《日々の雑記》
2025年7月13日 謎めいた「わいら」を描いてみた。
日本の妖怪の「わいら」を描いてみた。基本的には、全体的な雰囲気は佐脇嵩之の『百怪図巻』のわいらをベースにして、耳や舌など、細部のパーツは鳥山石燕の『画図百鬼夜行』のわいらの要素を加えて描いてみた感じ。
わいらは妖怪画の題材として、多くの狩野派の画家たちが好んで描いている。ただし、絵の横に名前だけしか記されていないので、具体的にどのような妖怪なのかは分からない。絵の中だけにしか登場せず、それ以上の情報がないところが、とても謎めいた感じで、魅力的である。
しかし、昭和の作家たちは、それだけでは満足しなかったので、たくさんの情報を付加していく。やれ、ガマガエルが化けたものだとか、雄と雌で色が違うとか、モグラを食べるとか……。遂には、翼まで生やし、腹が減ると骨ごと人間を食べる5メートル級の怪物になってしまった。いまや伝説となっている佐藤有文氏の『日本妖怪図鑑』(ジャガーバックス)なんかは、まさにそんな解説をしている。石原豪人氏のイラストは、巨大なクマのような怪物わいらを描いていて、ショッキングである。
妖怪というのは非実在の存在なので、語り手によっていろんな情報が付加されると、こうやって、どんどんと変質していく。変質していったものも含めて、ボクなんかは妖怪だよなあ、と思う。だから、江戸時代の妖怪画のわいらも、5メートル級の怪物わいらも、ボクはどちらもわいらなのだと思っている。でも、Wikipediaの「わいら」の項目では、佐藤有文が想像したようなわいら像はあまり触れられない。それも変だよなあ、とボクなんかは思う。だって、昭和を生きたボクたちにとって、わいらと言えば、佐藤有文のわいらの印象が強いもんなあ。それだって、江戸時代のわいらではないけれど、わいらはわいらだよなあ。
2025年7月9日 骨に棲みつく恐ろしい虫!?
コ・ソンベ氏の『韓国妖怪図鑑』を足掛かりに、「コルセンチュン」を更新してみた。インターネットで朝鮮の妖怪を調べていたときには引っ掛からなかった。コ・ソンベ氏の本で知った妖怪だ。コルセンチュンは、人間の骨に寄生する虫で、親指ほどの大きさ。大抵、脛骨か大腿骨に寄生し、激痛を引き起こす。李氏朝鮮時代の韓明澮は、あまりの痛さに、従者に自分の足の骨を叩き割らせて、中から虫を引っ張り出したという。それほどの耐え難い激痛だったということなのだろう。結局、韓明澮は死んでしまうので、寄生されたら死に至る虫でもある。
というわけで、引き続き、コ・ソンベ氏の本を足掛かりにネットサーフして、いろいろと朝鮮の妖怪について理解を深めていこうと思う。
2025年7月7日 「ミョドゥサ」を描いてみた。
朝鮮伝承の「ミョドゥサ」を描いてみた。ネコの頭にヘビの身体。ソンドの寺の裏の洞窟に棲み、青い気を放って人々の病を癒した。僧侶は食べ物を供えてこの獣を祀った。しかし、あるとき、ミョドゥサが洞窟から顔を出したところ、怪物だと思った男が誤って射殺してしまったという。
ミョドゥサと言えば、普通は鱗のついたヘビの身体に、ちょこんとネコの頭がついた怪物が描かれることが多い。でも、最近、韓国の子供向け番組で、かわいいミョドゥサが登場していて、ちょっとその要素も残したく、描いてみた次第。青い気を全身から放ってみたが、口から青い煙を吐くという表現もあるので、そういう絵でもよかったのかもしれないけれど、さてはて。
上のYouTubeは韓国の子供向け番組「묘시의 전설」。ミョドゥサがダイエットを試みて、結局、失敗する物語。多分、韓国語が分からなくても、見ていて笑える内容だと思う。オススメなので、是非是非。
2025年7月5日 『韓国妖怪図鑑』から妖怪を拾い上げていくぞ!!
