カンチョリ
分 類 | 朝鮮伝承 |
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강철이 〔gangcheoli〕(カンチョリ)【朝鮮語】 깡처리〔kkangcheoli〕(カンチョリ)【朝鮮語】 강철〔gangcheol〕(カンチョル)【朝鮮語】 꽝철〔kkwangcheol〕(クヮンチョル)【朝鮮語】 | |
容 姿 | 全身に毛が生え、黄色いオーラを放つ龍に似た獣。 |
特 徴 | 干ばつや嵐、雹などを引き起こす。 |
出 典 | 李睟光『芝峯類說』(1614年)ほか |
自然災害を具現化した怪物!?
カンチョリは朝鮮半島各地に伝わる怪物。カンチョル、クヮンチョルなどとも呼ばれる。熱で山や川、草木を枯らしてしまうこともあれば、雹(ひょう)を降らせたり、嵐を引き起こしたり、大雨で農作物を荒廃させたりすることもある。カンチョリはまさに自然災害を具現化したような怪物である。
李睟光(イ・スグァン)の『芝峯類說(チボン・ユソル)』(1614年)には「강철이 간 데는 가을도 봄(カンチョリの行くところは秋も春)」という諺という諺が登場する。秋の豊かな果実でさえもカンチョリが一掃して春に戻ってしまうという意味だが、李睟光はその意味を知らなかったので田舎の老人に尋ねると「カンチョリという怪物がいて植物を枯らしてしまう」と説明された。李睟光は、カンチョリを中国の怪物「蜚(ビ)」と同一のものではないかと推測している。李瀷(イ・イグ)の『星湖僿說(ソンホ・サセル)』(18世紀中期)でも、カンチョリは嵐や雷、雹を降らせて農作物や家畜に被害を与えると記されている。沼地や湖沼に棲息し、水面から姿を現すと強烈な熱を発して水分を奪って干ばつを引き起こす。辛敦復(シン・ドンボク)の『鶴山閑言(ハンサンハンノン)』(1779年)では、李義済(イ・ウィジェ)が実際に鶏龍山と鐵原郡でカンチョリを目撃しており、ウシやウマ、あるいは龍のような動物だったと記されている。辛敦復はカンチョリを中国の旱魃(ハンバル)と同一視している。
『韓国民俗信仰事典』では、カンチョリは「龍になろうとして地に落ちた怪物」だと説明されていて、カンチョルを追い払う「カンチョリ追い」という儀式が行われていたことが記されている。 近年の創作物などでは「龍になり損ねたヘビの怪物」として恨みや怒りを体内に蓄積させて炎を吐き出しているイメージで語られることが多い。
ちなみに、1957年に梁山(ヤンサン)郡で洪水が発生した際、2匹のカンチョリが目撃され、カンチョリの動きに応じて水位が5メートルほど上下したという報告が『東亜日報』の記事に載っていて、最近までカンチョリが信じられていたことが窺い知れる。
《参考文献》
Last update: 2025/06/01