2026年1月15日 朝鮮妖怪を続々と……
引き続き、朝鮮伝承の妖怪を粛々と更新している。
ポンファン(鳳凰)は元々、中国の妖怪として取り扱っていたが、今回、朝鮮半島の要素を加筆した。ミョドゥサ(猫頭蛇)も地図を加えて、もう少し丁寧に原典を調査して加筆してみた。今回、再調査してみて、中国で則天武后が鳳凰を政治利用していた話とか、新羅の第27代の善徳女王(ソンドクニョワン)の時代に鳳凰が出現した話とか、女性と結びつけられてきたことが分かった。ミョドゥサについても、儒教と民間信仰の対立構造(民間信仰は誤りだという考え)が背景にあることも分かった。こうやって、勉強すればするほど、新しい気づきがあって、成長していることを実感する。
一方、新規の項目はカンギル(羌吉)とデイン(大人)だ。カンギルは昔にちょっと韓国のウェブサイトをリサーチしてまとめていたが、今回、ク・ソンデ氏の『韓国妖怪図鑑』を軸にまとめ直してみた。デインは韓国語で《巨人》を意味する言葉だから、立項する必要はないかなあとも思ったが、アニメ『猫の刻の伝説(묘시의 전설)』(YouTube、韓国語)で海と結びつきの強い怪物として描かれていたのを思い出した。《腰から下を水に入れた巨人》という意味で、요하입수거인(ヨハイプスゴイン)という表記の巨人も見たことがあるので、敢えて立項してみた次第。
さてはて。引き続き、朝鮮伝承を充実させていこうと思う。
2026年1月13日 特別展「朝鮮の妖怪を描く」を始動!!
朝鮮の妖怪を鋭意、まとめているが、その一環として、特別展「朝鮮の妖怪を描く」という企画を立ち上げてみた。今まで描いた妖怪たちをまとめてみた次第。
バナーに描いた妖怪はカンギルだ。でも、カンギルそのものの絵はまだ描いていないので、これから描いてみたい。
併せて、トゥビョン(豆兵)、テソ(大鼠)、テジョムオ(大点魚)も立項してみた。トゥビョンは豆が兵士に変化して戦う。テソはネコをも喰らう巨大なネズミだ。そして、テジョムオは潮の満ち引きを引き起こす巨大なナマズ。入院中にこつこつとコ・ソンベ氏の『韓国妖怪図鑑』を訳していたので、それを足掛かりに整理してみた次第だ。いい感じに朝鮮の妖怪も充実してきた気がする。楽しいなあ。
2026年1月11日 『韓国妖怪図鑑』よりホニョ(虎女)
2026年になって早々に入院していた八朔シータです。
さて、年始はずぅっと入院していたので、病院でやることがなかったので、コ・ソンベ(고성배)氏の『韓国妖怪図鑑(한곡 요괴 도감)』を読んで訳していた。4分の1くらい読めたので、それを順次、ウェブサイト「ファンタジィ事典」に反映させていこうと思っている。
まずはホニョ(虎女)から解説してみたい。実は『韓国妖怪図鑑』では「金現感虎(キムヒョンカムホ)」という名称で立項されていた。「金現(キム・ヒョン)に感動したトラ」みたいな訳になると思う。こういう有名な物語が韓国ではよく知られていて、人間の女に化けたトラがキム・ヒョンという男性が熱心に仏に祈るのに感銘を受け、自分の命を犠牲にしてキム・ヒョンを出世させたという物語だ。ホニョ(虎女)は、わざと市場で暴れて、キム・ヒョンに自分を退治させることで、キム・ヒョンを王に認めさせるという筋書きだ。
この「金現感虎(キムヒョンカムホ)」の物語に登場する女性には名前がない。ファンタジィ事典では、ホニョ(虎女)という名称で立項してみた。
ちなみに、ずぅっと念願だった朝鮮半島の地図も作成してみた。金現感虎の舞台となった興輪寺を、折角、作成した地図に明示してみた。

きっと、ホニョ(虎女)をファンタジィ作品に登場させるとしたら、愛する男性を必死で護る過保護で献身的なトラの妖怪というイメージになるのだろうなあ。ふふふ。
2026年1月10日 デュラハンを描いてみた。
あ、そうだ。年賀状用に今年、描いた絵はアイルランド伝承のデュラハンだ。ウマが馬車を牽くという難易度の高いイラストに挑戦してみた。