6月26日の記事「『韓国妖怪図鑑』をゲット!!」でも紹介したんだけど、韓国からコ・ソンベ氏の『韓国妖怪図鑑』をゲットしたので、早速、そこからウェブサイト「ファンタジィ事典」の項目を追加してみた。「パンチョギ」と「コチニョ」だ。
正確に言うと、『韓国妖怪図鑑』では、パンチョギはカムドリ、コチニョはカプサングェの名称で掲載されていた。でも、ネットサーフして、パンチョギとコニチョの方の名前を採用した。パンチョギは半分人間。生まれたときに、目も耳も鼻の穴も、そして腕も足も片方しかなかった。それでも、メチャクチャ、才能があった。子供が生まれなかった老夫婦が柿売りから子宝に恵まれる柿を入手したが、半分、ネズミに食べられてしまって、残り半分を食べた結果、生まれたらしい。コチニョというのは漢字で「鋸齒女」と書く。その名のとおり、ノコギリのような歯を持った鬼女の妖怪だ。国が乱れるときに出没するという。
ちなみに、すでに更新していた「カンギル」と「カンチョリ」も、『韓国妖怪図鑑』を読んで、若干、情報を追記してみた。ふふふ。
さーて、と。ファンタジィ事典の更新も終わったし、次は妖怪絵を描くぞー。おーッ!!
2025年6月30日 マーガーのイラストを描いてみた!!
ベトナム伝承の「マーガー」を描いてみた。家を守護してくれる精霊で、壷の中で飼育する。鶏が大好物で、毎月、生きた鶏を生贄に捧げる必要がある。日本の「憑きもの筋」に似て、代々、飼育しなければならない。財宝を侵そうとする人間がいると、内臓を喰らい尽くす。
…というわけで、久々に妖怪の絵を描いた。もう、ね。怒涛のように忙しかった。何が忙しいって、職場が3年連続で新採用を受け入れている。12人のチームで、4人の経験年数が3年未満というのは、なかなかにしんどくて、結局、何をやるにしても、常にフォローしてあげなきゃいけない。ボクがその対応に追われている。それぞれの若者たちの業務の山があって、全部、そこに巻き込まれる。そういう忙しさだ。まあ、ね。仕事をしない老人たちのフォローだと未来には繋がらない。未来ある若者たちの人材育成だと思えば、気持ちとしては前向きに取り組める。でも、厳然たる事実として、毎日、夜遅くまで働いている。うーん。
そんな中で、ようやく絵を描けたのは、ちょっと嬉しい。やっと少し人間らしい生活ができているよなあ。
2025年6月26日 『韓国妖怪図鑑』をゲット!!
コ・ソンベ氏の『한곡 요괴 도감(韓国妖怪図鑑)』(韓国語)の本が韓国から届いた。最近、韓国語も勉強していて、韓国の妖怪を調べていたので、韓国語の本であっても読めるだろうと踏んで、購入を決めたものだ。ネット上では数ページが公開されていて、妖怪1匹ごとに見開きで、イラストと解説が載っていることは分かっていた。でも、実際に手に取ってみて驚いたのは装丁だ。「妖怪」という古風な感じを演出するためだと思われるが、わざと「和綴じ」みたいな装丁になっている。そして、赤地に白で描かれた妖怪画でデザインされた紙でラッピングしてある。日本だと、こういう規格外のデザインってあんまりしないので、ちょっとビックリしたし、ワクワクもした。
ちなみに、この写真はカンギルのページ。妖怪の絵と解説が見開きで載っている。とてもいい!
ちなみに、この本の前書きの冒頭でコ・ソンベ氏は、「幼い頃から日本の漫画を読んで育った。日本の漫画にはたくさんの妖怪が出てくる。日本は妖怪大国だ。なぜ韓国にはいないのか。資料を調べたら、韓国にもたくさん個性的な妖怪がいた。いなかったのではなくって、知らなかっただけだ」と書いている。隣国韓国にも、日本の漫画文化が影響を与えているというのは嬉しい限り。
2025年6月22日 アジアの妖怪蒐集を粛々と。
さてさて、本日も「フィリピンの妖怪」と「ベトナムの妖怪」を更新した。
フィリピンの妖怪からはウガウ、ティブスカン、ラギラギの3匹を更新だ。ウガウは米泥棒だ。米倉から米を盗んでいく。日本の米が不足しているけれど、実はフィリピンからウガウがやってきているのでは? ……なんて。ティブスカンは魔女が飼う子ブタの妖怪。この子ブタが穴を掘ると病が蔓延する。そしてラギラギは赤ん坊にしか見えない妖怪で、赤ん坊を病気にする。
ベトナムの妖怪からはマーガー。これはベトナムの憑き物筋みたいなものだ。壺に入れて飼育すると財産を守ってくれる。その代わり、生きたニワトリを毎月、捧げなければいけない。
そんなわけで、粛々とアジアの妖怪を蒐集しては掲載をする活動を細々と続けている。近々、またアジアの妖怪画を載せるので、乞うご期待。ではでは。
2025年6月14日 朝鮮妖怪とフィリピン妖怪を粛々と……
さてさて。今日も今日とて「朝鮮の妖怪」と「フィリピンの妖怪」を更新する日々である。すでに大量のデータベースは準備済みで、それをアウトプットするだけなので、いいペース。非常に順調である。
本日、アップした「朝鮮の妖怪」はコググィとコジャムだ。どちらも朝鮮半島らしいなと思う。コググィの方は道を塞ぐ妖怪だけど、心意気を試しているだけで、覚悟を決めて前に進むと消えてしまう。しかも、勇敢な人物だと認めて、従者になって付き従う。コジャムの方は巨大なカイコだ。ウシほどのサイズのでかい幼虫なので、想像すると気持ち悪い感じではあるけれど、そのカイコの死を悼んで大量のカイコ蛾が飛んできて、村が潤う。
「フィリピンの妖怪」からはシャムシャムとタンバロスロスを持ってきた。シャムシャムはイロイロ地方の都市伝説だ。消えるヒッチハイカーみたいに馬車に相乗りする相手が幽霊だったという展開だが、消えるのではなく、わざわざ骸骨姿になって同乗者を驚かせる。タンバロスロスは非常に卑猥な妖怪で、ガリガリの痩せた身体の妖怪の癖に、玉袋は地面につくほどでかく、陰茎も顔に届くほど巨大という。タンバロスロスみたいな妖怪は、絵に描けないよなあ。すぐにpixivに怒られちゃうもんなあ。うーん。
2025年6月10日 ひとりで生きることも死ぬことも許さない!!
