ストリゴイ
| 分 類 | ヨーロッパ伝承(ルーマニア伝承) |
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strigoi vii(ストリゴイ・ヴィー)【ルーマニア語】 strigoi morti(ストリゴイ・モルツィ)【ルーマニア語】 | |
| 容 姿 | 赤い髪、青い目。 |
| 特 徴 | 吸血鬼。 |
| 出 典 | トゥドール・パムフィレ『ルーマニア神話学』(1916年)ほか |
吸血鬼と人狼の中間的存在!?
ストリゴイはルーマニア伝承に登場する吸血鬼。ストリゴイはオオカミに変身する側面を持っていて、吸血鬼と人狼の中間的な存在と位置づけられる。現地では、ストリゴイ・ヴィー(生けるストリゴイ)とストリゴイ・モルツィ(死せるストリゴイ)の2種類に大別される。ストリゴイについては、民族学者トゥドール・パムフィレ(Tudor Pamfile)が『ルーマニア神話学(Mitologie românească)』(1916年)などで研究をしている。
生けるストリゴイ――生まれながらに呪われた者
ストリゴイ・ヴィーは「生けるストリゴイ」という意味で、外見上は普通の人間と変わらない。ただし、生まれつき、呪術的な能力を持っている。具体的には、生まれつき「羊膜(ティキア)」を被って生まれてきたり、毛の生えた小さな尻尾(コアダ)を持って生まれてきたりした子供がストリゴイ・ヴィーになると信じられてきた。
ストリゴイ・ヴィーは、夜になると魂が身体から抜け出し、オオカミやイヌ、ネコなどの動物(ときにはカエルやノミ)に変身したり、他のストリゴイと会合を開いたりするようだ。干ばつや雹などの異常現象はストリゴイ・ヴィーが空を操っていると説明されることがあり、農作物を阻害する存在として忌避された。また、ストリゴイの中でも女性のストリゴイ(現地語ではstrigoaică(ストリゴアイカ)と呼ばれる)は、家畜のウシからミルクの精気を吸うとされ、ウシが乳を出さなくなるのは彼女たちの仕業だと考えられた。人々の精気を奪うとも信じられた。ストリゴイ・ヴィーは、タマネギやニンニクを食べることを拒むという。なお、ストリゴイ・ヴィーは、死後、自動的にストリゴイ・モルツィ(死せるストリゴイ)になるとされ、非常に恐れられた。
ストリゴイ・ヴィーは、しばしば「赤い髪」と「青い目」を持つと語られることが多く、ストリゴイを見分けるための兆候として知られている。古来、ルーマニアでは、暗い色の髪と茶色い瞳が一般的で、赤い髪や青い瞳は非常に珍しかった。そのため、超自然的な存在として、ストリゴイの疑いをかけられることになったようだ。
死せるストリゴイ――墓から蘇る吸血鬼
一方のストリゴイ・モルツィは「死せるストリゴイ」という意味で、一般的な「吸血鬼」のイメージに近い。生まれながらにしてストリゴイであるストリゴイ・ヴィーは、死後、自動的にストリゴイ・モルツィになる。また、埋葬された死者が、墓から蘇って生者に害をなすとされた。生前に悪い行いをした者や未練を残して死んだ者、埋葬の儀式が不適切だった者、死体の上をネコや鳥が通り過ぎた者などもストリゴイ・モルツィになると信じられていた。その他にも、7番目に同じ性別で生まれた子供や結婚せずに死んだ者、洗礼を受けていない子供、自殺者などもストリゴイ・モルツィになるとされた。
ストリゴイ・モルツィは冷たい顔で生気がなく、頬がこけ、鼻や顎のラインが尖り、死んだ目をしているとされる。夜な夜な墓を出ると、自分の家族や親族を訪問し、彼らの血を吸ったり、病気をもたらしたりする。彼らは最初に自分の親族から襲い、やがて、犠牲者は村全体に広がっていく。
ストリゴイ対策――ニンニクと儀礼の力
ルーマニアの古い農村部では、ストリゴイを防ぐためにいろいろな習慣があった。ニンニクが効果的とされ、窓枠やドアにニンニクを塗って、ストリゴイの侵入を防いだ。特に11月29日の「聖アンドレイの夜」はストリゴイが最も活発になる日とされていて、現在でも、一部の地域ではニンニクを食べたり、ニンニクを窓辺に置いたりする習慣が残っている。また、ストリゴイになる疑いがある死者がいた場合には、口にニンニクを詰めたり、棺の中に棘のある植物を入れたりして、墓から出てこないように対策をした。教会の香もストリゴイを遠ざける力があるという。死者が実際にストリゴイになってしまった場合には、その心臓を杭で突いたり、心臓を取り出して焼き、その灰を水に混ぜて飲んだりする儀式が行われていた。
2004年のストリゴイ事件──現代に生きる吸血鬼信仰
ストリゴイの伝承は現在でも生きている。実際、2004年にストリゴイだと疑われた男性の墓が掘り返される事件が発生している。事件があったのはルーマニア南西部のドルジュ県マロティヌ・デ・スス村で、2003年12月、村の住人のトマ・ペトレという男性が76歳で亡くなった。彼の死後、親族が謎の体調不良となった。姪は「夜な夜なトマがやってきて、精気を吸い取っている」などと主張し、親族は彼がストリゴイ・モルツィになったとして、彼の墓を掘り返し、胸を切り開いて心臓を取り出し、鉄で串刺しにして焼いた。その後、心臓を焼いた灰を水に混ぜて、薬として姪に飲ませた。
この事件はトマの娘が警察に通報したことで発覚し、親族6名が死体損壊等の罪で禁固刑となったが、「ストリゴイを放置すれば村全体が呪われる」などと村人の多くが親族を支持したとされる。ロイターやBBCなどの国際メディアがこの事件を報じ、世界中に衝撃を与えた。
吸血鬼ドラキュラの源流!?
ちなみに、ブラム・ストーカーは1897年に『ドラキュラ』を発表している。この作品の舞台はルーマニアのトランシルヴァニア地方だが、ストリゴイ・モルツィがドラキュラのモデルになったとも言われている。
《参考文献》
Last update: 2026/04/11
