貞子(さだこ)

分 類日本伝承
名 称 貞子〔sadako〕(さだこ)【日本語】
山村貞子〔yamamura sadako〕(やまむらさだこ)【日本語】
容 姿白い服で、長い黒髪の女性。
特 徴貞子の怨念と天然痘の怨念が融合した怪物。呪いのビデオを見た人間を1週間後、テレビの中から這い出して殺す。
出 典鈴木光司『リング』(1991年)、映画『リング』(1998年)ほか

ビデオを観た人間を呪い殺す恐ろしき怨霊!?

貞子(さだこ)は鈴木光司のミステリ・ホラー小説『リング』(1991年)及びその映画『リング』(1998年)に登場する超能力を持つ女性。彼女は死後、怨念からさまざまな災いを引き起こす元凶となる。

原作では色白で黒髪の美女とされるが、映画では白いワンピースで、長い黒髪を前に垂らして顔を隠した姿で描かれている。

貞子は、元々は伊豆大島で生まれた。母親の山村志津子は予知や透視などの超能力を持っていたが、超能力の公開実験でインチキだとメディアに叩かれて気が狂って三原山の火口に投身自殺する。娘の貞子も三原山の噴火を予知するなど、同様の力を有する。しかし、南箱根で医師の長尾城太郎に強姦され、井戸に突き落とされて死ぬ(なお、映画では、貞子を殺したのは父で心理学者の伊熊平八郎に変更されている)。

その後、殺された貞子の怨念は成仏せず、怨念はビデオテープに念写され、観た者を呪い殺す「呪いのビデオ」となった。このビデオを観た人間は、ビデオを観てからちょうど1週間後に死んでしまう。死因は心筋梗塞だが、頭を掻きむしり、何かに驚いたような表情で死ぬ。助かるためには、ビデオをダビングして、他の人に見せればよいとされる。

貞子の怨念と天然痘の怨念が融合!?

原作では、貞子の呪いの正体は「リングウイルス」であるとされている。貞子を殺した長尾は天然痘ウイルスの保有者で、貞子は死の直前に天然痘に罹っている。人類によって根絶された天然痘の怨念と貞子の怨念が融合し、ビデオを観ることで感染するリングウイルスとなって、拡散していく。しかも、一般のウイルス同様、次々と突然変異していく。当初はビデオを観た人間に感染していたが、変異して、雑誌記者が取材した記事を読んだ人間に感染するようになる。また、記事を参考に小説『リング』が発行され、その読者にも感染が拡大していく。そして、小説『リング』は映画やゲーム、インターネット上の動画サイトなどにメディアミックスされ、作品を観た人間に感染するなど、どんどん感染経路は変化していく。

原作では、貞子は半陰陽(睾丸性女性化症候群)として描かれている。すなわち、身体的特徴は女性でありながら、生物的には男性である。リングウイルスには、貞子の遺伝子情報が含まれていて、リングウイルスは、感染した女性の卵子に侵入して、感染者の子宮を利用して貞子を生み出す。こうして生み出された貞子は、貞子の生前の記憶も引き継いでいるという。

テレビのブラウン管から這い出す貞子!?

映画『リング』では、ビデオを観た1週間後、消えているはずのテレビが勝手に点いて、「呪いのビデオ」の続きが流れる。「呪いのビデオ」では井戸しか映っていなかったが、やがて、井戸の中から貞子が這い出してきて、こちらに向かってくる。そして、テレビの中の貞子は、そのままテレビのブラウン管から這い出してきて人間を襲う。この映画オリジナルの「ブラウン管から這い出す貞子」のイメージは観る人に衝撃を与え、映画『リング』と貞子のキャラクターはJホラーという新しいジャンルの草分けとなった。

また、映画『リング0~バースデイ~』では、貞子は凄まじい治癒能力を持つ。怪我をした恋人の遠山博の傷を超能力で修復し、病院で車椅子生活の患者を歩けるようにした。貞子の特殊な能力を恐れた人々は貞子を撲殺するが、貞子は自らの傷をも癒して復活する。最終的には、鉈で頭を殴られて井戸に突き落とされるが、井戸の底で起き上がった貞子は無傷である。そのまま井戸は閉ざされ、貞子は30年近く、真っ暗な井戸の底で生き続けた設定になっている。

ちなみに、海外では、東洋の幽霊と言えば「貞子」というくらいにイメージが定着していて、フィリピンのホワイト・レディの最近のヴィジュアルにも大きな影響を及ぼしていると言われている。

《参考文献》

  • 『リング』(著:鈴木光司,角川ホラー文庫,1993年〔1991年〕)
  • 『リング』(監督:中田秀夫、原作:鈴木光司、製作:「リング」「らせん」製作委員会、1998年)
  • 『らせん』(監督:飯田譲二、原作:鈴木光司、製作:「リング」「らせん」製作委員会、1998年)
  • 『リング2』(監督:中田秀夫、原作:鈴木光司、製作:「リング2」製作委員会、1999年)
  • 『リング0~バースデイ~』(監督:鶴田法男、原作:鈴木光司、製作:「リング0~バースデイ~」製作委員会、2000年)

Last update: 2023/09/23

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