妖怪メインのウェブサイトなのに、頻繁に音楽を紹介してしまうボクである(笑)。
本当にいろんなことがあって活動を休止していたステミレイツが、満を持して復活した。ドラムとキーボード兼デスボの脱退、新メンバー募集、新曲にて再起動からの急転直下のヴォーカルの脱退。もう自然消滅かな、と思っていたけれど、こうして復活を果たした。ヴォーカル不在をどう乗り切るのかと思ったら、ゲスト・ヴォーカル(笑)。そして歌詞がかなち。「ZENTSUPPA」というのは、まさに今のステミにピッタリだし、かなちらしさ満載で面白い。何よりもかなちとさきてぃがニコニコしてくれていれば、もうそれでいいや! という気分だ。
それから、戦慄かなのとかてぃで結成されている悪魔のキッス。彼女たちの新曲の「XOXO」。いい曲だなあと思っていたら、楽曲提供が小南泰葉さんだった。何と! もう随分前にアーティストとしての活動は休止しているものと認識していて、たまに楽曲提供しているなあと思っていたけれど、まさか悪魔のキッスに楽曲提供するとは! ということで、あまりにびっくりして、記事を書いているボクである。彼女は不安定な音への飛躍とか、難解な歌詞とか、楽曲そのものも素晴らしいんだけど、歌唱方法も独特で、たまにざらつくような声を出すのが魅力なので、もう一度、歌ってくれないかなあ。
あと、もうひとつ、ここのところ面白かったのが、レペゼン界隈だ。DJ社長が新曲を出して、再生数がものすごいんだけど、それよりも注目は銀太だ。まさかのmisonoとのコラボ。しかも結構、聴いていて心地よいビート。ああ、頑張っているなあと思っている。
2025年6月8日 ベトナムの妖怪を追加!!
本日はベトナムの妖怪を2体、更新した。「クイマッマム」と「ピーフォン」だ。出典はズイ・ヴァン氏のMa Quỷ Dân Gian Ký。ゴールデンウィークにズイ・ヴァン氏が大阪・関西万博に来ていたらしい。ボク自身、そのタイミングは韓国を訪問していたので、物理的に彼に会うことは叶わなかったけれど、ちょっと会ってみたかった気もする。彼の2冊の妖怪図鑑をゲットしたかったなという気持ちもある。イラストは現在も出展しているようだけれど、図鑑が売っているという情報はないので、断念だなあ。誰かどこかで彼の本、調達してきてくれないかなあ。
さてはて。クイマッマムはベトナム語で《お盆の顔の魔物》という意味で、平べったいでかい丸い顔を見せて驚かせる妖怪だ。そして、驚いて気を失っている人間を喰ってしまうのだというから恐ろしい。ピーフォンは絶世の美女にして吸血鬼という一族だ。美女の家系であるために吸血鬼であることを疑われ、村の外に結婚相手を探しに行かなきゃいけないという。面白いのは、月夜に怪物に変身すると、どんどん美しい姿になっていくという点。変則的だ。
そんなこんなで、緩やかに調子が戻ってきた。このくらいのゆるゆるペースでウェブサイト「ファンタジィ事典」の更新が続けられればいいなと思っている。
2025年6月5日 1958年の音楽とファンタジィ事典
2025年3月19日に「電脳空間の大掃除に齷齪。」という記事を書いて、音楽のサブスクについての興味をちょっとだけ書いた。iPhoneを買い替えたら、15,000曲を超えるmp3の移行がうまく行かず、その整理に悩んでいたからだ。そんなこともあって、4月に音楽サブスクを解禁した。その結果、ボクの生活は劇的に変化した。
4月は1960年から1964年の5年間のビルボード年間ランキングを1位から100位まで、苦行のように聴いていた(笑)。エルヴィス・プレスリーとか、ブレンダ・リー、コニー・フランシス、エヴァリー・ブラザーズ、ロイ・オービソン、レイ・チャールズ、チャビー・チェッカー、ビーチ・ボーイズなどなど。そして1964年になるとようやくビートルズが登場だ。5月は1965年から1969年の5年間。まさにブリティッシュ・インベージョンの時代だ。ビートルズだけでなく、ローリング・ストーンズ、ハーマンズ・ハーミッツなどが続く。アメリカ側もモンキーズで対抗する。後にダイアナ・ロスを生むスプリームスもいるし、サイモン・アンド・ガーファンクルや気だるいドアーズもいる。
