ぺーガソス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Πήγασος〔Pēgasos〕(ペーガソス)【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 有翼の馬。 |
特 徴 | 雷を運ぶ。蹴った地面からは霊感を与える泉が湧く。 |
出 典 | ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)ほか |
英雄を乗せて飛翔する神馬!?
ペーガソスはギリシア・ローマ神話に登場するウマ。背中に翼を生やしていて、自由に空を飛び回る。ゼウスの館に棲み、雷霆を運ぶ役目を与えられている。
一般にはペーガソスは怪物メドゥーサの子とされる。英雄ペルセウスがメドゥーサの首を斬り落としたときに、その切り口からクリューサーオールとともに飛び出したという。なお、メドゥーサはその直前に海神ポセイドーンと交わっている(厳密には犯されている)ため、ペーガソスの父親はポセイドーンであると認識されている。
通常、人間には乗りこなせないとされている。けれども、英雄ベッレロポーンはだけは、女神アテーナーから黄金の手綱を受け取り、コリントス市にあるペイレーネーの泉で水を飲んでいたペーガソスを捕らえて乗りこなしている。彼はペーガソスに跨(またが)って怪物キマイラを退治したという。その後もベッレロポーンはソリュモス族やアマゾーン族を討伐するなど活躍したが、次第に慢心して、ペーガソスに乗って天に昇ろうなどと大胆なことを考えた。これに怒ったゼウスが虻を放つと、虻はペーガソスの鼻をチクリ、と刺した。ペーガソスは大暴れし、英雄はペーガソスを御すことができず、振り落とされて地面に叩きつけられた。こうしてベッレロポーンは墜落死したとも、身体を不自由にして荒野を彷徨ったとも言われている。
英雄ペルセウスも海の怪物ケートス退治のときにペーガソスに乗っていたという解説サイトもあるが、古代ギリシアの文献では、そのような描写はない。後世(たとえばシェイクスピアの戯曲など)に、そのような記述がある文献もある。
ペーガソス、蹴られた場所から泉、湧く!?
あるとき、技芸の女神ムーサたちがピーエリア王ピーエロスの娘たちと歌競べをした。その際、ヘリコーン山はあまりの楽しさにどんどん膨らんで大きくなり、天に届きそうになった。そこでポセイドーンの命令でペーガソスが蹄(ひづめ)で山を蹴って元の大きさに戻したという。ペーガソスが蹴った場所からは水が湧き出て、ヒッポクレーネー《馬の泉》という霊感を与える泉になったという。
ペーガソスはπηγή(ペーゲー)《水源》と結びつけられていて、ペーガソスの蹄によって湧き出した泉というのは、ヒッポクレーネー以外にもギリシア各地にたくさんあるという。
ペーガソス、星座になる!?
現在の88星座の中には「ペガスス座」があり、しばしばゼウスがペーガソスを星座にしたという解説がなされている。しかし、古代ギリシアでは、この星座は単にウマ座(ヒッポス座)としか呼ばれていなかったようで、どうやらペーガソスと結びつけられたのは後世になってからのようである。実際、2世紀頃のヒュギーヌスの『天文詩(デー・アストロノミア)』にも「ウマ座」と明確に書かれている。ただし、ヒュギーヌスは多くの人はペーガソスと呼んできたとも紹介していて、ベッレロポーンを振り落としたペーガソスがその後、天まで飛翔し、ジュピター(ゼウス)が星座にしたという説を載せている。
《参考文献》
- 『神統記』(著:ヘシオドス,訳:廣川洋一,岩波文庫,1984年)
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2024/06/09