2025年6月1日 韓国妖怪、フィリピン妖怪、そしてスイス妖怪……

5月26日の記事「久々にファンタジィ事典を更新!」でも書いたように、本業の仕事に追われている。毎日、家に帰り着くのが遅くて、そのままソファで倒れて泥のように寝ている日々だ。それでも、何とか前に進みたい。そんな気持ちで、歯を食いしばりながら(?)、妖怪蒐集をしている。

そんなわけで、本日の妖怪の更新はフィリピンの妖怪アコップ、朝鮮の妖怪カンギルカンチョリ、そしてスイスの妖怪ブタッチ・クン・イルグスだ。

フィリピンの妖怪は、有名なものは粗方やっつけたような気もするが、まだまだヘンテコな妖怪はいる。今回のアコップは、頭から直接、手足が生えているという不気味な姿と、未亡人を抱き締めて夫の後を追わせようとする性質の妙が引っ掛かったので、更新してみた。

カンギルとカンチョリは、実はハングルの五十音順では「ㄱ」が最初で、蒐集した韓国妖怪のリストの中から、五十音順に頭から拾っていったら、結果としてカンギルとカンチョリになった。でも、結構、カンチョリなんかは朝鮮半島では有名な「竜」の一種で、結果としていいチョイスになったのではないかと思っている。

ブタッチ・クン・イルグスは、奇妙なイラストを描くことでこの界隈で有名な「A Book of Creatures」の中から選んだ。最近、このウェブサイトをよく眺めている。世界各地の膨大な妖怪の資料が、イラストとともに掲載されていて、日本ではマイナなものも多い。出典として、英語だけでなく、フランス語の書籍が多いので、それも影響しているのだろう。ブタッチ・クン・イルグスは巨大なウシの胃袋みたいな姿の怪物で、無数に目玉がついているらしい。湖の怪物で、横暴な貴族たちを圧し潰してしまう。目玉からは炎を吐き出すらしいので、奇妙な妖怪だと思う。

そんなわけで、本日は「ファンタジィ事典」に4項目を更新したというご報告。

  

2025年6月3日 絵文字の歴史5:国際統一規格化とその後の課題

「ドコモ絵文字」終了のニュースを読んで、5月21日に記事「絵文字の歴史1:ファンタジィ事典の多言語化」を書いた。その記事では、絵文字文化は日本由来だと書いた。ドコモ絵文字が、実はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されたという事実も書いた。それでも、文字コードの歴史の観点では、日本の技術者たちの敗北だったと書いた。以降、「絵文字の歴史2:感情を伝えるには顔のシンボルが必要だ」「絵文字の歴史3:ハートマーク事件とドコモ絵文字の誕生」、そして「絵文字の歴史4:絵文字の進化と文字コードの壁」と記事を書いてきて、今回で最終回だ。

絵文字はdocomo、au、softbankの3社の中でバラバラに発展して、SNSにも水平展開しながらも、日本においては統一規格にはならなかった。機種依存文字のままで、他社とのやり取りでは文字化けすることもあった。この流れに終止符が打たれたのが2010年だ。でも、統一規格の道を推し進めたのは、残念ながら、日本人じゃなかった。AppleがiPhoneを日本に売り込もうとしたときにぶつかった壁が、まさにこの日本独特の絵文字文化だった。iPhone、そしてAndroidでは当初、絵文字が使えなかった。これでは日本人に受け入れてもらえない。同様にGoogleもgmailを日本に売り込もうとしていたけれど、ここでも絵文字の壁にぶち当たった。そこで、AppleとGoogleがUnicodeコンソーシアムに働きかけたわけだ。結構、この取り組みは大変だったみたいで、そもそも絵文字は文字なのかという議論もあったし、絵文字のバラエティも多くて、なかなか評価できなかったようだ。でも、最終的に2010年にUnicode 6.0の中に「Emoji」として採用されて、今に至るわけで、結局、ガラパゴス日本では、統一規格化できなかったよなあと思いつつ、日本人として悔しい想いもある。

