プゴット

分 類フィリピン伝承
名 称 pugot(プゴット)《首を狩られたもの》【フィリピン諸語】
容 姿首なしの巨人。
特 徴森に棲み、首の付け根から虫などを食べる。
出 典

フィリピンの首なしお化け!?

プゴットはフィリピンに伝わる首なしの大男の妖怪である。ルソン島北部のイロコス地方やパンパンガ地方などに伝わっている。プゴットはこの地方で《首を狩られたもの》という意味で、ブタやイヌなどに自由に姿を変えることができるとされるが、基本的には、その名前が示すように、首のない大男の姿を好むようだ。森の中の暗がりで暮らし、普段はヘビや昆虫などの小動物を狙って、首の付け根の部分に獲物を突っ込んで喰らう。

姿こそ「首なし」で恐ろしいが、特段、人間を襲うような凶暴な存在ではない。ただし、何故だか分からないが、女性の下着を好み、洗濯されて干されている下着を盗んでいくとされる。元々、イコロス地方の少数民族には「首狩り」の習慣があったことが知られていて、スペイン植民地時代に、たくさんの修道士たちが首を狩られたという。この歴史的な事実が、プゴットという存在を産み出したと考えられている。そのため、プゴットは当時の修道士たちの成れの果てで、今でもその首を探し続けているという説明をされることもある。

猟師スクアのプゴット退治!?

元々、プゴットはタガログ族のカプレと同じような森の巨人だったと考えられている。パンパンガ地方のある民話では、サンガとスアクとサクーの3人の猟師が森で狩りをして、火を起こして調理しようとすると、そのたびに木の上に棲むプゴットに獲物を食べられてしまう話がある。3人は最初、大きなイノシシを狩り、イノシシを火にかけた。サクーが火の番をして、サンガとスアクは他の獲物を探しに行ったが、木の上からプゴットが降りてきて、サクーを殴り倒して、気絶している間にすっかりイノシシを平らげてしまった。シカを狩って戻ってきた2人は、イノシシをプゴットに食べられたことを知る。そして、今度はこのシカを火にかけ、サンガが火の番をすることになった。さきほどと同じように、木の上からプゴットがやってきて、シカを食べられてしまった。スアクとサクーは再びイノシシを狩って戻ると、今度はスアクが火の番をすることになった。

今度もイノシシの焼ける匂いに惹かれてプゴットが現れたが、スアクはイノシシを火にかけたままにしていた。そして、プゴットがイノシシに手をかけたときにプゴットを火の中に押し込んだ。火傷を負ったプゴットは激怒して追いかけてきたが、スアクは事前に用意していた落とし穴にプゴットを誘導し、見事にプゴットを落とし穴に落とすことに成功した。しかし、これでもプゴットは死なず、這い上がってスアクを追いかけてきた。必死にプゴットから逃げる途中、視界の端にワニを発見したスアクは、プゴットをワニの口に誘導した。ワニはパクリとプゴットを食べてしまった。こうして、スアクは見事、プゴットを退治し、3人の猟師はイノシシを食べることができたというの物語である。

しかし、時代を経るうちに、イコロス地方の「首狩り」の風習と相俟ってか、やがてプゴットと言えば「首なしの大男」として想像されるようになっていった。

恐ろしい人喰いのプゴット・マムもいるから要注意!?

ちなみに、現代の伝承に登場するプゴットそのものは穏やかな性格だが、プゴット・マム(Pugot Mamu)と呼ばれる仲間は子供を襲い、喰らう恐ろしい存在として描かれる。プゴット・マムは「子供部屋のボギー」のような存在として、いつまでも眠らない子供たちや門限を守らない子供たちを脅かすために、母親たちが語ったのである。

《参考文献》

Last update: 2023/06/04

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