ペナンガラン

分 類マレーシア伝承
名 称 Penanggalan(ペナンガラン)【マレー語】
Penanggal(ペナンガル)【マレー語】
容 姿女の首で、首から下に臓器がぶら下がった姿。
特 徴首だけで空を飛び、妊婦や胎児の血を啜る。昼間は普通に人間として暮らす。
出 典

魔女、修行の果てに首と臓器だけの姿で空を飛ぶ!?

ペナンガランはマレーシアに伝わる吸血鬼。自由に空を飛び回る女の首で、首の下には胃袋や内臓をぶら下げている。ペナンガランは、tanggal(タンガル)《切り離す》という語に由来する。夜空を飛ぶときには、内臓はホタルのように光っていて、まるで火の玉のように見えるという。

ペナンガランは妖怪のように取り扱われることが多いが、日中は普通の人間として暮らしている。黒魔術を実践する魔女が修行の末に姿を変えたものなのである。ペナンガランになるための儀式として、お酢を湯船に張って、身体を沈め、頭だけを出して瞑想する。こうすると、やがてペナンガランになれるという。日中には普通の人間に戻って生活しているが、ペナンガランの姿になって活動すると、また臓器を酢に浸す必要がある。だから、ペナンガランは常に酢の匂いがする。日中、普通の人間の姿をしていても、酢の匂いで正体がばれることもあるという。

ペナンガランが狙うのは妊婦と胎児で、高床式の伝統的なマレーシアの家では、ペナンガランは床下に潜り込み、そこから長い舌で妊婦と胎児の血を吸う。このため、女性が妊娠すると、パンダナスというトゲのついた植物の葉を散らしたり、割れたガラスを撒いて身を守ったという。これらのトゲやガラスがペナンガランの臓器を傷つけるため、ペナンガランが近づかないという。枕の下にハサミを入れるなどの予防策も知られる。

ペナンガランが外出しているとき、身体はそのまま家に置いてきているので、臓器が抜け出した穴にガラスの破片を入れたり、そのまま身体を燃やしてしまえば、日の出とともに死んでしまうとされる。また、身体の向きを変えておくと、戻って来たときに前後を間違えてくっついてしまい、次の日には正体がばれるという方法も伝わっている。

東南アジアには似たような妖怪が多い!?

ペナンガランのように、首だけで飛び回る吸血妖怪は東南アジアには多く、同じマレーシアのサバ州にはバランバラン、インドネシアのバリ島にはレアク、カリマンタン島にはクヤン、西スマトラにはパラシク、タイにはクラスー、ラオスにはカスー、カンボジアにはアープなどが知られる。これらはみんな、首に臓器をぶら下げて空を飛ぶ吸血鬼である。フィリピンには上半身だけ飛び回る吸血鬼のマナナンガルがいる。日本にも抜け首(ヌケクビ)という妖怪がいる。これも吸血鬼の仲間とされる。

《参考文献》

Last update: 2020/04/18

サイト内検索