アプスー

分 類メソポタミア神話
名 称 𒍪𒀊 〔apsû〕(アプスー)【アッカド語】
(『エヌマ・エリシュ』などでは「神」を示す限定詞はついていない)
容 姿男性。
特 徴淡水の神。
出 典『エヌマ・エリシュ』(紀元前18世紀頃)ほか

地下深くに眠る淡水の神!?

アプスーはアッカド神話における淡水の神。バビロニアの創世神話『エヌマ・エリシュ』において、何もない原初の世界に、ティアマト(塩水の女神)とともに生まれた。アプスー(淡水)とティアマト(塩水)がお互いに混ざり合うことで、ラフムラハム(泥やシルト)が生まれた。そして、このラフムとラハムからアンシャル(天全体)とキシャル(地全体)が誕生し、アンシャルとキシャルからアヌ(アン)エンリルなどのさまざまな神々が誕生した。

『エヌマ・エリシュ』の中で、アヌ率いる新しい神々が連日、騒がしくするため、アプスーは昼も落ち着けず、夜も眠れず、苦痛を強いられていた。そこで、アプスーはティアマトに若い神々を滅ぼすことを提案する。しかし、ティアマトは「何故、我々が自ら名付けたものを滅ぼすのか」と我慢することを求めた。執事のムンムは「ティアマトも昼に落ち着けて、夜に眠れたら喜ぶ」と父親(アプスー)をそそのかした。アプスーはそれを聞くと、若き神々を滅ぼす計画を立てた。しかし、エア(エンキ)は事前にそれを察知すると、呪文でアプスーを眠らせて殺した。ムンムは捕虜として捕えられた。エアはアプスーの身につけているものを剥ぎ取って身にまとうと、アプスーの上に自らの住居を建てた。

元々、アプスー(シュメル語でアブズ)は地下深くに存在する淡水をイメージしたもので、湧きだす泉や川、あるいは地下水などは、アブズが源だと考えられた。シュメル神話のエンキ神はアブズに住んでいると信じられ、エリドゥ市のエンキを祀る寺院は「アブズの家(エアブズ)」と呼ばれた。

《参考文献》

Last update: 2020/09/20

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