ゲルズ

分 類北欧神話
名 称 Gerðr(ゲルズ)【古ノルド語】
容 姿美しい女巨人。
特 徴フレイが一目惚れし、妻とした。
出 典スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』(13世紀頃)、『詩のエッダ』(13世紀頃)ほか

恋は盲目とはこのことで……!?

ゲルズは北欧神話に登場するヨートゥン族(巨人族)の一人である。豊穣神フレイは、あるとき、オージンの玉座フリズスキャールヴから巨人の国ヨートゥンヘイムを眺めていると、女巨人のゲルズのあまりの美しさに一目惚れした。そこで、フレイは使いとしてスキールニルをヨートゥンヘイムに差し向け、ゲルズに求婚した。

この求婚のエピソードにおいて、スキールニルは旅の成功のために、フレイから「炎を越えられるウマ」と「巨人族と勝手に戦う剣」を貰い受けている。これらのスキールニルの旅の詳細は『詩のエッダ』の「スキールニルの歌(Skírnismál)」に載っている。ゲルズの家は周囲が炎に囲まれていたが、スキールニルは「炎を越えられるウマ」に乗っていったので、ゲルズの家に辿り着けた。まず、スキールニルは黄金のリンゴ(若さを保証するもの)を示して、フレイの愛を受けるように説得する。しかし、ゲルズは命のある限り、フレイとは一緒に過ごさないと拒む。次にグレイプニルと呼ばれる腕輪(9晩で9つに分裂して増える腕輪)を示して、フレイの愛を受けるように説得する。しかし、ゲルズは財産はあり余っているからいらないと拒む。スキールニルは今度は剣を示して、首を切り落とすと脅す。ゲルズはそんなことをしたら父親のギュミルと切り合いになると拒む。スキールニルはさらに剣を示して、この剣はギュミルの命も奪うと脅し、さらには魔法の杖で呪いをかけると脅す。この呪いで、ゲルズはフリームグリームニルという3つ首の巨人と結婚して、冥府に閉じ込められる運命になると脅す。これを聞いたゲルズは、遂にフレイの愛を受け入れることを了承し、9日目の晩にバルの森でフレイと会うことを約束する。

ちなみに、この一件で、フレイは「巨人族と勝手に戦う剣」をスキールニルに渡してしまった。ラグナロクの際、炎の巨人ムースペッルたちがアースガルズに侵攻してくるが、フレイはムースペッルを率いるスルトと戦うときに「シカの角」で戦う羽目になり、スルトに敗北してし、ムースペッルたちのアースガルズへの侵攻を許してしまう。

なお、「ロキの口論(Lokasenna)」で、エーギルの別名としてギュミルの名前が挙がっているため、ゲルズの父親ギュミルはエーギルだとする説もある。もしもそうであれば、たくさんの財産を持っている点でも、納得のいく話である。

《参考文献》

Last update: 2023/03/20

サイト内検索