七歩蛇(しちふじゃ、しちほだ)

分 類日本伝承
名 称 七歩蛇、七歩虵(しちふじゃ、しちほだ)【日本語】
容 姿12センチメートルほどの紅色のヘビ。両耳と4足がある。
特 徴猛毒を持ち、七歩歩かないうちに死ぬとされる。大量のヘビを出現させる。
出 典浅井了意『伽婢子』(1666年)ほか

妖蛇の怪異の本体は七歩蛇だった!?

七歩蛇(しちふじゃ、しちほだ)は日本伝承に登場するヘビの妖怪。浅井了意『伽婢子』(1666年)の巻之十一「七歩虵の妖」に登場する。

『伽婢子』によれば、京都東山で、かつて岡崎中納言の山荘があった場所は荒れ果てて住む人がいなかった。「この土地は妖蛇の怪があるから住めない」との忠告を無視してある男が家を建てて引っ越した。

すると3~4尺(1.0~1.2メートル)のヘビが5、6匹現れて天井の間を這い回っていた。男は駆除を命じたが部下が恐れてしまったので、自ら杖でヘビを突き落として桶に入れて賀茂川に流した。すると翌日には14、15匹のヘビが現れ、その次の日には30匹ほど、遂には2、3百匹にもなった。しかも大きさは5~7尺(1.5~2.1メートル)だったり、さまざな色だったり、中には足が生えて龍のような姿のものも現れた。いくら駆除しても、日に日にヘビの数はどんどん増えていった。

男は香を焚き、幣を立てて「ここは俺が買った土地だ。それなのにヘビの怪異に悩まされている。大地のことは龍王の管轄だ。すぐにヘビの怪異を祓ってくれ。できないなら力不足というもので、天帝に罰せられるぞ」などと訴えた。

その夜、地の底で騒がしい音がして、夜が明けると一夜にして草むらが枯れて、大きな石が砕けて傾いている。そこを掘り返すと1匹のヘビが逃げ出そうとした。ヘビの通るところの草は見る見るうちに枯れていく。これを打ち倒すと、ヘビは体長がわずか4寸(12センチメートルほど)で、紅色の身体、鱗の間は金色で、両耳と四足があって、小さな龍のような姿だった。

虵のたけわづかに四寸、いろはべにのごとく、両の耳、四のあしあり。うろこのあひだは金色にして、小龍のかたちに似たり。

浅井了意『伽婢子』巻之十一「七歩虵の妖」より

誰もその正体が分からなかったが、南禅寺の僧侶がやってきて「これは七歩蛇という名前だ。噛まれたらただちに死ぬ。猛毒のために噛まれたら七歩しか歩けない。仏典にも載っている」などと教えてくれたという。

その後、男の家からはヘビが現れることがなくなったため、大量のヘビは七歩蛇の精だったと結論付けられたという。

南禅寺の僧侶が仏典にも載っていると説明したのが何を指すのかは分からないが、仏教の注釈書の『大毘婆沙論』には「七歩毒蛇」の記載があるようで、毒の強さで8歩は歩けないと説明されている。

七歩毒蛇の為に、螫さるるが如し。大種力の故に、能く七歩を行むも、毒の勢力の故に第八に至らず

「阿毘達磨大毘婆沙論」より

ちなみに、おかあさんといっしょの「ようかいしりとり」にも「しちほだ」の名前で登場している。河津酒造からも日本酒「七歩蛇(しちほだ)」が販売されていて、「この蛇に噛まれると毒で7歩歩く間に死んでしまうと謂われ、ノックアウトされるほど飲みやすくて旨い酒」と謳われている。

《参考文献》

Last update: 2024/09/29

サイト内検索