2023年5月27日 ヨーウィーはトカゲと虫の混成獣なのか!?
今日はちゃんとウェブサイト「ファンタジィ事典」の話。アボリジニ伝承に「ヨーウィー」という怪物が登場する。実はオーストラリアには2種類のヨーウィーの伝承があって混乱するんだけれど、イエティみたいな獣人型のヨーウィーではなくって、爬虫類型のヨーウィーの話をしている。このヨーウィーは6本脚のトカゲの怪物なんだけど、しばしば、昆虫のような脚で描かれる。
でも、海外のウェブサイトを見ると、結構、普通に6本脚のトカゲで描かれていたりする。サイズも思った以上に大きくて、複数の部族が集まって、総がかりで戦って退治していて、まるで洞窟に棲み、村を襲うドラゴンのようなイメージである。Wikipediaの記述も、特に昆虫の脚とは明示されていない。さてはて。
実は明確に「昆虫の脚」という表現をしているのは、草野巧氏だ。『幻想動物博物館』(1993年)では、
ヨーウィーはカブト虫のように、とげとげした六本の足を持った鱗のある巨大なトカゲである。
と記載されている。以降、『幻想動物事典』(1997年)では
犬くらいの大きさがあり、身体つきは蜥蜴のようだが、胴体には鱗があり、蛇のような尾がある。奇妙なのは足で、かぶと虫のようなとげとげの足が6本ある。
と書かれている。
参考文献には『想像と幻想の不思議な世界』が挙げられている。これはオーストラリア在住のマイケル・ページとロバート・イングペンの共著の辞典である。英語のタイトルは『Encyclopedia of things that never were』である。1985年にイギリスで発行されている。日本語訳は教育社から1889年に出版されている。ページの文章、イングペンのイラストでまとめられているが、そこにヨーウィーが登場する。
オーストラリアの夜行性の生き物。爬虫類と昆虫の中間の形態をしているらしい。目撃者は、昆虫のような6本の足を持ち、頭はオオトカゲで、胴体は爬虫類のようなうろこに覆われ、ヘビのような尾をしていたと言っている。
とあって、イングペンはアリのような身体にトカゲの頭、ヘビの尾を生やした怪物を描いている。草野巧はこれを参考にしたのだろう。
セガサターンの『真・女神転生デビルサマナー』(1995年)では、妖虫としてヨーウィーが登場していて、その後、2021年には『遊戯王』のカードにも登場した。これらの作品でも、昆虫の脚を持った爬虫類の怪物として描かれている。
マイケル・ページもロバート・イングペンもオーストラリア在住の作者だから、一見するとアボリジニ伝承に関する情報は正しそうな印象を受けるが、虹蛇のユルルングルの記述などもほとんどなくて、どこまで信用していいのかはよく分からない。そもそも「昆虫のような6本の足」という部分をマイケル・ページがどのような意図で書いたのかはよく分からない。でも「6本脚であることがまるで昆虫のようだ」とも読める。ロバート・イングペンは明確にアリのような身体を描いているが、果たして、ロバート・イングペン以前にこのような昆虫と爬虫類の混成動物としてのヨーウィーを描いた人がいるのだろうか。
そんなこんなで、「ファンタジィ事典」の記事をどのようにまとめるか悩んでいる。