ドラコーン

分 類ギリシア・ローマ神話
名 称 Δράκων〔Drakon〕(ドラコーン)《大蛇》【古代ギリシア語】
容 姿巨大なヘビの怪物。
特 徴カドモスが退治したドラコーンは牙を大地に播くスパルトスたちが生じた。
出 典ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)、アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀頃)ほか

古代ギリシアの大蛇の怪物!?

ドラコーンは古代ギリシア語で《大蛇》、あるいは《竜》を意味する語である。英語のdragon(ドラゴン)という言葉の語源になっているが、古代ギリシア人の考えるドラコーンというのは、現在の我々が連想するドラゴンのように、四肢を持ち、翼を持った怪物ではなく、巨大なヘビの怪物である。おそらくは日本語の「ヲロチ」という言葉に、ニュアンスとしては近い。

たとえば、テーバイで英雄カドモスが退治したドラコーンはアレースの泉を守護する大蛇で、水を汲みに泉にやってきたカドモスの部下たちを殺した。そこでカドモスは岩でドラコーンの頭を叩いて退治した。アテーナーの指示の下、ドラコーンの牙を地面に播くと、そこからスパルトスたちが出現して殺し合いを始め、勝った5人がカドモスの部下になってカドモスを支えたとされる。ただし、カドモスはアレースの飼っている大蛇を殺した罪で、その後、8年間、アレースに仕えることになった。後に英雄イアーソーンもドラコーンの牙を大地に播き、誕生したスパルトスたちと激闘を繰り広げている。

夕べの国ヘスペリアで黄金のリンゴを守護していたラードーンもドラコーンと表現されている。ヘーラクレースは12の難業の11番目として、世界の西の果てにあるヘーラーの果樹園にある黄金のリンゴを持ってくるように命じられた。このリンゴの木には大蛇が巻き付いて実を守護しており、ヘーラクレースはこれを退治してリンゴを持ち帰った。神々はこの大蛇をりゅう座にしたとされる。なお、りゅう座も古代ギリシア語では「ドラコーン」と表記されている。

コルキスで金羊毛の毛皮を守護していたのも大蛇(ドラコーン)である。この怪物はアレースの神聖なる森で眠らずに毛皮の番をしていたが、英雄イアーソーンは魔女メーデイアの魔術でこの大蛇を眠らせて、金羊毛の毛皮を手に入れた。

なお、キマイラはライオンとヤギとドラコーンの合成獣であるが、背中から生えているドラコーンの首も大蛇の怪物である。また、冥府の番犬ケルベロスもドラコーンの尾をはやしている。

《参考文献》

Last update: 2024/05/13

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