カドモス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Κάδμος〔kadmos〕(カドモス)【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 英雄。 |
特 徴 | アレースの竜を退治し、テーバイ市を建設。 |
出 典 | アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀頃)ほか |
カドモスの竜退治!?
カドモスはギリシア・ローマ神話に登場する英雄である。アレースの泉に巣食う大蛇を退治し、テーバイ市を創建したことで知られる。
カドモスはフェニキアにあったテュロス市のアゲノール王の息子だった。妹のエウローペーがゼウスによって攫われたとき、アゲノール王は息子たちにエウローペーの捜索を命じ、連れ戻すまでは戻って来ることを禁じた。そこで、兄弟たちはエウローペーを探し求めて旅立った。カドモスは母のテーレパッサとともに仲間たちと出航したが、トラーキアに到着したところで、母は死んでしまった。途方に暮れたカドモス一行は、行き先をデルポイに定め、そこで神託を伺った。「エウローペーは諦め、一頭のウシを追い掛けて、倒れたところに都を興すべし」というお告げだったので、カドモスはその神託に従うことにした。
カドモスは牛飼いから一頭のウシを買い取って歩かせ続けた。そして、ウシが倒れたところで、アテーナー女神に祈りを捧げ、このウシを生贄に捧げるために、部下たちに水を汲みに行かせた。そこはアレースの泉で、竜が番をしていた。カドモスの部下たちは竜に殺されてしまった。この竜は大蛇(ドラコーン)で、 カドモスは大蛇と戦い、岩を頭に叩きつけることで、この大蛇を退治した。アテーナー女神が現れ、カドモスの勇敢さを讃えると、大蛇の牙を地面に蒔くように指示した。カドモスが言われたとおりに牙を蒔くと、牙から武装した男たちが次々と出現し、互いに争い合った。そうして、最後に生き残った5人がカドモスの部下となった。この部下たちは《蒔かれたもの》という意味で、スパルトスと呼ばれ、後にカドモスがテーバイ市を建設するときの助けとなった。
カドモスは、アレースの大蛇を殺してしまった罪を償うために、アレースの奴隷として8年間働き、その後、アテーナーは改めてカドモスにボイオーティアの地を与えた。カドモスは自分の名前を冠し、この地を「カドメイア」と名づけ、都市を建設した。これが後のテーバイ市となった。アレースとアプロディーテーの娘のハルモニアーを娶り、カドメイア(テーバイ市)を治めた。
伝説では、カドモスは、死後、英雄だけが立ち入ることの許される楽園エリューシオンで、ハルモニアーと一緒に暮らすことをゼウスに認められたという。
《参考文献》
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2023/05/06