2025年4月8日 都市伝説を引き寄せる能力!?

ジャンプ+で連載の平岡一輝氏の『都市伝説先輩』が面白い。異様に都市伝説が大好きな主人公の女子大学生と「都市伝説を引き寄せる」能力を持つ男子大学生の青春オカルトコメディだ。コメディではあるけれど、でも、都市伝説が題材になっていて、都市伝説特有の不気味さや怖さが根底にはある。そこが面白いのである。

『都市伝説先輩』の表紙

1巻では「口裂け女」、「チャーリーゲーム」(英語圏ではチャーリー・チャーリー・チャレンジ)、「ディスマン」、「ジェットババア」が題材になった4つの話が載っている。二人は実際に口裂け女と遭遇して命の危機に直面しているが、紆余曲折あって、何故か口裂け女とラインを交換する展開になる。チャーリーゲームではオカルトサークルの部室に集まったメンバーが冗談で「この中に殺人犯はいるか」みたいな問いを発して、チャーリーが「YES」と答えて大騒動になる。どちらも一見、コメディではあるが、でも、妙に大学生ノリの生っぽさもあって、結末も含めて不気味な余韻を残した展開になる。その辺が都市伝説っぽいうさん臭さとか怖さがあって楽しい。

というわけで、オススメの漫画である。

  

2025年4月2日 ドドドキュン!!!

「劇団スカッシュ」が「明日ゾンビになる君と」という超名作のドラマを公開した後、ちょっとの迷走期間を経て、いなくなってしまったと思っていた。そうしたら、何だか「いぶよへスカッシュ」というチャンネルでショート動画を出し始めて、何が起こっているんだろうと注目していたら、新たに「ドドドキュン」というドラマが始まった。しかも超面白い。全然、錆びついていない。ヤバい。というわけで、おすすめ。

「いぶよへスカッシュ」というチャンネルがどういう経緯で誕生したのかはよく分からない。「劇団スカッシュ」のチャンネルがどうなっていくのかもよく分からない。でも、どこまで行っても企画も脚本も演出も「劇団スカッシュ」だし、出演しているメンバーも相変わらずの面々。だから、懐かしくもあったし、どんな形であれ、こうやって大型企画をやってくれるのは嬉しくて仕方がない。

ボクにとって、YouTube上で4、5分の動画を数珠のように繋げて、長編ドラマを続けていくスタイルは目新しかったし、それがYouTubeにハマっていた。このアイディアを形にして実現し、継続している「劇団スカッシュ」って、いいよなあ。

  

2025年3月29日 ゲーマーが妖怪退治やってみた!

『ゲーマーが妖怪退治やってみた!』(小松清太郎,コロコロコミックス)が面白かったので紹介したい。

ボクが「世界の妖怪」蒐集に精を出していることは、小学5年生の息子のツクル氏もよく知っている。そんなツクル氏がちょっと前にこんなことを言い出した。「パパ、コロコロに面白い漫画があるんだよ。『ゲーマーが妖怪退治やってみた!』っていうヤツで、妖怪がたくさん出てくるから、パパは買った方がいいと思うよ」。この野郎、その気にさせて買わせる気だな、と思って無視していたら、遂に断念したのか、お小遣いで5冊、大人買いしてきた。そしてこれ見よがしに机の上に置いてあるので、どれどれと思いながら読んだ。

物語の展開は子供向けと言えば子供向けなんだけど、でも、面白かった。主人公の西京芸麻(さいきょうげいま)はプロゲーマーを目指してゲームに心血を注ぐ。そんな主人公の魂が込められて、ゲーム画面で実際の人間を操作して戦わせることができるようになる。妖怪退治屋見習いの刀道巫女(とうどうみこ)を操って、次々と現れる妖怪たちを退治する……というような話なんだけど、でも、ツクル氏の言わんとするところは分かった。「妖怪」が題材になっているけれど、決してオリジナルの妖怪ではなくて、ちゃんと伝承に基づいた妖怪たちが登場している。だから、「買った方がいいと思うよ」などと言ったのだろう。『ダンダダン』や『ダンジョン飯』みたいに、『ゲーマーが妖怪退治やってみた!』もネタにできるよ、ということだろう。