実は、12年前は首切れ馬に跨った夜行さんを描いているので、「本質的にウマの妖怪ではないものを描く」というひねくれ具合は12年経っても変わっていないと言える。今回など、デュラハンを牽くウマにフォーカスを当てているので、尚更、本質からは離れている。
でも、死すべき人間の前に現れて、死者を墓場まで連れて行くという「死の馬車」という個別の伝承がアイルランドにはあって、首なし妖怪のデュラハンと統合したとも言える。だから、まあ、本質的にはこの馬車も妖怪と言えば妖怪だ。そんなイメージで描いてみた。
それにしても、デュラハンを描こうと決めて、ファンタジィ事典を探したら、デュラハンが立項されていなかった。あんなに有名な妖怪なのに、載っていなかったのだ。ちょっとビックリして、大慌てで立項した次第。こういうこともある。結構、洩れなく更新するように心掛けているのに、有名なものが抜け落ちていることはよくある。わっはっは。
2025年12月24日 マリ・ルイドを描いてみた。
メリー・クリスマス。クリスマスなのに体調を崩してチキンもケーキも食べることが叶わない八朔シータです!!
さて、本日はちょっと趣向を変えて、ウェールズ伝承の「マリ・ルイド」を描いてみた。

マリ・ルイドはウェールズに伝わる死と再生を司る精霊だ。頭はウマの頭蓋骨で、新年になると家々を訪問し、カタカタと歯を鳴らして子供を脅かす。まさにウェールズ版の獅子舞である。
家主はマリ・ルイドがやって来ても、おいそれとは家に立ち入らせない。いろいろと理由を捏ねて、立ち入りを拒否する。マリ・ルイド側も、ああだこうだ家主を論破していく。そして、押し問答の末に家に入り、ビールをねだり、家の中を走り回る。子供たちを追いかけまわす。そのような興成の即興劇みたいなものが、繰り広げられるらしい。最終的には訪れた家に幸運をもたらすらしいので、ナマハゲにも似た存在とも言えるかもしれない。
と言うことで、クリスマスなので、それにまつわるような形で、マリ・ルイドを載せてみた。
2025年12月17日 三つ目入道を描いてみた。
日本伝承の「三つ目入道」を描いてみた。

三つ目入道は、三つ目の大男で夜道で人を驚かせる。江戸時代の草双紙ではしばしば妖怪の親玉として多くの手下を率いている。『化物一代記』(作:伊庭可笑、画:鳥居清長)では人間として誕生し、三つ目入道に成長して妖怪の親玉になった。
実は今回、密かに「妖怪の親玉シリーズ」というのをやってみた。見越入道、ぬらりひょん、ももんがあ、そして三つ目入道。いずれの妖怪たちも、妖怪の親玉である。江戸時代の草双紙では、断トツで見越入道に軍配が上がる。次点で三つ目入道。三番手がももんがあ。昭和に入ると、ぬらりひょんが妖怪たちの親玉になる。

実は、他にも『稲生物怪録』だと山本五郎左衛門と神野悪五郎の二大巨頭が化け物たちを率いているし、『異境備忘録』では12人の魔王がいて、その筆頭は造物大女王だと言うし、いろいろといるんだけど、今回はこの4匹の妖怪にとどめてみた。そのうち、他の親玉も描いてみたいなあ。
2025年12月10日 ももんがあを描いてみた。
日本伝承の「ももんがあ」を描いてみた。

着物を頭にかぶってモモンガの真似をして子供を脅かす遊びから発展したとされる妖怪。箱根の先に隠居した「廃れ者」妖怪の代名詞でもある。
ちなみに、最近はずぅっと、勝手に「妖怪の親玉」シリーズをやっている。見越入道、ぬらりひょん、そしてももんがあ。ももんがあが江戸時代の庶民にとって妖怪の親玉的な存在だったかどうかは分からない。でも、赤本『是は御ぞんじのばけ物にて御座候』では化け物たちを率いて見越入道と戦っている。
十返舎一九の黄表紙『怪談深山桜』では、見越入道はももんがあから化け方のことごとくを伝授してもらって、化け物たちの総お頭に就任するのだから、もともとは偉かったと言えるだろう。
2025年12月3日 ぬらりひょんを描いてみた。
日本伝承の「ぬらりひょん」を描いてみた。

