ドラキュラ
| 分 類 | 近代文学 |
|---|---|
|
Dracula(ドラキュラ)《竜の息子》【ルーマニア語】 Count Dracula(カウント・ドラキュラ)《ドラキュラ伯爵》【英語】 | |
| 容 姿 | 黒い服の貴族。青白い肌、鋭い犬歯、長い爪。 |
| 特 徴 | 吸血鬼。オオカミに変身し、血を与えることで仲間を増やす。 |
| 出 典 | ブラム・ストーカー『ドラキュラ』(1897年)ほか |
吸血鬼と言えば、ドラキュラ伯爵!?
ドラキュラはブラム・ストーカーの怪奇小説『ドラキュラ』(1897年)に登場する。ルーマニア中央部のトランシルヴァニア地方の城に3人の女吸血鬼たちとともに暮らし、昼間は棺桶の中で眠って、力を蓄えているが、夜になると起き出して、人々を襲い、血を吸う。ドラキュラは、まさに現代の吸血鬼(ヴァンパイア)の代名詞的な存在である。
ドラキュラと言えば、燕尾服の紳士というイメージが強いが、これはユニバーサル映画『魔人ドラキュラ』(1931年)でベラ・ルゴシが演じたドラキュラのイメージであり、原作では真っ黒い服を着た不気味な老人として登場する。肌は青白く、高い鷲鼻で、広い額を持ち、眉毛は濃く、口元には鋭い犬歯が覗いている。掌(てのひら)の真ん中には毛が生えていて、指は太く短い。爪は鋭く尖っている。そして、唇は驚くほど赤い。『ドラキュラ』では、ドラキュラ伯爵が血を吸うたびに、どんどん若々しい姿になっていく点も特徴である。
ドラキュラ伯爵はオオカミやコウモリ、霧などに変身する能力を持っている。また、オオカミやコウモリなどの動物を眷属として操る能力も持っている。ドラキュラ伯爵に血を吸われ、その血を飲まされた人間は、死後、吸血鬼として蘇る。実際、『ドラキュラ』の中では、ルーシーがドラキュラの餌食となり、吸血鬼になってしまう。
その一方で、日光は苦手で、日中にはさまざまな能力が使えない。また、ニンニクや十字架、聖体を嫌う。流れる水を渡ることができないとされる。自分の故郷であるトランシルヴァニアの土を敷いた棺桶の中で眠る必要がある。
『ドラキュラ』の粗筋
『ドラキュラ』の物語は、イギリスの若い弁護士ジョナサン・ハーカーが、ルーマニア中央部のトランシルヴァニア地方に暮らすドラキュラ伯爵の城を訪れるところから始まる。ドラキュラ伯爵はロンドンの不動産を購入して、イギリスへの移住を画策している。城に幽閉される中で、ジョナサンは3人の女吸血鬼と出会い、さらに伯爵の正体が不死の怪物であることに気づき、城からの脱出を図る。
一方のドラキュラ伯爵は、トランシルヴァニア地方の土を詰めた箱とともにイギリスに上陸し、ロンドンで活動を始め、ルーシーに目をつけ、毎晩、彼女の生き血を吸う。ルーシーは次第に衰弱していき、ヴァン・ヘルシング教授が吸血鬼の仕業だと見抜く。しかし、ドラキュラ伯爵は、ルーシーの血を吸い尽くして殺してしまう。こうして、ルーシーは吸血鬼となってしまい、ヴァン・ヘルシング教授と仲間たちはルーシーの墓を暴き、心臓に杭を打ち、首を斬り落とす。
ドラキュラはデ・ヴィル伯爵という偽名でロンドン各所に不動産を購入して、故郷の土を持ち込み、拠点を増やしていく。ヘルシングらは拠点を見つけては土を浄化し、ドラキュラを追い詰めていく。ドラキュラはトランシルヴァニアへと逃亡するが、ジョナサンとヘルシングは先回りして、城内の女吸血鬼を討伐し、城内に運び込まれるドラキュラの棺桶を開け、心臓にナイフを突き刺し、首を斬り落とした。すると、ドラキュラの身体は塵となって消え失せたという。
ヴラド・ツェペシュとドラキュラ
ブラム・ストーカーは「ドラキュラとは、ワラキア語で悪魔を意味する」というメモを残している。そこから、吸血鬼を「ドラキュラ」と命名したようだ。実際には「ドラキュラ」というのは、15世紀のワラキア公ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)の異名である。ヴラド3世の父のヴラド2世は、竜騎士団に叙任した際、「竜公(ドラクル)」という異名で呼ばれた。その息子であるヴラド3世は「竜公の子(ドラキュラ)」と呼ばれ、本人もその異名が気に入っていたようである。
「竜」はキリスト教の文脈で「悪魔」と結びつきやすい。そのため、ルーマニアでは、ドラクルは《竜》だけでなく、《悪魔》をも意味していた。そのため、ドラキュラは「悪魔公の子」という意味にも解釈できる。おそらく、この誤った解釈に着想を得て、吸血鬼「ドラキュラ」が誕生したのである。
ストリゴイ伝承とドラキュラ
また、ストーカーはルーマニアの吸血鬼であるストリゴイにも大きな影響を受けている。ストーカーはエミリー・ジェラードの『トランシルヴァニアの迷信』(1885年)に取材しているが、その中には詳細なストリゴイ伝承が紹介されており、オオカミに変身する、ニンニクを嫌う、棺桶で眠る、心臓に杭を打って退治するなどの要素は、ストリゴイ伝承から採用したものと考えられている。
《参考文献》
- 『吸血鬼ドラキュラ』(著:ブラム・ストーカー,訳:瀬川昌男,金の星社 世界こわい話ふしぎな話傑作集,1984年)
- 『Dracula』(作:Bram Stoker,1897年,Project Gutenberg)(英語)
Last update: 2026/04/11