ちなみに、その後も絵文字はいろいろな壁にぶち当たっていく。たとえば、肌の色。日本人が考えた絵文字の人間はみんな、うすだいだい色。いわゆる「肌色」だった。でも、当然、国際社会には黒っぽい肌の人、白っぽい肌の人がいるわけで、今は色を選択できる仕様になっている。ジェンダーとか家族の壁にもぶち当たった。夫婦というのが男女でいいのかとか、家族は子供がいなきゃいけないのかとか、片親だっているじゃないかとか、そんなこんなで、今は家族を表現する絵文字もたくさんの種類が用意されている。職業も、たとえば、日本の絵文字だと、警察官が男性だったりする。でも、現在は、女性の警察官も搭載されている。サラダも、ベジタリアンを意識して、今はタマゴの記載がなくなった。一番大きな課題は国旗だ。日本の絵文字は、日本に馴染みのある先進国の国旗だけを搭載していた。この部分はUnidoceコンソーシアムでも最後まで揉めたようだけれど、結局、全ての国の国旗を入れることで落ち着いた。それでも、台湾の旗をどう取り扱うかなど、今でも揉めている。

そういう意味では、実は栗田穣崇氏が監修したドコモ絵文字というのは、最初っから「絵」ではなくて「文字」として志向して構想されていて、シンプルで、肌の色も国籍も性別からも離れた「記号」としてデザインされていたわけで、そのドコモ絵文字が終了してしまうのは寂しいよなあとも思ったりする。そんなわけで、第5回まで長々と書いてしまったが、絵文字についてのボクの雑感である。

  

2025年6月5日 1958年の音楽とファンタジィ事典

2025年3月19日に「電脳空間の大掃除に齷齪。」という記事を書いて、音楽のサブスクについての興味をちょっとだけ書いた。iPhoneを買い替えたら、15,000曲を超えるmp3の移行がうまく行かず、その整理に悩んでいたからだ。そんなこともあって、4月に音楽サブスクを解禁した。その結果、ボクの生活は劇的に変化した。

4月は1960年から1964年の5年間のビルボード年間ランキングを1位から100位まで、苦行のように聴いていた(笑)。エルヴィス・プレスリーとか、ブレンダ・リー、コニー・フランシス、エヴァリー・ブラザーズ、ロイ・オービソン、レイ・チャールズ、チャビー・チェッカー、ビーチ・ボーイズなどなど。そして1964年になるとようやくビートルズが登場だ。5月は1965年から1969年の5年間。まさにブリティッシュ・インベージョンの時代だ。ビートルズだけでなく、ローリング・ストーンズ、ハーマンズ・ハーミッツなどが続く。アメリカ側もモンキーズで対抗する。後にダイアナ・ロスを生むスプリームスもいるし、サイモン・アンド・ガーファンクルや気だるいドアーズもいる。

そして6月になって、もうちょっと遡ろうかと思って、1955年から1959年の5年間を聴き始めたら、1958年の12位の「パープル・ピープル・イーター」に出逢った。あ、これがあの「パープル・ピープル・イーター」なのか、とすぐにピンと来た。A Book of Creaturesの記事にエイプリルフールの冗談みたいな形で、この怪物が紹介されているのを思い出したからだ。そんなわけで、まさかオールディーズの音楽を聴いていて、妖怪に遭遇するボクであった。ファンタジィ事典にパープル・ピープル・イーターを追加してみた。

  

2025年6月8日 ベトナムの妖怪を追加!!

