クイルン

分 類ベトナム伝承
名 称 Quỷ Rừng〔鬼𡹃〕(クイルン)《森の魔物》【ベトナム語】
容 姿緑色の肌で長い牙を持つ山の精霊。
特 徴老婆に化けて旅人を家に招き、喰らう。
出 典

森の奥で待ち構える人喰いの妖怪!?

クイルンはベトナム伝承に登場する森の精霊の一種で、長期間、修行を積み、たくさんの人間を殺めたことで人間の姿を借りて行動できるようになった妖怪である。

クイルンは森の真ん中に建っている小さな家に、一人寂しく暮らす老婆の姿で出現する。そして、旅人が一晩の宿を求めて訪問すると、喜んで家の中に招き入れ、温かい肉粥を振る舞ってくれる。しかし、真夜中になって旅人が寝てしまうと、クイルンは正体を現す。緑色の肌で、長い牙を持つ妖怪の姿になり、旅人の肉を切り裂いて生のまま喰らう。そして残った肉は次の訪問者に振る舞う粥の材料として用いられるのである。

この点で、クイルンは日本の山姥(ヤマンバ)やヨーロッパのハッグに似ている。山姥も山の精霊で、宿を提供し、訪問者が寝静まると喰らおうとする。ハッグも森の人喰い魔女である。

クイルンの正体については、マーチャイン説と森の獣の霊説があるようだ。ベトナムではトラに襲われた人間はマーチャインという悪霊になって、トラの奴隷になると信じられた。しかし、長く人間を襲っていると進化し、マーチャインはトラの支配から脱することができ、クイルンに変化するのだという。もうひとつは、人間の狩猟によって命を落とした森の獣たちの霊魂が、死後、強い怨念から精霊となって人間を喰らうようになったのだという。

いずれにしても、クイルンはトラを恐れるようだ。そのため、魔除けの力を宿した「トラの牙」が有効だという。万が一、クイルンに遭遇してしまった場合、トラの牙をつけた輪を首に巻きつければ、クイルンを即死させることができると信じられている。

森の精霊たちは、しばしば、森の奥深くで旅人を道に迷わせ、旅人を空腹にし、香ばしい料理の匂いとともに小さな家へと誘導する。気づかぬうちにクイルンの餌食となって、晩餐の食材とされてしまわないように留意する必要がある。

《参考文献》

  • Ma Quỷ Dân Gian Ký』(著:Duy Văn,Linh Lan Books,2022年)(ベトナム語)
  • MA QUỶ DÂN GIAN KÝ(ベトナム語)

Last update: 2026/09/06

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