ぬらりひょんは鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などに描かれる謎の妖怪。昭和の妖怪本では、他人の家に勝手に上がり込んで、まるで家人のようにお茶などを飲んでくつろぐと解説されている。アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』では、日本妖怪たちの総大将みたいな位置づけになっている。『ぬらりひょんの孫』でも、鬼太郎のイメージは踏襲されている。
このように、妖怪たちの親玉と言われることも多いが、実際のところ、江戸時代の文献では、解説などが何もない絵だけの妖怪なので、その正体は不明である。むしろ、江戸時代の草双紙の中では、妖怪たちの親玉が誰かという勝負をしたら、間違いなく、見越入道に軍配が上がるだろう。
2025年11月26日 日本伝承の見越入道を描いてみた。
日本伝承の「見越入道」を描いてみた。

見越入道は夜道などに通行人の前に出現する。「背が高い男だな」などと見上げてしまうと、どんどん大きくなって、遂には通行人は気を失ってしまう。「見越入道見越した!」などと唱えたり、見下ろしたりすると消えると信じられている。
江戸時代の草双紙の中では、妖怪たちの親玉として活躍することが多い。草双紙の中の妖怪たちは、大抵、人間に舐められている。手下の妖怪たちを囲んで、どうやって人間たちの鼻を明かしてやろうかと相談するとき、見越入道がリーダーシップを発揮している。
2025年11月19日 朝鮮伝承のクミホを描いてみた
朝鮮伝承の「クミホ(九尾狐)」を描いてみた。

クミホは中国の九尾狐が朝鮮半島に伝わったもので、1,000年生きたキツネが妖力を得て変化したものだ。朝鮮半島でも、中国と同様、美女に化けて権力者に取り入る点は変わらない。一方で、クミホは「狐珠」にまつわる独自の伝承を持つ。クミホは「狐珠」を口移しにすることで男性の精気を奪う。しかし逆にその「狐珠」を飲み込んだ人間は神通力を得るという。その一例として、「狐珠」を飲み込んだ秦國泰(チン・グクテ)という少年は、その後、名医になったと伝えられている。
最近の韓流ドラマでは、クミホは人間の肝臓を狙って近づき、そのままターゲットと恋に落ちてしまうというラブストーリーがよく描かれる。こういう妖怪と人間のラブストーリーというのも、クミホの中国や日本とは異なる特徴で魅力である。
2025年11月12日 朝鮮妖怪のトッケビを描いてみた
ここから少し頑張って、1週間投稿を繰り広げていきたい八朔シータである。

プルガサリに続いて、朝鮮伝承の「トッケビ」を描いてみた。トッケビは朝鮮半島の山や海に棲む精霊的存在だ。岩や木、古道具などに宿るとされる。夜道で旅人を驚かせ、牛を屋根の上に乗せるなどのいたずら好きな性格を持つ。山道で旅人にシルム(朝鮮相撲)を挑む。そういう意味では、河童にも似ている。勝利すると、消えてしまい、古い箒が残されているという伝承もあるので、正体は箒が化けた付喪神的な存在とも言えるのかもしれない。一方で、「トッケビの棍棒」で地面を叩くと望んだものが出てきたり、供物を奉げることで豊漁が期待できることから、福の神としての側面も持つようだ。
日本統治時代、日本語の教科書の中で、日本の「鬼」をトッケビと訳して紹介したため、両者が混同されるようになった。そのため、韓国本来のトッケビ像を復元しよう(日本残滓を排除しよう)と「トッケビ復元プロジェクト」が始まるなど、トッケビは政治的に利用されている側面もある。
今回描いたトッケビは、近年の韓国国内での議論を踏まえて、日本の「鬼」からは外れた形で表現にしてみた。角はないし、韓服を着ている。でも、こういう新しい「トッケビ像」に対して韓国国内でも批判はある。実際、角を描いている韓国のクリエイタも多いし、トゲトゲの棍棒を持たせていることもある。そういう意味では、扱いづらいところではあるんだけど、でも、トッケビを描かないで朝鮮妖怪を語れないので、今回、こうして描いてみた。
2025年11月6日 朝鮮妖怪のプルガサリを描いてみた
最近、ウェブマスターとしてサボりにサボっている八朔シータ。忙しくしていてすみません。体調不良ですみません。