というわけで載せてみた。ちなみに1巻には伝承上の妖怪として「大蜘蛛」「人面犬」「泥田坊」「水虎」が出てくる。名前だけだけど「大嶽丸」も出てくる。2巻には「鬼婆」や「牛鬼」、「のっぺら坊」が出てくる。「水虎」が水をまとったトラだったり「牛鬼」がミーノータウロスみたいなまっちょのウシ頭だったりと、あんまり元の伝承の設定が活かされていない妖怪も多いので、その辺、ちゃんと解説してあげるとよいかなとも思った。一方で、面白かったのは、「のっぺら坊」がペンで自分の顔に絵を描くと、その顔に合わせた能力を得られるという話。ちょっとその発想は面白いなと思った。

  

2025年3月21日 人間と妖怪の距離感

香月日輪氏の『妖怪アパートの幽雅な日常①』(講談社文庫,2008年)を読んだ(表紙はミヤマケイ氏のヴァージョン)。

「妖怪」というキーワードがあるものの、文体に少しだけラノベっぽさがあって、今まで敬遠していた。でも、覚悟を決めて読み始めてみたら、とても面白かった。人間と妖怪、こっち側とあっち側との距離感が不思議な物語だと感じた。主人公の夕士は寿荘で人間と妖怪と一緒に暮らしている。それでいて、学校生活では日常を送っている。そこがものすごく地続きになっていて、でも、決して完全には繋がっていかない。夕士が寿荘を退去して日常に戻ろうとすると、あっという間に妖怪たちはいなくなって、寿荘の不思議なゲートは閉じたようになってしまう。でも、戻って来ると、再び、不思議な世界が現れる。この繋がっていそうで繋がっていなそうな距離感がずぅっと続いているのが凄いなあと感じた。

タイトルに「日常」とあるとおり、本当に「日常」が描かれている。そりゃあ、途中、怨霊が出てきて、バトルものめいた展開にはなりかける。強力な妖怪たちも現れて参戦する。でも、それだって、結局、その怨霊を退散させるだけで、退治はしない。怨霊は再びやってくるだろうし、事態は何も解決していない。1冊を通して、ずぅっとそんな感じ。主人公の夕士の家族とのギクシャクした関係も変わらないし、学校生活のギクシャクした感じも変わらない。抱えている悩みも解消しないし、後悔も消えない。少しだけ経験を積んで成長の兆しがある程度。ずぅっと日常があって、それを切り取った感じで、それもまた、人間と妖怪の関係と同様に、ふわっとしていて、リアルだったりする。

そんなわけで、結構、長く続いている人気作品みたいなので、もう少し読み進めてみようかな、と思う。

  

2025年3月13日 「禁じられた果実」から「希望の種」へ

Ayasa氏率いるEast Of Edenが昨日、album『The First Eden – Seeds Of Hope』を発売した。1月22日の記事「East Of Eden、再始動。」でも書いたんだけど、ベースのわかざえもんが抜けて、MINA氏を加えた新体制になった。albumは11曲で、すでにsingleとして発表されている「Shooting Star」で幕を開け、album発売に合わせてYouTubeで公開された「IKIZAMA」で幕を閉じる。

East Of Edenは基本的に楽曲の振れ幅がメチャクチャ大きい。いろんなジャンル、いろんな雰囲気の楽曲にチャレンジする印象だ。過去の2枚のEPでもそうだった。そのコンセプトは今回のalbumにも健在だ。3曲目の「Darkside Lotus」などは「和」のテイスト満載で、まるで歌唱は歌謡曲のような雰囲気がある。ヴォーカルの湊あかね氏がふざけ半分でやってみたらハマったということで、器用な人だ(笑)。

そして、これまで通り、技巧的であり、全体的にガチャガチャしている。足し算の発想で音を重ねていく。全ッ然、引き算してやろうとか、自然体でやろうという意図はない。これでもかというくらいにみんなが演奏する。楽曲全体に演者の意図が十全に張り巡らされている感じで、まるで競技みたいだ。とてもスリリングで、聴いていて痺れた。

  

2025年3月1日 アン・ドゥ・トロワで眠りましょう

2月25日の記事「Have you ever seen Heaven?」でYouTubeのAIオススメのアーティストを紹介したけれど、第2弾として、Serraを紹介しようと思う。

彼女はYouTubeショートで結構、頻繁にプッシュされていた。短い動画の中で歌唱力を存分に示していたんだけど、フルで楽曲を聴いたことはなかった。でも、何度もプッシュされるので、重い腰を上げて聴いてみたところ、抜群にいい。

