2023年5月3日 文化を根付かせることが大事
加古川駅のストリートピアノが撤去されるらしい。マナー違反が相次いだらしく、また、ピアノそのものに不快感を覚える市民もいたらしい。
ボクは学生時代、フランスを訪問したときに、駅の構内でチェロを弾いている人を目撃してものすごく感動した。人の往来するど真ん中で演奏していて、滅茶苦茶上手かったし、演奏が景色に溶け込んでいて、さすがはヨーロッパだなーと感じた。音楽が文化として定着している。そんな感想を持った。
ボクは横浜に暮らしている。たとえば、横浜では「横浜トリエンナーレ」というイベントで、現代アートを推している。でも、普段、馴染みのない現代アートをえいや、と目の前に突き出されても、みんな、ちんぷんかんぷんだと思う。林文子前市長は劇場建設を強く推進していた。ダンスと演劇の文化を横浜に根付かせるという姿勢だった。でも、劇場ができて、海外の有名な劇団が公演したとしても、一部の市民しかそれを享受しないだろう。ボクは、文化というのは、そういうものじゃないと思っている。
日常の中に、当たり前にあるものが文化だ。駅の構内でチェロを弾いている人がいる。それが当たり前に受容されている。それが文化だ。もしも文化の底上げをしたいなら、アプローチは、大きなイベントを開催することじゃない。有名人を連れてくることじゃない。横浜のあちこちで、当たり前のように現代アートがあって、演劇がある。そういう形を模索するべきだ。駅構内の空きスペースに、当たり前のように現代アートが飾られていて、解説がついていればいいし、小さい劇場がたくさんあって、演劇団体があっちこっちで演劇をしている姿が、文化だ。担い手がたくさんいて、受容する人がたくさんいて、そうやって文化はつくられる。
ストリートピアノは、そういう意味では、ボクは素敵なアプローチだと認識していた。日常の中にピアノがあって、いろんな担い手が演奏して、それを楽しむ土壌ができる。はらみちゃんやよみぃ氏など、YouTuberたちがそういう文化を一気に後押ししたからかもしれないが、今は玉石混交で、マナー違反をする人もいるのだろう。でも、成熟してくれば、それが文化になって、おのずとマナーもできてくる。今はその途上なのだと思う。もうちょっと時間が掛かるのだろうな、と思う。