2025年3月23日 1言語に短期集中で絶賛、言語学習なう
2月7日の記事「語られる妖怪を耳で捉えたいので」で、Duolingoを始めて、各国語を学習しているという話を書いた。ボクはいろんな国の言葉に興味があるので、学ぶことそのものはとても楽しいし、多方面に気持ちが向かってしまう。しかも中途半端に器用だから、こなせてしまうんだけど、でも、先日、14か国語学習者のkazuさんがYouTubeの中で、言語学習のコツとして、取り敢えずは1か国語に絞って短期集中した方がよいと語っていたので、それならば1か国語に専念しようということで、現在点は韓国語(厳密には朝鮮語だと思うんだけど)にフォーカスして学習することにした。そして、もう少しで1か月くらいが経とうとしている。結論から述べると、kazuさんは正しい。今、日常生活の中で、簡単なことであれば、韓国語で表現できることができるようになってきた。
たとえば「バスが8時半に到着する」とか「今日は子供と一緒に公園に行く」とか「家でテジコギとピビンパを食べる」みたいなことは韓国語(朝鮮語)で空でも言えるようになった。厳密には時制とかモダリティは合っていないのかもしれない。でも、多分、韓国人相手に言いたいことは伝わるだろう。全く知らない言語でも、1か月集中するとここまで来れるのかと、正直、驚いている。ヒアリングとスピーキングが含まれているので、Duolingoの教材が優れているのかもしれない。朝と夕方、15分×2回を毎日、続けているので、継続はチカラなりということなのかもしれない。kazuさんは1か月半くらいで1つの言語はある程度まで行けると言っていたが、それも一理あるのかもしれないなと感じている。
このペースで韓国語(朝鮮語)をある程度、会得したら、ベトナム語も同じくらいに持っていきたいなあ。Duolingo、タイ語が搭載されないかなあ。今、タイの妖怪の調査に難航しているので、タイ語がマスターできたらよいよなあ。
2025年3月9日 朝鮮の妖怪をインプット中
人生にはインプットのフェーズとアウトプットのフェーズがある。こうやってウェブサイト運営なんかをやっていると、ついついアウトプットに追われてしまう。でも、本当はインプットの方がずぅっと大事。なので、あんまり無理をしないで緩やかにやりたいなとは思っている。でも、ついついアウトプットに気持ちが向かってしまうんだよなあ。
そんなわけで、今日はずぅっとインプット。一日中、朝鮮の妖怪をインプットしていた。否、厳密にはインプットするための下地作りをしていた。
朝鮮語を学んだので、朝鮮語でいろいろとネットサーフしていたら、朝鮮の妖怪が比較的、たくさんまとまっているウェブサイトがいくつか見つかって、それなりの品質が確保されていそうだったので、それらを拾い出して、一日中、朝鮮の妖怪リストを作成していた。すでに120項目くらいの一覧になっているので、これらを順繰りと情報収集していけば、順次、「ファンタジィ事典」に朝鮮の妖怪を更新していけるのではないか。
フィリピンの妖怪をまとめるときにも、同様に一覧を作成している。もちろん、こういう一覧というのは玉石混交で、有名な存在もあれば、地方の非常にマイナな妖怪もいる。でも、こうやって一覧にしておくことが重要で、そこを起点に調査を進めて、面白かったらピックアップして「ファンタジィ事典」に掲載するアプローチがとれる。データベースは取捨選択の基礎だ。
フィリピンの妖怪も、実はすでに300項目くらいの妖怪の一覧が手元の資料として準備されている。妖怪の名前だけでなく、各項目について、ある程度、英語とフィリピン語の簡単な情報も拾ってある。こういうのを足掛かりに深堀していって、情報が少ないものとか、掲載してもあんまり面白くなさそうなものは載せていない。ベトナムの妖怪も同様で、すでにかなりの量の妖怪の一覧は出来上がっていて、かなりの量のベトナム語の情報は拾ってある。ここから深掘りして、面白ければ載せていく次第だ。
一方、タイの妖怪はあんまり、一覧になっているようなウェブサイトがないので、なかなか情報収集に苦慮している。
今回、朝鮮の妖怪について、朝鮮語で拠って立つべき情報源がいくつか見つかったので、ここを足掛かりに、項目を広げていけそうだ、などと密かに思っている。
そんなわけで、表面的にはウェブサイトは更新されない。でも、粛々と情報収集は進んでいるよ、というお知らせというか、言い訳というか。まあ、これからちょっと朝鮮の妖怪にアプローチするよ、という予告でもあるわけで……
2025年2月17日 メンフィス系神話を一気に更新だ!!
