アスワン

分 類フィリピン伝承
名 称 aswang(アスワン)【フィリピン諸語】
容 姿夜に化け物に変身。腰のところで分かれるもの、翼を生やして空を飛ぶものなど、さまざま。
特 徴フィリピンの代表的な妖怪。昼間は人間として暮らし、夜は化け物に変身して人間を襲う。
出 典

フィリピンの妖怪の代表格!?

アスワンはフィリピンに広く知られる妖怪である。昼間は人間として暮らしているが、夜になると恐ろしい化け物に変身して人間を襲う。その多くは女性である場合が多い。生き血を啜るタイプや、内臓や胎児を喰らうタイプ、腐肉を喰らうタイプなど、さまざまなものが知られる。上半身と下半身が分かれるなどの特徴を持つものも多い。

アスワン、生き血を啜る!?

吸血タイプのアスワンの場合、大抵、美しい女性の姿をしていて、何も知らない若い男性を魅了して結婚する。毎晩、少しずつ、若者の血を啜り、若者は衰弱してやがて死んでしまう。そうすると、この化け物は次の若者を探しに行く。アスワンの口には、蚊の口吻のような尖った舌があるとされ、これを首筋に突き刺して血を啜るのである。

アスワン、内臓や退治を喰らう!?

マナナンガルに代表されるような内臓や胎児を喰らうタイプの妖怪は、ストローのような長い管状の舌を持ち、非常に長く伸ばすことができる。このタイプも女性が多い。夜になると腰の部分で分裂し、上半身だけが空を飛んで獲物を探すものが多い。そして茅葺の屋根から舌を差し入れて、内臓を喰らう。または妊婦を狙って、胎内の胎児を喰らう。このようなタイプの妖怪はフィリピンだけでなく、インドネシアやマレーシアなどにも知られている(ペナンガラン)。

アスワンは人狼であり、魔女でもあり、グールでもある!?

人狼のようなタイプは、男性も女性もいて、昼間は普通に人間として暮らしている。夜になると化け物に変身する。ヨーロッパでは人狼、中国では人狐、インドでは人虎などが知られるが、フィリピンの場合は、イヌのような姿のものが多いので、差し詰め「人犬」ということになる。夜になると、秘薬を全身に塗り、呪文を唱えて、化け物に変身する場合もある。

アスワンには魔女の側面もある。村から追放され、村外れの小屋に棲み、さまざまな魚や虫などに魔法で入り込み、口などから相手の体内に侵入して病気を引き起こす。また、死体を盗み、それを喰らうアスワンも知られる。長い爪や鋭い歯を持ち、墓地から死体を掘り起こして喰らう。

バナナの木の幹で犠牲者の死を偽装!?

人間を襲った後、犠牲者の代わりにバナナの木の幹などをその犠牲者に変身させて、しばらく生きているように偽装し、犠牲者が死んだことがすぐにバレないようにする能力を持つアスワンも多い。アスワンが作り出したダミーの人間は、その後、病気になり、自然死するというから厄介だ。

このように、フィリピンのアスワンは非常に複雑で広範囲な概念を含む妖怪の総称である。なお、アスワンの目に移る像は上下が逆さまだとされるので、昼間でも、これでアスワンを見分けることができる。アスワンに対しては、塩やニンニクが有効だとされる。

《参考文献》

Last update: 2023/06/04

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