比良山次郎坊

分 類日本伝承
名 称 比良山次郎坊(ヒラサンジロウボウ)【日本語】
比良山治朗坊(ヒラサンジロウボウ)【日本語】
容 姿大天狗。鼻高天狗として描かれることが多い。
特 徴比良山に棲む大天狗。
出 典『今昔物語集』(12世紀頃)、『天狗経』(年代不詳)ほか

最澄に比叡山を追い出された天狗の統領!?

比良山次郎坊(ひらさんじろうぼう)は、滋賀の琵琶湖の西の湖畔にある比良山に棲んでいる天狗。単に次郎坊とも呼ばれる。天狗の総大将と言えば、京都の愛宕山太郎坊だが、その弟分とも言われる。『天狗経』に書かれている四十八天狗では太郎坊に次いで2番目に名前が挙げられている。八天狗にも名前を連ねる。

元々は京都の比叡山に棲んでいた大天狗で、太郎坊と並び称されて、天狗の群れを率いて悪戯三昧だったが、天台宗の開祖・最澄が比叡山に延暦寺を建立すると、次々と法力の強い僧侶たちが山にやってきて山を占領したため、配下の天狗を率いて、北に25kmほど離れた滋賀の比良山に引っ越したという。これは奈良時代から続く修験道と平安時代の仏教の勢力の交代を意味する出来事と言える。

平安後期の『今昔物語』巻20には比良山の天狗が登場する。讃岐国(香川県)の万能池(まののいけ)に棲んでいた竜がヘビに化けていたときに、天狗はトビに化けて捕まえ、洞窟に閉じ込めた。洞窟の中に水がなかったので、喉が渇いて死にそうだった。そのとき、天狗が比良山の僧を拉致して洞窟に連れてきた。僧が水を持っていたので竜は復活し、比良山に僧を連れて帰ったという。この天狗も比良山次郎坊だとされる。

治承の大火(1178年)は、その前の年に発生した安元の大火(「太郎焼亡」と呼ばれた)との関連で「次郎焼亡」と呼ばれた。

(参考)八天狗とは

八天狗といえば、京都の愛宕山太郎坊、滋賀の比良山次郎坊、京都の鞍馬山僧正坊、長野の飯縄山三郎坊、神奈川の大山伯耆坊、福岡の英彦山豊前坊、奈良の大峰山前鬼坊、香川の白峯相模坊の8人の強力な天狗のこと。その中でも、愛宕山太郎坊がその筆頭である。

《参考文献》

Last update: 2021/03/26

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