2023年5月29日 YouTubeで音楽を聴く時代である。

昔は音楽はレコードやテープで聞いていた。それがCDになってデジタル化し、MDになって好きなトラックを組むことができるようになった。そして、mp3などにダウンロードする形になって、気軽に音楽にアクセスできるようになった。CDショップに足を運ぶ必要がないのだ。そして、今はYouTubeなどのストリーミングで音楽を聴く文化もあれば、サブスクで音楽を楽しむ文化もあって、音楽の楽しみ方は多様化している。

CDやダウンロードの時代は、音源を購入してもらうことがひとつのビジネスモデルだった。だから、ミュージックビデオをつくるのは、ある種のPRでもあったと思う。テレビのランキングなどで取り上げてもらえたし、音楽チャンネルでミュージックビデオが流れることもとても大事な広告になったはずだ。昔、大森靖子が「ミュージックビデオを作ってない曲って、存在すら知られていなかったりする」と言っていたのが印象的だった。

昔のミュージックビデオは、雑踏や走行音などの環境音が入ったり、途中で寸劇やインタビューがインサートされたり、途中でフェードアウトするものもあった。こういうのは、最終的にちゃんとした音源は買って聴いてくださいね、というマインドがあったからだと思う。音楽チャンネルで無料で流れているミュージックビデオを録音しても、そういう邪魔が入るように設計されていた。

でも、今は好きなアーティストの音楽をYouTubeなどで繰り返し聴くみたいなスタイルが定着している。最近、YOASOBIの「アイドル」がストリーミング再生で5週目で1億回突破の最速記録を打ち立てたことが話題になった。YouTubeは現在、1.2億回再生だ。……実はYOASOBIは再生回数1億回以上の楽曲が14曲もあって、これは日本のアーティストの中でもトップだ。2位はOfficial髭男dismで13曲。総再生数でみても、「夜に駆ける」が8.9億回再生でランキングNo.1だったりする。そんな時代である。

そんな中で、依然として一部の楽曲のミュージックビデオで、途中で環境音が入ったり、インサートが入ったりする。こういうのは、何度も繰り返し聴くには辛かったりするので、当然、再生数が伸びていかない。それって、少しだけ損をしている気がする。「YouTubeにアップしているのはあくまで広告目的であって、音源を買ってね」というアプローチは、少しだけ古くなっているのではないか。そんな風に感じる今日この頃のボクである。もちろん、ね。YouTubeを1回再生してもらっても薄利多売で、mp3をダウンロードしてもらった方が利益は出るので分からないではない。でも、不便を強いて購買に向かわせるというアプローチも、きっと、今風ではないような気がする。