久々にウェブサイト「ファンタジィ事典」のエジプト神話の項目を更新した。
エジプト神話って、いくつかの系統がある。具体的には、太陽神ラーを中心にしたヘリオポリス系神話、8柱の原初神で構成されているヘルモポリス系神話、そして創造神ペテフ(プタハ)を中心としたメンフィス系神話などがある。そんなことを考えながら、自分のウェブサイトを眺めていたら、メンフィス系神話の項目がほとんどないなあと気になって、覚悟もなく軽い気持ちで作業を始めてしまった。でも、資料も多いし、解釈も複雑怪奇だし、何よりも歴史とか地理とか文化なんかが全然、解像度高く頭の中にインストールされていなくって、結構、時間が掛かってしまった。本当は3日くらいで終わるだろうと思っていたら、1週間以上、悩んでしまった。
そんなわけで、メンフィス系神話の創造神ペテフ(プタハ)、その妻のセケメト(セクメト)、息子にして睡蓮の神ネフェルテム、原初の丘タアチェネン(タテネン)、そして冥界神セケル(ソカル)を更新してみた。
メチャクチャ、エジプト神話って入り組んでいて、ちょっとやそっとじゃまとめあげられない。それを痛感した。でも、頑張ったので、是非是非、読んでみて欲しい。そのうち、エジプト神話のイラストも描いてみようかな。図像に忠実にやれば、きっとそこそこ楽しんでくれる人もいると思うんだよね。ふふふ。
2025年2月7日 語られる妖怪を耳で捉えたいので
妻のちぃ子に誘われるままに、1月から「Duolingo」を始めた。言語学習アプリだ。英語はもちろんのこと、ベトナム語や中国語、韓国語、アラビア語、ラテン語など、さまざまな言語の学習を楽しんでいる。一問一答式で、いろんな問題が出題される中で、文字を読んで、文字を入力して、耳で聴いて、声に出して……を繰り返していくので、リーディング、ライティング、ヒアリング、スピーキングを次々にこなすような仕組みになっている。だから、脳みそが汗をかく感覚があって、短時間の中で脳汁がブシャーと溢れ出るようなイメージがある。もうすぐ1か月になろうとしているが、体系的というよりは感覚的に言語を覚えているような気がする。
うまくやれている気がするので、そのうち、ギリシャ語(現代ギリシャ語)やフランス語もやってみたいなあ。欲張りなボクはそんなことを思っている。ヘブライ語もあるんだよなあ。フィリピン語、とかタイ語、ミャンマー語など、ボクが今、妖怪を更新している国の言語が整備されていないのが残念ではある。
でも、ベトナム語と韓国語を学びながら、その国の言語で妖怪を調べることが苦にならなくなってきた。特に良いなあと思っているのは、最近、妖怪の解説がYouTubeになっていることが多くって、そういうのを視聴しながら「あ、今、『名前』って聞こえた!」とか「なんか分からんけど、否定文になっているぞ!」とか「あ、『パプ』って言ったから《飯》だな」などと楽しめる点だ。
妖怪は「語られる」存在なので、本来は耳で聴くのが一番いいはずだ。だから、ちょっとでもそういう境地に近づいていきたいなあと思っている次第。まあ、まだまだ入門も入門なんだけどさ。長期的な視座で頑張って行こうと思っている。そのうち、その国に行こうと思うかもしれないしね。
2025年1月16日 アジアの妖怪をドドドドン!
アジアの妖怪をドドンと一気に更新した。フィリピンの妖怪からはキスをするだけで仲間を増やす吸血鬼バンキラン、ベトナムの妖怪からはおかしなポーズで空を飛ぶことでお馴染みの吸血鬼マーカーゾン、朝鮮の妖怪からは殺されても尚、運気を向上させてくれる聖獣ミョドゥサ、そしてタイの妖怪からは赤ん坊を守護する獣頭の女神メースーをエントリー。ちょっと本気を出してみた。「今年もアジアの妖怪を頑張る!」と宣言したので、その意気込みを形にして示してみた格好。
フィリピンは英語圏なので、比較的、資料は豊富だし、検索もしやすいし、訳すのも難しくはない。ベトナムの妖怪はベトナム語、朝鮮の妖怪は朝鮮語、タイの妖怪はタイ語のウェブサイトを参照して調査をしたので、結構、頭の中がぐるぐるしている。でも、とてもドーパミンがドバーっと出て、楽しい時間だった。結構、雑には扱わずに、丁寧に裏取りをしながら調べたので、それなりの品質の立項になっていると思う。