そして6月になって、もうちょっと遡ろうかと思って、1955年から1959年の5年間を聴き始めたら、1958年の12位の「パープル・ピープル・イーター」に出逢った。あ、これがあの「パープル・ピープル・イーター」なのか、とすぐにピンと来た。A Book of Creaturesの記事にエイプリルフールの冗談みたいな形で、この怪物が紹介されているのを思い出したからだ。そんなわけで、まさかオールディーズの音楽を聴いていて、妖怪に遭遇するボクであった。ファンタジィ事典にパープル・ピープル・イーターを追加してみた。
2025年6月3日 絵文字の歴史5:国際統一規格化とその後の課題
「ドコモ絵文字」終了のニュースを読んで、5月21日に記事「絵文字の歴史1:ファンタジィ事典の多言語化」を書いた。その記事では、絵文字文化は日本由来だと書いた。ドコモ絵文字が、実はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されたという事実も書いた。それでも、文字コードの歴史の観点では、日本の技術者たちの敗北だったと書いた。以降、「絵文字の歴史2:感情を伝えるには顔のシンボルが必要だ」、「絵文字の歴史3:ハートマーク事件とドコモ絵文字の誕生」、そして「絵文字の歴史4:絵文字の進化と文字コードの壁」と記事を書いてきて、今回で最終回だ。
絵文字はdocomo、au、softbankの3社の中でバラバラに発展して、SNSにも水平展開しながらも、日本においては統一規格にはならなかった。機種依存文字のままで、他社とのやり取りでは文字化けすることもあった。この流れに終止符が打たれたのが2010年だ。でも、統一規格の道を推し進めたのは、残念ながら、日本人じゃなかった。AppleがiPhoneを日本に売り込もうとしたときにぶつかった壁が、まさにこの日本独特の絵文字文化だった。iPhone、そしてAndroidでは当初、絵文字が使えなかった。これでは日本人に受け入れてもらえない。同様にGoogleもgmailを日本に売り込もうとしていたけれど、ここでも絵文字の壁にぶち当たった。そこで、AppleとGoogleがUnicodeコンソーシアムに働きかけたわけだ。結構、この取り組みは大変だったみたいで、そもそも絵文字は文字なのかという議論もあったし、絵文字のバラエティも多くて、なかなか評価できなかったようだ。でも、最終的に2010年にUnicode 6.0の中に「Emoji」として採用されて、今に至るわけで、結局、ガラパゴス日本では、統一規格化できなかったよなあと思いつつ、日本人として悔しい想いもある。
ちなみに、その後も絵文字はいろいろな壁にぶち当たっていく。たとえば、肌の色。日本人が考えた絵文字の人間はみんな、うすだいだい色。いわゆる「肌色」だった。でも、当然、国際社会には黒っぽい肌の人、白っぽい肌の人がいるわけで、今は色を選択できる仕様になっている。ジェンダーとか家族の壁にもぶち当たった。夫婦というのが男女でいいのかとか、家族は子供がいなきゃいけないのかとか、片親だっているじゃないかとか、そんなこんなで、今は家族を表現する絵文字もたくさんの種類が用意されている。職業も、たとえば、日本の絵文字だと、警察官が男性だったりする。でも、現在は、女性の警察官も搭載されている。サラダも、ベジタリアンを意識して、今はタマゴの記載がなくなった。一番大きな課題は国旗だ。日本の絵文字は、日本に馴染みのある先進国の国旗だけを搭載していた。この部分はUnidoceコンソーシアムでも最後まで揉めたようだけれど、結局、全ての国の国旗を入れることで落ち着いた。それでも、台湾の旗をどう取り扱うかなど、今でも揉めている。