朝鮮伝承の「プルガサリ」を描いてみた。久々のイラストの投稿だ。約3か月ぶりくらい。
プルガサリというのは朝鮮半島の伝説に登場する鉄を喰う怪物だ。最初はかわいらしい小動物で釘などを食べて育つが、次第に巨大化して村中の金属を喰らうようになる。身体が硬くて誰も殺せないので「不可殺(プルガサリ)」と呼ばれている。
元々は中国の貘が朝鮮半島に渡ってこの怪物に進化した。だから、デザインとしては貘の面影があって、ゾウのような鼻を持った姿で描かれる。
日本ではあまり知られていないが、本来、中国の貘は、蜀(四川省)に棲息する白黒の斑らのクマみたいな謎の獣で、武器(竹製の弓とか槍とか)を食べる。そう書いたら、なんだ、それってパンダじゃんって思う。でも、武器が鉄製になった後でも武器を食べる属性が残り続けて、気づけば鉄を食べる獣になってしまった。おそらく、これが実在するマレーバクと混同されて、次第に容姿はパンダからマレーバクになっていった。それが朝鮮半島に渡ると鉄を食べて巨大化する怪物になり、日本に渡ると夢を食べる怪物になったわけだ。
そんなわけで、ここからしばらくは朝鮮半島の妖怪をいくつか投稿する予定。乞うご期待。
2025年10月19日 アジアについてもっと詳しく知ろうぞ!!
横浜にて息子と楽しく暮らしている。「世界の妖怪」蒐集家の八朔シータです。こんにちは。
この土日は、ボーイスカウトがJOTA-JOTIを開催している。ジャンボリー・オン・ジ・エアー・ジャンボリー・オン・ジ・インターネットの略。昔は色んな国のスカウトたちが無線で通信してコミュニケーションを図っていたらしい。今はインターネットも普及しているので、オンラインも駆使して交流しているようだ。ちなみに、無線やTeamsだけでなく、マインクラフトの世界での交流もあるようだ。スイスのカンダーシュテーク国際スカウトセンターがマイクラ世界に再現されているらしい(笑)。その辺はとっても今風だ。
息子のツクル氏は今回、Teamsで色んな国のスカウトたちと話をしたらしい。つたない英語でも、頑張ったと言っていた。そんな中で、とても印象的なことを言っていたので紹介したい。
「フィリピンとマレーシアとインドネシアのスカウトと話をしたよ。でも、すごいね。こっちが横浜って言うと知っているんだよ。こっちは向こうの首都だって知らないのに」
まさにそうだ。グローバリズムだと言いながら、あんまりアジアの国々について、ボクたちは学んでいないのかもしれない。ヨーロッパやアメリカのことは習うけど、アジアについては授業ではやらない。少なくとも、ボクの子供の頃はそうだった。
ボクは最近になって、ようやくアジアの妖怪に手を伸ばしている。ボクもアジアのことがよく分からなかったので、ずぅっと後回しにしてきた。仕事でアジアの国々を飛び回るようになって、ようやく「ファンタジィ事典」にアジアの妖怪を加えられるような心構えになった。
ニーズがあるのかどうかは分からない。でも、ボクは細々と「アジアの妖怪」を発信していきたい。アジアの妖怪を通じて、アジアの国々について、みんなが理解を深められればよいよなあ。息子と話しながら、そんなことを考えた。
2025年9月13日 貘はミャクでバクでマクでモー
中国起源の日本の妖怪って、たくさんいて、たとえば、貘(ばく)なんかはそうだ。
貘というのは、元々は中国の蜀(現在の四川省)に棲むとされる伝説的な怪獣で、昔から竹や鉄を食べると信じられていた。白黒のまだら模様で、クマに似ていたらしい。……鉄を食べるというのはちょっとオーバーだけど、竹を食べるというところまでなら、何となく「ああ、ジャイアントパンダのことだな」と思う。「竹みたいに硬いものを食べる謎の動物が四川省にいるよ」という話が、次第に伝言ゲームよろしく、鉄を食べるとか武器を食べるみたいな話に広がって行ったのだ。
ところが、途中で、マレーバクを見た旅行者が、白黒の謎の獣というところで「ああ、これが貘なのか!」ということで、クマみたいな姿だったはずの貘は、途中からゾウの鼻を持つ怪物への姿を変えた。そして、朝鮮半島を介して日本に伝わって、今のような姿になった。
ちなみに、日本の貘は夢を食べる。でも、中国の貘は夢を食べない。あくまでも貘が食べるのは鉄だ。朝鮮半島に伝わった貘はプルガサリと呼ばれていて、こちらは鉄を食べてどんどん巨大化する怪物になっている。夢を食べるのは、あくまでも、日本の貘の特徴だ。
ところで、学研漢和大字典によれば、周や秦などの古い時代には、貘はmăk(マク)と発音されたらしい。その後、隋や唐の時代になると、mʌk(マク)あるいはmbʌk(バク)と発音されたらしい。そして、元の時代に語尾のk音が消えて、mo(モー)となり、現代中国語のmò(モー)となっているらしい。日本に入ってきたときの音としては、呉音がミャク、漢音がバクだと説明されている。従って、măk(マク)からミャク、mbʌk(バク)からバクという発音が伝わったということなのだろう。日本では今でも、漢音のバクがそのまま使われ続けている。