マーカーゾンは足の親指を鼻の穴に突っ込んで飛ぶので、近いうちにイラストに描き起こしたいと思う。ミョドゥサも文献だけ見ると子ネコの頭にヘビの身体と記されているんだけど、最近の子供向けの韓国アニメでは、でっぷり太った胴体の長いネコとして描かれているので、ちょっとそういう要素も取り込みつつ、イラスト化したいなと思う。妄想は膨らむなあ。
2025年1月14日 ベトナムのマーとクイ
ベトナムの妖怪については、基本的にはズイ・ヴァン氏のウェブサイト「Ma Quỷ Dân Gian Ký」(ベトナム語)を参考にしている。水木しげるが描く妖怪に感銘を受けて、ベトナムで妖怪を蒐集し、イラストに描き起こしている人物だ。最近、日本でも取り上げられることがある(ベトナムスケッチ:ズイ・ヴァンが紐解くお化けの話など)。
そんなこともあって、ベトナム妖怪の調査にも精を出しているところで、ベトナム語も少しだけ勉強し始めた。ベトナム語は漢字文化圏のひとつだ。文字コード的にもCJKVとして体系化されている。中国、日本、韓国はよく知られていると思うけれど、4番目の「V」はベトナムの「V」である。現在のベトナム語では、文字はフランス語みたいにアルファベットにいろいろと装飾がついたみたいな感じになっている。でも、音を元を辿れば漢字に直せるものがほとんどだ。
たとえば、マーライとかマーヴーザーイなどの「マー」というのは漢字にすれば「魔」であるし、クイモッゾーの「クイ」は「鬼」である。ベトナム語の妖怪関連のウェブサイトを回っていると「マー」と「クイ」が併記されている表現が多い。「ma đưa lối, quỷ dẫn đường」(マーが道を示して、クイが道で導く)という表現はベトナムではよく知られた言葉らしい。
面白いのは、ベトナム語と中国語で意味が逆転しているところだ。中国語だと「鬼」は死者であり、幽霊だ。日本語にもその名残があって「鬼籍に入る」とか「鬼門」などは、この中国の鬼の《霊》という意味が残っている。一方の「魔」というのは「悪魔」とか「魔神」とか「魔物」という意味である。これがベトナム語では逆になっていて、マーが幽霊で、クイが魔物になっている。いつの間にか意味が逆転しているのが面白い。
そんなことをベトナム語を学びながら、ベトナム語のウェブサイトを散策しながら、楽しんでいるところである。
2024年6月7日 666には間に合わず(>人<)
ソロモン72柱の「ベレト」を描いてみた。詳細はウェブサイト「ファンタジィ事典」のベレトを参照にしてもらえればいいのだけれど、今回、ラテン語の『悪魔の偽王国』のボリュームが多くて、翻訳に苦労した。英語の『ゴエティア』も結構、分かりにくさはあって、フランス語の『地獄の辞典』も『悪魔の偽王国』を参照しているはずなのに、かなり端折った感じになっていて、時間を要してしまった。
本当は、ね。令和6年6月6日が「666」になるので、その「獣の数字」に合わせてソロモン72柱の悪霊をひとつ更新したくて準備をしていた。でも、何やかんやで結局、1日遅れになってしまった。クッソゥ。
ベレトの場合、他の悪霊たちとは違って、ルイ・ル・ブルトンの元絵がないので、自由に描くことができるが、それはそれで難しさはある。特にベレトについては『悪魔の偽王国』や『ゴエティア』の中に外見や風貌に関する記述がなくって、蒼ざめたウマに乗っていることくらいか記述がない。
ちなみに「蒼ざめたウマ」と言えば、キリスト教の世界では『ヨハネの黙示録』の四騎士を連想するはずだ。支配(白いウマ)、戦争(赤いウマ)、飢饉(黒いウマ)、そして死(蒼ざめたウマ)をそれぞれ象徴している。「蒼ざめた」というのはギリシア語では「緑」ということなので、今回、ウマの色は緑色と灰色の混ざったような色にしてみた。また、蒼ざめたウマを駆っている人物は死の象徴ということで、しばしば死神みたいに描かれる。死神は黒いローブをまとった骸骨っぽいイメージなので、今回、赤黒いローブに身を包んだ骨張った悪霊にしてみた。前を先導するネコとネズミは『地獄の辞典』の絵をそのまま援用している。
そんなわけで、ボクなりのベレトになっている。さあ、次はプルソンだなあ。プルソンはプルソンで、文章そのものは短いんだけど、訳しにくいと言えば訳しにくいんだよなあ。「aerial」がどういう意味なのか、解釈は人それぞれで、訳しにくい。でも、まあ、頑張ろう。
2024年4月6日 フィリピンからタイに徐々に移行!?