まず、楽曲がいい。展開はアニソンっぽさもありつつ、言葉のテンポはボカロ曲っぽさもありつつ、ロックでもある。それでいて、歌唱力は抜群だ。いろんなコンポーザに楽曲の提供を受けているようだけど、彼女自身もソングライティングができるようで、この『ViVALE』は彼女の手によるもの。彼女がつくった楽曲のクオリティも高いのがすごい! 声を張って激しく歌う方向性が多いんだけど、意外とバラードこそが彼女の本領発揮なのだと思うけど、歌詞の世界観も含めて、きっと彼女は激しい楽曲が好きなのだろうなあ。

そして、彼女が所属していたSalty Dogが何よりもいい。すでに活動は休止しているんだけど、何故、売れなかったんだろうと首を傾げたくなるような名曲がたくさんある。まあ、どちらにしても、ボクにとっては出会った瞬間が新曲なので、これから聴いていこうと思う。……何だろうな。ちょっと複雑すぎたのかもしれない。復活の含みを持たせているので、復活することを祈ろう。

  

2025年2月25日 Have you ever seen Heaven?

最近、AIの能力が高くてエグい。YouTubeでいろんなアーティストの音楽を聴いているわけだけど、オススメの精度が高くなってきた。

本日はそんなAIオススメのアーティストの中から、Reiを紹介しようかな、と思う。

ギターがお洒落で格好いい。巧い。ジャジーだったり、ファンキーだったりもするし。本人はブルーズが好きらしいので、そういうバックグラウンドがあるのだろう。ちょっと日本人離れした感性で、いい。でもね。このHeavenの歌詞は要チェックだ。彼女の音楽的なバックグラウンドやギターテクとかが注目されると思うんだけど、歌詞もいい。

天国って見たことある? ねえねえ、天国って信じる? 天国に行ったことある? だって、あなたと一緒にいるとほとんど天国じゃん。

みたいな英語で始まる。でも、その天国が永遠じゃない。Wi-Fiも繋がらない。逃げ出したりもする。作詞家としての能力も高いという。

そんなわけで、本日のオススメのミュージシャン!

  

2025年2月11日 このまんま、だらだらと続いていく

金原ひとみさんの『アッシュベイビー』(集英社文庫,2007年)を読んでいる。昔、『蛇にピアス』(集英社文庫,2006年)を読んで衝撃を受け、その後、Aマッソの加納さんのキウイチャンネルに出演しているのを拝見して、とても穏やかな人柄に驚いた。今更ながら、2作目に着手した感じ。

『蛇にピアス』のときには、全体的にヒリついた感じがした。舌に穴をあけるシーンなんかは、目を覆いたくなる感覚もあったし、入れ墨を入れるシーンや暴力的なシーンもあって、ある種、いろんな種類の「痛み」を見せつけられた感じがした。

今回もそういう「痛み」は健在だ。ナイフを突き刺すシーンとか、動物を殺してしまうシーンなどがある。でも、やっぱりどこか異常な世界観で、エロティックで、何より、とても飢えている感覚が伝わってきた。この「飢え」がずぅっと根底にあって、突きつけられているような感じがして、苦しくなった。

何も解決しない。救いもないのかもしれない。物語は唐突に終わってしまうけれど、多分、このまんま、だらだらと続いていくのだろう。閉塞感が残ったまんま、しこりのようになって終わる。そんな本だった。

  

2025年2月3日 幸せを諦めてしまうな。人で在れ

YOASOBIの新曲『UNDEAD』が『アイドル』を超えてきたと言われているが、アカペラ集団による『UNDEAD』も凄い。想像を超えてきた。

最近、やけにYouTubeのオススメでプッシュされていたので、満を持して視聴した。何と、かつてのハイスクールバンバンの天音さんがセンターで歌っているではないか。そうか。サムネでは全然、分からなかった。

ハイスクールバンバン、好きだったなあ。みんな、個性的だったけど、ボクは特に天音さんが好きだった。彼女は演技派というのか、憑依系というのか、歌っているときの表情にも魅入られてしまう。だから、ハイスクールバンバンが解散して、ちょっと悲しかった。でも、こうしてまたアカペラ集団として歌う場所が出来て、よかったなと思う。

それにしても、この『UNDEAD』、原曲もメチャクチャ複雑怪奇で難解な曲なんだけど、改めてこうして天音さんが歌う歌を聴いて、いい歌詞なのだと気づいた。原曲はボカロ曲っぽくって、PVも目まぐるしくて、歌詞にまで目がいかなかった。「屍のように生きるな」という強いメッセージに勇気づけられた。うん。明日からも頑張ろう!!

