テシュブ
分 類 | ヒッタイト神話 |
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d.te-eš-su-ub(テシュブ)〔フルリ語〕 | |
容 姿 | 牡ウシの角冠をかぶり、三叉の稲妻を持つ男性神。牡ウシの牽く戦車に乗る。 |
特 徴 | 天候神、嵐神。ヒッタイト神話の最高神。 |
出 典 | 『クマルビの歌』、『ウルリクムミの歌』(前14~13世紀頃)ほか |
ヒッタイトの最高神、岩の巨人を倒して盤石の地位を得る!?
テシュブはフルリ系神話の嵐神、天候神。フルリ人が建国したミタンニ王国では最高神として崇拝された。八ッティ人はタルと呼び、その神話や信仰は、ルウィ人やヒッタイト人に引き継がれて発展していった。ヒッタイト王国のムワタリ2世(前13世紀頃)が進めた宗教改革の中で、タルはテシュブと同化し、ヒッタイト神話の最高神として崇拝された。
テシュブは神々の王だが、『クマルビの歌』では神々の王の座は目まぐるしく入れ替わっている。古い時代には、神々の王の座はアラルだったが、従者のアヌが王位を簒奪した。その後、アヌの従者だったクマルビが王権簒奪を謀り、アヌを王の座から追い落とした。そのとき、クマルビはアヌの生殖器を噛み切って飲み込んだ。クマルビの体内に残されたアヌの精液から誕生したのがテシュブである。テシュブはクマルビの腹を切り裂いて出てきたようだ。そして、神々はクマルビの腹を縫い合わせている。そして、クマルビは神々の王の座をテシュブに引き渡した。
クマルビは復讐のために何度も岩と交わって岩の巨人ウルリクムミを生み出した。ウルリクムミはどんどん巨大化し、恐れたテシュブはウルリクムミを退治しようとしたが、まるで効果がなく、遂には王の座から逃げ出す。その後、知恵神アヤ(シュメル・アッカド神話のエンキ/エア)の助言に従って、神々はウルリクムミの足を切断し、テシュブはウルリクムミを退治して、無事に王位を取り戻した。
テシュブは雄ウシがシンボルで、角のある王冠をかぶり、2頭の雄ウシが牽く二頭立て戦車に乗った。天候神として、雷や嵐を司り、三叉の稲妻の鋤と両刃の斧、棍棒などを持った姿で描かれる。ヘパト女神を妻に、山神シャッルマと風の女神イナラをもうけた。
テシュブには大蛇イルルヤンカを退治する神話が残っている。また、クマルビが海との間にもうけた大蛇ヘダンムとの戦いの神話も断片的に残っている。
テシュブはメソポタミア神話の嵐神イシュクル/アダドと同一視される。しばしばイシュクルと同じ楔形文字(𒀭𒅎)で表現される。
《参考文献》
Last update: 2020/08/11