カローン
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
---|---|
Χάρων〔kharōn〕(カローン)【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 小舟に乗ったボロをまとった老人。 |
特 徴 | 冥府の河の渡し守。 |
出 典 | ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)など |
冥府の河の渡し守!?
カローンはギリシア神話の冥府を流れるステュクス河の渡し守である。ステュクス河は死者と生者の領域を分かつ河で、死者はこの河を渡るために、舟賃として1オボロスを支払わなければならなかった。1オボロスが支払えない場合、カローンはその死者を対岸に渡すのを後回しにするため、死者は河川の周りを200年間彷徨うことになる。そのため、古代ギリシアでは、死者の口に1オボロスの銅貨を入れて埋葬する風習があった。
カローンはみすぼらしい衣装を身に纏い、長い髭をはやした老人で、小舟に乗ってやってくる。しかし、この老人は舟の方向だけを操り、舟そのものは死者が漕いで進める必要がある。なお、カローンはエレボス(闇)とニュクス(夜)の間に生まれた子供だという。
日本の三途川も舟で渡る!?
日本にも三途川を渡るために六文銭を必要とする信仰がある。現在では「文」という単位はないため、代わりに紙に六文を記した冥銭が副葬品として用いられる。このような冥府の河川の考え方は広く世界中に見られる発想である。
そりゃあ、たまには生きている人間も舟に乗せる!?
基本的にカローンが河を渡すのは死者だけで、生きている人間が河を渡ることを許可しないが、英雄ヘーラクレースは腕力に物を言わせてカローンに河を渡らせた。この一件でカローンはハーデースに罰せられ、1年間鎖に繋がれることになった。
それ以外にもカローンは生きている人間を河の向こう側に渡している。たとえば、オルペウスが死んだ妻エウリュディケーを生き返らせようと冥府にやって来たときには、竪琴の音色に感動して舟に乗せているし、ペルセポネーと結婚しようと冥府にやってきたペイリトオスとそれに同行したテーセウスも舟に乗せている。
《参考文献》
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2021/10/01