ウシル(オシリス)

分 類エジプト神話
名 称 𓁹𓊨𓀭 〔wsjr〕(ウシル)【古代エジプト語】
容 姿白冠あるいはアテフ冠をかぶり、身体を包帯で巻いた男性神。
特 徴穀物神。冥界神。王の来世での復活を司り、死者の生前の行ないを裁く。
出 典

植物の死と再生を象徴した穀物神!?

ウシルはエジプト神話の穀物神であり、冥界神である。ギリシア語読みでオシリスという呼称の方がよく知られている。上エジプトを象徴した白冠(あるいはダチョウの羽を両側につけたアテフ冠)をかぶって、身体を包帯で巻いた男性神として描かれる。肌の色は植物を象徴する緑(あるいは沃土を象徴する黒)で彩色される。

ウシルはナイル川がもたらす沃土、あるいは穀物を司る神で、 上エジプトのアブジュウ(現アビュドス)では、古い時代からウシルの祭儀が行われていた痕跡があり、ナイル川の洪水が引き、種を播く時期になると、ウシル像が神殿から運び出され、敵を倒す場面を演じて行進する。しかし、その途中、ウシルは邪悪な敵の犠牲となって埋葬される。民衆は信者と敵に分かれて戦いを繰り広げ、最終的には信者が勝利し、神の復讐が遂げられる。ウシルは墓から取り出され、復活し、群衆の歓声とともに神殿に戻る。これは植物の死と再生のサイクルを表現した儀式である。新王国時代の王家の谷の副葬品からは、ウシル神の苗床とされるウシル神の形をしたプランターまで発見されている。水抜きの穴もあり、プランターには大麦が植えられていた。

ウシルはエジプト最初の王!?

ギリシア人のプルータルコスの記述によれば、父親のゲブから王位を継承し、最初のエジプトの王としてこの地に君臨した。これを妬んだ弟のセテク(セト)はウシルを殺して王位を簒奪した。このとき、遺体はバラバラにされてナイル川に投げ込まれた。妻のアセトが各部位を拾い集め、ミイラにすると、来世の王として呪術でウシルを復活させた(ただし、男根だけは魚に食べられてしまった)。そして、息子のヘル(ホルス)をもうけると、セテクから王位を奪還させると、後継者とした。以降、現世はヘルが統治し、来世はウシルが統治した。

穀物神、王の来世での復活を司る!?

ウシル信仰が盛んになると、ウシルはイウヌゥ(ヘリオポリス)の創世神話の中で、ゲブ(大地)とヌゥト(天空)の息子として、アセト、セテク、ネベトフゥト(ネフティス)とともに太陽信仰に取り込まれた。そして、アセトを妻にヘルをもうけ、アトゥムからヘルに連なる系譜ができあがった。

ウシル信仰は各地に広まり、次第に王の葬祭儀式と結びついていく。王は現世ではヘルの化身であり、来世ではウシルになって復活すると考えられるようになった。実際に、日本では故人を「故・~」と呼ぶが、古代エジプトの王たちは、死後、「ウシル・~」と呼ばれていた。第5王朝末期のウナス王(前24世紀中頃)の時代には、すでに王の復活に関わる神として、葬祭儀式で重要な役割を果たしている。

新王国時代になると、ウシル信仰は一般庶民にも広まり、死者の書がミイラとともに棺に納められるようになる。そこでは、次第にウシル神は、死者の生前の行ないを裁く役目を負うようになった。

《参考文献》

Last update: 2020/04/25

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