ウェブサイト「ファンタジィ事典」にケルト神話がないというのに気づいて、大慌てで準備して、ようやく、ケルト神話の項目を掲載し始めたボクである。それから、タイの妖怪も精力的に追加してみている。フィリピンの妖怪に続いて、タイの妖怪の絵も描いてみたいと思っているから、まずは項目を準備して、頭の中を整理しておこうと思っている。
フィリピンの妖怪も、もちろん、まだまだたくさんいるので、引き続き、調査して掲載していきたいんだけど、でも、元々、マニアックなところで、さらにマニアックなところに踏み込んでいきすぎると、あんまりよくない。フィリピンにおいてメジャーなところをある程度押さえたら、そこで一度、線引きをして、そこから先は緩やかにして、別に国の要所を抑えた方が、きっと事典として広がりがある。次はタイの妖怪をターゲットにしてみようかな、と思っている。
タイの妖怪は、でも、タイ語なので、フィリピンの英語とは違って、なかなか難しさはある。今は便利な時代で、タイ語であろうがミャンマー語であろうが機械が翻訳してくれるんだけど、英語のサイトと違って、タイ語のウェブサイトだと、絞り込みが難しい。英語だったら、妖怪の名称に加えて、「現地の姿」とか「神話」とか「イラスト」とか、それこそ、いろんなキーワードをつけて情報の精度を上げていけるけど、タイ語だとそういうところに難しさがある。それこそ、googleで上がってきたら、上から順にみていくしかない。それでも、まあ、機械が訳してくれるので、いい時代にはなったと思う。
2023年10月16日 アイルランド神話、始めました。
2009年からウェブサイト「ファンタジィ事典」を運営してきたボクであるが、実は最近になって、ケルト神話に一切、触れていないことに気がついた。大抵、世界の神話を挙げていけば、5本の指にケルト神話が入ってくる。日本神話は当然として、ギリシア・ローマ神話、北欧神話、ケルト神話、メソポタミア神話、エジプト神話、そしてインド神話なんかを解説するはずだ。それなのに、当ウェブサイトでは、どうしたことか、ケルト神話がすっかりと抜け落ちている。
正直、若かりし頃のボクにとって、ケルト神話って難解だったのだ。資料に乏しく、断片的で、だから、何となく敬遠していたのは事実だ。そもそも一言でケルト神話と言っても、「島のケルト」と「大陸のケルト」で全然、内容が違うし、「島のケルト」の中だって、アイルランドとウェールズで異なっているのだ。
それから、古アイルランド語の正しい発音が難しくて分からなかったというのも大きかったと思う。どういう呼称で固有名詞を立項していくか悩んでいたら手が止まってしまった。
そして、当時の気持ちのまんま、すっかり忘れてしまっていたのだ。そんなわけで、まずは緩やかにアイルランド神話をまとめていかねばと、重たい腰を上げた次第。とりあえずケルト神話のページを立ち上げて、項目をゆるゆると作成中。
2023年8月13日 ピーツピ・ジジジ
YouTube「ゆる言語学ラジオ」を日常的に楽しんでいるボクだが、遂には動物語に手を出したようで、シジュウカラ語について学ぼうという回が公開された。
シジュウカラ語で「ピーツピ」は《警戒せよ》、「ジジジ」は《集合せよ》という意味で、それぞれ別の語彙として、それぞれの場面で使われるらしい。たとえば、危険が迫っていれば、「ピーツピ」だけで単独で用いられるし、餌があるときに「ジジジ」と鳴いて仲間を集めることもあるらしい。
その上で、シジュウカラ語には「ピーツピ・ジジジ」という複合語もあって、これは「敵がいるので隊列を組んで威嚇行動をとれ」という意味になるらしい。シジュウカラたちが集まって、隊列を組んで、高速で羽ばたいて、モズなどの敵を威嚇するらしい。
「ピーツピ」と「ジジジ」を録音して、モズのような鳥の模型を用意して、「ピーツピ・ジジジ」と音声を流すと、威嚇行動をとる。しかし、「ジジジ・ピーツピ」の順番だと、シジュウカラは威嚇行動をとらないのだという。つまり、語順がとても大事ということだ。
シジュウカラがシジュウカラ語を話すように、シジュウカラの仲間のコガラという鳥も、コガラ語があって、《集合せよ》は「ディーディーディー」という鳴き声なのだという。そして、シジュウカラとコガラは、ときに「混群」と言って、一緒に群れをつくって行動をするらしく、シジュウカラたちは、コガラ語もちゃんと理解して、連携しているのだという。
ルー大柴のルー語(寝耳にwaterや藪からstickなど)に着想を得て、試しにシジュウカラの「ピーツピ」とコガラの「ディーディーディー」を組み合わせて、「ピーツピ・ディーディーディー」と流してみると、シジュウカラたちはちゃんと威嚇行動に移ったという。つまり、シジュウカラはルー語のような日本語と英語を組み合わせた造語(この場合、シジュウカラ語とコガラ語の組み合わせ)をちゃんと理解できるということになる。
そんなわけで、動物言語学という新しい学問が出来上がったという話である。面白いので、是非、ご視聴あれ。
2023年5月31日 バナナはおやつは入りますか?
