タアチェネン(タテネン)

分 類エジプト神話
名 称 𓇾𓈇𓏤𓍿𓇒𓁯tɜ-ṯnn〕(タアチェネン)《立ち上がる大地》【古代エジプト語】
Τατενέν(タテネン)【古代ギリシア語】
容 姿緑色の肌の男性神。ヒツジの角、ダチョウの羽、太陽円盤を組み合わせた冠をかぶる。
特 徴原初の水から出現した「原初の丘」を神格化した神。
出 典

タアチェネンは原初の水に出現する「原初の丘」!?

タアチェネン(タテネン)は元々、イネブ・ヘジュ(メンフィス)で崇拝された両性具有の原初神。ヒツジの角、ダチョウの羽、太陽円盤を組み合わせた独特な冠をかぶった男性神である。肌の色は緑色で描かれる。

古代エジプトでは、世界創造の際、原初の水から「原初の丘」が出現したと信じられた。そして、原初の丘から太陽を乗せた睡蓮(スイレン)が生じ、世界の創造が始まったとされる。ヘリオポリス神話では、この原初の丘をベンベンと呼んで、アオサギのベヌウが降り立って、太陽の卵を温めて孵化させたと信じられているが、メンフィス神学では、この原初の丘を擬人化し、タアチェネンとして崇拝した。ただし、タアチェネン自身が強く創造そのものと結びつけられていたわけではなく、メンフィス神学で創造神として活躍するのはペテフ(プタハ)である。鍛冶神ペテフはタアチェネンと結びつくことで、原初の創造神になったと考えられる。すでに古王国時代にはタアチェネンとペテフは同一視され、ペテフ=タアチェネンとして崇拝されていたようだ。

古代エジプトにおいて、アケト季はナイル河が増水する季節で、農地の多くが水没した。しかし、ペレト季になるとナイル河の水位が下がって、再び耕地が水の下から顔を出す。タアチェネンはこのイメージを踏まえているのだと思われる。タアチェネンはその特性から地下の神、大地の神であり、鉱物や水などの地下資源を司っていた。また、大地から芽吹く植物をも司っていた。

タアチェネン、8柱の原初神を統率する!?

ヘルモポリス神話では、ケミニィウ(オグドアド)と呼ばれる8柱の原初神が崇拝されていた。原初の海を構成する8柱の神で、深淵を司るヌンとヌゥネト、無限を司るヘフウとヘフゥト、暗闇を司るケクウとケクゥト、不可視を司るアメンとアメネトである。この混沌とした状態から原初の丘(=タアチェネン)が現れ、睡蓮が咲き、太陽神が現れて万物の創造が始まったと信じられた。ペテフとタアチェネンはこのヘルモポリス神話とも結びつけられて、これらの8柱の神々を統率していると信じられた。

《参考文献》

Last update: 2025/02/16

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