ジンニー

分 類イスラーム
名 称 جِنِّيّ〔Jinniyy〕(ジンニー)【アラビア語】
 複数形:جن‎(ジン)【アラビア語】 Jinni、Djinni(ジンニー)【英語】
容 姿変幻自在。
特 徴アラビア伝承の精霊。
出 典『アル=クルアーン(コーラン)』(7世紀)ほか

ジンニーのイラスト

「何でも願いを叶えましょう!!」

ジンニーは古くからアラブ人が信じてきた精霊で、日本語訳では「幽精」とか「妖霊」などと訳されることもある。ジンニーの複数形はジンなので、ジンとして認知している人も多いかもしれない。『アルフ・ライラ・ワ・ライラ(千一夜)』などでは、しばしばランプの精として登場するので、非常に有名かもしれない。ディズニー映画『アラジン』に登場するジーニーなどは典型的なジンニーと言える。

ジンニーは大きさも姿は変幻自在で、さまざまな生き物に変身できる。最初は雲や煙のような不定形な姿で出現し、やがて身体が凝縮していろんな姿になる。同様に、希薄にして消えてしまうともいう。凶悪なものもいれば、悪戯好きのもの、また、信心深いもの、人助けをするものなど、その性格はさまざまである。魔王イブリースに率いられており、マーリドイフリートなど、性格や特徴によって呼び方が異なる。ソロモン王はジンニーを自在に操って、神殿を建設したとされる。

イスラームが成立する前からアラビア伝承の中で信じられていた超自然的存在で、『アル=クルアーン(コーラン)』でもその存在が否定されておらず、「アル・ジン」という表題の章(スーラ)がある。唯一神アッラーフが、天使(マラク)と人間の中間的な存在として創造したもので、『アル=クルアーン』によれば、アッラーフは天使(マラク)たちを光から、そしてジンニーたちを煙の立たない炎から創った。その後、アッラーフの地上の代理人として、最初の人間アーダムを土と水から創った。アッラーフは天使やジンニーたちに対して人間に跪(ひざまず)くように命じたが、ジンニーたちの長であったイブリースだけはそれを拒み、天界から追放されたという。

ジンニーには階級がある!?

一説によれば、ジンニーは五階級に分類されるといい、上から順にマーリド、イフリート、シャイターン、ジンニー、そしてジャーンになるという。この分類に従えば、ジンニーは上から4番目の階級に属することになる。このジンの階級に関する伝承の出典は定かではない。少なくともボルヘスは『幻獣辞典』の中で「ジンは五つの階級からなる」と言及している。けれども、ジンの親玉として君臨するはずのイブリースがシャイターンの位置にいるなど、この階級に対する疑問は残る。

ジンニーは風の魔神か!?

近年のファンタジー小説やゲームなどではジンニー(ジン)は風の魔神として描かれることが多い。テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では魔神を水、火、風、土の四大精霊と結びつけて、それぞれ水の魔神をマーリド(Marid)、火の魔神をイフリート(Efreeti)、風の魔神をジン(Djinn)、土の魔神をダオ(Dao)とした(ダオは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のオリジナル)。おそらく、一陣の風や煙とともにランプや指輪などからジンニーが出現することからの連想もあるのだろう。その後、さまざまなゲームなどでこの設定が踏襲されたため、ジンニーといえば風の魔神であるかのような印象を与えている。

近年のファンタジーでは、ジンニーはランプや壺、指輪などの持ち主に従っている存在として描かれることも多い。その場合、直接、強力なジンニーと戦うのではなく、主人を退治するのが早道だとされる。逆にジンニーが封印されているランプや壺、指輪などを手に入れれば、アラジンのように願いを叶えてもらって裕福になれるのかもしれない。

イラスト解説

イラストは「お呼びですか?」とばかりにランプから登場する比較的、従順なジンニーを描いてみた。イフリートやマーリドだと、もう少し凶悪な雰囲気かもしれない。

《参考文献》

Last update: 2022/08/08

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