  

2025年1月22日 East Of Eden、再始動。

予てより注目していたヲタリストAyasa率いるEast Of Eden。ベースのわかざえもんが脱退して、空中分解するのかと心配していたら、新たにMINA氏を加えて、新体制で帰ってきた。

アニソン調の楽曲がしばしば批判されてきたが、今回、わかざわもんの脱退を機にワーナーからビクターに移籍して、若干、クリエイタ陣が変わったのかもしれない。ヘヴィなサウンドになった。MINA氏のベースも上手だし、安心して聴ける。まだ1曲目ではあるけれど、新生EOEも楽しみだなあ。albumも買わなきゃナルメル!!

ステミレイツも何とかならないかなあ。あっちは看板のヴォーカル不在だから……苦しいよなあ。

  

2024年10月20日 ハイレタハイレタハイレタハイレタ

トイレの花子さんを描いてみたの記事でも書いているとおり、最近、都市伝説系の絵を連投しているボクだ。ネットロアや「洒落怖」に興味があって、その辺をリサーチしている関係で、そういう系のイラストに徐々にシフトしている。トイレの花子さん(学校の怪談)を皮切りに、ヤマノケ(洒落怖)、怪人アンサー(ネットロア)、マッド・ガッサー(アメリカの都市伝説)なんかを描いてきた。次はいよいよ口裂け女(日本の都市伝説)を描こうと思っているので、乞うご期待だ。そうして、近いうちに都市伝説(特に匿名性と作家性の部分)について一考してみたいなと思っている。

漫画『ダンダダン』はオカルトと妖怪をモチーフにした漫画で、10月からアニメ化された。アニマックスでの公開はまだなので、ボクはそちらを楽しみに待っている状況だが、ここでもターボババアアクロバティックサラサラなどがたくさん登場する。そういう意味では、現代妖怪たちのオンパレードだ。鳥山明の再来と言われるほどの見事な立体造形とぶっ飛んだ世界観が素敵な漫画だ。

アニメの主題歌はCreepy Nutsの「オトノケ」だ。これはもちろん、ヤマノケのパロディだろう。歌詞の「ハイレタハイレタ」と連呼するところなんて、メチャクチャ、怖さがある。でも、ラッパーのR-指定的には自分の歌がリスナーの中に入っていくイメージなのかもしれない。そういう意味で「オトノケ」なのだろう。オトノケの歌詞については、各所で考察がなされていて、いろんな都市伝説の妖怪たちが練り込まれているようだから、是非、聴いてみて欲しい。

  

2024年10月19日 孤島、仮面、密室……に斜め上を行く展開!?

体調は相変わらず絶不調。遂に動けなくなってしまった。うーん。

そんなわけで、本日は『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』(著:早坂吝,講談社文庫,2017年)を読んだ。ものすごいハイペースで読書が進んでいる。

これもメフィスト賞の作品。当然の如く、風変りな作品である。何が風変りかを説明すると、トリックに関わってしまうので不用意には書けない。でも、斜め上を行く展開には驚かされる。Amazonの書評は大きく割れているが、でも、ロジックは合理的で、フェアな作品である。「孤島」「仮面」「密室」という今までの古典作品をオマージュしながらも、どれも少しずつずらしながら、意味のある展開になっている。何故、「孤島」が舞台になっているのか。圧倒的に怪しい「仮面」をつけた男が存在しているのか。手垢のついた「密室」が用いられるのは何故なのか。バカバカしいけれど、全てにちゃんと意味と答えが用意されている。そういう意味では、従来の本格ミステリを読みつくした人ほど、その素材の使い方に驚く展開だと思う。それが1本の糸でちゃんと結ばれていることに、驚きを禁じ得ない。

まあ、だからと言って、おいそれと人にオススメできないのは、風変りな設定のせいだ。でも、それが何か説明できないところが、何とも歯がゆいのである。わははー。

  

2024年10月18日 Adoの新章が始まった!?

