倀鬼(チャングイ)

分 類中国伝承
名 称 倀鬼(伥鬼)〔chāng-guǐ〕(チャアングゥイ)【中国語】
容 姿幽霊。生前の姿。小指が欠損しているとも。
特 徴トラに襲われ、死後、トラの下僕としてトラを手助けする。
出 典『太平広記』(978年)ほか

トラに襲われ、死後、トラの下僕に!?

倀鬼(チャングイ)は中国伝承に登場する妖怪。中国では、トラに襲われて死んだ人間は、死後、倀鬼という幽霊になると信じられた。倀鬼(チャングイ)になるとトラに絶対服従する奴隷になるとされ、トラの忠実な僕(しもべ)として、次の獲物をトラの元に誘い出す役割を強制される。山道で旅人に声を掛けて道に迷わせたり、服を脱がせてトラが襲い掛かりやすいようにする。また、人間が仕掛けた罠や猟師の存在を事前にトラに知らせたりする。

倀鬼は基本的には生前の姿をそのまま留めている。しかし、夜になると両目が怪しく光り輝くという。また、小指が欠損しているとも言われていて、この特徴で倀鬼であることを見破ることができるとも言われている。

トラに自分の身代わりを差し出せば成仏できる!?

多くの場合、自分に代わる身代わりをトラに食べさせると、倀鬼はトラの呪縛から逃れてあの世に成仏できるとされた。そのため、倀鬼は必死になって次の獲物を騙そうと画策するのである。

この身代わりを求める話は、張潮の『虞初新志』(1683年頃)に載っている。ある村でトラに襲われて倀鬼になってしまった者が、生前の友人や家族の夢枕に立って「私はトラの奴隷になってしまった。早く生まれ変わりたいが、誰か身代わりを捧げなければならない。どうか手伝ってくれ」と泣きながら訴えたという。

倀鬼に関わる中国の言葉

中国には「為虎作倀(ウェイフーズオチャン)」という四字熟語がある。「トラのために倀鬼になる」という意味で、転じて悪の手先になって悪事を働くこと、悪人に媚びへつらって加害者になることを意味する。

「狼無狽不行、虎無倀不噬」という諺もある。「オオカミはバイがいなければ進めず、トラは倀がいなければ人を噛まない」という意味で、要するに「悪事には必ずそれを手引きする小悪党がいる」という意味で使われる。

トラが死ねば解放される!?

古代中国の説話集『太平広記』(978年)によれば、昔、自然を愛する馬拯という男が山を登っていると、お寺の境内で一人の老僧に出会った。しかし、その直後に別の旅人から「さっき山道でトラが人間を食べるのを見た。そのトラは人を食べた後、トラの皮を脱いで僧侶の服をまとって、老僧に化けた」と告げられる。馬拯がよく観察すると、その老僧の口元にはまだ血がついていた。馬拯らは機転を利かせて、老僧を井戸に突き落として退治することに成功した。

その後、夜になって山の中を歩いていると、周囲から「トラ将軍はどこへ行かれた?」「なぜ今夜は戻ってこないのだ?」と探しまわる大量の幽霊の声が聞こえてきた。それこそが、トラに仕える倀鬼たちだった。馬拯が「お前たちの主人は井戸で死んだ」と伝えると、倀鬼たちは「私たちはトラに殺され、操られていたが、これでようやく解放される」と大喜びし、泣きながら成仏したという。

アジア各地の倀鬼!?

中国の倀鬼は、朝鮮半島に伝わってチャングィ(倀鬼)となり、ベトナムに伝わってマーチャインになった。朝鮮半島では、1匹のトラに3人のチャングィ(倀鬼)がとり憑いている。また、ベトナムのマーチャインは尻尾を掴んで、より積極的に次の獲物を誘惑しに行く。

《参考文献》

Last update: 2026/05/31

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