恵比寿(えびす)

分 類日本神話日本伝承
名 称 恵比寿(えびす)【日本語】
夷(えびす)、戎(えびす)、胡(えびす)、蛭子(えびす)、蝦夷(えびす)、恵比須(えびす)、恵美須(えびす)【日本語】
容 姿釣り竿を持ち、鯛を抱え、狩衣を着て烏帽子をかぶった神。
特 徴海神、漁業神、漂着神、来訪神。豊漁をもたらす。市神として商売繁盛も。
出 典

クジラの漂着が豊かさをもたらす!?

恵比寿(えびす)は日本に伝わる福の神で、七福神の1柱である。七福神がインドや中国に起源を持つ神々が多い中、唯一、日本土着の神に起源を持っている。狩衣(かりぎぬ)という公家の普段着を身につけ、烏帽子をかぶり、釣り竿を持ち、しばしば脇に鯛を抱える姿で描かれる。

恵比寿は、本来、海の向こうからやって来る海神で、たとえば、クジラなどが浜辺に漂着すると、それだけで周辺の村々が飢餓などから救われるため、海からの漂着物そのものを「えびす」と呼んで信仰していた。また、流れ着いた石などを「えびす」のご神体として拾うことで、大漁になると信じられた。従って、元来は漁業の神で、大漁追福を司る神で、しばしば、「えびす」は大漁旗にあしらわれ、海運守護を祈念した。クジラやイルカ、ジンベイザメなどの海洋生物そのものを「えびす」と呼び、彼らの出現が豊漁をもたらすと信じられることもある。実際、クジラの出現とカツオなどの漁獲対象魚の出現には相関関係があるらしい。

平安時代末期になると、市場の神として祀られるようになり、商業の発展とともに、商売繁盛の神としての性格も現れ、福の神として信仰されるようになった。こうして、「えびす」は七福神の仲間入りを果たした。すでに平安時代には恵比寿、大黒天毘沙門天の3神をセットにして信仰されていた。

恵比寿、ヒルコとコトシロヌシと結びつく!?

恵比寿を記紀神話と結びつける説明には2つの系譜がある。ひとつは、イザナキイザナミの間に生まれた蛭子(ヒルコ)で、もうひとつは、オオクニヌシの息子の事代主(コトシロヌシ)である。

ヒルコは『古事記』に登場する。イザナキとイザナミが最初に産んだが、3歳になっても足が立たず、海に流して捨てられたという。その後のヒルコの詳細を『古事記』は語らないが、民間信仰の中では、ヒルコはどこかに漂着したと信じられた。漂着したヒルコが、海から漂着する海神の「えびす」と一致したため、2柱の神は同一視されるようになった。たとえば、兵庫県西宮市の西宮神社はヒルコをえびす神として祀っていて、全国のえびす神社の総本宮とされる。

一方、コトシロヌシを「えびす」とする神社もあって、今宮戎神社などが有名である。記紀神話の中で、国津神が天津神から国譲りを迫られたときに、コトシロヌシは釣りをしていたことから、海神のえびすと結びつき、江戸時代になって、2柱の神を同一視する説が生まれた。七福神で恵比寿が釣り竿を持っているのは、コトシロヌシの伝承に基づくとされる。また、コトシロヌシの父親はオオクニヌシであり、オオクニヌシが大黒天と結びついたことから、恵比寿と大黒天は親子だと解釈されることもある。

《参考文献》

Last update: 2022/01/30

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