Adoと言えば「歌ってみた」の歌い手で、その代表格という感じで目覚ましくデビューした印象がある。歌ってみた文化の時代の寵児という感覚だ。ところが、最近、そうではないAdoの一面がたくさん現れた。

そのひとつはプロデューサとしてのAdo。ファントムシータというアイドルグループをプロデュースしたわけだが、歌唱指導などもYouTubeに上がっていて、見事な指導をしている。Adoがひとたび「こういう風に歌ってみてもらっていいですか?」などとアドバイスすると、飛躍的にアイドルの歌唱がアップする。感覚ではなく、ロジカルに歌唱を捉えている上、それを明確に言語化している。プロデューサとして一流であることが証明された格好だから、是非、ファントムシータのAdoによる歌唱指導の様子を確認して欲しい。

そして、もうひとつはクリエイタとしてのAdoだ。10月14日に、Adoが作詞・作曲した「初夏」という楽曲が公開された。どうやら、LIVEなんかではすでに公開済みだったようだが、いずれにしても、Adoが自ら手掛けた楽曲がこのたびYouTubeに公開されたことになる。10年くらい前のボカロ楽曲の雰囲気をまとった楽曲で、思わず懐かしさを覚えた。おそらく、彼女が「歌ってみた」で大活躍していた頃の楽曲に近い。彼女のその時代の憧憬が含まれているような気がする。歌詞もボカロっぽい感じで尖っている。楽曲に緩急があって、ちゃんと成立している。クリエイタとしての彼女の才能も証明されてしまった。

うーん、多才なんだなあ。ワンピースの映画の中で、ウタとして活躍するAdoを見ながら、ああ、こういうAdoの見せ方もあるのだなあなどと思っていたボクは甘かった。感服だ。

  

2024年10月16日 好きな作風の好きな作品を読むという営み

体調不良は相変わらず。仕方ないので読書を続けている。本日は『謎解きはディナーのあとで』(著:東川篤哉,小学館文庫,2012年)を読んだ。東川さんは「烏賊川市シリーズ」で読んでいたので、作風はよく知っている。『謎解きはディナーのあとで』そのものもドラマ化していたので、何となく内容は知っていた。でも、あまりにポピュラーになってしまったので、敬遠して、手を出さなかった印象だ。久々に本屋に行ったら、『新 謎解きはディナーのあとで』ということで、新しいシリーズが平積みになっていて、ああ、まだ続いているんだなあ、と思って、久々に手に取ってみた次第。

相変わらずの東川さんのユーモアに富んだシニカルな文体。懐かしいなあ。キャラクターたちが生き生きとしているのも「烏賊川市シリーズ」と変わらず。懐かしくなってしまった。最近、芥川賞、直木賞の作家を順繰り読んでいて、好きな作風の好きな作品を読むという当たり前の営みを、ここのところ、実践していなかったなあ、と反省した。だから、改めて東川さんのシリーズにハマってみてもよいかもしれないなあ、と思った。

  

2024年10月15日 表と裏と……人間の本質はどこにあるのか!?

今日は『六人の嘘つきな大学生』(著:浅倉秋成,角川文庫,2023年)を読んだ。

最近、漫画の『ショーハショーテン!』を読んでいる。たくさんの芸人コンビ(あるいはトリオ)が登場する群像劇で、それぞれのキャラクタの人生が丁寧に、そして仔細に描かれている。面白いなあと思って、原作者・浅倉秋成の小説を読んでみたくなったのだ。

純粋に面白かったし、読んでよかった。オススメの1冊だ。基本的には就活生たちの物語だ。大学生が自己と向き合いながら、あるいは自己を必要以上に飾り立てて企業面接に臨んでいく。最終面接まで進んだ6人は、グループでの課題解決というグループ面接を課されて、それに備えて事前に何度も集まって作戦会議をして結束していく。しかし、最後のグループ面接の中で、次々とメンバーたちの嘘が露呈していく……という物語だ。ホラーのような展開。それでも、ボクがこの作品が面白いと思ったのは、作者の強いメッセージだ。面接では一瞬一瞬で、その人間性が切り取られる。表もあれば、裏もある。でも、何がその人間の本質なのか。そこに深く斬り込んでいく。それが強いメッセージになって、現代社会に問題提起する。

本作を読んで、としか言えない。でも、常々、ボクが感じている現代社会への違和感が見事に言葉になって綴られている。そのとおりだと思った。それを読んでいると体感できるので、是非、多くの人に読んで欲しいなと思う。だから、強くオススメしたい本だ。

  

2024年10月11日 メタ構造による新たな本格(?)ミステリ!?

