元始天尊(ユエンシー・ティエンズン、げんしてんそん)

分 類中国伝承道教
名 称 元始天尊 〔yuánshǐ tiānzūn〕(ユエンシー・ティエンヅン)【中国語】
元始天尊(げんしてんそん)【日本語】
容 姿髭をはやした男性神。
特 徴道教で「太元」を神格化した最高神、創造神。
出 典『隋書』(656年)、『封神演義』(16世紀)ほか

天地再生のたびに人々を救う道教の創造神!?

元始天尊(ユエンシー・ティエンズン、げんしてんそん)は道教の神。「太元(万物の発生)」を神格化した最高神で、「道(タオ)」を神格化した太上道君(霊宝天尊)と「老子」を神格化した太上老君(道徳天尊)と一緒になって「三清」と呼ばれる。元始天尊は全ての物事よりも先に気に触れて誕生したとされ、元始天尊の誕生とともに、全ての事物に名称と実質が与えられたという。従って、道教では創造神と位置付けられる。道教の世界観では天地は何度も崩壊し、再生される。元始天尊はこの循環とは無関係に生き続ける不滅の存在とされ、天地再生のたびに、道教の教えを示し続けて人々を救う。これを「開劫度人」と言う。

元始天尊は三十六天の最上階にある大羅天の都市・玄都の玉京という宮殿に住む。玉京には黄金が敷き詰められ、階段は大理石ででき、金銀財宝で飾られ、霊獣の麒麟や獅子が棲んでいるとされる

道教が成立する以前の古代の中国神話では盤古真人が原初の巨人としてこの世界に最初に誕生したと説明されていた。道教では、この古い時代の神話と融合し、元始天尊は盤古真人と同一視される。3~4世紀頃の初期の道教では「老子」を神格化した太上老君が最高神だったが、4~5世紀に老子が説く「道」を神格化した太上道君が追加され、その後、6世紀の南朝梁の時代に、「太元」を神格化した元始天尊が最高神とされるようになった。そして、唐の時代には元始天尊、太上老君、太上道君を三清と呼ぶ教理が完成した。宋以降は玉皇大帝が道教の実質的な最高神となり、しばしば、元始天尊と玉皇大帝は同一視される。

元始天尊は神仙の主宰者で、元始天尊によって道教の教義が神仙たちに示され、そして、神仙たちによって現世の人間に示されると考えられた。哲学的・概念的な存在であるため、神話や創作作品の中ではあまり活躍することのない神ではあるが、唯一、『封神演義』の中では、太公望の師匠として登場し、戦いに参加するなどの活躍をしている。

《参考文献》

Last update: 2021/07/04

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