オージン

分 類北欧神話
名 称 Óðinn(オージン)≪激怒する者≫【古ノルド語】
Odin(オーディン)【英語】
容 姿つばの広い帽子をかぶり、黒いマントを羽織った片目のない老人
特 徴北欧神話の最高神。戦争、魔術、知恵の神。
出 典スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』(13世紀頃)、『詩のエッダ』(13世紀頃)ほか

貪欲に知識を求める最高神!?

オージンは北欧神話の最高神。戦争、魔術、知恵の神である。知略に富むため、ヴァイキングの戦士階級に崇拝された。また、詩の神としても知られ、吟遊詩人のパトロンとして崇拝された。オージンは世界を旅して回ることが好きで、黒いマントを羽織り、つばの広い帽子をかぶった片目のない老人の姿であちこちを放浪している。

オージンは貪欲に知識を吸収しようとする神として知られる。たとえば、彼が片目なのは、知識と霊感が得られるというミーミルの泉の水を飲む代償に、自分の片目を泉の番人ミーミルに差し出したからである。また、ルーン文字の秘密を得るために、首をくくって世界樹ユッグドラシッルにぶら下がり、自らに槍を突き刺して九日九晩、自分自身を自分自身に奉げるという無謀な挑戦をした。たまたま縄が切れたため、オージンは命を取り留めることができた。こうしてオージンはルーン文字の意味とその呪文としての効果を理解したのである。オージンに奉げられる生け贄が、首に縄をかけて木に吊るされ、槍で貫かれるのは、このエピソードに由来するという。

北欧神話では、はじめから神々の世界の終焉が予言されている。いずれ、神々は巨人族によって滅ぼされる運命となっているのである。オージンは必死にその運命に逆らい、終焉のときを少しでも先延ばしにしようとして知識を求めているのである。

巨人ユミルからこの世界を創造した神!?

オージンはこの世界を創造した神でもある。世界の始まりのとき、この世界にはギンヌンガガプと呼ばれる巨大な裂け目があり、北の果てには霜の国ニヴルヘイム、南の果てには灼熱の国ムースペッルヘイムが存在していただけであった。ニヴルヘイムからの冷気とムースペッルヘイムからの熱気が衝突したところに、原初の巨人ユミルが誕生した。同様に冷気と熱気が衝突して原初の牝牛アウズムブラが誕生した。ユミルはアウズムブラの乳を飲んで育ち、ユミルの脇汗から、次々と恐ろしい巨人族が誕生していった。アウズムブラは北の塩辛い氷を舐めて育ったが、やがてその氷の中から、ブーリという神が誕生したという。ブーリはボルを生み、ボルは巨人族の娘ベストラと結婚して、オージン、ヴィリ(ヘーニル)、ヴェー(ローズルの三兄弟をもうけた。巨人族は乱暴で神々と対立したが、三兄弟は協力してユミルを退治し、このときにユミルから流れ出した大量の血液により、巨人族は押し流され、滅んでしまった。しかしこのとき、一組の巨人族だけが密かに生き残ったため、やがて巨人族は増え、神々と抗争するようになる。やがて神々の終焉ラグナロクのときには、巨人族は神々の世界に侵攻し、神々を滅ぼしてしまうのである。

ユミルは非常に巨大な巨人だったので、三兄弟は巨人の身体からこの世界をつくったという。巨人の身体は大地に、血液は海や川に、骨は山に、歯は岩石に、髪の毛は草花に、睫毛は人間の国ミズガルズを囲う防壁に、頭蓋骨は天に、そして脳髄は雲になった。

また、トネリコの木とニレの木から最初の人間をつくったのもこの三兄弟である。オージンは命と魂を、ヴィリは動く力と知性を、ヴェーは言語、聴覚、視覚をそれぞれ与えたという。

オージン、世界を監視し、ラグナロクに備える!?

オージンは愛と豊穣の女神フリッグを妻とし、彼女との間にバルドルという美しい神さまをもうけている。その他、ヨルズとの間に雷神ソール、グリーズとの間にヴィーザル、リンドとの間にヴァーリをもうけている。また、母親は分からないが、盲目の神ホズ、俊足のヘルモーズ、詩神ブラギ、光の神ヘイムダッルなどもオージンの息子とされている。

オージンは、いずれ訪れるラグナロクのときには、狼の怪物フェンリルに噛み殺されることが決まっている。北欧神話の世界では、たとえ最高神のオージンでも、この運命からは逃れられることはできないのである。

オージンは、いつもは神々の国アースガルズにあるヴァーラスキャールヴという館に住んでいる。その館の真ん中にはフリズスキャールヴという王座がある。この王座はオージンと妻フリッグのみが座ることを許された椅子で、ここに腰掛けると、全世界を見渡すことができるという。また、彼はフギン《思考》とムニン《記憶》という二羽のワタリガラスを飼っており、彼らを飛ばして世界中の情報を集めている。オージンの足元には常にゲリ《貪るもの》、フレキ《飢えるもの》という二匹の狼が控えていて、彼らがオージンに与えられた食事を代わりに食べ、オージンはぶどう酒だけを飲んで生きているのだという。

オージンの愛馬は8本脚の駿馬スレイプニルで、オージンはしばしばこの愛馬に乗って世界中を移動する。また、絶対に狙いを外さないという投げ槍グングニルを持っている。ドラウプニルという黄金の腕輪もオージンの持ち物である。この腕輪は次々と自己増殖を繰り返す。

グラズスヘイムという土地にはヴァルホッルと呼ばれる館があり、オージンはその館に勇敢な戦死者たちの魂エインヘリャルたちを集め、来るべきラグナロクに備え、戦闘訓練をさせている。

水曜日はオージンの日?!

オージンは知識豊富で知略に富むことから、しばしばローマ神話の知恵の神メルクリウス(マーキュリー)と同一視された。そのため、ローマ暦で「メルクリウスの日」だった水曜日のことをWednesday(ウェンズディ)《オージンの日》と呼ぶようになった。

《参考文献》

Last update: 2010/09/27

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