10月10日の記事にも書いたが、すこぶる体調が悪い。妖怪の絵を描く元気もないし、「ファンタジィ事典」の更新もままならない。最早、ごろごろと横になって過ごすしかなさそうなので、のんべんだらりと本でも読むしかないや、と勝手気儘に本屋さんでたくさんの本を選んで買ってきた。

そんなわけで、最初の1冊目として『NO推理、NO探偵? 謎、解いてます!』(著:柾木政宗,講談社文庫,2024年)を読んでみた。「メフィスト賞史上最大の問題作」とか帯に書かれていたら、そりゃあ、読んでみるしかない。

感想は……他の人には薦められないな、ということ。これは……もう、何だろうな。読み手を選ぶ感じだ。文章がラノベっぽい感じで、女子高生の会話がうにょうにょと繰り広げられるので、苦手な人は読むのが苦痛かもしれない。しかも、書き手であるワトソン役の取手ユウの地の文が、どんどん本文に介入するメタ小説の構造になっている。これもどうなのかと思う。しかも冒頭、催眠術師によって探偵の美智駆アイは「推理」を封じられる。だから、「推理」は登場しない。いろいろとあった謎や不可解な伏線は、事後、実はこういうことだったのだという情報開示があって、なるほど、そういうことだったのね、と納得するタイプの短篇が続いていく。しかも日常ミステリ、サスペンス、旅情ミステリ、エロミスなんかのあるあるネタをぶち込みながら、それをなぞるように物語が進められる。

しかし、最終話になって、改めて過去の事件が振り返られる。実はちゃんと推理で結論に辿り着けることが改めて示されて、メタ小説であることも合わせ技になって、本格(?)謎解きが始まる。その一瞬のカタルシスは、確かに間違いなく本格ミステリなのかもしれない。でも、そこまで辿り着くまでは、ラノベ調の女子高生のうにょうにょ会話に付き合わなきゃいけないし、メタ構造の文章にも付き合わなきゃいけない。でも、まあ、そうね。それを乗り越えたら、面白いと思うし、そういう作品である必要性もあるわけで、面白かった。うん。面白かったさ。

というわけで、のんべんだらりと本を読むこの頃である。

  

2024年8月15日 イルカも泳ぐわい。

最近、結構、テンションの高い感覚をもって「日々の雑記」の文章を執筆している。これはかなり意識的なものだ。原因は分かっている。加納愛子の『イルカも泳ぐわい。』を読んだからだ。彼女のエッセイ(?)を読んで、その文章に魅了され、いつかはああいうキラキラした言葉の連なりを表現したいと思いつつ、そんなに一足飛びにはそんな崇高な領域には辿り着けるはずもないので、取り敢えず、できることをやってみる。そんな状態が現時点である。

ボクは個人的にAマッソのネタが好きで、結構、YouTubeで観ている。決して分かりやすいネタではないし、万人受けしないから、なかなか評価されない。でも、言葉の選び方や並べ方がオシャレで好きだったりする。加納さんが本を執筆しているのは知っていたが、でも、実は読んだことはなかった。結局のところ、芸人が芸人の延長線上で書いた本なのだろうと、勝手に決めつけて敬遠していた。

ところが、1か月ほど前かな。加納さんのキウイチャンネルに金原ひとみさんが出演していて、YouTubeにオススメされて観た。これも勝手な決めつけになるが、『蛇にピアス』の印象で、金原ひとみさんに怖い印象を持っていた。不良少女というか。でも、YouTubeに出演して加納さんと話している彼女は非常に柔らかい物腰で、気さくな雰囲気で驚いた。

その金原さんが、加納愛子の文章を滅茶苦茶褒めていた。彼女は加納愛子の『かわいないで』に出会って、「加納愛子さん? 知らないな」「ベテランの作家さんなのかな?」と思って読んで、読み終わった後に検索したら、お笑い芸人だったとのこと。そうか。そんな加納愛子との出会い方があるのか。いいなあ。羨ましい。そんな気持ちを抱きながら、そのまま本屋に飛び込んで、加納愛子の本を購入してした。たまたま行きつけの本屋にあったのが『イルカも泳ぐわい。』だったんだけど、彼女のキラキラした文章に完全にヤラれている。

  

