ブタッチ・クン・イルグス
分 類 | ヨーロッパ伝承(スイス伝承) |
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Butatsch Cun Ilgs(ブタッチ・クン・イルグス)【ロマンシュ語?】 | |
容 姿 | 巨大なウシの胃袋のような姿。無数の目。 |
特 徴 | 湖の奥底に棲む。無数の目から炎を噴き出す。 |
出 典 | - |
無数の目に覆われた巨大なウシの胃袋!?
スイス南東部のグラウビュンデン地方にはブタッチ・クン・イルグスと呼ばれる恐ろしい怪物が棲んでいる。大昔、この地方の横暴な領主と貴族たちがいた。リュッシャー湖の湖畔で羊飼いたちの飼うヒツジを面白半分に剣で切り裂き、湖にヒツジを追い立てて溺れさせた。羊飼いたちはこの乱暴狼藉に逆らうこともできず、ただ眺めていることしかできなかった。すると突如、湖がブクブクと泡立ち、湖の奥底から怪物が姿を現した。その姿は巨大なウシの胃袋のような姿で、表面は無数の目で覆われていた。目からは炎が噴き出し、怪物は領主や貴族たちを全て押し潰すと、再び湖の底に消えていった。震えて見ていた羊飼いたちは全員、無事だったという。
その後もブタッチ・クン・イルグスはリュッシャー湖の近くを流れるノッラ川の急流を削ったり、堤防を決壊させて大規模な地滑りを引き起こしたりと、暴れ回っている。
しかし、これらの3回の出現以降、ブタッチ・クン・イルグスは姿を見せていないようだ。それでも、今でもリュッシャー湖の奥底からは咆哮が轟くことがあり、羊飼いたちはそのたびに干し草を湖に捧げるという。
《参考文献》
- 『シリーズ・ファンタジー百科 世界の怪物・神獣事典』(著:キャロル・ローズ,監訳:松村一男,原書房,2004年)
Last update: 2025/06/01