たとえば、砂漠の「漠」は「バク」と発音される。角膜の「膜」は「マク」と発音される。「模」という漢字は、規模と書けば「ボ」と読むし、模型と書けば「モ」と読むわけで、bとmで揺らぎがある。「母」という字も、父母と書けば「ボ」だし、鬼子母神と書けば「モ」と読むことが多い。モは呉音、ボは漢音だ。
どうでもよいことなんだけど、妖怪を調べながら、そんなことを考えてしまうボクである。
2025年9月7日 月にはヒキガエルとウサギと桂の木とその木を伐る男が棲んでいる!?
ちょっとだけ、ウェブサイト小豆はかりと桂男を更新してみた。どちらも冒頭の書き出しは従来の項目とは異なっている。いつもは「妖怪Aはこれこれこういう妖怪だ」と説明してから本文に入っている。でも、今回は両方とも、そういう始まり方ではない。読み物としてどんな導入がよいかを考えて、ちょっとアレンジして始めてみた。
そしてもうひとつは、おまけのコラム的な要素を増やしたという点だ。小豆はかりについては、水木しげるの描く小豆はかりについて、ちょっとだけ丁寧に書いてみた。実際に水木しげるの漫画を何度も読んで、そこで描かれる小豆あらいの雰囲気を拾い出して、書いてみた。
一方、桂男の方は月を巡る中国の伝承をたくさん載せてみた。月にはヒキガエルがいるとか、ウサギが薬草を挽いているとか、月には巨大な桂の木が生えていて、ずぅっと木を伐る男がいるなど、いろんな話を盛り込んでみた。
こういうのが、本来、ボクがやりたかった方向性に近いよなあ、と改めて考えて、やってみたという感じだ。もちろん、ね。文章力は足りないから、面白いかどうかは分からない。でも、こういうコラムっぽい感じで書き続けた方が、ボクとしてはやりがいもあって楽しい。そうだよなあ。こういう方向だよね。そんなことを感じた。
というわけで、ずぅっと仕事に汚された毎日の中で、たまたま2日間、ぽかっと時間がとれて、ふわっと始めてみたんだけど、初心に帰った感覚。がんばろうと思う。
2025年9月1日 タヌキの畳叩きと石の精のバタバタと
新しい試みとして、『日本妖怪図鑑』の紹介ページを作成してみた。そして、ここに載っている妖怪の一覧を作成してみた。AIアシスタントのCopilotに、ウェブサイト「ファンタジィ事典」の改善点を訊いたら、横串の展開が足りないとのことで、たとえば、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に載っている妖怪の一覧とか、アラビアン・ナイトに登場する妖怪の一覧みたいな横串でのリンクやタグ付けができるとよいなどとコメントをもらった。そういう意味では、参考文献ごとの横串の展開もありかもしれないなあと思ったので、試しに『日本妖怪図鑑』の120体の妖怪でやってみた次第。
そこに畳叩きという妖怪が載っていて、
「冬の夜中に家の外でたたみをたたくような音をたてる。ねずみのように小さな体で、石の精だといわれる。」
との解説があった。そして、かわいらしい小人の絵が添えられている。ボクの中ではあんまりメジャーな妖怪じゃなかったので、知らなくて、そんな妖怪もいるのかあ、と思って調査開始。そうしたら、どうもWikipediaも含めて正しくないような印象。どうも、調べた感じだと、大元の資料は柳田國男の『妖怪談義』のようだ。
「タタミタタキ:夜中に畳を叩くような音を立てる怪物。土佐ではこれを狸の所為としている(土佐風俗と伝説)。和歌山附近ではこれをバタバタといい、冬の夜に限られ、続風土記には又宇治のこたまという話もある。広島でも冬の夜多くは西北風の吹出しに、この声が六丁目七曲りの辺に起こると録々雑話に見えている。そこには人が触れると瘧(おこり)になるという石があり、あるいはこの石の精がなすわざとも伝えられ、よってこの石をバタバタ石と呼んでいた。」
と解説されている。要するに、高知県には「畳叩き」と言うタヌキが正体の妖怪がいて、和歌山や広島では「バタバタ」という類似の妖怪がいた。でも、「畳叩き」で立項されていたために、これを読んだ人が「畳叩き」も「バタバタ」も一緒くたにしてしまったようで、いつの間にか広島の「バタバタ」の話であった石の精という伝承が「畳叩き」の属性にされてしまったわけだ。この情報を拾った水木しげるの『図説 日本妖怪大全』(講談社+α文庫,1994年)も、Wikipediaも、この辺のないまぜ感は拭えない。
村上健司の『妖怪事典』(毎日新聞社,2000年)や日野巌の『動物妖怪譚』(中公文庫,2006年)では、別物の妖怪として区別されている。その辺、ちゃんとフォローした方がよいなと思って、ファンタジィ事典でも、別項を立てて解説する方針にしてみた。
2025年8月27日 豆本キーホルダーの『日本妖怪図鑑』
最近、『妖怪ブックガイド600』で氷厘亭氷泉氏が取り上げていた『日本妖怪図鑑』。うちにもあるなあと思って、久々に引っ張り出してきた。懐かしい。小学校のときに高速道路のサービスエリアで見つけて購入した記憶がある。これ、小さい割に、120匹の妖怪が紹介されているようだ。しかもかなりマニアックなものも載っている。全部、絵が掲載されている。今思えば、すごい!! わいらも載っている。


