。カペローサのイラストを投稿してみる。

カペローサはこの世に無念を残して死んだ女性の幽霊だ。地縛霊の類いで、執着のある場所に出没して、人を驚かせる。マニラの隣のケソン市では、タクシーの後部座席に乗り込んできて、運転手がバックミラー越しに女性を覗くと、血まみれで痣だらけの女性で驚いて振り返ると姿が消えているという都市伝説的な怪談がよく知られている。ホワイト・レディとも呼ばれている。

ちなみに、現在のカペローサ、あるいはホワイト・レディは、日本のホラー映画の貞子のイメージを踏襲して、白い服に長い黒髪で顔を隠しているものが多い。アジア圏では、貞子のインパクトは大きかったと言える。

  

2024年2月12日 フィリピンの妖怪を描いている最近の雑感。

誰に求められているわけではないのに自分で勝手に決めてフィリピンの妖怪を描き続けている。続けることに意味があると思っていて、すでに20体以上のフィリピンの妖怪を描き終えていて、今後、順次、公開されていく段取りになっている。こうなってくると、ボクの悪い癖で他のジャンルに浮気したくなる。基本的には飽き性である。

フィリピンの妖怪たち

それでも、ボクのスケジュール帳には「この日はこの妖怪を描く」という予定だけはずぅっと入っていて、今は粛々とそれに従って絵を描いている。まだまだ描いてみたいフィリピンの妖怪は残っているし、今も尚、ファンタジィ事典にフィリピンの妖怪の項目を追加し続けている。もうしばらく、フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクトは続けていきたい。

ただ、正直なところを述べると、フィリピンの妖怪って、需要がそんなにないんだよなあ、というのが本音だ。否、むしろその需要を作るために、イラストに描き起こすことで、みんなのイメージを喚起して、クリエイターたちがファンタジィ作品にフィリピンの妖怪を取り込みやすくしようと画策しているのである。だから、現時点では、Xpixivの反応は薄い。畢竟、モチベが上がっていかない。

そんなわけで、まだまだネタ切れになるまではフィリピンの妖怪を描き続けたいと決意しつつ、次なる一手として、知名度があってみんなに反応されるような妖怪の絵も描きつつ、フィリピンの妖怪と交互に投稿するような素敵なシナリオを考えなきゃいけないなあと思っている。

それからもうひとつ。意外とフィリピンの妖怪を投稿して、フィリピン人が反応してくれたりするので、今度はタイとかインドネシアの妖怪に水平展開して、国際交流を図ってみてもよいかなと思っている。この辺の妖怪たちは相互に関連していて、似たような側面があるので、比べることで見えてくる姿もある。そんなこんな。

2024年2月10日 フィリピンの妖怪を可視化【11】ショコイ

フィリピンの妖怪をイラストに描き起こすプロジェクト第11弾。ショコイのイラストを投稿してみる。

ショコイはいわゆる半魚人だ。フィリピンは海に囲まれた島国なので、当然、海の妖怪はたくさん知られている。人魚や半魚人などの海の一族はバンタイ・トゥビグ(bantay tubig)と呼ばれているが、ショコイは、これらのバンタイ・トゥビグたちの中ではもっと魚に近い姿をしている。水掻き、ヒレなどを備え、全身は鱗に覆われていて、エラ呼吸で暮らしている。まさにユニバーサル映画に登場するギルマン、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場するサハギンのような姿だ。

ショコイは海の一族の中では恐ろしいやつらで、獰猛で、人間を溺れさせて喰らうとされる。男性が凶暴である点は、ヨーロッパのマーメイドマーマンの関係にも似ている。