本日はベトナムの妖怪を2体、更新した。「クイマッマム」「ピーフォン」だ。出典はズイ・ヴァン氏のMa Quỷ Dân Gian Ký。ゴールデンウィークにズイ・ヴァン氏が大阪・関西万博に来ていたらしい。ボク自身、そのタイミングは韓国を訪問していたので、物理的に彼に会うことは叶わなかったけれど、ちょっと会ってみたかった気もする。彼の2冊の妖怪図鑑をゲットしたかったなという気持ちもある。イラストは現在も出展しているようだけれど、図鑑が売っているという情報はないので、断念だなあ。誰かどこかで彼の本、調達してきてくれないかなあ。

さてはて。クイマッマムはベトナム語で《お盆の顔の魔物》という意味で、平べったいでかい丸い顔を見せて驚かせる妖怪だ。そして、驚いて気を失っている人間を喰ってしまうのだというから恐ろしい。ピーフォンは絶世の美女にして吸血鬼という一族だ。美女の家系であるために吸血鬼であることを疑われ、村の外に結婚相手を探しに行かなきゃいけないという。面白いのは、月夜に怪物に変身すると、どんどん美しい姿になっていくという点。変則的だ。

そんなこんなで、緩やかに調子が戻ってきた。このくらいのゆるゆるペースでウェブサイト「ファンタジィ事典」の更新が続けられればいいなと思っている。

  

2025年6月10日 ひとりで生きることも死ぬことも許さない!!

妖怪メインのウェブサイトなのに、頻繁に音楽を紹介してしまうボクである(笑)。

本当にいろんなことがあって活動を休止していたステミレイツが、満を持して復活した。ドラムとキーボード兼デスボの脱退、新メンバー募集、新曲にて再起動からの急転直下のヴォーカルの脱退。もう自然消滅かな、と思っていたけれど、こうして復活を果たした。ヴォーカル不在をどう乗り切るのかと思ったら、ゲスト・ヴォーカル(笑)。そして歌詞がかなち。「ZENTSUPPA」というのは、まさに今のステミにピッタリだし、かなちらしさ満載で面白い。何よりもかなちとさきてぃがニコニコしてくれていれば、もうそれでいいや! という気分だ。

それから、戦慄かなのとかてぃで結成されている悪魔のキッス。彼女たちの新曲の「XOXO」。いい曲だなあと思っていたら、楽曲提供が小南泰葉さんだった。何と! もう随分前にアーティストとしての活動は休止しているものと認識していて、たまに楽曲提供しているなあと思っていたけれど、まさか悪魔のキッスに楽曲提供するとは! ということで、あまりにびっくりして、記事を書いているボクである。彼女は不安定な音への飛躍とか、難解な歌詞とか、楽曲そのものも素晴らしいんだけど、歌唱方法も独特で、たまにざらつくような声を出すのが魅力なので、もう一度、歌ってくれないかなあ。

あと、もうひとつ、ここのところ面白かったのが、レペゼン界隈だ。DJ社長が新曲を出して、再生数がものすごいんだけど、それよりも注目は銀太だ。まさかのmisonoとのコラボ。しかも結構、聴いていて心地よいビート。ああ、頑張っているなあと思っている。

  

2025年6月14日 朝鮮妖怪とフィリピン妖怪を粛々と……

さてさて。今日も今日とて「朝鮮の妖怪」「フィリピンの妖怪」を更新する日々である。すでに大量のデータベースは準備済みで、それをアウトプットするだけなので、いいペース。非常に順調である。

本日、アップした「朝鮮の妖怪」はコググィコジャムだ。どちらも朝鮮半島らしいなと思う。コググィの方は道を塞ぐ妖怪だけど、心意気を試しているだけで、覚悟を決めて前に進むと消えてしまう。しかも、勇敢な人物だと認めて、従者になって付き従う。コジャムの方は巨大なカイコだ。ウシほどのサイズのでかい幼虫なので、想像すると気持ち悪い感じではあるけれど、そのカイコの死を悼んで大量のカイコ蛾が飛んできて、村が潤う。

「フィリピンの妖怪」からはシャムシャムタンバロスロスを持ってきた。シャムシャムはイロイロ地方の都市伝説だ。消えるヒッチハイカーみたいに馬車に相乗りする相手が幽霊だったという展開だが、消えるのではなく、わざわざ骸骨姿になって同乗者を驚かせる。タンバロスロスは非常に卑猥な妖怪で、ガリガリの痩せた身体の妖怪の癖に、玉袋は地面につくほどでかく、陰茎も顔に届くほど巨大という。タンバロスロスみたいな妖怪は、絵に描けないよなあ。すぐにpixivに怒られちゃうもんなあ。うーん。