2024年8月7日 読書筋力を鍛えつつ、本を途中で投げ出しつつ。

ゆる言語学ラジオで、読書について取り上げていた。読む前にすることと、読んでいるときにすることの二本立てになっていて、とても面白かった。

前半部を要約すると、読書には読書筋力が必要だという話。いきなり重たいバーベルを持ち上げられないのと同様に、いきなり難しい本は読めない。だから、まずは自分の読書筋力に応じた本を選ぼうというところから始まる。そして、本好きの水野氏や堀元氏も、実は新しいことを学ぼうとするときには、絵本や児童向けの本、入門者向けの本から始めて、全体像を把握した上で、難しい本にとりかかるという話が紹介された。とても勇気づけられる。

もうひとつの視点は、目的や目標を持って本を読むという話。この本からこんなことが学びたいという目的を持って読み始めれば、自ずと読むべき場所が分かって、読めるという。つまり、自分の目的じゃない部分は読み飛ばしてもよいということ。

後半部は、本が難しく感じても、それは読者が悪いのではなくて、編集者が悪いというマインドが導入された。それから、本を読んだ後に内容を忘れても、むしろそれによって脳の中で情報が一般化・構造化されるので、気に病む必要はないし、どんどん読んで忘れようというマインドや、最後まで読めずにほかの本に浮気しても問題ないというマインドなども導入された。つまり、本の内容を理解しなければいけないとか、読んだら覚えていなきゃいけないとか、最後まで読み終えなきゃいけないみたいな「呪縛」から解き放たれて、読書ハードルを下げようという主張である。

面白かったなあ。もっとライトに本を楽しめ、という強烈なメッセージだった。読者は本にお金を払っているのだから、好きに読んでいいじゃん、というコメントは、おそらく読書に苦手意識を持っている人の呪縛を吹き飛ばすし、比較的、本を読む方であるボクにとっても、目が覚めるような感覚があった。そうだよなあ。意外と知らないうちにがんじがらめになっていることってあるよなあ。

そんなわけで、この動画を視聴して元気になったので、本屋に行って、大量に本を買い込んで、適当に読もうじゃないか。

  

2024年8月4日 ビバ、新生捨て身!!

6月1日の記事「ガールズバンド兼YouTuber!?」で紹介したステミレイツ。この記事を書いていた段階では、ごみちゃんとあやのんの脱退が決まっていて、YouTuberとしての活動は一旦停止して、新メンバーを急募していた。

結構、女の子としては過激な企画で知られたYouTuberだったので、新メンバーがこのノリについてこられるのか!? と思って、内心、有望な面子は集まらないのではないかと心配していた。でも、とんでもない。こんなにも優秀なメンバーが集まるのかと驚かされる展開で、さきてぃ、ハノン、かなちが加入して、バンドとして完全に生まれ変わった。本人たちは「ワンピース方式」と言っていたが、順番に新メンバーが加入していくスタイルの演出で、胸アツの展開にするあたりは、さすがステミレイツという感じ。うまいなあ。

新曲はまさに新メンバーのための楽曲という印象で、のっけからかなちのラップからのデスボに驚かされる。ヤンキー気質な彼女の雰囲気が歌詞にも出ていて、にやりとしてしまう。さきてぃも普段の温厚さとは裏腹に、ツーバスを駆使して激しくドラムを叩く。そして、イントロとアウトロはハノンの鍵盤が光る。ボク個人としては、輝星のギターソロが聞きたいので、そういう楽曲も欲しいぞ!!

  

2024年8月3日 超アゲアゲで陽気な楽曲!?

LOVEBITESが新曲の「Unchained」を発表した。何だかノリノリの楽曲で、元気になる。何しろ、クールなmiyako氏がぴょんぴょんとジャンプするくらいには陽気な楽曲だ。

LOVEBITESって不思議なバンドだと思っている。海外向けのゴリゴリロックで、曲調も演奏もかなりヘヴィなのに、ヴォーカルのasamiはロングドレスをまとって、まるでお嬢さまみたいな雰囲気を醸していて、一見すると声を張り上げてパワフルに歌えない感じだ。でも、高いキーになればなるほど、声のトーンが張っていく。このヴィジュアルのギャップが独特で、いつも不思議な気持ちになる。

そして、お団子のfamiがニコニコとベースを弾いているのも楽しい。East of EdenのMIZUKIもいつもニッコニコでドラムを叩いていて、こっちまで楽しさが伝わってくるもんね。こういう演奏スタイルっていいよね。