飯綱山三郎坊

分 類日本伝承
名 称 飯綱山三郎坊(イイヅナヤマサブロウボウ)【日本語】
容 姿白狐の上に立つ烏天狗。左手に剣、右手に索(縄)を持つ。
特 徴飯綱山に棲む大天狗。天狗の麦飯を配って凶作から人々を救った。軍神。
出 典『天狗経』(年代不詳)ほか

凶作のときに「天狗の麦飯」を配って人々を救った天狗!?

飯綱山三郎坊(いいづなやまさぶろうぼう)は長野県長野市の善光寺の北に位置する飯綱山や忍者の里で知られる戸隠山で信仰される天狗。単に飯綱三郎、あるいは飯綱の三郎とも呼ばれる。『天狗経』に書かれている四十八天狗に名前が挙げられ、八天狗にも名前を連ねている。他の天狗の統領たちがしばしば鼻高天狗で描かれることが多い中で、飯綱山三郎坊はクチバシを持った烏天狗として描かれる。『戸隠山流記』の中では自らを「日本第三の天狗」と名乗っているが、愛宕山太郎坊比良山次郎坊に次いで、飯綱山三郎坊と位置付けていると考えられる。

平安時代末期には不動明王の化身・飯綱権現として、飯綱山に祀られた。不動明王の化身とされ、燃え盛る炎を背に、右手には剣、左手には索(綱)を持ち、烏天狗の姿で白狐の上に立って乗る姿で描かれた。軍神として、上杉謙信や武田信玄などの戦国武将にも篤く崇拝された。特に上杉謙信の兜の前立には金の飯綱権現が飾られている。その一方で、飯綱権現が授ける「飯綱法」は天狗や狐を使った邪法として恐れられた。

日本全土を襲った凶作の時に「天狗の麦飯」と呼ばれる飯綱山頂の砂(飯砂)を配って多くの命を救ったとされる。これが「飯綱(=飯砂)」の語源とされる。なお、「天狗の麦飯」は火山地帯に産生する微生物の塊で、藍藻・細菌・菌類の複合体とされる。長野県や群馬県などの高山に分布していて、古くから「修験者が食用にしていた」「飢饉の時に食べた」などの伝説がある。現在は天然記念物に指定されている。

(参考)八天狗とは

八天狗といえば、京都の愛宕山太郎坊、滋賀の比良山次郎坊、京都の鞍馬山僧正坊、長野の飯縄山三郎坊、神奈川の大山伯耆坊、福岡の英彦山豊前坊、奈良の大峰山前鬼坊、香川の白峯相模坊の8人の強力な天狗のこと。その中でも、愛宕山太郎坊がその筆頭である。

《参考文献》

Last update: 2021/03/28

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