そんなこんなで、まだまだサボタージュ継続中。……というか、仕事が忙しすぎるー!! ふははは。
2025年7月30日 データベースが整理されていく時代。
いい時代になった。いろんなデータベースにアクセスできる時代だ。
最近のボクのお気に入りは「国書データベース」だ。江戸時代以前の書籍を収集して公表してくれている。たとえば、鳥山石燕の作品を読みたいと思えば、全て読むことができる。試しに『百器徒然袋』の塵塚怪王のページにリンクを貼ってみよう。かなりの高解像度で、和綴本をスキャンしたものが読める。
北尾政美の『夭怪着到牒』を読みたいと思えば、これだって読める。リンク先は豆腐小僧の描かれた有名なページだ(厳密には「大あたまこぞう」と書いてあるんだけど)。見越入道と並んで描かれていて、よくアダム・カバットさんが紹介してくれているイラストだ。
そのほかにもたくさんの書籍が載っている。おそらく、今までボクがファンタジィ事典で言及していたものの大半はここで読むことができるのではないか。たとえば、白蔵主で紹介した『和泉国名所図会』の白蔵主が餌に心惹かれているシーンとか、七歩蛇で紹介した浅井了意の『伽婢子』の七歩蛇を退治しているシーンなんかも閲覧することができる。
いい時代になったよね。知的財産がちゃんとみんなで共有できるようになっているということだ。これからのウェブサイト「ファンタジィ事典」の在り方も考えなきゃいけないよなあ。こういうところと連携していくようなスタイルにすれば、もっとずぅっといい情報提供ができる。そんなことを考えている今日この頃である。
ちなみに、これは日本語だけの話ではない。楔形文字文献とか、古代ギリシア語文献とか、ラテン語文献とか、それぞれの分野で、こうやってデータベース化が図られている。文字情報だけじゃなくて、絵画・彫刻なんかも同じ。絵巻物とかも閲覧できる状態になっている。多分、こういうのは、音楽とか動画も同じで、どんどんデータベース化されていくのだろう。楽しみだよなあ。
2025年7月19日 ヤグヮングィを描いてみた!!
朝鮮の妖怪「ヤグヮングィ(夜光鬼)」を描いてみた。子供ほどのサイズの鬼で、普段は地獄に暮らしているが、過去に地獄から逃げ出したため、すぐに見つけられるように閻魔様に頭の上に光を乗せられたという。けれども、閻魔様がお休みする1月16日の「鬼の日」になると人間界にやってきて靴を盗む。盗まれた人は1年間、不幸になるというので、ソウル市民この日はみんな靴を隠すという。