  

2025年6月22日 アジアの妖怪蒐集を粛々と。

さてさて、本日も「フィリピンの妖怪」「ベトナムの妖怪」を更新した。

フィリピンの妖怪からはウガウティブスカンラギラギの3匹を更新だ。ウガウは米泥棒だ。米倉から米を盗んでいく。日本の米が不足しているけれど、実はフィリピンからウガウがやってきているのでは? ……なんて。ティブスカンは魔女が飼う子ブタの妖怪。この子ブタが穴を掘ると病が蔓延する。そしてラギラギは赤ん坊にしか見えない妖怪で、赤ん坊を病気にする。

ベトナムの妖怪からはマーガー。これはベトナムの憑き物筋みたいなものだ。壺に入れて飼育すると財産を守ってくれる。その代わり、生きたニワトリを毎月、捧げなければいけない。

そんなわけで、粛々とアジアの妖怪を蒐集しては掲載をする活動を細々と続けている。近々、またアジアの妖怪画を載せるので、乞うご期待。ではでは。

  

2025年6月26日 『韓国妖怪図鑑』をゲット!!

コ・ソンベ氏の『한곡 요괴 도감(韓国妖怪図鑑)』(韓国語)の本が韓国から届いた。最近、韓国語も勉強していて、韓国の妖怪を調べていたので、韓国語の本であっても読めるだろうと踏んで、購入を決めたものだ。ネット上では数ページが公開されていて、妖怪1匹ごとに見開きで、イラストと解説が載っていることは分かっていた。でも、実際に手に取ってみて驚いたのは装丁だ。「妖怪」という古風な感じを演出するためだと思われるが、わざと「和綴じ」みたいな装丁になっている。そして、赤地に白で描かれた妖怪画でデザインされた紙でラッピングしてある。日本だと、こういう規格外のデザインってあんまりしないので、ちょっとビックリしたし、ワクワクもした。

ちなみに、この写真はカンギルのページ。妖怪の絵と解説が見開きで載っている。とてもいい!

ちなみに、この本の前書きの冒頭でコ・ソンベ氏は、「幼い頃から日本の漫画を読んで育った。日本の漫画にはたくさんの妖怪が出てくる。日本は妖怪大国だ。なぜ韓国にはいないのか。資料を調べたら、韓国にもたくさん個性的な妖怪がいた。いなかったのではなくって、知らなかっただけだ」と書いている。隣国韓国にも、日本の漫画文化が影響を与えているというのは嬉しい限り。

  

2025年6月30日 マーガーのイラストを描いてみた!!

ベトナム伝承「マーガー」を描いてみた。家を守護してくれる精霊で、壷の中で飼育する。鶏が大好物で、毎月、生きた鶏を生贄に捧げる必要がある。日本の「憑きもの筋」に似て、代々、飼育しなければならない。財宝を侵そうとする人間がいると、内臓を喰らい尽くす。

マーガーのイラスト

…というわけで、久々に妖怪の絵を描いた。もう、ね。怒涛のように忙しかった。何が忙しいって、職場が3年連続で新採用を受け入れている。12人のチームで、4人の経験年数が3年未満というのは、なかなかにしんどくて、結局、何をやるにしても、常にフォローしてあげなきゃいけない。ボクがその対応に追われている。それぞれの若者たちの業務の山があって、全部、そこに巻き込まれる。そういう忙しさだ。まあ、ね。仕事をしない老人たちのフォローだと未来には繋がらない。未来ある若者たちの人材育成だと思えば、気持ちとしては前向きに取り組める。でも、厳然たる事実として、毎日、夜遅くまで働いている。うーん。

そんな中で、ようやく絵を描けたのは、ちょっと嬉しい。やっと少し人間らしい生活ができているよなあ。