息子のツクル氏が学校のイベントで、1泊2日の宿泊体験に行く。その準備を手伝っていたら、しおりの持ち物に「おやつ」が書いていない。「おやつはないの?」と聞いたら「そんなのないよ」と言われた。ないらしい。時代だろうか。「遠足にはおやつでしょ?」と言ったら、キョトンとされてしまった。やおら、「遠足じゃないから。宿泊体験だから」とツクル氏。「え? 宿泊体験だって遠足でしょ?」とボク。そうしたら「違うよ。遠足は泊まらないでしょ。ボクたちは一泊するんだよ?」と笑われた。えー、そうなの? 一泊したら「遠足」じゃないの?
そこで、我が家の辞書で調べてみる。まずは愛すべき「新明解国語辞典」より。
えん そく0⃣ヱンー【遠足】ーする(自サ)〔見学・運動などのため〕教員が児童・生徒を引率して、交通機関をなるべく利用しないで遠くへ行くこと。
となっている。「交通機関をなるべく利用しないで」とわざわざ書いてある。続いて「三省堂国語辞典」より。
えん そく[遠足]《名・自サ》〔見学・運動のため〕<歩いて/日帰りで>遠くへ行くこと。
なるほど、こちらも「歩いて」という点が強調されているので、新明解くんの「交通機関をなるべく利用しないで」とニュアンスは近い。そして「日帰りで」というのも明記してある。うーん。
それならば、みんな大好き「広辞苑」ではどうか。
えん-そく ヱン‥【遠足】①遠い道のりを歩くこと。また、日帰りできるくらいの行程を歩くこと。誹風柳多留49「―の達者二人で六郎兵へ」。福沢諭吉、福翁百話「強壮に誇る若紳士の仲間には、游泳競漕―等の大挙動なきに非ざれども」②学校で、見学・運動などを目的として行う日帰りの校外指導。<[季]春>
やはり「足」がつくだけあって、「歩く」という点が大事らしい。「日帰り」とも書いてある。そして、春の季語であるらしい(笑)。なるほど。
以上から、ツクル氏が正しいことが分かった。遠足はあくまでも「歩いていく」ことが原義であって、日帰りの範疇でやるものらしい。だからって「おやつ」はないわけじゃないと思うのだけれど……。さてはて。
2023年5月25日 「本日は休肝日をお休みします」
最近、妻のちぃ子が体調を崩していて、原因不明の頭痛に悩まされている。背中が凝り固まっていて、マッサージすると解消するので、血流がよくないのかもしれない。
そんなこんなで、日々の晩酌を取りやめて、休肝日にしていた。ところが、先日、「本日は休肝日をお休みします」と言って晩酌を始めた。あまりにも面白い表現に笑ってしまった。アルコールを節制して、肝臓を休める日なのに、それを休むというのだから、休むことを休むという不思議な構造の表現になっている。
言葉の面白さについつい記事にしてみたよ、というだけの話。
2023年4月27日 「えーっと」と「あのー」はどう違うのか。
YouTubeの「ゆる言語学ラジオ」のパーソナリティのお二人が『言語沼』を4月に出版したので、早速、読んでみた。
いつものラジオの軽妙な会話が忠実に再現された対話型の本で、推敲されているので、無駄がなくてキレキレである。文体はゆるく書かれているし、難しくないけれど、よくよく読むと、「連濁」「アニマシー(生物性)」「音象徴」「フィラー」「調音点」「オノマトペ」「格助詞」など、実はがっつりと言語学っぽい内容でまとめられている。それを聞き手の堀元氏がちょいちょい難解な雑学を放り込みながら、面白おかしく茶化しながら進行していく。
純粋に「言語学って面白い」という読後感が残るので、とてもよい。是非、おすすめの1冊である。
2022年2月7日 鼎談
今日、業界新聞を読んでいたら、「鼎談」という語が出てきた。何だろうな、と思って調べたら、二者だと「対談」、三者だと「鼎談」だと書いてあった。「鼎」が三本足の器だから、三者が会談することを「鼎談」というらしい。へえ。知らなかった。知らないことってたくさんあるなあ。三者だから「鼎談」というのは、語源的にはちょっとお洒落だし、三者のためだけに言葉が割り振られている事実が、とても面白い。でも、あまりにも限定的な意味の言葉だから、きっと廃れていくだろうなあ。こういうお洒落な言葉は残しておきたいなあ、と思ったので、こうして微力ながら、「日々の雑記」に記して、オンライン上に記録を残していくスタイルであることよ。
2021年10月8日 fantasyはファンタシィ!?