ちなみに、タブレットとタッチペンを駆使して、Clip Studioで妖怪のイラストを描こうと決意したのは2023年の12月のこと。最初はマナナンガルから描き始めて、2024年の6月にアン/アヌのイラストを描いて50体目を達成。そして、2025年7月19日にようやく100体目になった。100体目は何を描こうかなあなどといろいろと企画を考えていたものの、実は知らないうちに100体目を迎えていて、どうやらヤグヮングィが100体目となった模様。
イラスト作業をすべて電子化したことで、いつでもどこでも絵が描けるようになった。だから、空き時間にたくさんの妖怪たちの下絵を描いていて、時間のあるときに鋭意、彩色して完成させていったら、気づいたら100体目になっていた。本当は、もっと好きな妖怪を選んで気合を入れて描こうと思っていたのになあ。結局、ヤグヮングィになってしまった。



どうだろう。成長が感じられるだろうか。立体感は出たかもしれないし、彩色もいろんな技術を体得したように思う。でも、どんどん、漫画っぽくなっていくんだよなあ。ふふふ。
そんなわけで、引き続き、ファンタジィ事典に彩りを添えるために、妖怪のイラストを描き続けるので、乞うご期待。
2025年7月13日 謎めいた「わいら」を描いてみた。
日本の妖怪の「わいら」を描いてみた。基本的には、全体的な雰囲気は佐脇嵩之の『百怪図巻』のわいらをベースにして、耳や舌など、細部のパーツは鳥山石燕の『画図百鬼夜行』のわいらの要素を加えて描いてみた感じ。

わいらは妖怪画の題材として、多くの狩野派の画家たちが好んで描いている。ただし、絵の横に名前だけしか記されていないので、具体的にどのような妖怪なのかは分からない。絵の中だけにしか登場せず、それ以上の情報がないところが、とても謎めいた感じで、魅力的である。
しかし、昭和の作家たちは、それだけでは満足しなかったので、たくさんの情報を付加していく。やれ、ガマガエルが化けたものだとか、雄と雌で色が違うとか、モグラを食べるとか……。遂には、翼まで生やし、腹が減ると骨ごと人間を食べる5メートル級の怪物になってしまった。いまや伝説となっている佐藤有文氏の『日本妖怪図鑑』(ジャガーバックス)なんかは、まさにそんな解説をしている。石原豪人氏のイラストは、巨大なクマのような怪物わいらを描いていて、ショッキングである。

妖怪というのは非実在の存在なので、語り手によっていろんな情報が付加されると、こうやって、どんどんと変質していく。変質していったものも含めて、ボクなんかは妖怪だよなあ、と思う。だから、江戸時代の妖怪画のわいらも、5メートル級の怪物わいらも、ボクはどちらもわいらなのだと思っている。でも、Wikipediaの「わいら」の項目では、佐藤有文が想像したようなわいら像はあまり触れられない。それも変だよなあ、とボクなんかは思う。だって、昭和を生きたボクたちにとって、わいらと言えば、佐藤有文のわいらの印象が強いもんなあ。それだって、江戸時代のわいらではないけれど、わいらはわいらだよなあ。






