テム(アトゥム)

分 類エジプト神話
名 称 𓏏𓍃𓅓𓀭 〔tm〕(テム)《万物》【古代エジプト語】
𓇋𓏏𓅓𓀭 〔itm〕(イテム)【古代エジプト語】
Ἀτούμ(アトゥーム)【古代ギリシア語】
容 姿二重冠をかぶった男性神。
特 徴創造神。自らを創造し、その後、手淫で神々を生み出した。
出 典

何もない水から自らを作り出した創造神!?

テム、あるいはイテムはエジプト神話における天地創造の神。古代ギリシア語の呼び方では「アトゥム」で、こちらの名前の方がよく知られている。テムは《万物》という意味があり、その名のとおり、万物を生み出す創造神である。上下エジプト統一の象徴である二重冠をかぶって、ウアス杖を持った男性神として描かれる。

テムはイウヌゥ(ヘリオポリス)で古くから創造神として崇拝されていた。その創世神話の中で、原初の水から自らを誕生させると、ベンベンという原初の丘をつくり、そこに降り立った。そのため、ベンベン石も信仰の対象となった。

その後、テムは手淫によってシュウ(大気)とテフヌゥト(湿気)を生み出した。シュウとテフヌゥトが最初の夫婦神となって、ゲブ(大地)とヌゥト(天空)を生み出した。そして、ゲブとヌゥトから、エジプト神話では有名なウシル(オシリス)アセト(イシス)セテク(セト)ネベトフゥト(ネフティス)が誕生した。こうして、この9人の神々はヘリオポリス九神となった。

通常、エジプト神話の神々は対になって子供を生む。しかし、テムは単独で神々を生んだことから、しばしば両性具有とされる。しかし、手淫で子供を生み出したことから、後代になって「テムの手」が2人の女神と考えられて、崇拝されるようになった。これがイウサアアスとヘテベトで「テムの手」を神格化した女神である。壁画などでは、テムの脇に2人の女神が添えられていることがある。後にアトゥムはアメン神と習合するが、その際には、アメンに仕える女性祭司長には「神の手」という称号が与えられた。

テムは太陽神だったが、時代とともに、ラーやケプリなどの他の太陽神と習合した。ラーと習合したテムは羊の頭部を持った神として描かれ、夜の航行をする太陽とされた。夜、ヌゥトの口からヌゥトの体内に入ったアトゥムは、そこで邪悪な大蛇アーペプ(アポピス)と戦い、そして、朝には新たな太陽を「創造」すると考えられた。

《参考文献》

Last update: 2020/04/25

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