ボクがウェブサイト運営を始めたのは2003年。大学生活の傍らで創作サイト「ヘタっぴなアルコール蒸留」を立ち上げた。元々、大学の授業の一環でhtmlを学ぶ機会があり、そのまま、ウェブサイトの作成に没頭した。当時の日本では、まだ大手のウェブサイトは少なくて、大学に行けば「昨日の侍魂の記事、見た?」みたいに、ある程度、みんなの中で共通認識になるようなウェブサイトがあった。その後、2004年にサイト内のコンテンツのひとつとして「ファンタジィ事典」の構築に着手した。創作は時間が掛かる。ボクは音楽や絵は量産できないタイプなので、どうしても小説を書く方面に力を入れていたが、それだって、月に1本。それだけではウェブサイトとして成立しないので、日々の雑記で更新頻度を上げつつ、その傍らで、次第に創作活動から神話・伝承に軸足を移していった。そして、2009年に「ファンタジィ事典」を「ヘタっぴなアルコール蒸留」から分離した。2017年に大幅リニューアルを敢行して、現在に至る。
というわけで、実のところ、2004年からウェブサイト「ファンタジィ事典」をやっている。「ファンタジー」ではなく「ファンタジィ」なのは、「y」をカタカナ化するときに何となく「ィ」にすると格好いいと思ったからで、大学生の頃の若気の至りではある。でも、今でもそのまま「ファンタジィ」の表記でやっている。まあ、「ファンタジー事典」では、あまりにも一般名詞っぽいので、「ファンタジィ事典」にすることで、ちょっとした固有名詞感が出てよいかな、とも思っているんだけど、でも、最近のGoogleは賢いので、「ファンタジィ」でも「ファンタジー」でも、ほぼ同じものとして認識しているようで、「ファンタジィ」という表記で差異化を図っても、検索上、何も有利に働かないらしく、ちょっと頭の痛い問題ではある。
さて、本日の本題である。タイトルのとおりだが、英語のfantasyは、実は【ˈfæntəsi】と発音するらしい。つまり、ファンタシである。「ファンタジィ」でも「ファンタジー」でもなく「ファンタシ」だ。そりゃあ、そうか。「s」だもんね。たまたま、ファンタジィという概念について整理していて、本日、発見した。いやはや。ファンタシィか。でも、もはや日本語としては「ファンタジィ」の方が定着してしまっている。
2021年4月12日 「漢字『聞』の耳の形」問題と「漢字『聞』の部首」問題!?
息子のツクル氏が「チャレンジタッチ(進研ゼミ小学講座)」をやっている。結構、算数なんかはスラスラとやるが、国語、特に漢字は苦戦していて、いつもマスコットキャラクターのコラショに「ざんねんっ!!」と言われている。どうやら、お手本の漢字の模写をするというのが苦手のようだ。今日は「聞」という漢字で、「あれれー、形が違うよー」とコラショに言われていた。でも、何度やってもうまく書けないようで、いらいらし始めて、最終的には激怒した。だから、途中で「一緒にやろうかー」と割って入った。そして、ビックリした。「聞」という字は「門」と「耳」の組み合わせだと思っていたら、「耳」の形は、5画目の横棒が6画目の縦棒を突き出さないらしく、厳密には「耳」とは形が違う。ツクル氏は「門」に「耳」と思って書いているから、何で「あれれー、形が違うよー」と言われているのか分からずにイライラしていたらしい。そうかー、ボクも知らなかった。「耳」とは少し形が違うのだ。
……というわけで、漢字辞典で調べようとして、「聞」を「門部」で探したら見つからず、実は「聞」は「耳部」だった。本日、2度目のビックリ。「問」も「門部」ではなくて「口部」だった!! へえ。世の中、知らないことばっかりだ。
その後、いろいろとリサーチしたので補足説明をしておくと、漢字には「意符」と「音符」があって、字のとおり「意味を表わす部分」と「音を表わす部分」がある。「聞」の場合には「耳」は「意符」で、「門」は「音符」だ。「ぶん」とか「もん」という発音は「門」で表現されている。そして、部首というのは、基本的には「意符」の方で分類するのだそうだ。だから、「閂」とか「開」、「閉」みたいに「門」に意味があるときには「門部」になるけれど、同じような形でも、「聞」とか「問」のように「門」が「音符」として用いられているときには「門部」ではなくて「耳部」や「口部」に分類される形になる。
ちなみに「聶」とか「囁」は「耳」が3つついているけれど、上と右下は「耳」だけど、左下はやっぱり5画目の横棒の払いは6画目を突き出していない。同じ「耳」なのに、形が違うんだなあ。
2021年4月11日 「#マリエさんに連帯します」とはどういう意味!?
