飛頭蛮(フェイトスマン、ひとうばん)
| 分 類 | 中国伝承 |
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飛頭蠻(飞头蛮)〔fēitóumán〕(フェイトウマン)【中国語】 飛頭獠〔fēitóuliáo〕(フェイトウリアオ)【中国語】 蟲落(虫落)〔chóngluò〕(チォンルゥオ、チョンルオ)【中国語】 落民〔luòmín〕(ルゥオミィン、ルオミン)【中国語】 飛頭蛮(ひとうばん)【日本語】 | |
| 容 姿 | 首だけの妖怪。耳を翼のようにして飛ぶ。 |
| 特 徴 | 昼間は人間として暮らし、夜になると首だけが胴体から抜けて空を飛ぶ。 |
| 出 典 | 『和漢三才圖會』(1712年)ほか |
夜になると頭だけが空を飛ぶ!?
飛頭蛮(フェイトウマン、ひとうばん)は中国伝承に登場する首だけの妖怪。昼間は人間と変わらない姿で生活しているが、夜になると首(頭部)だけが胴体から離れて空中を飛び回る。
江戸時代の百科事典『和漢三才圖會』(1712年)によれば、さまざまな中国の書物に掲載されていたようで、たとえば、中国の百科事典『三才図会』(1607年)では、大闍婆国(ジャワ島のこと)に、頭を飛ばす者がいると書かれている。目には瞳がなく、よく飛んで、現地では「蟲落」とか「落民」などと呼ばれているという。房千里の『南方異物誌』では、嶺南(ベトナム付近)の洞窟に飛頭蛮がいて、首筋に赤い痕があり、夜になると耳を翼のように使って飛び回り、虫を食べ、夜が明けると元の体に戻ってくる。
また、東晋の干宝の『捜神記』(4世紀頃)では、呉の将軍の朱桓の下女の頭が夜になるとしばしば飛び回ったという。頭が離れてしまった身体は冷たくなっていたので、布団をかけてやったところ、戻ってきた首が布団に遮られて胴に戻れず、苦しみ出したため、布団を取り去ると首が胴に戻って落ち着いたという。朝になっても胴体に戻れないと死んでしまうという事例も載っている。
北宋の『太平広記』には「飛頭獠(フェイトウリアオ)」という名前で記されていて、これも首筋に赤い筋のような痕が現れ、夜になると頭部が胴体から離れて飛び、カニやミミズなどを食べて朝方に戻ってくるという。当の本人は夢を見たような感覚で、何も覚えていないが、不思議とお腹は満たされているという。
飛頭蛮は東南アジアの吸血鬼!?
飛頭蛮のモデルになった妖怪は、おそらく東南アジアの吸血鬼たちだ。たとえば、タイのグラスーやマレー半島のペナンガラン、フィリピンのウォウォグ/ウンガウンガ、ベトナムのマーライなどは、普段は人間として暮らし、夜になると身体から首だけが抜け出して獲物を探して飛び回る。実際には首だけではなくて、その下には臓器もぶら下げていて、とても恐ろしい姿である。
これらの首と臓器の妖怪たちが中国に伝わって、飛頭蛮と呼ばれていたのだろう。
ちなみに、日本の妖怪の轆轤首(ろくろくび)も、実はこの飛頭蛮が原型になっていると言われている。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』(1776年)などでは「飛頭蛮」と書いて「ろくろくび」と読ませている。また、江戸時代の怪談集『古今百物語評判』(1686年)では轆轤首の首筋には赤い痣があると説明していて、飛頭蛮の影響が見られる。
なお、南米のチリやアルゼンチンにもチョンチョンと呼ばれる妖怪がいて、首だけで耳を翼のようにして空を飛び、吸血するという。
《参考文献》
Last update: 2025/07/20