そういう意味では、実は栗田穣崇氏が監修したドコモ絵文字というのは、最初っから「絵」ではなくて「文字」として志向して構想されていて、シンプルで、肌の色も国籍も性別からも離れた「記号」としてデザインされていたわけで、そのドコモ絵文字が終了してしまうのは寂しいよなあとも思ったりする。そんなわけで、第5回まで長々と書いてしまったが、絵文字についてのボクの雑感である。
2025年6月1日 韓国妖怪、フィリピン妖怪、そしてスイス妖怪……
5月26日の記事「久々にファンタジィ事典を更新!」でも書いたように、本業の仕事に追われている。毎日、家に帰り着くのが遅くて、そのままソファで倒れて泥のように寝ている日々だ。それでも、何とか前に進みたい。そんな気持ちで、歯を食いしばりながら(?)、妖怪蒐集をしている。
そんなわけで、本日の妖怪の更新はフィリピンの妖怪アコップ、朝鮮の妖怪カンギルとカンチョリ、そしてスイスの妖怪ブタッチ・クン・イルグスだ。
フィリピンの妖怪は、有名なものは粗方やっつけたような気もするが、まだまだヘンテコな妖怪はいる。今回のアコップは、頭から直接、手足が生えているという不気味な姿と、未亡人を抱き締めて夫の後を追わせようとする性質の妙が引っ掛かったので、更新してみた。
カンギルとカンチョリは、実はハングルの五十音順では「ㄱ」が最初で、蒐集した韓国妖怪のリストの中から、五十音順に頭から拾っていったら、結果としてカンギルとカンチョリになった。でも、結構、カンチョリなんかは朝鮮半島では有名な「竜」の一種で、結果としていいチョイスになったのではないかと思っている。
ブタッチ・クン・イルグスは、奇妙なイラストを描くことでこの界隈で有名な「A Book of Creatures」の中から選んだ。最近、このウェブサイトをよく眺めている。世界各地の膨大な妖怪の資料が、イラストとともに掲載されていて、日本ではマイナなものも多い。出典として、英語だけでなく、フランス語の書籍が多いので、それも影響しているのだろう。ブタッチ・クン・イルグスは巨大なウシの胃袋みたいな姿の怪物で、無数に目玉がついているらしい。湖の怪物で、横暴な貴族たちを圧し潰してしまう。目玉からは炎を吐き出すらしいので、奇妙な妖怪だと思う。
そんなわけで、本日は「ファンタジィ事典」に4項目を更新したというご報告。
2025年5月30日 「我辛党」と「3の歌」!?
花冷え。が新曲「Spicy Queen」を発表した。ユキナ氏の喋りのようなプリティーな歌唱からデスボイスに移っていく。この振れ幅の凄まじさが花冷え。の魅力のひとつだとすると、今回の楽曲は、ユキナ氏のプリティーな歌唱が多くてよい。ユキナ氏のキラキラした雰囲気からのド迫力のデスボイスの落差が楽しいのである。歌詞の中でたくさん韻を踏んでいて、それもメチャクチャよくできている。歌詞の中に「我辛党」という言葉が出てくるんだけど、「我甘党」という昔の楽曲との対比になっているのも遊び心が満載で面白い。そして、最近、クールビューティーな雰囲気のマツリ氏がニコニコとダンスしているのも茶目っ気があってよい。
BABYMETALも新曲「Song 3」を出してきた。「メタり!!」あたりからずぅっとコラボ続きで面白いのだが、今回、久々にSU-METAL氏以外の2人が大活躍。初期のBABYMETALの「4の歌」の雰囲気を彷彿させる。こういうふざけた感じがBABYMETALの真骨頂のひとつだよね。バックバンドもSU-METAL氏も大真面目にやっているのに、歌詞といい、脇の2人といい、ふざけ散らかすのが、いい感じ。「1, 2, 3, 1, 2, 3, 1, 2, thunder」とか歌っているけど、結局は猪木の「1、2、3、ダー!!」と言っているだけだもんね。「バリ3」だって、電波がいい状況を指す言葉だけど、今の人たち、伝わらないんじゃないか?