「#マリエさんに連帯します」というハッシュタグが話題になっている。内容そのものについては8日の記事で書いたが、そもそも「連帯する」とはどういう意味なのか。「連帯」という言葉そのものは「連帯責任」とか「連帯保証」みたいな場面でよく使う。あるいは「連帯感」みたいな言葉もある。でも、「連帯する」という動詞の形では、あんまり使わない。少なくとも、ボクは使ったことがなかったし、「マリエさんに連帯します」という言葉が明確に何を指すのか、よく分からなかった。思わず、辞書を開いてしまった。
れんたい【連帯】ーする(自サ)二人以上の人が協力・提携して事に当たること。「ー責任・ー保証人・ー感・ー意識・ーストライキ」(『新明解』より)
れん-たい【連帯】 ①むすびつらねること。連繋。「ーを強める」「ー感」 ②二人以上が連合して事に当たり同等の責任を帯びること。「ー保証」(『広辞苑』より)
れん-たい【連帯】 (名)スル (1)お互いが,結びついていること。気分が一つになっていること。「―感」 (2)二人以上の者が共同で責任をとること。「―して債務を負う」(『大辞林』より)
『大辞林』は、少しハッシュタグの意味に通じるかもしれない。気分が一つになっていること。つまり、「マリエさんと気分をともにします」という感じだろうか。
Google先生に「連帯する」で尋ねてみても、今回の騒動の件と、いくつかの本のタイトルと英語の訳くらいしか引っ掛からない。もしかしたら、何かの訳語なのかもしれない。solidarityが連帯と訳されていて、これが団結とか結束みたいな意味で使われているので、もしかしたら、こういう運動のときに賛同するイメージで、何か外国語があって、それを訳しているのかもしれない。
いずれにしても、そういう明解じゃない言葉がハッシュタグになって巷に出回っていることが不思議な感じ。みんな、意味が分かって使っているのだろうか。
2021年3月3日 英語ができる人が羨ましい。
英語は昔っから苦手だ。学生時代、体育の次に苦手だった。基本的には、ボクは訓練が必要な科目は苦手なことが多く、子供のときから、九九を覚えるとか、公式を覚えるとか、地名や年号を覚えるみたいなことには意味を見い出せなくて、結果、得意ではなかった。その意味では、英語も、英単語を覚えるとか、文法を覚えるということに興味が湧かなくて、畢竟、苦手な科目になった。結局、本質的には努力家ではないのだ。センター試験で200点中、130点くらいだった記憶がある。
でも、さすがにずぅっと海外を飛び回っていたので、今ではその苦手意識も大分、薄れてきた。それでも、得意ではないな、と感じる。会話はできる。相手に何か言われたときに、即座にレスポンスすることも、言い合いをすることもできる。だから、今のところ、業務上、不都合はない。でも、文法は滅茶苦茶だし、細かいニュアンスは伝えられないな、というのは常に感じている。おそらく、公式の場で、ちゃんとしたスピーチをしろ、と言われると、ちょっと不適切だろうな、と思う。あくまでも、現場レベルの会話ができるだけだ。
本日は、南アフリカの方々とテレビ会議をした。ボクが体調を崩していたところもあって、準備にあまり携われていなかったので、後輩に資料作成、ファシリテーションを全部、託した。彼はTOEIC満点で、帰国子女なわけだけど、流暢だ。相手との会話のキャッチボールも淀みなく、時折、ジョークも飛ばし、和気藹々と議論が進行していく。やっぱり、こういうことだよなあ、と思う。細かいニュアンスも敏感にキャッチできるし、何より、相手側にストレスがない。
勿論、語学力が全てではない。英語が得意だからオールオッケィということではなくて、普段から日本語でちゃんとコミュニケーションがとれない人は、英語でもとれない。今回の場合、彼は日本語においてもちゃんと頼れる後輩で、信念もあるし、同じヴィジョンを共有して仕事ができている。日本語でも論点も明確に伝えられるし、交渉も任せられる。その上で、英語ができるということがとても大事なのだけれど、心の底から、ああ、敵わないなあ、と思った。やっぱり、英語ができるっていいなあ、と。
一朝一夕にはできるようにならない分野はいくつかあるが、英語もそのひとつだ。学生のときに、ちゃんとやっておけばよかった、と思う。
2021年3月2日 ベヒモスは《カバ》でレヴィアタンは《ワニ》であるという不都合な真実
久々にゆっくりと休んで、ウェブサイト「ファンタジィ事典」を更新。ベヒモスとレヴィアタンを更新した。
ベヒモスが旧約聖書『ヨブ記』に登場することは有名だけど、じゃあ、『ヨブ記』を読んだことがあるのか、というと、読んでいない人が多いのだろう。でも、今はインターネットで何でも読める時代だ。Wikipediaの「ベヒモス」を見れば『ヨブ記』40章15-23節に登場することが分かる。そして、今度はWikipediaの「ヨブ記」に飛べば、Wikisourceで日本聖書協会の『明治元訳旧約聖書』(1953年)と『口語訳旧約聖書』(1955年)が引っ掛かる。従って、聖書を持っていない人でも、実は『ヨブ記』は読める。
