孫悟空(スン・ウーコン、そんごくう)
分 類 | 中国伝承(西遊記)、道教 |
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孫悟空(孙悟空)〔sūn wùkōng〕(スン・ウゥコォン)【中国語】 孫悟空(そんごくう)【日本語】 | |
容 姿 | アカゲザルのような姿のサルの妖怪。 |
特 徴 | 神通力を習得し、 |
出 典 | 『西遊記』(16世紀)ほか |
『西遊記』のスーパースター!?
孫悟空(スン・ウーコン、そんごくう)は中国の四大奇書小説『西遊記』に登場するサルの妖怪。アカゲザルのような姿をしている。さまざまな仙術を体得し、天界を揺るがすほどの力を得て、下界の妖怪たちと一緒に天帝に反逆し、釈迦如来によって五行山に500年間拘束された。その後、三蔵法師に助け出され、三蔵の天竺(インド)から中国に経典を持ち帰る旅に同行し、大活躍した。道教では「斉天大聖」として現在でも崇拝されている。
天界を脅かすサルの妖怪!?
孫悟空は傲来国(ごうらいこく)の花果山(かかざん)の頂上の石から生まれた石猿である。石は天地開闢から天地の霊気、日月の精気を吸い続け、あるとき、生命を宿し、卵を産んだ。風がその卵を孵して1匹の石猿が誕生した。石猿は滝つぼに飛び込んで水簾洞という住み処を見つけ、それによって島のサルたちの王となり、「美猴王(びこうおう)」と名乗った。しかし、しばらくすると命に限りがあることを憂い、不老不死を求めて旅に出て、仙人の須菩提祖師に弟子入りした。須菩提は石猿に「孫悟空」の名を与えた。その上、孫悟空は須菩提から長寿の妙道を教わり、72通りの変化の術を体得し、觔斗雲の法も習得した。しかし、それを他の弟子たちに見せびらかしたことから、須菩提に破門された。
花果山に戻った孫悟空は、自分がいない間に水簾洞を荒らしていた混世魔王を退治して仲間のサルたちを救出すると、東海竜王の棲む龍宮に行って、如意金箍棒(如意棒)を無理矢理、譲ってもらうと、他の竜王たちからも冠や鎧、履など、武具一式を奪った。さらには6大魔王(牛魔王、蛟魔王、鵬魔王、獅駝王、獼猴王、𤟹狨王)と義兄弟となった。そして、幽冥界に行って、閻魔帳に記された自分や仲間のサルたちの名前を塗りつぶし、遂には不老不死になった。
閻魔帳から名前を消したことは天界で危険視され、天帝は孫悟空の討伐を命じるが、金星を司る仙人の太白が諫め、官吏として天界に召すことにした。孫悟空は天帝の下で働けることに大喜びしたが、与えられた「弼馬温」という役職が厩舎の管理人・馬の飼育係で身分が低いことに怒って、花果山に戻ってしまう。そこで、仲間のサルたちに神と崇められ、慢心して、自らを「斉天大聖(天にも等しい大聖者)」と名乗る。これに天帝は激怒し、討伐軍を差し向ける。しかし、先鋒の哪吒太子が敗れ、とても歯が立たないことが分かると退却した。そして、今度は孫悟空のためにわざわざ「斉天大聖」という役職を創設し、正式に任命された。名ばかりの役職に退屈していた孫悟空は、蟠桃園(西王母の不老長寿の桃園)の管理を任されると、そこで栽培されている仙桃を食べ尽くし、桃狩りにやって来た仙女たちの酒宴で、酒番を眠らせて仙酒仙肴を食べ荒らすと、酒に酔った勢いで太上老君の金丹(不老不死の仙人になれる霊薬)まで食べて天界を逃げ出した。天帝は10万の兵を差し向けたが、悟空は次々と刺客を打ち負かした。そこで観音菩薩は二郎真君を派遣し、太上老君とともに孫悟空を捕えた。
天帝は八つ裂きの刑にするが、孫悟空は金丹を食べて無敵の身体になっていたために死ななかった。太上老君の八卦炉に閉じ込めても殺せなかった。そこで天帝は釈迦如来に助けを求めた。釈迦如来は孫悟空が自分の手の平から飛び出すことができるか賭けを持ちかけ、孫悟空は世界の果てまで行った。しかし、それは釈迦如来の指だった。結局、孫悟空は釈迦如来に取り押さえられ、五行山に500年間、封印された。
500年経ち、観音菩薩の慈悲で三蔵法師の弟子になることを許され、天竺(インド)から中国に経典を持ち帰る旅を助ける。三蔵法師の弟子になっても反抗的で、乱暴だが、義理人情に富み、師匠思いでもある。三蔵法師の肉を食べると不老長寿が得られるため、たくさんの妖怪が三蔵を狙ったが、孫悟空はそんな妖怪たちと戦いを繰り広げ、天竺までの旅の間、三蔵法師を守護した。
《参考文献》
- 『西遊記 1』(訳:中野美代子,岩波文庫,2005年)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2021/05/30