まあ、そんなわけで、どちらもふざけた楽曲なんだけど、とてもいいよね。
2025年5月28日 絵文字の歴史4:絵文字の進化と文字コードの壁
5月25日の絵文字の歴史3:ハートマーク事件とドコモ絵文字の誕生の続き。
docomo絵文字に倣って、J-フォン(後のvodafone、そしてsoftbank)とauもすぐに独自の絵文字を開発していく。
顧客はどのキャリアの絵文字がかわいいかで端末を選んだといっても過言ではなくって、当時の若かりしボクも例外ではない。ちぃ子(後の妻!)が「docomoの絵文字はかわいくない。Vodafoneの顔も四角いからやだ。auがいい」という理由で、auを選んだので、ずぅっとauを愛用していた。当時はdocomoはdocomo、vodafoneはvodafone、auはau同士でしか絵文字を送れなくって、他社の端末では文字化けする。だから、家族や彼氏彼女とキャリアを揃える必要があって、囲い込みが進んでいくわけだ。当時のボクたちは、誰がauユーザで、誰が非auユーザなのかを把握していて、auの人向けにはかわいい絵文字を送り、非auの人向けには顔文字を使って対応していたような気がする。写メが導入されたのもこの頃。当時としては画期的で、J-フォンが最初に導入したのだと記憶している。つまり、各社、差異化を図って顧客獲得を目指していたわけだ。
ここで、ようやく本題に入る。このように、各社が独自に開発した絵文字というのは、機種依存文字だ。統一的な文字コードの規格になっていないから、異なるキャリア同士では文字化けする。エンジニアとしては、ここは何とか乗り越えたかった課題だと思う。そりゃあ、当然、人間だもの。やっぱり他社の人とも同じ絵文字を共有したい。だから、絵文字の統一規格が必要になる。当然、そんな議論はあったはずだ。
ところが、ここで当時の技術者たちは別の方向に舵を切る。まず、2004年にdocomoがデコメールを始める。絵文字を文字ではなく、画像にして、メールに添付して、htmlで文字と文字の間に絵を突っ込むという暴挙に出たわけだ。続いて2005年には、softbankがサーバ上で他社宛てのメールの絵文字を自社の類似の絵文字に変換する「絵文字変換機能」のサービスを開始する。結局、ケータイ各社は統ー規格を作る方向にはならずに、バラバラのまま突き進むことになる。
けれども、絵文字利用の文化はどんどんと深化していく。ケータイの枠を飛び越して、SNSでも絵文字が使われるようになる。blogやfacebook、twitterを利用するときにも、日本人の若者たちは絵文字も使って記事を投稿するようになる。そんなニーズに応じる形で、各SNSプラットフォームも、どんどん絵文字の機能を展開していく。そんな困った状況の中、絵文字の国際規格化を推進する動きが出てくる。2010年に「Emoji」がUnicode 6.0に採用された。さてはて。
2025年5月26日 久々にファンタジィ事典を更新!
1か月振りにウェブサイト「ファンタジィ事典」を更新した。ゴールデンウィークに4日間も韓国に行ったし、後輩指導に追われて仕事が忙しかったしで、なかなか時間が取れなかったのが正直なところ。仕事は全ッ然、一段落しているわけでもないんだけど、でも、このままズルズルと更新作業から遠ざかってしまうのもいけないなあと思って、重い腰を上げて更新に着手した。本当は妖怪画を描きたいところだ。
さて、1か月振りの更新は朝鮮の妖怪チョングとトンジャサム、そして『絵本百物語』の飛縁魔(ひのえんま)だ。朝鮮の妖怪は引き続き、継続していきたいと思っていて、今回のチョングは天狗。天狗とは言っても日本の天狗(てんぐ)ではなく、古代中国に由来する文字通りの天のイヌである。瓮(かめ)のような頭に小さい手足、長い尾を持っていて、フォルムがオタマジャクシみたいな姿をした小動物で、毛の代わりに細い炎を吐き出しながら、天空を飛翔する。たまに地面に墜落して、地震を引き起こす。まさに流れ星である。トンジャサムは高麗人参の精霊で、子供の姿になって人間世界に干渉してくる。
飛縁魔は、白蔵主に続いて『絵本百物語』から持ってきた。ちょうど来年(2026年)が丙午(ひのえうま)なので、その辺もちょっと調べながらまとめてみた。
そんなわけで、緩やかにファンタジィ事典の更新を再開してみた。忙しい毎日は変わらないので、ペースは上がっていかないとは思うんだけど、引き続き、緩やかに更新していきたいなあ。妖怪画も描きたいなあ。本当は朝鮮の妖怪をどんどん描きたいと思っているので、諦めずに隙間時間を狙って、絵を描いてみたい。乞うご期待だ。
2025年5月25日 絵文字の歴史3:ハートマーク事件とドコモ絵文字の誕生
5月23日の記事「絵文字の歴史2:感情を伝えるには顔のシンボルが必要だ」の続き。