というわけで、『ヨブ記』の40章15-23節を読むと、どちらにも「ベヒモス」は出てこない。実は「ベヒモス」はどちらも《河馬》と訳されている。ちなみに41章1節には「レヴィアタン」が登場するはずだが、これも「わに」あるいは「鱷」となっていて、「レヴィアタン」は出てこない。
ちなみに、ちょっと英語が出来れば、簡単にヘブライ語の『ヨブ記』を引っ張り出すこともできて、そこにはちゃんと「ベヒモス(בְהֵמוֹת)」も「レヴィアタン(לִוְיָתָן)」も出てくる。要するに、現在では「ベヒモス」は《カバ》と訳され、レヴィアタンは《ワニ》と訳されているということになる。それなら、ベヒモスは《カバ》でレヴィアタンは《ワニ》だ、とWikipediaで説明してもよさそうだし、神話系のウェブサイトで説明していてもよさそうだけど、そういう説明はない。やっぱり、ベヒモスやレヴィアタンを調べる人にとっては、ベヒモスが《カバ》で、レヴィアタンが《ワニ》であっては不都合なのだろうな、と感じる。
その当時(つまりヨブ記が書かれた紀元前7~4世紀)に、そういう認識だったのかどうかは分からない。少なくとも、カバの尻尾は杉のようではない。それに、現在では少なくともカバもワニもヨルダン川には棲息していない。ナイル川にはいたはずなので、そういう記憶が伝わったのかもしれない。でも、カバとワニだったら、確かに人類にとっては恐ろしい敵で、そこから着想してモンスターになったというのは、ない話ではないよなあ、と思う。だから、まあ、現在の聖書でカバとかワニとか訳されていても、それはそれで妥当ではあるかな、と感じる。勿論、ベヒモスはベヒモスであり、レヴィアタンはレヴィアタンなのだけれど。
2021年2月7日 ちゃんと原典を参照すればよいのにね、というお話
本日はファンタジィ事典でブネという悪霊についてまとめた。マイナな悪霊ではあるけれど、ソロモン王が使役した72匹の悪霊の1匹なので、結構、知っている人は知っている。ソロモン王が使役した72匹の悪霊は、結構、ファンタジィ界隈では大人気だ。多分、ブレトンが描いたイラストが魅力的だからだろう。それぞれの悪霊に決まった魔法陣があるのもソソられる部分だ。
原典は明解で、17世紀頃からヨーロッパに流布した魔法書『レメゲトン』「ゴエティア」だ。1904年にメイザース&クロウリーが訳したものがよく知られているが、誤訳が多い。1999年にピーターソンが訳したものの方が本当は参考になる。でも、ピーターソン版が出るまではメイザース&クロウリー版が一般的だったので、イメージはそちらの方が強いので、ウェブサイト「ファンタジィ事典」ではメイザース&クロウリー版を訳して載せている。
ちなみに1577年にヨーハン・ヴァイヤーが『悪魔の偽王国(プセウドモナルキア・ダエモヌム)』を著していて、「ゴエティア」よりも古い。こちらは69匹の悪霊を紹介していて、そのほとんどが「ゴエティア」で紹介されている72匹の悪霊と重なっている。こちらはラテン語だ。これをレギナルド・スコットという人物が英訳してくれていて、多分、英語圏の人にはそちらで膾炙しているのだろうけれど、若干、意訳しているな、と感じる部分もある。
そして、コラン・ド・プランシーが1818年にまとめた『地獄の辞典』にもたくさんの悪霊が紹介されていて、これは改訂を重ね、1863年の第6版でブレトンの悪魔の挿絵が加わった。この挿絵のインパクトで有名になった72匹の悪霊は多いだろう。この本はフランス語で書かれている。日本語でも抄訳が出版されている。
ボクは72匹の悪霊については、基本的にこの3冊(ピーターソン版を入れると4冊)を原典で読んだ上で整理する方向にしている。そうすると、意外と日本で知られている解説が間違っていることに気づかされる。原典が明確なのだから、神話・伝承をエンタメとして楽しんでいる読者はともかく、本をまとめる人たちくらいは、ちゃんと原典を読めばいいのにな、と思う。その意味では、「ファンタジィ事典」では拙訳と合わせて原典も載せているので、一定の価値があって、参考になるのでは、と思っている。
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ちなみに、ロマンシングサガ3の四魔貴族のひとり「ビューネイ」は「ブネ」を元ネタにしているらしい。確かにデザインは似せている。性別が女性になっているが、元々の伝承も性別については言及されていないから、正しいのかもしれない。ブネだとダサいけど、ビューネイという言い方だと格好よく感じる。