クロノス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Κρόνος〔Kronos〕(クロノス)【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 鎌を持ち、髭を生やした男性神。 |
特 徴 | ゼウスの父親で、ゼウスに支配権を簒奪され、タルタロス(奈落)に幽閉された。本来は先住民族の大地神・農耕神。 |
出 典 | ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)など |
次々と子供を喰らうも、息子に王権を簒奪!?
クロノスはギリシア・ローマ神話に登場する神である。ゼウスの父親で、ゼウス以前は世界を支配する神々の王であった。元々、この世界を最初に支配していたのは天空神ウーラノスで、クロノスはウーラノスと大地女神ガイアの間に生まれたティーターン族の12人いる兄弟姉妹の末っ子だった。
ウーラノスの治世下、ウーラノスはガイアとの間に百腕のヘカトンケイル族と一眼のキュプロークス族を儲けたが、ウーラノスはこの2つの種族の姿を見るなり、恐れを抱き、子供たちをガイアの子宮に押し戻してしまった。ガイアはこれに大変苦しみ、息子たちを呼び集めると、父を討つように命じた。他の兄弟たちが尻込みする中、末子のクロノスだけは勇敢にもこの申し出に応じたので、ガイアはクロノスに金剛の鎌を授けた。夜になり、ウーラノスは夜の女神ニュクスを引き連れて、ガイアに覆いかぶさった。隠れていたクロノスは鎌を持って飛び出すと、父の陰茎を斬り落とした。こうして、ウーラノスは失脚し、クロノスがこの世界の支配権を得た。
クロノスはレアーを妻に次々と子供たちを儲けたが、ウーラノスとガイアから、自らの子に世界の支配権を簒奪されるという不吉な予言を与えられていたため、子供が生まれるたびに飲み込んでいった。ヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ポセイドーンが飲み込まれ、最後にゼウスを産んだとき、レアーは石を産衣で包んでゼウスだと偽り、ゼウスをクレータ島に運んで密かに育てた。やがて、ゼウスは成長し、クロノスに吐き薬を飲ませて兄弟たちを吐き出させると、クロノス率いるティーターン族と戦争(ティーターノマキアー)を開始する。10年に亘る激しい戦争の末、ゼウス率いるオリュムポスの神々が勝利し、クロノスたちティーターン族はタルタロス(奈落)に幽閉された。
黄金時代の王にして農耕神!?
神話では、ゼウスに倒された古い時代の支配者として描かれるが、その一方で、黄金時代の王で、人々に幸福をもたらした神としてオリュムピアやアテーナイなどで信仰された。ギリシア先住民族の古い大地神・農耕神だと考えられていて、収穫の時期には、主人と奴隷が平等になる無礼講の宴が盛大に開催された。しばしばクロノスが鎌を持った姿で描かれるのは、父殺しの象徴ではなく、本来、彼が農耕神だからだろう。ローマ神話の農耕神サートゥルヌスと同一視された。
《参考文献》
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2022/01/10