レルナイア・ヒュドラー
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Λερναῖα Ὕδρα 〔Lernaîa Hýdra〕(レルナイア・ヒュドラー)《レルネーの水蛇》【古代ギリシア語】 | |
容 姿 | 9つの頭を持った水蛇。 |
特 徴 | 首を斬り落としても復活する。猛毒を持つ。 |
出 典 | ヘーシオドス『テオゴニアー(神統記)』(前7世紀頃)、アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀頃)ほか |
斬っても斬っても生えてくるヒュドラーの首!?
レルナイア・ヒュドラーはギリシア・ローマ神話に登場する怪物。テューポーンとエキドナの娘で、たくさんの頭を持った大蛇の怪物。アルゴリス地方のレルネー沼に棲み、猛毒で周辺の田畑を荒らしていた。Ὕδρα(ヒュドラー)は、古代ギリシア語では単に《水蛇》を意味する語だが、現代では単にヒュドラーと言えば、このレルネーのヒュドラーを指す。
英雄ヘーラクレースは12の難業の2番目の仕事として、レルネー沼のヒュドラー退治にやってきた。しかし、何度首を斬り落としても、その傷口からは新しい首が2本、はえてくる。しかも真ん中の首は不死だったとされる。従者のイオラーオスが斬り口を火で焙れば再生しないことに気がついて、ようやく退治できた。首の数については諸説あるが、概ね9本というのが定説になっている。ヘーラクレースは真ん中の不死の首だけは、斬り落として地面に埋めたという。
ヒュドラーの毒は猛毒として知られ、ヘーラクレースはヒュドラーを退治した後、アテーナーの助言に従って、ヒュドラーの身体を切り裂き、胆汁を取り出し、ヒュドラーの毒に矢を浸して、その後の戦いに活用している。12の難業の4番目の仕事の最中、ケンタウロス族と争い、誤って賢者ケイローンを射てしまった。ヒュドラーの毒に対してはどのような薬も効果がなく、毒の苦痛に耐えきれず、ケイローンは不死を返上して死んだ。また、ヘーラクレースは妻デーイアネイラを攫おうとしたネッソスを射殺したが、ネッソスは死に際にデーイアネイラに「自分の血は媚薬の効果がある」と騙した。デーイアネイラはヘーラクレースの服にネッソスの血を塗って夫に着せた。ネッソスの血にはヒュドラーの毒が混じっていて、結局、ヘーラクレースもヒュドラーの毒に蝕まれて、苦痛から逃れるために自分の身体を焼いて、人間としての人生を終えた。
なお、ヒュドラーは、死後、「うみへび座」になった。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2021/03/21