クレース・タウロス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Κρὴς ταῦρος(クレース・タウロス)《クレータの雄ウシ》【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 立派な雄ウシ。 |
特 徴 | ポセイドーンが海から出現させ、クレータ島で暴れ回り、マラトーンでテーセウスに退治された。 |
出 典 | アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀頃) |
クレータ島で暴れ回り、マラトーンで退治された暴れウシ!?
クレース・タウロスはギリシア・ローマ神話に登場する雄ウシ。「クレータの雄ウシ」。クレータ島のミーノースは、自分が王位継承に相応しいことを人々に示すため、ポセイドーンに祈った。ポセイドーンは祈りに応じて、海から美しい雄ウシを出現させた。ミーノースは雄ウシのあまりの立派さに惹かれて、ポセイドーンにこの雄ウシを捧げるという約束を反故にして、自分の家畜の中から別の雄ウシを選んでポセイドーンに捧げた。ポセイドーンはこの裏切りに怒り、雄ウシを凶暴にして暴れさせた。また、ミーノースの妻のパーシパエーに雄ウシへの異常な恋心を芽生えさせた。パーシパエーは木像の雌ウシをつくってその内部に入ると、この雄ウシと交わった。こうして、ウシの頭、人間の身体を持った怪物ミーノータウロスが誕生した。ミーノース王はこの子供を隠すために、迷宮ラビュリントスを建設さえ、その中にミーノータウロスを幽閉する羽目になった。
その後、英雄ヘーラクレースは十二の難業の7番目で、このクレータの雄ウシを生け捕りにするように命じられて、格闘の末、捕えて、エウリュステウスのところに連れて行った。ヘーラクレースはそのまま雄ウシを自由に放ち、雄ウシはスパルタ、アルカディア―、コリントスを経て、マラトーンの地に定住して、住民たちを苦しめ続けた。
アテーナイでは、アイゲウス王がパンアテーナイア祭を開催したが、ミーノース王の息子のアンドロゲオースが全ての競技で優勝した。アイゲウス王はアンドロゲオースにこの雄ウシの退治を命じた。しかし、アンドロゲオースは雄ウシに殺された。ミーノース王はこれに腹を立て、アテーナイに戦争を仕掛け、呪いをかけた。結局、アイゲウスはミーノースに降伏し、ミーノースはミーノータウロスの生け贄として人身御供を要求した。毎年、7人の少年少女がクレータ島に運ばれ、ミーノータウロスの餌食となった。その後、アイゲウスの息子テーセウスがこの雄ウシを退治し、雄ウシはアポッローンへの生け贄として捧げられた。
《参考文献》
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2023/05/06