シェムハザ

分 類ユダヤ・キリスト教魔法書文献
名 称 שַׁמְּחֲזַי(シェムハザイ)【ヘブライ語】
ስምያዛ(シミヤザ)【古代エチオピア語(ゲエズ語)】
容 姿堕天使。
特 徴地上を監視するグリゴリたちの指導者。200人の天使の一団を率いて、人間の女性と交わり、地上に混乱を引き起こした。
出 典『エノク書』(前2~前1世紀)ほか

200人の天使の一団を引き連れて、人間の女性と交わった堕天使!?

シェムハザはユダヤ・キリスト教の堕天使。旧約聖書偽典『エノク書』ではグリゴリを率いる指導者の1人として、人間の女性を妻に娶って、人間にさまざまな知識や技術を与え、堕落させた。

『旧約聖書』「創世記」6章には次のような記述がある。

人が地のおもてにふえ始めて、娘たちが彼らに生れた時、神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。そこで主は言われた、「わたしの霊はながく人の中にとどまらない。彼は肉にすぎないのだ。しかし、彼の年は百二十年であろう」。そのころ、またその後にも、地にネピリムがいた。これは神の子たちが人の娘たちのところにはいって、娘たちに産ませたものである。彼らは昔の勇士であり、有名な人々であった。主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。

(『旧約聖書』「創世記」6.1-6.7より)

旧約聖書偽典『エノク書』には、この「創世記」6章の詳細が描かれている。それによれば、200人の天使の一団が地上を監視していた。この天使の一団をグリゴリと言い、シェミハザはこの一団の指導者的立場にあった。しかし、次第に地上に人類が増えていき、美しい娘たちが生まれるようになると、天使たちは人間に恋心を抱くようになる。天使たちは「人間の女性を妻に娶って子をなそう」などと言い出した。指導者だったシェミハザは仲間たちを集めると「みんながこの企てに賛同しないと、私だけが罰せられるのは心配だ」と告げた。天使たちは決してお互いが裏切ることがないように、互いに誓いを立て、呪いを掛け合うことで合意し、一斉にヘルモン山に降り立った。この企てには、あの有名な堕天使のアザゼルも参加していた。

天使たちはそれぞれ人間の女性を妻に娶ると、人間にさまざまな知識や技術を授けた。それは魔術や呪術であったり、薬草の知識であったりした。中でもアザゼルは武器や防具、化粧、宝石などを教え、これによって人々は堕落していったとされる。やがて、人間の女性たちは身籠り、子供がうまれた。天使と人間の間に生まれた子供たちはネフィリムと呼ばれ、成長するとその身長は300キュビット(約135メートル)にもなった。ネフィリムたちは次々と食料を求めるようになり、やがて人間はネフィリムを養うことができなくなった。ネフィリムは人間をも食べるようになった。

こうして大混乱になった地上を眺めて、遂に神は四大天使を地上に派遣した。ミカエルはシェミハザと仲間の天使たちを捕らえ、ラファエルはアザゼルを征伐し、ガブリエルはネフィリムを互いに戦わせて相討ちにさせて滅ぼした。グリゴリたちは拘束され、70世代に亘って荒野の穴に幽閉されることとなった。そしてウリエルはノアに方舟を造らせ、神はすべてをリセットするために地上を大洪水で押し流したのである。

《参考文献》

Last update: 2024/09/10

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