アセト(イシス)
分 類 | エジプト神話 |
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𓊨𓏏𓆇𓁐 〔Ȝst〕(アセト)《玉座》【古代エジプト語】 | |
容 姿 | 玉座を戴いた女神。 |
特 徴 | 冥界神ウシルの妻で、天空神ヘルの母。王権を守護する。魔術師。 |
出 典 | - |
王権を象徴する玉座の女神!?
アセトはギリシア神話の豊穣の女神。古代ギリシア語のイシスという呼称の方がよく知られている。玉座のヒエログリフを頭に戴いた女神の姿で描かれる。あるいはウシの角と太陽を組み合わせたフゥト・ヘル(ハトホル)と同じ冠をかぶっている。
ウシル(オシリス)信仰では、アセトはウシルの妹であり、妻で、セテク(セト)によってバラバラにされたウシルの遺体を拾い集め、呪術によって来世の王として復活させた。このため、死者とミイラの守護者と信じられた。ウシルとの間にヘル(ホルス)をもうけた。ウシルが来世の王、ヘルが現世の王として君臨したため、アセトは王母としても崇拝されるようになった。アセトが「玉座」を象徴するのはこのためである。稀に王権の象徴であるウアス杖を持った姿で描かれることもある(ウアス杖は通常、男神と王が持つ)。
呪術を駆使する古代エジプトの魔女!?
アセトは呪術を司る女神としても知られる。ウシルを復活させたときも、セテクと戦うヘルをサポートするときも、アセトは呪術を用いた。ヘルを助けるときには、アセトは太陽神ラーの唾液を土に混ぜてヘビをつくってラーを噛ませ、ラーの秘密の名前と引き換えに解毒することを迫って、秘密の名前を聞き出している。アセトは息子にその秘密の名前を教え、ヘルはラーの力を得たとされる。
ギリシア・ローマ世界にも広がっていくイシス!?
アセトは、他の女神を次々に習合して拡大し、王朝末期にはエジプト各地にアセトのための神殿が建てられた。特にローマ時代に建設されたヌビアのフィラエ島のアセトの大神殿はよく知られる。アセト(イシス)信仰はエジプトだけでなく、ギリシアやローマへも広がり、デーメーテールやアプロディーテーと同一視されながら、ローマ帝国内でも信仰された。キリスト教が広まった後でも「イシスの秘儀」として信じられていた。
アセトは聖母マリアの原型!?
しばしば、アセトは赤子の姿をしたヘルを抱き、授乳する姿で描かれることがある。また、ウシルとの間に処女のままヘルを身籠ったとする神話も生まれた。これらがキリスト教のマリア信仰につながったと言われる。実際に、コプト派キリスト教が広まると、イシス神殿は聖母マリアを祀る教会として使用されている。
《参考文献》
- 『図説 古代エジプト誌 古代エジプトの神々』(著:松本弥,弥呂久,2006年)
Last update: 2020/04/25