ペテフ(プタハ)

分 類エジプト神話
名 称 𓊪𓏏𓎛𓀭ptḥ〕(ペテフ)【古代エジプト語】
Φθά(プタ)【古代ギリシア語】
容 姿緑色の肌を全身包帯に巻かれ、保護帽をかぶった男性神。
特 徴メンフィスの地方神。鍛冶神。心臓と舌で世界を創造した。
出 典

ペテフのイラスト

ペテフ、心臓と舌で世界を創造する!?

ペテフ(プタハ)は古代エジプトにおける創造神の1柱である。イネブ・ヘジュ(メンフィス)で崇拝された。本来はメンフィスの古い神格で、手工業を司る鍛冶神だったとされる。

ナルメル王が上エジプトと下エジプトを統一し、第1王朝を興したとされ、第1王朝時代に上エジプトと下エジプトの接点に建設された都市がイネブ・ヘジュ(メンフィス)である。

ペテフは全身が白い包帯に巻かれたミイラの姿で、一般的には肌の色は緑色で描かれる。生命の象徴である「アンク」、支配の象徴である「ウアス」、安定の象徴である「ジェド」を組み合わせた杖を持つ。儀式用のつけ鬚をつけ、マアトの上に直立した姿で描かれる。他の神々のような王冠はかぶっておらず、ヘルメットのような頭にフィットした帽子をかぶっている点が特徴である。この特徴的な帽子は手工業者が頭を守るためにかぶる保護帽だと解釈されている。

エジプトでは、王権が変わるたびに、さまざまな体系の神話が力を持っていくが、メンフィスでは、独自の「メンフィス神学」が発達し、王権に移り変わりの影響を受けずに長く信じられたようだ。メンフィス神学の中では、ペテフは心臓と舌で世界を創造したと説明されている。古代エジプト人は、知性は心臓に宿ると考えたようだ。心臓で思考して、舌から発する言葉によって世界を創造したというイメージなのだろう。

ペテフとその他の神々

ペテフはライオンの頭を持ったセケメト(セクメト)を妻に迎え、睡蓮の神ネフェルテムを息子として儲けた。メンフィス神学では、ペテフとセケメト、ネフェルテムは3柱神としてセットで崇拝され、その後、古代エジプトの終わりまで長く信仰された。

メンフィスではこの他にも「原初の丘」を擬人化した原初神タアチェネンや豊饒神セケル(ソカル)も崇拝されていた。古王国時代にはすでにタアチェネンとペテフは同一視され、ペテフ=タアチェネンとして崇拝されていた。また、ケセルと同一視されていたウシル(オシリス)とも習合して、ペテフ=ケセル=オシリスとしても崇拝された。

庶民にも大人気のペテフ!?

メンフィスに首都が置かれていた第3王朝の頃から盛んにピラミッドが建設され、多くの職人たちがメンフィスに集められた。創造神であるペテフは、職人たちの間でも篤く崇拝された。たとえば、第3王朝2代目のファラオ(王)であるジェセルの階段ピラミッドを設計したのはイムホテプと呼ばれる宰相で、彼は「ペテフの子」とも呼ばれていた。職人たちが各地を移動する中で、ペテフ信仰はエジプト全土に広がっていった。テーベ(ワセト)のネクロポリスの周辺には大規模な職人の村があり、王家の谷で働いていた。ペテフは祈りに耳を傾けてくれる存在として、庶民たちに非常に篤く崇拝され、耳をあしらった石碑も残されている。

エジプトの語源はペテフ神殿にあり!?

メンフィスにあったペテフの神殿はフウト・カア・ペテフ(ペテフの魂の聖域)と呼ばれ、メンフィスそのものがフウト・カア・ペテフとも呼ばれるようになった。古代ギリシア人はフウト・カア・ペテフをギリシア語にして、この地を「アイギュプトス」と呼んだ。これが後にエジプトという国名の由来になった。アイギュプトスは《ペテフのカアの家》という意味である。

《参考文献》

Last update: 2025/02/16

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