人間のコミュニケーションの基本は「会話」だったはずだ。しかし、オンラインが普及して、文字だけでのコミュニケーションになると、感情が伝わらないので、喧嘩が増える。前回はアメリカの大学で、感情を伝えるために「顔文字」を導入した事例を紹介した。同様の現象は日本でも起こっていて、それを象徴する出来事が1998年の「ハートマーク事件」と言える。
当時は1G、アナロク電波で通信していた時代で、若者たちのコミュニケーションツールは「ポケベル」だった。ポケベルは送れる文字数が少なく、感情を伝えることが難しいため、若者たちは語尾に「♥」をつけて気持ちを込めるみたいな文化が浸透していた。たとえば、docomoのポケベル(センティーシリーズ)ではツータッチ入力の「88」で「♥」を送ることができた。一説では、バンド「Go!Go!7188」はポケベルのツータッチ入力に由来するとされている。ベースのアッコは本名が野間亜紀子だが、ポケベルのツータッチ入力の「55 71 88」は「ノマ♥」となる。
ところが、1998年にdocomoが社会人向けポケベル「インフォネクスト」を発売したときに問題が起きた。「インフォネクスト」はこれまでのカタカタだけでなくて、漢字も使えるという触れ込みだった。そして、その代わり「♥」が使えなくなった。そうしたら、高校生を中心に「今後、docomoはハートマークが使えなくなる」という間違った噂が日本全国に広まって、競合他社のテレメッセージ社にたくさんの若者が乗り換えた。当時、docomoは衝撃をもってこの出来事を受け止めたわけで「ハートマーク事件」と命名されている。
docomoでは次なる新商品として「i-mode」の開発を進めていたところだった。時代は2Gに移って、デジタル通信になった。携帯電話でメールやインターネットができる時代に向かって動いていて、まさにdocomoは、世界で初めて、携帯電話でインターネットにアクセスできる最先端の製品を作っていたわけだ。そのときに、docomoの社員だった栗田穣崇氏は「ハートマーク事件」を目の当たりにしていて、次世代端末には「絵文字」が必要だと考えた。そして、176種類の絵文字(12×12ピクセル)を監修・開発した。こうして、1999年にi-modeが発売され、ドコモ絵文字も普及していった。
もちろん、これは環境依存文字で、docomoの端末以外では文字化けする。それでも、非常に画期的だったわけで、この176種類のドコモ絵文字は2016年10月にニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されている。
2025年5月23日 絵文字の歴史2:感情を伝えるには顔のシンボルが必要だ
5月21日の絵文字の歴史1:ファンタジィ事典の多言語化の記事の続き。
そもそも「絵文字」の話をする前に、絵文字前夜として「顔文字」の話をしてみたい。顔文字の誕生は1982年だとされている。最初の顔文字は「:-)」と「:-(」。笑った顔とむっつりした顔の2つである。
当時は現在のようなインターネットはなくて、会社や大学が独自のネットワークをそれぞれ構築していた。大学同士はかなりネットワークが繋がっていて、掲示板を介して大学間でやりとりがされていた時代だ。学生と教授、あるいは研究者同士で、掲示板上で意見交換をすると、頻繁に喧嘩になるという状況が起こっていたようだ。そこで、カーネギーメロン大学のファールマン(大学の情報科学の研究者)が顔文字の導入を提唱したのだそうだ。文字だけだと、それが冗談なのか本気なのか分からない。そのせいで喧嘩になる。冗談のときは笑った顔、マジな話のときはむっつりした顔。そうすると、掲示板上の喧嘩が減ったのだとか。文字だけだと気持ちが伝わらない。感情を伝えるのに、顔のシンボルが必要だということが判明したわけである。
顔文字は英語では「Emoticon(エモーティコン)」と命名された。emotion(感情)とicon(アイコン)のカバン語である。その後、日本で「絵文字」が発達していって、世界中で「Emoji(イーモジ)」として受け容れられていくわけだが、「絵文字」もemotion(感情)やemoticon(顔文字)と結びついていくので、素晴らしい偶然である。
ちなみに、日本では「(^_^)」が投稿されたのが最初で、1986年のことだったようだ。アメリカの顔文字は「口」で感情を表現し、日本の顔文字は「目」で感情を表現しがちだという論文もある。
2025年5月21日 絵文字の歴史1:ファンタジィ事典の多言語化
本日、NTTドコモが「ドコモ絵文字」の提供を順次終了することを発表した。ひとつの大きな時代の終わりを感じた。
