デルピュネー
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Δελφύνη(デルピュネー)【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 上半身は女性、下半身は蛇。 |
特 徴 | テューポーンが奪ったゼウスの腱を守護していた。また、古い時代にはデルポイの信託所を支配していたとも。 |
出 典 | アポッロドーロス『ビブリオテーケー』ほか |
奪われたゼウスの手足の腱の番人!?
デルピュネーはギリシア・ローマ神話に登場する女性の怪物。上半身は美しい人間の姿をしているが、下半身は蛇の姿をしている。
ギリシア神話で最強の怪物テューポーンがオリュムポスに攻めてきて、神々はみんな、エジプトに逃げ出してしまった。大神ゼウスは単独でテューポーンに立ち向かうが、遂には手足の腱を切り取って奪われてしまった。テューポーンはゼウスの腱を熊の皮でつくった袋にしまうと、パルナッソス山の斜面にあるコーリュキオンの洞窟に隠した。この洞窟でゼウスの腱の番をしていたのが、デルピュネーである。
神話では、ヘルメースとパーンが腱を取り戻し、復活したゼウスは再度、テューポーンと戦い、テューポーンを打ち倒したという。ヘルメースとパーンがどのようにデルピュネーからゼウスの腱を取り戻したのかは、神話は語ってくれないが、ヘルメースのことだから、うまく忍び込んで盗み出したか、口車に乗せてうまく騙し取ったのだろう。
その昔、実は彼女がデルポイの信託所の支配者だった!?
もうひとつのデルピュネーに関する神話は、デルポイの信託所にまつわるものである。デルポイにある信託所を巡って、アポッローンがピュートーンを退治したという有名な神話があるが、元々、この信託所を支配していたのはデルピュネーだったという。その古い伝承では、デルピュネーはガイアからデルポイの信託所を任されていたという。そして、デルピュネーは、予言をする代わりに生け贄を要求していたという。このため、アポッローンによって退治され、これ以降、アポッローンがデルポイの信託所の所有者になったというのである。この古い伝承が正しければ、デルピュネーは本来、デルポイの信託所を守護する女神だったということになる。となると、「デルポイ」という地名も、彼女の名前に由来すると考えることもできる。
また、テューポーンと結婚してさまざまな怪物を産み出したエキドナも、上半身は女性、下半身は蛇という姿をしていて、デルピュネーの姿とそっくりである。タッグを組んでゼウスに対抗している点でも共通しているため、元々は同じものだったと考える人もいるようだ。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2012/02/26