スパルトス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Σπαρτός(スパルトス)【古代ギリシア語】 複数形:Σπαρτοί(スパルトイ)《播かれたもの》【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 武装したまんま地面から生えてきた人間。近年は骸骨の姿で描写されることもある。 |
特 徴 | ドラコーンの牙を大地に播くと武装して誕生した人間。 |
出 典 | アポローニオス『アルゴナウティカ』(前3世紀頃)ほか |
ドラコーンの牙から生まれた兵隊たち!!
スパルトスはギリシア・ローマ神話に登場する武装した戦士たち。大蛇(ドラコーン)の牙を播くと、大地から武装した姿で次々と誕生した。
テーバイ市の建設神話によれば、あるとき、英雄カドモスはデルポイの神託で、1頭の雌ウシの後を追い、雌ウシが倒れたところに都市を建設するように告げられた。そこで、カドモスは牛飼いから雌ウシを1頭買い取ると、休ませずに追い立て、その後を追った。やがて、雌ウシは疲れ果てて倒れた。そこで、カドモスはアテーナーに雌ウシを捧げることにして、部下たちに水を汲んでくるように命じた。部下たちは近くの泉に水を汲みに行ったが、偶然、そこはアレースの泉で、大蛇(ドラコーン)が泉を守護していた。何も知らない部下たちはその泉で水を汲もうとして、全員、大蛇に殺されてしまった。後からやってきたカドモスは激怒し、岩で大蛇を殴りつけて退治した。そして生贄として雌ウシを奉げると、女神アテーナーが出現し、大蛇の牙を大地に播くように指示した。言われたとおり、大蛇の牙を大地に播くと、そこから次々とスパルトスたちが現れた。彼らはうまれながらに武装していた。カドモスが彼らの真ん中に岩を投げ込むと、彼らはすぐに互いに争い合った。そして5人のスパルトスだけが生き残った。彼らはカドモスの従者となり、テーバイの建国の礎となり、テーバイの貴族たちの祖先になったという。
なお、余った大蛇の牙はコルキスのアイエーテース王の手に渡り、金羊毛を求めてやってきた英雄イアーソーンによって大地に播かれた。スパルトスたちはイアーソーンに襲い掛かったが、魔女メーデイアの薬で1日だけ無敵になっていたイアーソーンはあっという間にスパルトスたちを倒したという。
竜牙兵は骸骨戦士!?
おそらく古代ギリシアにおいては、スパルトスたちは武装して屈強なものの、通常の人間の姿をしていたと考えられる。しかし、1963年にレイ・ハリーハウゼンによってイアーソーンの冒険は『アルゴ探検隊の大冒険』として映画化された際、作中でイアーソーンに立ち向かう骸骨姿の戦士として描かれた。これはおそらく竜の牙からの連想だと思われる。このイメージはその後、多くのファンタジー作品に踏襲されていき、現代ではスパルトスといえば、骸骨戦士の姿で描かれることが多い。
《参考文献》
- 『ギリシア神話』(著:アポロドーロス,訳:高津春繁,岩波文庫,1953年)
- 『アルゴナウティカ アルゴ船物語』(著:アポロニオス,訳:岡道男,講談社文芸文庫,1997年)
Last update: 2024/05/27