貘(モー、ばく)

分 類中国伝承日本伝承
名 称 貘(獏) 〔〕(モォ)【中国語】
獏(ばく)【日本語】
容 姿鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラに似た獣
特 徴邪気を払うことから転じて悪夢を食べる。枕などに描かれる。
出 典『本草綱目』(1578年)ほか

バクに夢を食べられた!?

貘(モー、ばく)は中国由来の日本の妖怪。日本では、夢を食べる怪物と信じられている。

元々の中国では、貘(モー)がどのような生物かははっきりとしない。 中国最古の類語辞典『爾雅』の注では「熊に似て頭が小さく脚が短く、黒白のまだらで、銅鉄や竹骨を食べる」とあり、ジャイアントパンダを指す語だったと考えられる。しかし、『本草綱目』では、鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラに似た獣と説明されている。中国では、マレーバクに似た獣をかたどった青銅器が多数、残されており、白黒のまだらという表現から、次第にマレーバクと混同され、鼻の長い獣として変化したのかもしれない。

日本では人の夢を喰うとされるが、中国ではそのような伝承はなく、貘の毛皮には病や邪気を避けると信じられ、貘の絵を描いて邪気を払う風習が生まれ、しばしば、屏風に貘が描かれるようになった。こうした俗信が日本に伝わって、悪夢を食べると解釈されるようになったのだろう。日本では、室町時代の末期には縁起物として描かれるようになり、正月によい初夢を見るために、枕の下に宝船の絵を敷き、その船の帆に「獏」の字を書いた。江戸時代には獏の絵が描かれた枕なども作られた。

本来、悪夢を食べるとされたが、近年のファンタジーでは、良い夢を食べたり、悪夢を見せるなどの描かれ方をする場合もある。

なお、韓国では金属を食べるという側面が取り上げられ、プルガサリと結び付けられた。

《参考文献》

Last update: 2021/07/18

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