ボクは2009年からウェブサイト「ファンタジィ事典」を運営している。当時から妖怪の名前は原語表記することをモットーとしていた。古代ギリシアの妖怪なら古代ギリシア文字、聖書の妖怪ならヘブライ文字、シュメル神話の妖怪なら楔形文字。だから、いつだってコンピュータにおける文字表記との格闘だった。ミャンマー文字なんかは昔っから文字化けしていたし、楔形文字や古代エジプト文字、アヴェスター文字なんかもずぅっと課題だった。こういう世界各地の文字を、どうやったらウェブブラウザ上で文字化けせずに印字できるのか。そんなことに苦しんできた。
多分、大半の人には伝わらないと思う。それでも書いてみる。ボクは「ファンタジィ事典」をhtmlのタグ打ちで書いている。ソースを開いてもらえれば分かると思うが、世界各地の文字は数値文字参照(NCR)になっている。たとえば、古代ギリシア文字のα(アルファ)だったら「α」と書いている。ヘブライ文字も楔形文字もミャンマー文字も、みんな、こうやって数値文字参照で記述している。そして、文字コードはutf-8になっているので、別に数値文字参照しなくても直接、古代ギリシア文字を打てばいいじゃないかという声もあるかもしれない。でも、そうはいかない理由がある。
実は「ファンタジィ事典」は事典サイトなので、更新が面倒臭い。たとえば、新規で妖怪を追加することを想像してみて欲しい。たとえば、イギリス伝承の「アーヴァンク」を追加したとする。そうしたら、afanc.htmlという項目ができるだけでなくて、更新履歴のところにアーヴァンクが載る。五十音検索のア行にも載る。イギリス伝承の項目にも載る。それを全部、管理するのは難しい。若い頃にはデータベースという考え方がよく分かっていなかったボクは、それならばExcelで全て管理しようと決意した。メモ帳に妖怪の説明だけを書いて、Excelに紐づけて、全てExcelマクロでhtml化している。テキストファイルにhtmlの本文だけを書いておいて、後は全てExcelでhtmlに変換して書き出している。Excelの文字コードが基本的にはShift_JISなので、テキストファイルはShift_JISで、マクロで最後にutf-8に変換している。
……みたいな技術的なことを書くと意味分からんと思う人がいるかもしれない。でも、裏側はそういうことなのだ。WordPressなんかはphpファイルがデータベースにアクセスして、その場でhtmlを吐き出している。同様のこととして、ボクは箱庭形式で、デスクトップ上でExcelをデータベース的なものとして取り扱って、htmlを吐き出してサーバにあげている。
そんなボクからすると、絵文字の歴史というのは、まさに文字コードとの戦いの歴史だと認識している。現在、絵文字は国際社会に広く受け入れられている。「emoji(イーモジ)」などと呼ばれて、誇るべき日本の文化だとされている。オバマ大統領も2015年のスピーチの中で、日本由来のものとして、空手やカラオケ、漫画、アニメと並べて、絵文字を挙げているし、栗田穣崇氏が監修したドコモ絵文字は、2016年10月にニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されている。それでも、ボクは文字コードの歴史の観点では、日本の技術者たちの敗北だったと思う。……ちょっと思うところがありすぎて長くなりそうなので、絵文字の歴史の詳細については次回に譲りたい。(続く)
2025年5月11日 灯翠さんの狂気の表情を堪能せよ!
Adoがプロデュースするアイドル「ファントムシータ」が去年の10月にアルバム「少女の日の思い出」を発売してから、ライブ活動なんかをやっていて、新曲が途絶えていた。久々に新曲が出たと思ったら、チャラン・ポ・ランタンの小春さんによる楽曲提供だ。
実はファントムシータのデビュー曲「おともだち」も小春さんの楽曲である。だから、久々にもう一度、小春さんが出張ってきた感じ。あの当時は顔を明かさない状態でのデビューだった。MVも顔は出ていない。あのデビューは衝撃的だった。アイドルなのに、顔出しなしで、楽曲のパワーで勝負している感じがあった。2作目の「キミと××××したいだけ」で、ボカロPのきくお氏を起用して(それもAdoっぽいけど)、そこで初めて顔出しのMVとなった。約1か月間は、歌い手の顔が分からない状態で、いろいろと想像しながら、応援するというスタイルは衝撃だったし、顔出ししたときのヴィジュアルの高さや、ダンスまで踊れるところにも驚いた。
そうやって毎月楽曲がリリースされて、10月にアルバムが発売された。そして、今回はシングルとしては7曲目。相変わらず、小春さんの歌詞は狂気的だ。後半に向けての加速度が半端ない。オススメ。是非。
ちなみに、彼女たちのYouTubeにはライヴ映像もいくつか載せられている。オーディションの課題曲は「Tot Musica」だったわけだが、ライヴのアンコールで「Tot Musica」を歌う彼女たちの姿も見ることができる。途中、Adoが降臨(当然、声だけだけど)するところは宗教のような様相を帯びていて、圧巻だ。